公認会計士・税理士の藤沼です。
以前、監査法人の離職率を、高い精度で分析してみた。で監査法人からの転職率を調査したところ、5年で4割・10年で7割の会計士が監査法人を辞めることが分かりました。
会計士の方なら体感で分かると思いますが、監査法人の離職率はかなり高いです。
かくいう私も、4年半でEYからFASに転職しました。
しかし、現職の人にとっては「なぜ転職するの?」と素朴な疑問を感じるかもしれません。
そこで今回は、私たち転職した会計士の「転職理由」を、アンケート結果をもとにご紹介します。
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公認会計士の転職理由【アンケート調査結果】


会計士の転職理由については、公認会計士協会(組織内会計士ネットワーク)のアンケート調査結果が公表されています。
当アンケート調査では、「ポジティブな理由」及び「ネガティブな理由」の2つに分けて回答を得ているため、それぞれ回答を見てみましょう。
① ポジティブな転職理由【アンケート結果】
選択肢 | 回答(件) | % |
---|---|---|
他組織・業種への興味 | 100 | 32.4% |
今後のキャリアアップ | 91 | 29.5% |
勤務時間の安定 | 57 | 18.4% |
収入の増加 | 40 | 12.9% |
その他 | 21 | 6.8% |
合計 | 309 | 100% |
※ アンケート結果では 合計値が100%を超えていたことから、母数を100%となるよう計算式を修正しました。
「他業種への興味」と「今後のキャリアアップ」がそれぞれ全体の約3割を占めており、次いで「勤務時間の安定」を求める方が全体の約2割となっています。
「監査だけでは面白味がない」「監査以外の経験がしたい」という方が大多数のようです。
また、会計士は基本どの業種でも年収が高いことから、「収入の増加」を目的としている方は約1割と少数です。
ただし 会計士が転職した場合、多くのケースで年収は増加する傾向にあります。
② ネガティブな転職理由【アンケート結果】
選択肢 | 回答(件) | % |
---|---|---|
形式的な作業が優先される為 | 90 | 20.0% |
監査業界の将来への不安 | 80 | 17.8% |
指導的機能の発揮が制限される為 | 67 | 14.9% |
評価・昇給への不満 | 52 | 11.6% |
昇格ポジションの不足 | 46 | 10.2% |
所属事務所の持続可能性 | 35 | 7.8% |
基準等の変化の速さ | 23 | 5.1% |
人間関係の希薄さ | 14 | 3.1% |
その他 | 42 | 9.4% |
合計 | 449 | 100% |
「監査が形式的である」という回答が最も多く、次いで「監査業界の将来への不安」「指導的機能が発揮できない」との不満が多い結果となりました。
確かに、私がEYにいた頃も「大量のバウチング」「膨大な量のテンプレート文書化」に追われ、単調で面白味を感じなくなっていました。
そんな中で「監査しか出来ない」というキャリアへの不安から、FAS(コンサル)への転職を決めました。
一方で、評価や年収・ポジションへの不満度は小さく、相対的に「キャリア」への不安が大きくなり、転職される方が多いようです。
③ アンケート結果に残る「違和感」
以上が、公認会計士協会による「転職理由」のアンケート結果です。
しかし、これを見て私は大きな「違和感」を感じます。
なぜなら、私が転職した大きな理由となる「激務だった」「人間関係がキツかった」という回答が無いのです。
私の周りの転職した会計士に聞いても、「仕事がキツかった」と答える方は多く、このアンケート結果には違和感が残るのです。(あくまで個人の感想です)
私なりに推察するところ、「公式的なアンケートに、本音(ある種の自分の負い目)を書けなかったのではないか?」と考えます。
そこで 本当の転職理由を探るべく、口コミサイトを調査してみました。
公認会計士の転職理由【口コミ】


今回利用するのは、「OpenWrok」という口コミサイトです。
OpenWorkとは、いわゆる「企業版口コミサイト」であり、実際にその企業に現職されている方(又は退職された方)による口コミ評価が記述されています。
実際に読んでみるとかなり生々しい記述が多く、転職理由の他にも、「働きがい・ワークライフバランス・年収」などが書かれています。
実感値と比べてもあまり違和感がなく、このサイトでの口コミが「本音」に近いと感じました。
なお、本記事では以下の4法人(アシュアランス部門)からの転職者に絞り、「転職理由」を掲載します。
- EY新日本有限責任監査法人
- 有限責任あずさ監査法人
- 有限責任監査法人トーマツ
- PwCあらた有限責任監査法人
もちろん監査法人以外から転職される方もおられるのですが、全企業から抽出するのは困難のため、上記に限定しました。
では、ポジティブな転職理由から見てみましょう。
公認会計士のポジティブな転職理由【口コミ】


