会計士試験合格者が転職する際の注意点と、おすすめの選択肢を紹介します。

会計士試験合格者が転職する際のポイントと、転職先の種類

公認会計士・税理士の藤沼です。

最近、修了考査合格前に転職される方が多いと聞きました。(特にBIG4からの流出が多い)

そこで今回は、会計士試験合格者の方の「転職先の選び方」「注意ポイント」について、情報をご提供したいと思います。

私も転職経験者として、BIG4を辞める方の気持ちは結構分かります。

この記事を書いた人

1986年生まれ(38歳)
公認会計士税理士

2014年 EY新日本監査法人 入社
2018年 中堅コンサル事務所 入社
2019年 藤沼会計事務所 開業
2020年 アカウントエージェント株式会社 代表


目次

会計士試験合格者に対する、企業側のニーズとは?

会計士試験合格者に対する、企業側のニーズとは?

結論から言えば、「会計士試験合格者」への採用ニーズは高く、売り手市場です。

ただし、年齢のハードル等はあるため、全員にとって有利な転職になるとは限りません。

ここでは「企業が求める年齢層」・「企業の求人数」を確認し、実際の採用ニーズをチェックしてみましょう。

企業側のニーズ① 年齢

「企業が採用したい会計士試験合格者の年齢層」については、JICPAの実施したアンケート調査が参考になります。

実際に見てみましょう。

企業が採用する会計士+試験合格者の年齢層

採用側企業が想定している会計士試験合格者の年齢
(引用:JICPA「組織内会計士に関するアンケート最終報告書」

公認会計士を採用する場合、約半数の企業が「35歳以下の会計士を採用したい」と回答しています。

一方、試験合格者を採用する場合には、それぞれ約40%の企業が「25歳以下・30歳以下の試験合格者を採用したい」と回答しています。

試験合格者の場合、30歳以下であれば問題なさそうですが、31歳~35歳になるとハードルが上がるようです。

企業側としても、受験生に試験休暇を付与する必要があるため、ある程度のハードルは仕方ないかもしれません。

ただし、上記アンケートの回答は「監査法人以外」の事業会社からの回答であり、監査法人への就職のハードルは更に低いです。(詳しくは後述)

企業側のニーズ② 求人数

次に、公認会計士と試験合格者に対する「求人数」を比較してみましょう。

ここでは、会計士の転職では最大手となる、マイナビ会計士の公開する求人データを参照します。

会計士と試験合格者の求人数比較

会計士と会計士試験合格者の求人数の違い
(参照:マイナビ会計士「求人検索」)
  • 試験合格者向けの求人:381件
  • 公認会計士向けの求人:594件

※ いずれも公開求人のみ集計。

上記は、業界最大手となる転職エージェント「マイナビ会計士」のHPを活用し、求人検索システムからソートした結果です。

試験合格者向けの求人数は、公認会計士向けの求人数の約65%でした。

やや求人数は(会計士登録者に比べると)少なくなりますが、そこまで選択肢が大きく減るわけではないようです。

(主観含む)筆者と周りの会計士の肌感

私の主観も入りますが、ここ最近、BIG4を辞める若手が増えているようです。

私は既にBIG4(EY)を退職していますが、BIG4現職の知人会計士からは「会計士登録する前に転職するスタッフが増えている」という話をよく耳にします。

一昔前では考えられませんが、今のBIG4の状況(修了考査の難易度上昇、リモートワークの増加、など)を鑑みると、早期に転職する方が多いのも納得できます。

BIG4では、会計士の約半数が5年以内に転職しますが、最近はもう少し離職率が上がっているかもしれません。(特に若手)

本題に戻りますが、辞める若手が増えているという事は、それだけ企業側の採用ニーズもあるという事でしょう。

会計士試験合格者が転職する理由

会計士試験合格者が転職する理由

会計士登録前に転職する人が増えているとはいえ、身近にはあまり見かけないと思います。(通常は誰にも言わずに転職活動を進め、内定後、辞表を提出してから公表するため)

そこで、ここでは実際に試験合格者で転職された方の「口コミ」を掲載します。

会計士試験合格者の主な転職理由
  1. 激務すぎるため
  2. 放置されることが多く、スキルアップできないため
  3. 将来性がないため

なお ここでの情報は、企業内情口コミサイトOpenWorkに投稿されたものを転載しています。(BIG4でソート)

また 余談ですが、OpenWorkでは企業の内情が在籍者本人により投稿されています。

転職活動が進み、実際に「応募しようかな?」と感じた時は、参考にされると良いでしょう。

その他、会計士の転職理由については、次の記事でもご紹介しています。

では、主な3つの転職理由の中身を見てみましょう。

理由① 激務すぎてキツい

論文合格者Aさん(31歳)の口コミ
論文合格者Aさん(31歳)の口コミ
Aさん
(匿名)

