20代で転職する会計士が多いので、「キャリアの考え方」「転職先」を解説します。

20代で転職する会計士が多いので、「キャリアの考え方」「転職先」を解説します。

公認会計士・税理士の藤沼です。

最近、20代で転職される会計士の方が増えているようで、当ブログ経由でご相談を受けることが増えてきました。

そこで今回は、20代で転職を考えている会計士の方向けに、「キャリアの考え方」「転職先」について解説したいと思います。

どのくらいの若手会計士が転職しているのか、市場動向も気になるかと思いますので、まずは転職する会計士の割合から解説します。

この記事で分かること


この記事を書いた人

1986年生まれ(38歳)
公認会計士税理士

2014年 EY新日本監査法人 入社
2018年 中堅コンサル事務所 入社
2019年 藤沼会計事務所 開業
2020年 アカウントエージェント株式会社 代表


目次

20代で転職する会計士は、意外と多い。

20代で転職する会計士は、意外と多い。

結論から言えば、20代で転職する会計士は非常に多いです。

これは私の主観ではなく、日本公認会計士協会によるアンケートの結果から明らかです。

ここでは、簡潔に結果のみを見てみましょう。

20代で転職する会計士の割合

まず、「転職した会計士の年齢分布」は次のとおりです。

転職した会計士の「年齢」分布

選択肢回答件数割合
~30歳7037%
31歳~40歳9751%
41歳~2212%
 合計189100%
(JICPA「組織内会計士に関するアンケート最終報告」を基に作成)

転職した会計士のうち、約4割が20代会計士です。

転職した会計士の実務経験年数

年齢以外にも、「実務経験年数」についてもアンケート調査結果が公開されています。

こちらも見てみましょう。

上場企業が採用したい会計士の「実務経験年数」

選択肢回答件数割合
3年未満6917%
3年以上19949%
5年以上11428%
10年以上236%
 合計405100%
(JICPA「組織内会計士に関するアンケート最終報告」を基に作成)

経験年数「3年以上」を求める企業が、全体の約半数です。

興味深いのは、「5年以上」になると企業側のニーズが半減している点です。

つまり、監査法人での勤務年数が3年を超えると、徐々に企業側からのニーズが低下するのです。

このことから、大体経験年数3年~5年程度が転職に最も適したタイミングと言えるでしょう。

大手監査法人の離職率(参考)

参考までに、大手監査法人の会計士の離職率も参照しておきます。

監査法人の離職率を、高い精度で分析してみた。の記事内において、大手監査法人の離職率を算出しました。

その結果、スタッフ・シニア層の離職率は約9%~12%であり、5年で約半数の若手が離職することが分かりました。

大学在学中に合格した人であれば、27歳までに同期の半数が転職しているでしょう。

皆さんの肌感覚としても、分かるはずです。

また、会計士試験の平均合格年齢は26歳前後であることから、20代のうちに転職する会計士が多いことは明らかでしょう。

全体としても転職する会計士は多く、20代で転職する会計士も珍しくないことが分かるでしょう。

よくある20代会計士の(監査法人からの)転職理由

よくある20代会計士の(監査法人からの)転職理由

では次に、「なぜ20代で転職する会計士が多いのか」その理由(転職理由)を見てみましょう。

こちらはJICPAのアンケート結果のほか、OpenWorkという従業員口コミサイトが参考になります。

20代会計士の多くがBIG4(アシュアランス)に所属していますから、「BIG4に所属している若手会計士」の退職理由をまとめました。

会計士の転職理由として特に多かったのは、次の3つです。

それぞれ、具体的に見てみましょう。

残業が多い、プレッシャーが強い

具体的には、次のような理由が多く見られました。

  • 品質ばかり求められ、年々作業時間が増えている
  • リソースが少なく、1人に対するプレッシャーが強すぎる
  • 昇格しても残業時間が多く、夢がない

私がEYに入所した頃からずっとそうですが、監査業界では「品質の向上」が求められ続けます。

ゆえに残業時間は年々増加するのですが、これは監査というサービスの性質上、仕方のないこととも言えるでしょう。

体力のある人はBIG4に残り続けますが、多くの人は退職していきます。

私自身、とても体力が続かないと感じ、4年半でEYから転職しました。

仕事が面白くない

具体的には、次のような理由が多く見られました。

  • 本質的でない、ムダな作業が多すぎる
  • 仕事のやりがいが無い
  • 誰のために仕事をしているのか、分からない

転職した会計士たちと話していても、「二度と監査はやらない」という人は多いです。(ほぼ全員)

