中小監査法人への転職が、意外とオススメな理由【働いてみた感想】

中小監査法人への転職が、意外とオススメな理由【働いてみた感想】

公認会計士・税理士の藤沼です。

EYで約5年働きましたが、監査への苦手意識からコンサル会社に転職しました。

今は独立開業し、時間の空いた時に中小監査法人で非常勤職員として関与しています。

EYを辞めてからはもう監査に関わることはない、と思っていましたが、いざ中小監査法人で働いてみると驚くほど働きやすいと感じました。

BIG4から転職した人は、カルチャーショックを受けると思います。

そこで本記事では、私の経験をもとに「中小監査法人で働いてみた感想」を紹介します。

この記事を書いた人

1986年生まれ(37歳)
公認会計士税理士

2014年 EY新日本監査法人 入社
2018年 中堅コンサル事務所 入社
2019年 藤沼会計事務所 開業
2020年 アカウントエージェント株式会社 代表


目次

中小監査法人と大手監査法人の違い

中小監査法人と大手監査法人の違い

中小監査法人と大手監査法人、それぞれの組織で働いてみると、多くの違いに気づかされました。

ここでは、中小監査法人・大手監査法人の一般的な違いを紹介します。

中小監査法人・大手監査法人の違い

中小監査法人大手監査法人
法人規模5~1,000名3,000~6,000名
クライアント小~大中~大
海外展開小規模大規模
残業時間少~多
年収
年齢層やや高め幅広
非常勤職員
監査品質
調書主に紙電子

中小監査法人は、BIG4から転職してきた会計士の割合が多いため、年齢層は高くなりやすい傾向にあります。(もちろん20代会計士の多い法人もありますが)

残業がほとんど発生しない法人があったりと、残業時間も法人によって大きく異なります。

実際、私が働いていた監査法人では、四半期であってもほぼ残業がゼロでした。

また意外かもしれませんが、年収水準はむしろ大手監査法人よりも中小監査法人の方が高い傾向にあります。

これは詳細にリサーチした結果があるので、後述します。

中小監査法人に転職するメリット

中小監査法人に転職するメリット

中小監査法人に転職するメリットは、かなり多いです。

ここでは、大手・中小の両方を経験した私の体験をもとに、中小監査法人に転職するメリットを紹介します。

中小監査法人に転職するメリット
  1. 無駄な作業が少ない
  2. ワークライフバランスが充実しやすい
  3. マネージャー・パートナーに昇格しやすい
  4. 副業が認められやすい
  5. 年収が上がりやすい

メリットを紹介するにあたって、求人票等のリサーチもしていますが、上記は実際に私が感じた大きなメリットです。

ちなみに、上記メリットを大手監査法人と比較した表も載せておきます。

中小監査法人大手監査法人
無駄な作業少ない多い
ワークライフバランス良い悪い
昇格比較的容易困難
副業認められやすい認められにくい
年収

では、それぞれ解説します。

① ムダな作業が少ない

ムダな作業が少ない

中小監査法人で働いてみて、最も強く感じたメリットです。

BIG4では海外ファームの要請により、膨大なバウチングを求められたり、(監基報の要求事項を満たすための)大量の文書化作業を求められたりします。

はっきり言えば、これらの作業は「会社員」としての力は身につくものの、「会計士」としての力は身につかないと感じます。

一方、中小監査法人は海外の大手ファーム(BIG4)に属さないため、このような(ある種、ムダとも思える)作業が発生しません。

これによって、より本質的な業務に従事することができ、監査人としてのスキルアップ・勘所が身につくなどのメリットが得られるでしょう。

私はEY時代に監査が嫌いでしたが、中小監査法人で働いてみると、監査が少し好きになりました。

受験生時代に学習した「リスクアプローチ」の意味を、改めて思い出すことでしょう。

② ワークライフバランスが充実しやすい

ワークライフバランスが充実しやすい

大手監査法人は、法人全体として残業時間が多く、BIG4=激務という印象が強いでしょう。

一方、中小監査法人はムダな作業を求められず、また組織の方針として「ワークライフバランスを重視」する法人もあることから、ワークライフバランスが大きく改善できるケースがあります。