プロフィール

  1. 年齢  :31歳(転職時)
  2. 保有資格:公認会計士論文合格(転職時)
  3. 転職先 :大手監査法人 → 中小監査法人

コメント

効率よく仕事を進めても、永遠に仕事が振ってくるため、BIG4では慢性的なハードワークだった。
修了考査の合格率も低い水準で推移している中、休暇が取りづらく、その結果修了考査に落ちてしまった。
私の法人では2回試験に落ちると試験休暇が付与されなくなるため、「このままでは一生、会計士登録できないのでは?」と不安に感じて転職した。
転職先の中小監査法人では、驚くほどワークライフバランスが取れており、無事修了考査にも合格することができた。

理由② 放置されることが多く、スキルアップできないため

論文合格者Bさん(27歳)の口コミ
論文合格者Bさん(27歳)の口コミ
Bさん
(匿名)

プロフィール

  1. 年齢  :27歳(転職時)
  2. 保有資格:公認会計士論文合格(転職時)
  3. 転職先 :大手監査法人 → 中小監査法人

コメント

コロナの影響によりリモートワークが増え、作業を投げっぱなしで放置されることが増えた。
作業した内容が合っているのかどうかも分からないまま仕事量が増えるため、全くスキルアップを感じない。
リモートワークが増えるのは仕方ないかもしれないが、自分はもっとスキルアップしたいと考えていた為、現場作業の多い監査法人に転職した。
BIG4にいるからといって、大きく成長することはできないと実感した。

理由③ 将来性がないため

論文合格者Bさん(34歳)の口コミ
論文合格者Bさん(34歳)の口コミ
Cさん
(匿名)

プロフィール

  1. 年齢  :34歳(転職時)
  2. 保有資格:公認会計士論文合格(転職時)
  3. 転職先 :大手監査法人 → 上場経理

コメント

コロナの影響によりリモートワークが増え、作業を投げっぱなしで放置されることが増えた。
作業した内容が合っているのかどうかも分からないまま仕事量が増えるため、全くスキルアップを感じない。
リモートワークが増えるのは仕方ないかもしれないが、自分はもっとスキルアップしたいと考えていた為、現場作業の多い監査法人に転職した。
BIG4にいるからといって、大きく成長することはできないと実感した。

会計士試験合格者が転職する際の注意点

会計士試験合格者が転職する際の注意点

試験合格者に対する企業のニーズは多く、転職される方も増えています。

しかし、実際に「転職先」を選ぶ際は、次の点に注意して下さい。

会計士試験合格者が転職する際の注意点
  1. 補習所/考査のための時間
  2. 修了考査のための「試験休暇」
  3. 会計士登録に必要な「実務要件」
  4. 実務要件が満たせたとしても、申請できない可能性

①~③は意識される方が多いと思いますが、④は意外と知られていないようですので、簡単に紹介します。

① 補習所/考査のための時間

補習所/考査のための時間

今は補習所がeラーニング主体のため、単位は難なく取得できるでしょう。(ライブのゼミ講義を除く)

しかし、考査のための勉強時間は必要です。

J1~J2の方は 特に、残業時間の少ない転職先を探すと良いかもしれません。

ただし、考査は協会へのお布施で何度も受験できるため、(金銭面で余裕のある方は)そこまで縛られる必要はないと思います。

② 修了考査のための試験休暇

修了考査のための試験休暇

「修了考査のための試験休暇が取れるかどうか」は、最も重視すべきポイントです。

試験休暇なしで合格する方もいると思いますが、(私の経験上)試験直前の追い込みは効果絶大でしたので、できれば休暇の取れる職場を選ぶべきだと思います。

特に  ここ数年の修了考査合格率は 50%前後と、難易度が高いです。

たとえ転職したとしても、十分な勉強時間が確保できずに不合格が続いてしまうと、組織内での居心地の悪さを感じてしまう可能性があります。

会計士登録を最優先される方は、休暇の取りやすい職場を選びましょう。

③ 会計士登録に必要な「実務経験」

会計士登録に必要な「実務経験」

実務経験年数が2年未満の場合、転職先で「実務要件が満たせるかどうか」も重要です。

「何が実務経験に該当するか」は金融庁が具体例を公開していますが、要約すると、次の職種であれば実務要件を満たせる可能性が高いです。

実務要件を満たしやすい転職先

  • 監査法人
  • 上場経理
  • 会計事務所
  • 税理士法人

監査法人であれば、確実に実務要件が満たせます。

上場経理・会計事務所・税理士法人もほぼ確実に実務要件が満たせますが、特殊な作業に従事する場合、実務要件を満たせない可能性があります。

細かな要件は、金融庁によるQ&Aをチェックしましょう。(参照:公認会計士の資格取得に関するQ&A

④ 実務要件が満たせたとしても、申請できない可能性

実務要件が満たせたとしても、申請できない可能性あり

BIG4や中小監査法人では、2年間の実務従事により、修了考査の受験生に対して「実務経験を認める書面」を発行する仕組みがあります。

一連のフローが仕組化されているため、上司へ押印申請をすれば、ほぼ確実に承認されます。(上司が承認しない、という事例は聞いたことがありません)

しかし 監査法人以外の組織では、これらが仕組化されていない可能性があります。

会社によっては、「金融庁に提出する正式な書面に押印する事にリスクを感じる」という人もいますから、実務経験が満たせているのに申請書が提出できないという可能性もゼロではありません。

