公認会計士・税理士の藤沼です。
EYでの激務に疲れ、コンサル系の会計事務所に転職しました。
今回は、「ワークライフバランスの取れる会計士の転職先」について紹介します。
20代後半~30代になると、ライフイベントを見据え、ワークライフバランスの取れる転職先を探される方が多いようです。
本記事では、そんな方の疑問・不安を解消できるような情報を、客観的証拠をもとに紹介します。
ワークライフバランスが取れる会計士の転職先


会計士の転職先は全13種ありますが、このうちワークライフバランスの整いやすい転職先は 次の4種です。
- 事業会社の経理
- 上場会社の内部監査
- 一部の会計事務所
- 一部の中小監査法人(オススメ)
その他、全13種の転職先については公認会計士の転職先を全て見せます。の記事で全て紹介しています。
それでは、それぞれ解説します。
① 事業会社の経理
会計士がワークライフバランスを充実できる転職先として、最もよく知られるのが「経理」でしょう。
これは私の主観ではなく、日本公認会計士協会によるアンケート調査結果からも明らかです。
監査法人から転職した会計士のワークライフバランス満足度


監査法人を経由して企業内会計士に転職した人のうち、「ワークライフバランスに満足している」と回答した会計士は全体の75%にも達しています。
一方、日本公認会計士協会が2011年に実施した「監査法人職員向けアンケート結果」を見ると、監査法人職員のワークライフバランスはあまり良くありません。
監査法人所属の会計士のワークライフバランス満足度
選択肢 | 回答件数 | 割合 |
---|---|---|
バランスが取れている | 610 | 38.7% |
どちらともいえない | 479 | 30.4% |
バランスが取れていない | 486 | 30.9% |
合計 | 1575 | 100.0% |
アンケートの実施時期が少し異なりますが、事業会社等へ転職することで、ワークライフバランスに満足している人の割合が2倍になっています。
上記アンケート調査結果から分かるとおり、経理への転職によりワークライフバランスが改善されることは明らかでしょう。
更にワークライフバランスを重視するのであれば、非上場会社(かつ会社法上の大会社)を選ぶことで、金商法による規制を受けず大会社での安定的な働き方を享受しやすいでしょう。
また、ワークライフバランスが取れた理由として、次のような理由が挙げられます。
- 平時の残業時間が5~10時間/月程度である
- 繁閑が予め予測できるため、休暇がとりやすい
- 監査法人のようなピリピリ感がない
ただし、これはあくまで全体の傾向であり、全ての企業で残業がなくなるわけではありません。
中には監査法人以上に残業が増えるケースもありますから、応募する前に転職エージェント等に確認してください。
なお、経理への転職については経理に転職した会計士の「年収」と「キャリア」を徹底解説で全てまとめています。
② 上場会社の内部監査
内部監査部門は、ワークライフバランスが取りやすい傾向にあります。
特に、上場企業は(IPOベンチャーに比べると)ビジネスが安定しており、新たな取引等のリスクを洗い出すシチュエーションは少ないでしょう。
そのため、内部監査ではルーティンワークが多く、ワークライフバランスが取れるケースが多く散見されます。
ただし、注意が必要です。
内部監査担当として会計士を募集する企業では、逆に激務になるケースもあります。
なぜなら、そもそも会計士を採用したいというニーズの背景に、新たなビジネスの創出やM&Aによる事業拡大が見えるケースが多いからです。
つまり、単純な欠員補充のための採用ではなく、1つのプロジェクトをハンドリングさせるために会計士を採用するケースがあるのです。
また、経理部以上に他部門とのコミュニケーションが要求されやすいため、コミュニケーション能力もある程度必要になります。
その他、内部監査への転職にはデメリットが多いため、応募前に仕事内容・キャリアなどをしっかり考えるべきでしょう。
内部監査への転職に関しては、内部監査に転職した会計士の「年収」「キャリア」「働き方」で詳しく解説しています。
③ 一部の会計事務所
会計事務所は基本的に規模が小さく、所長の意向により「残業時間」にバラツキがあります。
まったりと(ほぼ残業なく)働ける会計事務所もあれば、年中激務の会計事務所も存在しています。
ただし、規模の小ささ故に「人が辞めた場合、いきなり忙しくなる」というリスクが常にあります。
内定を得た時点ではワークライフバランスが取れていたとしても、その後忙しくなってしまう可能性もありますから、この点には留意しておくべきです。
また後述しますが、転職時の年収はやや下がる傾向にあります。
④ 一部の中小監査法人
個人的にオススメなのが、中小監査法人です。
よく「監査=激務」という誤解をしている人がいますが、激務なのはBIG4であり、監査法人ではありません。
実際、私が(非常勤として)働いていた中小監査法人も、期末監査以外はほとんど残業がありませんでした。
このように、中小監査法人の中にはワークライフバランスを重視する法人がいくつかあるのです。
中小監査法人では、BIG4のような細かな文書化・膨大な量のバウチングが求められませんから、ストレス負担もかなり軽減されます。
私はEY時代に監査が嫌になって転職しましたが、中小監査法人で働いてみて「意外と監査も良いかも」と思うようになりました。
更に、副業を認めている中小監査法人もあるため、空いた時間を副業に充てる…などの選択肢も生まれるでしょう。
カルチャーショックを受ける方も多いはずです。
個人的に、オススメの転職先です。
中小監査法人への転職について、詳細は中小監査法人への転職が、意外とオススメな理由【働いてみた感想】で解説しています。
ワークライフバランス重視で転職すると、年収はどうなる?