大量のテンプレート文書化などが要求される一方で、考える作業が年々減るため、「つまらない」と感じるのは必然です。

私自身も、やりがいを求めてFASコンサルに転職しました。

と言いつつ、独立後も監査をやっていたりしますが…。(利益率だけは本当に高く、ビジネスとしては良いと思います)

キャリアアップ、将来への不安

20代会計士の転職理由として、最も多かった理由が「キャリアアップのため」でした。

具体的には、次のような理由が多く見られました。

  • せっかく会計士になったので、監査以外の領域にチャレンジしたい
  • 上(マネージャー、パートナー)が詰まり過ぎている
  • この先「監査」のスキルだけで生きていくのは、不安すぎる

「会計監査」は汎用性の高いスキルであることから、監査法人での経験を活かしてキャリアアップする、という方がとても多いです。

BIG4での経験は決して無駄になりませんが、インチャージを経験した後は、他社でキャリアアップした方が効率的です。

なお、年収は経験値に応じて自然とアップするため、「年収を上げるために転職した」という人は少数でした。

会計士が20代で転職するメリット

会計士が20代で転職するメリット

以上、20代で転職する会計士は多く、企業側のニーズも(実務経験が3年あれば)高いという実態が分かりました。

次に、「20代で転職することによるメリット」を見てみましょう。

それぞれ解説します。

キャリアの幅を広げやすく、キャリアアップしやすい

監査法人以外でのキャリアアップを目指すなら、早い段階で転職することが望ましいです。

なぜなら、「会計監査」は汎用性の高いスキルである一方で、習熟度が早く、5年程度で成長性が低下し始めるからです。

定年まで会計監査に関与するなら別ですが、他の領域でキャリアアップを目指すのであれば、早めに転職をした方がコスパが良いでしょう。

30代後半にさしかかると、体力の衰えやライフイベントに備えるため、保守的な転職先を選びやすくなります。

そんな時にバックボーンが「会計監査のみ」では、低い評価・年収でスタートすることになるため、将来への不安が大きくなるでしょう。

体力のある若いうちに転職をし、様々な経験を積んでおくことで将来の大きなキャリアアップに繋がります。

私自身はもうアラフォーですが、今転職をしろと言われると体力的に厳しいです。

若さは大きな武器ですから、早期のキャリアアップを強く推奨します。

内定率が非常に高い

実際に転職活動をしてみると分かりますが、「会計士である」というだけで、ほとんどの会社から内定が出ます。

私は32歳で転職をしましたが、10社の書類選考に応募し、9社通過しました。(その後の内定率は100%)

書類選考で落とされてしまった1社は、PEファンドでした。

「30代ならFASの経験が欲しい」という理由で落とされてしまったのですが、20代であれば「ポテンシャル採用」があるようでした。

ポテンシャル採用は20代の特権とも言え、よりハードルの高い転職先からも内定が獲得しやすいでしょう。

失敗できる

20代は失敗が許される年齢であり、企業側も即戦力は求めていません。

たとえば私の事務所でもスタッフを募集していますが、20代の方には即戦力としての能力を求めておらず、どちらかと言うと人間性に問題がないかなどを見ています。

私の事務所でも職員を募集していますが、20代の方には即戦力としての能力を求めておらず、どちらかと言うと人間性に問題がないかなどを見ています。

また、万が一キャリア選択を誤ったとしても、20代であれば十分に修正が効きます。

これも20代だけの特権と言えるでしょう。

会計士が20代で転職するデメリット

会計士が20代で転職するデメリット

個人的には、20代で転職すること自体にデメリットを感じません。

しかし 次のようなケースで転職する場合、多少のデメリット(リスク)があります。

それぞれ解説します。

1年~2年で辞める場合のリスク

監査法人を1年~2年で辞めて転職する場合、面接時に必ず退職理由を聞かれます。

若いうちに短期間で転職すると、「協調性がないのでは?」「仕事ができないのでは?」といったネガティブな印象を与える可能性があります。

私の事務所でも、前職を早期に辞めた方に対しては、かなり踏み込んだ質問をします。

もちろん正当な理由があれば問題ありませんが、誤解のないように転職理由を伝える努力は大切です。

ちなみに、回答として一番マズいのが「前職のチームが合わなかった」「監査が自分に合わなかった」などのネガティブな回答です。

ネガティブな回答は本当に印象が悪いので、ポジティブな表現に変換して回答されることを強くオススメします。

主査経験なしで監査法人以外に転職する場合

経理やFAS、会計事務所などに転職する場合、「主査経験の有無」を確認されるケースがあります。

経理であれば監査対応において、またFAS/会計事務所であれば各プロジェクト牽引において、主査経験(マネジメント経験)が活かされるからです。

主査経験があれば、採用時の評価に反映されるため、年収が上がり易くなります。(どの程度年収に反映されるかは、組織によって異なります)