私が働いていた中小監査法人でも、期末監査の時期以外はほぼ残業がありませんでした。

調べてみると、このような方針の中小監査法人はかなり増えているようです。

私は勝手に「監査法人=激務」であると思い込んでいましたが、実は「BIG4=激務」であることに気付かされました。

以前は「監査法人=激務」というイメージでしたが、実際働いてみると、そのイメージはガラッと変わりました。

なお、「ワークライフバランス重視である」ということは、求人票には記載されづらいようです。

というのも、求人票に記載してしまうと「仕事をしない人が集まってしまう」というリスクがあるからです。

そのため、転職エージェント等の外部機関を利用し、間接的に情報を聞き出すのがオススメです。

その理由は「クライアントの目があるから」そして「仕事をしない人が集まってしまうから」です。

ワークライフバランス重視だからと言って、仕事をサボって良いわけではありませんから、そこは勘違いのなきよう…。

③ マネージャー・パートナーに昇格しやすい

マネージャー・パートナーに昇格しやすい

「監査法人でマネージャー・パートナーを目指したい」

そんな方は、中小監査法人がオススメです。

なぜなら、中小監査法人なら早ければ30代でパートナーになる人も多いからです。

たとえば、中小の監査法人アヴァンティアのパートナー陣はとても若いですよね。

 中小監査法人パートナー 一覧

中小監査法人のパートナー
(引用:監査法人アヴァンティアHP)

私は2013年に公認会計士試験に合格しましたが、既に中小監査法人でパートナーになっている後輩がいます。

BIG4だと早くても40代(かつ、非常に狭き門)ですから、中小監査法人は間違いなく昇格がしやすい環境です。

昇格が早ければその分、公認会計士として多くの経験を積めます。

その経験は、社外からも高く評価されるはずです。

  • 「法人内でパートナーを目指したい」
  • 「社外から評価されるキャリアを積みたい」
  • 「生涯年収を増やしたい」

という方には、中小監査法人がおすすめです。

なお、中小監査法人では「マネージャー」というポジションを設定しないケースがあるため、役職については求人に応募する前に各法人に確認しましょう。

④ 副業が認められやすい

副業が認められやすい

中小監査法人では「副業」を認めているケースがあります。

それどころか、私の契約先の中小監査法人では副業を推奨しているほどでした。

BIG4はクライアント数が多く、利害関係者があまりにも多すぎるため、株式投資は全面禁止、仮想通貨なども社内の承認を得るにはハードルが高いと聞きます。

副業をするには、あまりにもしがらみが多く、実質的には副業はほぼできないでしょう。

一方、中小監査法人ではこのようなしがらみが少なく、また残業時間の少ない法人もあることから、副業に時間を充てることが比較的容易です。

また、私の契約していた中小監査法人では、会計事務所の開業まで認めていました。

驚きですよね。

それほどまでに、大手と中小には環境に大きな差があるのです。

⑤ 年収が上がりやすい

年収が上がりやすい

意外に思う方もいると思いますが、中小監査法人は、大手監査法人に比べて平均年収が高いです。

中小監査法人での年収を、あらゆる角度から調べてみた。の記事で分析過程を掲載していますが、ここではその結果だけを載せておきます。

大手・中小監査法人の年収比較

東京東京以外全体
大手監査法人676万639万648万
中小監査法人741万699万716万
(大手転職エージェント求人データから抽出)