上記で紹介した4種類の転職先について、それぞれ平均年収を算出しました。
その結果は、次のとおりです。(BIG4の平均年収も参考に併記しています)
各転職先の平均年収
職種 | 全国 | 東京 |
---|---|---|
経理 | 689万円 | 736万円 |
内部監査 | 700万円 | 691万円 |
会計事務所 | 609万円 | 671万円 |
中小監査法人 | 716万円 | 741万円 |
大手監査法人(アシュアランス) | 648万円 | 676万円 |
上記は、大手会計系転職エージェントの公開している求人票を抽出し、平均年収を集計したデータです。
この結果から分かるとおり、BIG4からの転職者は年収が上がります。(ただし、会計事務所への転職者は除く)
以上のことから、ワークライフバランス重視で転職した場合であっても、年収はほぼ下がらないということが分かりました。
「経理や中小監査法人は年収が低い」という誤解をしている方も多いですが、むしろ年収は上がるのです。
なお、上記数値の細かな算出過程や、その他の職種の平均年収など、会計士の年収については会計士が転職すると、年収はいくらになる?【全業種調べてみた】で詳細解説しています。
非常勤という選択肢もある。


近年は、中小監査法人での非常勤職員に転向する会計士が増えています。
というのも、先述のとおり中小監査法人ではムダな作業が少ない上に、非常勤になると時給単価が2倍以上になるからです。
これに気付いた会計士が、少しずつ非常勤に転向しているようです。
具体的に、非常勤に転向するメリットは次のとおりです。
- 時給平均7,000円(中には時給10,000円の求人もある)
- 残業が少ない傾向
- ムダな作業が少ない
- 責任が軽い・主査を任されない
年収でいえば、仮に残業なし(7時間勤務)で週4日勤務するだけで、年収は1,000万を超えます。
ワークライフバランスが改善される上に、年収はむしろグンと上がるのです。
ただし、もちろん非常勤にはリスクもありますから、安易に転向するのも危険です。
どのような選択にも「リスクゼロ」ということは有り得ませんから、事前のリサーチが大切です。
非常勤としての働き方について、詳しくは監査法人非常勤がオススメな理由+求人の探し方3選【給与明細公開】で全て解説しています。
会計士のワークライフバランスが取れる転職先の特徴