マネジメント経験は監査法人以外でも経験できますが、キャリアアップよりも早期の年収アップを重視される方は、念頭に置かれると良いでしょう。

会計士登録前に転職する場合

会計士登録前に転職する場合、次の2点に注意する必要があります。

  • 「実務要件」が満たせるか
  • 「試験休暇」が取れるか

特に、修了考査の合格率が低下している昨今、「試験休暇」の重要性は非常に高いです。

この点で、会計士登録を最優先するのであれば、転職先の選択肢が少し狭まってしまうリスクがあります。

とはいえ、BIG4にいる限り残業時間が年々増加しますから、勉強に割ける時間が減るのも事実です。

「勉強時間を確保するために、残業の少ない組織に転職する」という選択もアリでしょう。

20代会計士が転職する際の「キャリアの考え方」

20代会計士が転職する際の「キャリアの考え方」

「監査法人から転職したいけど、キャリアをどう考えれば良いのか分からない」という方は多いと思います。

思えば私たち会計士は、試験合格後の非常に短期間で就活した為、広い視点でキャリア設計(人生設計)をする機会が少なかったはずです。

ここでは、20代で転職した会計士へのインタビュー、及び私の失敗談も踏まえて、「キャリアの考え方」のヒントを書きたいと思います。

考え方は人それぞれのはずですので、あくまでキャリアを考える際のヒントとしてご参考ください。

それぞれ解説します。

「転職後の転職」も考える

今回の転職が、人生最後の転職になるとは限りません。

人生は長いですから、多くの場合、今回の転職は通過点に過ぎません。

たとえば私の場合、将来の独立開業を見越し、FAS系の会計事務所に転職しました。

「今何がやりたいか」はとても大切ですが、「将来のやりたい事に役立つか」という視点も大切です。

若ければ若いほど、転職を重ねることができますから、「踏み台としての転職」という視点で考えてみるのも良いでしょう。

キャリアの選択肢が広がるような転職先を考える

「将来何をしたいか分からない」という方も多いでしょう。

そんな方は「選択肢を広げるような転職先」をオススメします。

多くの選択肢が用意された転職先を選ぶことで、(現時点で明確にやりたいことが見つからなかったとしても)転職先で実際に業務を経験しながら、キャリアの方向性を考えることができるからです。

例えば、次の転職先はキャリアの幅を広げやすいです。

将来の選択肢が広がりやすい転職先
  • 経理
  • ベンチャーCFO
  • 経営企画
  • FAS
  • 中小監査法人
  • 監査法人アドバイザリー

逆に、会計事務所・税理士法人といった「税務」分野は、ややキャリアを狭めやすいため注意しましょう。

転職活動での5つの軸

転職活動自体が初めての方も多いと思いますので、転職先選びの「軸」となる考え方を示しておきます。

網羅的な視点でキャリア・転職先を考えたい方は、どうぞご参考ください。

転職活動での5つの「軸」と具体例

仕事内容今までの経験を活かしたい?

新たな経験を積みたい?

好きな職種・業種は?

英語・IFRSを活かしたい?

会計?税務?ファイナンス?経営?

事業会社orコンサル

独立向き?

やりがいはある?楽しい?

キャリアの幅は広がる?
働き方定時(何時スタート?何時間勤務?)