上記は、大手転職エージェントの求人票を集計し、大手・中小の別に平均年収を比較したデータです。

中小監査法人の年収は、大手監査法人の年数の約10%増であることが分かります。

BIG4はブランド力があり、毎年新人を多く採用できることから、給与が搾取されやすいでしょう。

一方、中小監査法人は人件費を上げることで職員を増やさざるを得ず、また事務所等の間接コストも比較的安価に抑えられることから、職員への還元分が増える傾向にあります。

先述の「昇格のしやすさ」も相まって、中小監査法人に転職することで、年収は上がりやすいのです。

中小監査法人に転職するデメリット

中小監査法人に転職するデメリット

中小監査法人に転職するメリットは大きいですが、デメリットも事前に知っておきましょう。

中小監査法人に転職するデメリット
  1. 最先端の監査実務からは遠ざかりやすい
  2. 監査調書は紙ベースが多い
  3. IPOに触れる機会が減りやすい

それぞれ解説します。

① 最先端の監査実務からは遠ざかりやすい

最先端の監査実務からは遠ざかりやすい

ご存じの通り、BIG4の監査品質は業界トップです。

中小監査法人は人員数が少ないため、BIG4に比べると英知が集まりづらく、高い水準の品質を維持することは難しくなります。

そのため、監査ロジックをゴリゴリに詰めたい方や、高度な会計処理に触れたい方は、この点でデメリットを感じるでしょう。

② 監査調書は紙ベースが多い

監査調書は紙ベースが多い

BIG4では、各法人で電子化された監査ソフトが用いられ、監査調書もデータベース上で管理されます。

しかし、大半の中小監査法人では監査ソフトが用いられないため、監査調書の保存形式は「紙」が一般的です。

そのため、Excelで作成した監査調書を打ち出したり、書面調書への押印といった作業が必要になります。

調書の形式にこだわりのある方は、デメリットに感じるかもしれません。

③ IPOに触れる機会が減りやすい

IPOに触れる機会が減りやすい

中小監査法人はIPOクライアントが少なく、IPO案件に触れる機会は減ります。

近年はランキングにやや変動が見られるものの、上位はBIG4が独占し、準大手監査法人まででほぼ全てのIPOを独占しています。

参考までに、下記は監査法人のIPO件数ランキングです。

監査法人IPO成功件数ランキング

順位監査法人名201920202021
1位EY新日本有限責任監査法人22件27件33件
2位有限責任監査法人トーマツ21件10件19件
2位有限責任あずさ監査法人19件22件19件
4位太陽有限責任監査法人8件11件17件
5位PwC京都監査法人1件1件8件
6位仰星監査法人2件5件7件
7位東陽監査法人1件6件
8位PwCあらた有限責任監査法人5件3件4件
9位三優監査法人4件4件2件
9位監査法人A&Aパートナーズ2件1件2件
11位ひびき監査法人2件1件
11位監査法人東海会計社1件1件
11位如水監査法人1件
11位千葉第一監査法人1件
11位KPMG LLP1件
11位EY LLP1件
11位アヴァンティア1件
11位東邦監査法人1件
その他2件5件

人員数としても蓄積されたナレッジとしても、IPOならBIG4である、との認識が周知されているはずです。

IPOに積極的に関わりたい方は、BIG4または準大手監査法人を選ぶと良いでしょう。

中小監査法人に転職する際の「注意点」

中小監査法人に転職する際の「注意点」

中小監査法人への転職を考える際は、次の点に留意すると良いでしょう。

中小監査法人に転職する際の注意点
  1. 準大手監査法人は、激務となる傾向あり
  2. 法人によって、出張が多いケースあり
  3. 監査+アドバイザリーという文言には注意