ワークライフバランスの取れる大まかな転職先は、先述のとおりです。
ここでは、「更に求人を絞る際に見るべきポイント」を紹介します。(あくまで、ワークライフバランスの観点)
- 離職率が低い
- スポット業務が少ない
- リモートワークが可能
もちろん、「残業時間が少ない」という点も確認すべきですが、それに加えて上記のポイントを見ておくと良いでしょう。
それぞれ解説します。
① 離職率が低い
なぜか軽視される方が多いですが、「離職率」は非常に重要な指標です。
当然の話ですが、働きやすい会社なら人は辞めないからです。
例えば、私が働いていた中小監査法人ではワークライフバランスが充実しており、ここ10年間での退職者は2~3人です。
本当に働きやすい会社であれば、人はほとんど辞めないのです。
そのため、ワークライフバランスを求めて転職をする人は、必ず「離職率」に着目してください。
なお参考までに、大手監査法人の若手(スタッフ・シニア)の離職率は約9%~12%です。
これは「医療従事者」よりも高い水準であり、いかにワークライフバランスが損なわれているかが客観的に分かるでしょう。
ワークライフバランスを重視する方は、この水準を目安に求人を選ぶと良いでしょう。
離職率が10%を超えるような職場は、まずブラックであると考えて良いと思います。
また、「離職率」は求人票には記載されません。
内情をよく知る転職エージェントから、離職率を聞き出すと良いでしょう。
② スポット業務が少ない
年間の平均残業時間が仮に少なかったとしても、スポット業務を予定しているような場合、残業時間が一時的に増える可能性があります。
例えば、次のような業務はスポット業務と言えるでしょう。
スポット業務の例
- 経理部でのM&A・IPO・IFRSプロジェクト
- 新規事業などの多い会社の内部監査部門
- 監査法人内でのアドバイザリー業務
- 会計事務所でのFAS業務
これらの業務は、定常的な業務に上乗せされる形で依頼されるケースがあり、必然的に残業時間は多くなります。
また、実際に作業がいつ・どの程度発生するのか予測が難しいため、私生活のスケジュールにも影響を及ぼす可能性があります。
あくまで残業時間を減らすことに重点を置く場合は、スポット業務の発生可能性が低い転職先を選ぶと良いでしょう。
③ リモートワークが可能
出社時間をカットできること自体も、ワークライフバランスの改善に繋がると言えるでしょう。
特に、最近はリモートOKの求人が増えているため、今は転職の時期として狙い目かもしれません。
ただし、リモート・在宅勤務は人気があるため、すぐに求人が埋まってしまうようです。
そのため、先ず転職エージェントに登録をしておき、求人が上がった瞬間に連絡をもらえるような体制を作っておくことをオススメします。
【求人例】ワークライフバランスの取れる中小監査法人


ここでは、公開されている求人のうち、WLB重視の求人の一部を紹介します。
ワークライフバランス重視の求人例


中小監査法人での監査スタッフというポジションで、平均月5時間の残業時間です。
まずは上記のような求人を集めていき、少しずつフィルタリングを強くしていくと良いでしょう。
もちろん、上記の他にもワークライフバランスの取れる求人は多くあり、非公開の求人も更に多くあります。
しかし先述のとおり、人気の求人はすぐに募集を締め切ってしまうため、継続的に求人を送ってもらえる体制を作っておくと良いでしょう。
ワークライフバランスの取れる会計士の転職先について、よくある疑問


その他、ワークライフバランスを重視した場合の会計士の転職先について、よくある疑問をまとめてみました。
- ワークライフバランスを重視しながらも、やりがいを得られる転職先はありますか?
-
やりがいの定義にもよりますが、例えば、私たちがやりがいを感じるシチュエーションには次のような例が挙げられます。
- 社内での評価
- 社外からの評価
- 年収の上昇
- 専門性の追求
- スキルアップ
- 組織内外でのコミュニケーション
具体的な転職先としては、私は中小監査法人または経理をオススメします。
ある程度の組織規模があるため、社内でのステップアップの過程でやりがいを感じやすく、有名企業であれば社外からの評価も高まるでしょう。
一方、内部監査・会計事務所は作業がルーティンワークになりやすく、あまり面白味を感じるシチュエーションが少ないと思います。
- どんな人が、ワークライフバランスを求めて転職しますか?
-
一般的には30代になるとワークライフバランスを重視し始めるようですが、最近では20代の方であっても、ワークライフバランスを求めて転職されるケースが多いと感じます。
実際、私の働いていたホワイトな中小監査法人にも、20代でBIG4から転職されてくる方が多くいました。
- 転職エージェントに対して、「ワークライフバランスを重視ていること」を素直に伝えても平気ですか?
-
問題ありません。むしろ、自発的に伝える必要があります。
確かに、「残業時間を減らしたいということが企業側に伝わると、マイナス評価になるのでは…」という心配もあるでしょう。
しかし、そもそもワークライフバランスを売りにしている企業には、ワークライフバランスを求める人が多く応募しているため、伝えずとも伝わります。
一方で、志望動機として「ワークライフバランスを取りたいから」と書いてしまうのは危険です。(仕事をしない人なのでは?と思われてしまう)
ワークライフバランス以外にもその企業を選んだ動機はあるはずですから、その点をロジカルに説明する必要があるでしょう。
ワークライフバランス重視の会計士にオススメの転職エージェント


最後に、ワークライフバランス重視の会計士におすすめできる転職エージェントを紹介します。
- マイナビ会計士(おすすめ)
- レックスアドバイザーズ
- ジャスネットキャリア
会計士が選ぶなら、マイナビ会計士1択です。
なぜなら、唯一の会計士専門のエージェントであり、求人数がNo.1だからです。
先述のとおり、人気の求人はすぐに募集枠が埋まってしまいます。
先ずは転職エージェントに登録しておき、求人が出た瞬間にすぐ紹介してもらえるような体制を作っておくことをオススメします。
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