残業時間・ワークライフバランス

勤務地出張・転勤の有無

フレックス・時短勤務

副業の可否

テレワーク(リモートワーク)

補習所・修了考査への配慮
収入年収

特別手当

インセンティブ報酬

福利厚生

公認会計士協会会費の負担
組織上場/非上場

外資系、海外への事業展開

従業員数、部署の人数、チームの人数

離職率

男女比率

経営方針・経営理念に共感できる

社風

技術力・商品力が高い
■ 制度明確な評価制度

研修制度

ジョブローテーションの有無

異動希望の制度

上記は、あくまで転職先選びにおける「軸」の列挙です。

どの軸を重視すべきかは、「自己分析」及び「カウンセリング」を受け、慎重に考えましょう。

20代会計士におすすめの転職先とその特徴

20代会計士の転職先とその特徴

会計士の転職先は、全13種あります。

このうち、20代会計士にオススメの転職先は、10種です。

20代会計士におすすめの転職先

経理監査経験がフルに活かせる

汎用性が高い

ワークライフバランスが取りやすい
ベンチャーCFO経営者としてのキャリア

IPOの経験が活かせる

SOによる報酬獲得

やりがい有り
経営企画経営へのシフト

特定業種への専門性が高まる

やりがい有り
FASコンサルタントとしてやりがい有り

ファイナンスの知見が手に入る

汎用性が高く、キャリアが広がる
BIG4アドバイザリー特定FA領域のスペシャリスト

ネームバリューが強い
中小監査法人ワークライフバランスが取れるケース有り

年収が上がりやすい
税理士法人特定税務領域に特化
会計事務所独立志向の会計士に最適

ただし、年収は下がりやすい
投資銀行キャリアを金融系にシフト

ただし、激務
PEファンドキャリアを金融系にシフト

金融系の中ではワークライフバランス取りやすい

金融系キャリアのゴールともいえる

※ 職種名をタップすると、それぞれ個別記事が開きます。

かなり多いため(良い意味で)悩むことが多いでしょう。

どのキャリアが自分に最適かは、転職エージェントに聞いてしまうのが最も手っ取り早くオススメです。

20代会計士が転職する際のよくある疑問

その他、20代会計士が転職する際によくある疑問をまとめてみました。


20代で転職すると、年収は下がりますか?

いいえ、年齢と年収は関係ありません。

関係するのは、実務経験年数です。

また、会計士が転職すると、年収はいくらになる?【全職種調べてみた】で検証していますが、BIG4在籍の会計士は多くの場合年収が上がります。

20代女性会計士が転職する場合、注意点はありますか?

結婚・子育てなどのライフイベントを見越している方が多いと思うので、各転職先(企業)で実際に働いている女性がいるか、また実際に育休制度を利用し復帰した女性がいるかを確認しましょう。

内部統制と同様に、制度のデザインだけでなく運用状況も確認することが大切です。


20代会計士におすすめの転職エージェント【比較表】

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マイナビ
会計士
ヒュープロ
(Hupro)
MS-Japanレックスアド
バイザーズ
人材ドラフト
マイナビ会計士ヒュープロロゴMS-Japanロゴレックスアドバイザーズ人材ドラフト
総合評価
( 10/10 )

( 9/10 )

( 8/10 )

( 7/10 )

( 7/10 )
求人数約5,000件約2,000件約1,500件約1,500件約500件
対象年代20代~30代20代~50代20代~30代20代~30代20代~50代
対応エリア関東
近畿
愛知県
静岡県
全国全国全国全国
設立1973年2015年1990年2002年2000年
資本金21億210万円2億2740万円5億8600万円6000万円3400万円
対象者公認会計士限定会計・税務管理部門全般会計系全般会計事務所
得意領域公認会計士経理
会計事務所
監査法人
コンサル
FAS
監査法人
会計
税務
コンサル
会計事務所
評判口コミ評判を見る評判を見る評判を見る評判を見る評判を見る
利用料金無料無料無料無料無料
公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト
マイナビ
会計士
ヒュープロ
(Hupro)
MS-Japanレックスアド
バイザーズ
人材ドラフト
マイナビ会計士ヒュープロロゴMS-Japanロゴレックスアドバイザーズ人材ドラフト
総合評価
( 10/10 )

( 9/10 )

( 8/10 )

( 7/10 )

( 7/10 )
求人数約5,000件約2,000件約1,500件約1,500件約500件
対象年代20代~30代20代~50代20代~30代20代~30代20代~50代
対応エリア関東
近畿
愛知県
静岡県
全国全国全国全国
設立1973年2015年1990年2002年2000年
資本金21億210万円2億2740万円5億8600万円6000万円3400万円
対象者公認会計士限定会計・税務管理部門全般会計系全般会計事務所
得意領域公認会計士経理
会計事務所
監査法人
コンサル
FAS
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会計
税務
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評判口コミ評判を見る評判を見る評判を見る評判を見る評判を見る
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