監査法人とそれ以外の組織とでは、会計士業界への理解度が異なりますので、この点は必ず転職前に確認してください。

会計士試験合格者にオススメの転職先

会計士試験合格者にオススメの転職先

公認会計士の転職先は、計13種あります。(関連記事:公認会計士の転職先を全て見せます。【監査法人から、その先へ】

そのうち、会計士試験合格者の方が転職をする際の選択肢は、4つに絞られます。

試験合格者の主な選択肢
  1. 中小監査法人
  2. 上場経理
  3. 会計事務所
  4. その他

それぞれ詳細解説します。

① 中小監査法人

私が1番オススメできるのは、中小監査法人です。

「BIG4以外の監査法人」にネガティブなイメージを抱く方がいるかもしれませんが、それは勿体ないです。

私自身も独立後に(非常勤職員として)中小監査法人で働いていますが、驚くほど働きやすいです。

中小監査法人のメリット
  • 残業時間の少ない法人が多い
  • BIG4に比べて監査手続が本質的であり、「監査実務」の学習に役立つ
  • 試験休暇がほぼ確実に取れる
  • 実務要件が確実に満たせる
  • 会計士登録費用/年会費も負担してもらえる

たとえば 私の契約していた中小監査法人では、4月~5月以外は残業がほぼゼロでした。(嘘だと思うかもしれませんが、本当です。)

形式的な作業が少なく、精神的ストレスもなく、本当に素晴らしい法人だと感じます。

もちろん、引き続き会計監査に従事することができますから、修了考査「監査実務」の学習にも大きく役立ちます。

なお  中小監査法人での働き方については、次の記事でまとめています。

近年はBIG4から中小法人に転職する会計士が多いそうで、会計士の転職先として人気が出てきたのだと思います。

② 上場経理

2番目にオススメできるのが、上場経理です。

経理は、監査法人からのセカンドキャリアとして 最も多く選ばれる転職先です。(参照:JICPA「組織内会計士に関するアンケート最終報告書」

上場経理のメリット
  • 比較的、残業時間の少ない転職先が多い
  • 実務要件を満たせる可能性が高い
  • 監査以外のスキルアップが見込める
  • 潰しが効く

監査法人での経験が浅い方でも、経理部で決算実務に従事することにより、決算業務一連のスキルが身に付きます。

監査ではスコープから外れていた細かな税法(消費税・源泉税・印紙税など)についても、学ぶ機会が増えるでしょう。

ただし、監査業務からは退くことになりますから、「監査実務」の知識が少し薄れてしまうかもしれません。

とはいえ 残業時間が少ない傾向にあり、修了考査対策に時間を割くことができますから、中小監査法人に次いでオススメの転職先です。

③ 会計事務所

3番目にオススメなのが、会計事務所です。

会計事務所では、主に「税務」を経験することができますが、事務所によっては「FAS」も経験できるケースがあります。

会計事務所のメリット
  • 実務要件を満たせる可能性が高い
  • 税務のスキルアップができる
  • FASコンサルにも従事できるケースあり

FASとは、財務アドバイザリーサービスの事であり、たとえば「M&Aコンサルティング」はFASの代表的な業務の1つです。

FASの説明は少し長くなってしまう為、次の記事で解説しています。

監査からは遠ざかりますが、より幅広い経験を積むことができるため、若手会計士にも人気のようです。

ただし、会計事務所は(一般的には)組織規模が小さいため、組織環境の違いは知っておくべきです。

※ 修了考査の前後(12月~1月)辺りで忙しくなる傾向にあるため、この点もご注意ください。

会計事務所での働き方について、詳しくは次の記事で解説しています。

④ その他

その他、会計士の転職先は全13種あります。

「試験休暇の有無」や「実務要件」に拘らない方であれば、とても幅広い選択肢から選ぶことができます。

自信のある方は、より多くの選択肢の中から 転職先を探してみるのも良いかもしれません。

会計士試験合格者にオススメの転職エージェント

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求人数約5,000件約2,000件約1,500件約1,500件約500件
対象年代20代~30代20代~50代20代~30代20代~30代20代~50代
対応エリア・関東 
・近畿 
・愛知県
・静岡県
全国全国全国全国
設立1973年2015年2002年1990年2000年
資本金21億210万円2億2740万円6000万円5億8600万円3400万円
対象者公認会計士限定会計・税務会計系全般管理部門全般会計事務所
得意領域公認会計士・経理   
・会計事務所
・監査法人 
・コンサル 
・会計  
・税務  
・コンサル
・FAS   
・監査法人 
会計事務所
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会計士試験合格者が転職をする場合は、マイナビ会計士1択です。

なぜなら、唯一の会計士専門エージェントであり、試験合格者向け求人数がNo.1だからです。

以上、会計士試験合格者の方向けの転職先でした。

私は、BIG4に長年居続けることは非常にリスクが大きいと思っています。

早期の転職はむしろチャンスだと思いますので、早期の情報収集をオススメします。

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