それぞれ解説します。

① 準大手監査法人は、激務となる傾向あり

準大手監査法人とは、中小監査法人の中でも規模の大きい監査法人5社をいいます。

準大手監査法人5社
  • 太陽有限責任監査法人
  • 仰星監査法人
  • 東陽監査法人
  • 三優監査法人
  • PwC京都監査法人

これらの監査法人は、組織規模が大きく、BIG4のように激務となりやすい傾向にあるようです。

そのため、準大手監査法人に応募する際は、仕事内容・残業時間など労働環境を事前に確認しておく必要があるでしょう。

② 法人によって、出張が多いケースあり

出張が得意ではない方は、こちらも事前に確認すべきでしょう。

小さな規模の監査法人では  クライアントを選ぶことができず、地方クライアントを多く抱えるケースがあります。

私が目にしたケースでは、「1年間の半分は出張」という中小監査法人もありました。

とはいえ、こちらは応募前に対策することが可能です。

転職エージェント等から法人パンフレットを入手することで、クライアントリストを閲覧できるケースが多いからです。

事前にクライアントを知ることで、ある程度、出張の多さは予測できるでしょう。

転職してから「失敗」では遅いですから、事前調査をおすすめします。

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③ 監査+アドバイザリーという文言には注意

中小監査法人の求人を見ていると、「監査とアドバイザリーを経験できる」といった文言を目にすることがあります。

私も、実は転職活動をしていた際、この文言に惹かれて中小監査法人のカジュアル面談に行ったことがありました。

しかし、よくよく話を聞いてみると「メインは監査、たまにアドバイザリー案件が来たら関与できるかも」という程度でした。

確かにアドバイザリーに関与できる機会はあるようでしたが、関与できる「頻度」は法人によって異なりますから、アドバイザリーに関与したい方は事前に確認すべきです。

そのため、どうしてもアドバイザリーへの関与割合は低くなります。

確かにアドバイザリーに関与できる機会はあるようでしたが、関与できる「頻度」は事前に確認すべきでしょう。

なお、アドバイザリーに深く関与したいという方は、監査法人のアドバイザリー部門FASへの転職も検討されると良いでしょう。

中小監査法人への転職に関してよくある疑問

中小監査法人の年収に関してよくある疑問

そのほか、中小監査法人への転職に関するよくある疑問をまとめてみました。


中小監査法人は、USCPAでも転職できますか?

USCPAを採用している中小監査法人もありますが、数としては少なめです。

中小監査法人では、監査トレーニーを募集していますか?

募集しているケースがあります。
大手監査法人よりも採用倍率が低く、オススメです。
監査トレーニーに関しては、監査トレーニーの求人の探し方と、内定率を高める方法が参考になります。

資格なしでも中小監査法人に入社できますか?

監査トレーニー以外の無資格者はほぼ採用されません。
BIG4とは違い、事務職員やアシスタントの割合は非常に低いです。

中小監査法人では、新卒採用をしていますか?

原則、新卒採用はしていません。
中小監査法人では「公認会計士」または「監査トレーニー」の採用がほとんどだからです。

中小監査法人では、監査未経験者も採用していますか?

監査未経験であっても、会計士(試験合格者)を採用している法人はあります。
ただし、年齢制限が入る可能性が高く、40代以降の転職難易度は高いはずです。

ホワイトな中小監査法人の探し方

ホワイトな中小監査法人の探し方

ワークライフバランスを求めて中小監査法人への転職を決意する方も多いと思うので、ホワイトな中小監査法人の探し方のポイントを紹介します。

ホワイト求人を探す際のポイント
  • 「離職率」を確認する
  • 「行政処分」の履歴を確認する
  • クライアントリストを入手する

それぞれ解説します。

「離職率」を確認する

「離職率」は最も重要です。

当たり前ですが、良い組織なら人は辞めないからです。

離職率は、その組織での働きやすさを示すと言っても過言ではありません。

実際、私が働いていたホワイトな中小監査法人は、2~3年で1人辞めるかどうかという離職率でした。(離職率としては2~3%でしょう)

「働きやすい」という主観的・定性的な情報ではなく、「離職率」という客観的・定量的な情報のほうが、よっぽど信憑性も高いでしょう。

ただし、離職率は求人票には明記されることが殆どないため、転職エージェントから聞き出す必要があります。

「行政処分」の履歴を確認する

金融庁に目を付けられているような監査法人は、避けたほうが良いかもしれません。

なぜなら、品質改善の観点から残業が増えていく可能性があるからです。

また、過去に行政処分を受けている監査法人では、監査調書がボロボロ…というケースもあります。(実際に目にしたことがあります)

パートナーでない限り対外的な責任を負うことはありませんが、組織内での責任は生じます。

そのため、ホワイトな監査法人を探す際には、行政処分の履歴にも目を通しておくと良いでしょう。

クライアントリストを入手する

ご存じの通り、監査チームの働き方は、監査クライアントのリスクに依存しやすいです。

リスクの高いクライアントを多く有している監査法人では、必然的に残業時間も増えます。

そのため、事前にクライアントリストを入手し、リスクが高い(と考えられる)クライアントが無いか、確認しておくと良いでしょう。

なお、クライアントリストは(上場クライアントを除き)一般には公開されていませんが、転職エージェント向けにパンフレットが作られているケースがあります。

こちらも、転職エージェント経由でパンフレットを入手すると良いでしょう。

中小監査法人に強い転職エージェント

中小監査法人に強い転職エージェント

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