表現に細かな違いはあるものの、ポジティブな転職理由は 概ね次の4パターン に当てはまりました。
- 監査以外の経験を積みたい
- クライアントの役に立ちたい
- 作る側を経験したい
- 独立へのステップとして
それぞれ紹介します。
① 監査以外の経験を積みたい
ご存じのとおり、監査法人では会計・監査のみに従事します。
そのため、「飽きた」という回答が非常に多いです。
IPOや国際クライアントなど、多様なクライアントに関わっていれば別かもしれませんが、固定された監査チームで長期間働いていると「他業種への興味」が湧いてくるようです。
また、「せっかく会計士資格を取得したのだから、もっと広い世界を見たい」といったキャリアアップの視点での回答も 多く見られました。
私も監査法人からFASへ転職しましたが、監査と親和性があるものの、とても新鮮味があり 知的好奇心を刺激される毎日でした。
② クライアントの役に立ちたい
「やりがいが欲しい」「クライアントに喜ばれたい」という気持ちから、FAS等のコンサルに転職したという方が多くいました。
ご存じのとおり、監査をして感謝されるようなシチュエーションは少ないでしょう。
しかし、税務顧問やコンサルでは クライアントの利益につながるサービスを提供するため、直接お礼を言われる機会が多いです。
私もコンサルに転身しましたが、税務上有利なスキームを提案できたり、クライアントの求める財務モデルを提供できた時は、非常に感謝され「やりがい」を強く感じました。
もちろん その分頼りにされますから、自己研鑽も進んで行っていました。
③ 作る側を経験したい
監査法人でクライアントの監査をするにつれ、「決算書を作成する側を経験したくなった」という回答も多くありました。
確かに、私たちは外部から(そして重要性の高い部分だけ)書類を閲覧しますから、実際どのようなフローで行われているのか分かっていない部分があります。
上場会社の経理では、監査法人での監査経験が高く評価されますから、ナレッジを自社に還元しながらスキルアップすることができるでしょう。
また、「コンサルと監査の違いがあまり分からない」という意見もあり、経理を選ばれる方が多くいました。
④ 独立へのステップとして
他の転職理由に比べると少ないですが、「独立のため」として計画的に転職をされている方もいました。(そして多くの場合 3~5年で退職し、独立しています)
監査法人からいきなり独立するにはハードルが高いため、会計事務所・FASを経験し、独立後のサービスラインに役立てるケースが多いです。
私自身も、独立のために転職をしました。
転職先での経験は 今の仕事に大きく役立っており、自らの収入に直結しています。
公認会計士のネガティブな転職理由【口コミ】


ネガティブな転職理由には、概ね次の4パターン がありました。
- 激務・プレッシャーが強い
- 人間関係に疲れた
- 昇格できる可能性が低い
- 監査自体がつまらない
こちらも、それぞれ簡単に内容を見てみます。
① 激務・プレッシャーが強い
「とにかく今の仕事がツラい」という回答が、最も多く寄せられていました。
以前に比べれば残業規制がかかっているとは言え、繁忙期はかなりのハードワーク。
監査では 上司やクライアントからのプレッシャーが強く、疲弊してしまう方が多いようです。
私が監査法人を辞めた理由の1つも、コレでした。
また、変な話ですが、私のブログは毎月300名ほどの方が「監査法人 辞めたい」というワードで検索して来られています。
転職活動をしていなくとも、潜在的に「辞めたい」と感じている方が多いのでしょう。
私たち会計士の仕事は、監査だけではありません。
大手監査法人を除けば、自分のペースでできる仕事は山ほどあります。
② 人間関係に疲れた
監査法人は少し変わった方が多い気がします。(私も人のことを言える立場にありませんが)
チーム単位で動くため、苦手な上司と同じチームになると、人間関係で気疲れしてしまう方が多いようです。
また ① の「プレッシャーが強い」にも関連しますが、ややピリピリした雰囲気が合わないと感じ、転職される方もおられるようです。
③ 昇格できる可能性が低い
「マネージャーへの昇格が厳しい」「パートナーになるのは無理だと判断した」といった理由から、転職された方も一定数おられました。
周知のとおり、大手監査法人では昇格要件が非常に厳しいです。
シニア3~4年目頃になると マネージャー昇格を意識しますが、実は転職のタイミングとしても最も良いのがこの時期です。
転職市場での需要の多さを知り、「内部で昇格を目指すよりも、評価してくれる会社に転職する」といった視点に切り替わる方が多いようです。
④ 監査自体がつまらない
「監査がつまらない」というのは、本当によく耳にします。
会計士協会のアンケート結果にもありましたが、「作業が形式的」なので当然かもしれません。
とはいえ、これはBIG4に限った話だと感じます。
例えば私は(非常勤職員として)中小監査法人で働いていますが、BIG4ほどの「形式さ」は感じません。
膨大な「文書化」「バウチング」は求められませんし、考えながら作業ができます。
そのため、実は「監査がつまらない」のではなく、「BIG4がつまらないのでは?」と個人的に感じます。
【注意】転職には適したタイミング・時期がある


転職理由にかかる「アンケート結果・口コミ」は以上ですが、1つ注意点です。
あまり記述は無いものの、「時期を逃さないために転職した」という方も多いと考えられるのです。
厳密には「転職理由」ではなく「転職を考えたきっかけ」に該当するため、記述が多くないものと推察されます。
私たち会計士の需要はとても多く、30代までであれば、かなり選択肢は多いです。
しかし、40代になると求人数は激減し、転職者も全体の1割まで減少します。
手遅れになる前に、(転職しないにしても)キャリアを考えておくべきでしょう。
キャリア構築の第一歩は、「選択肢」を知ること。


私たち会計士のキャリアは、非常に幅が広く、「何から考えれば良いのか分からない」という状況になりがちです。
そこでオススメなのが、まず「選択肢」を知ることです。
私たち会計士の転職先は、大きく13種に分けることができます。
どのような選択肢があり、どのような特徴があるのかを知ることで、少しずつ未来の自分が見えてくるでしょう。
とはいえ それでも調べるには多くの時間を要します。
自分で調べる時間を節約したい方は、転職エージェントに直接聞いてしまうのも良いでしょう。
【迷ったら1択】公認会計士におすすめの転職エージェント【比較20社】
仕事をしながらキャリアを考えるのは、結構手間がかかります。
しかしキャリア設計は人生に関わる大切な作業ですから、ぜひ効率的な方法で進めてみてくださいね。
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