公認会計士のキャリアパス大全!【監査法人以外の選択肢もすべて見せます】

公認会計士のキャリアパス大全【監査法人から卒業したい方へ】

公認会計士・税理士の藤沼です。

2018年にEYからFASに転職し、現在は会計事務所を開業して早5年が経ちました。

私自身、監査コンサル税務独立経営と様々なキャリアを経験したことで、公認会計士という職業のキャリアの幅広さを強く実感しています。

そこで今回は、公認会計士のキャリアパスを網羅的に解説します。

実体験に基づき、どこでも紹介されていない情報も紹介していますので、ぜひ最後まで読んでください。

この記事を書いた人

1986年生まれ(38歳)
公認会計士税理士

2014年 EY新日本監査法人 入社
2018年 中堅コンサル事務所 入社
2019年 藤沼会計事務所 開業
2020年 アカウントエージェント株式会社 代表


目次

公認会計士のキャリアパスは全6種に分けられる

公認会計士のキャリアパスは、大きく全6種に分けられます。

下記は、会計系エージェントの求人票を全て抽出し、職種別に集計したデータです。

職種求人件数割合
税務
会計事務所328 件28%
税理士法人114 件10%
事業会社
経理253 件21%
経営企画26 件2%
ベンチャーCFO21 件2%
内部監査15 件1%
コンサル
FAS223 件19%
戦略コンサル22 件2%
BIG4(アドバイザリー)15 件1%
会計監査
中小監査法人112 件9%
BIG4(監査部門)31 件3%
金融
PEファンド14 件1%
投資銀行9 件1%
 合計1,183 件100%
(大手会計系エージェント求人票を集計)

上記5種に加えて独立開業というキャリアもありますから、大きくカテゴライズすると6種類のキャリアがあります。

以下、カテゴリごとに解説します。

税務

  • 需要  :
  • 汎用性 :
  • 年収  :
  • やりがい:
  • 特徴  :独立向き。キャリアが狭まる傾向あり
  • ゴール :独立開業

税務系のキャリアには、大きく会計事務所税理士法人の2種類があります。

両者にあまり違いはありませんが、税理士法人のほうが組織規模は大きい傾向にあります。

税務は、主に独立志向の会計士が選ぶキャリアであり、「ずっと税務をやりたい」という会計士は少数派です。

また、税務は同じ税務領域であれば汎用性は高いものの、税務以外の領域(企業会計・監査・金融など)ではスキルの転用がやや難しいため、その後のキャリアが税務中心になってしまうというデメリットがあります。

もちろん、今後ずっと税務領域で戦う予定なら良いのですが、そうでない方には私はあまりオススメしません。

事業会社

  • 需要  :
  • 汎用性 :
  • 年収  :
  • やりがい:
  • 特徴  :汎用性は高いが、代替性も高い。良い意味でも悪い意味でも安定している。
  • ゴール :上場会社の部長職、CFO

事業会社は、大きく経理経営企画ベンチャーCFO内部監査の4職種に分けられます。

事業会社と一括りにしていますが、スキルの汎用性としては

経理・ベンチャーCFO>経営企画>>>内部監査

というイメージです。

経理やベンチャーCFOは企業の数だけ需要があるため、需要は常に安定しており、企業会計のスキルを活かせるフィールドとして非常に人気です。

経営企画もニーズはありますが、公認会計士としての知見を活かしづらく、また採用のハードルは高いです。

一方、内部監査は「監査」のみに特化した職種であり、知識・経験の汎用性が低いため注意が必要です。

いずれも組織内会計士として一企業に所属するため、その会社の業種やビジネスに興味が持てるかどうか?が重要です。

また、会計士が事業会社で働く場合は上場会社がメインになりますが、上場会社内で役員クラスまでキャリアアップするのは非常に難しいため、経理で経験を積んだ後にベンチャーCFOへ転身するようなキャリアプランが一般的です。

また、こちらも難易度は高いですが「監査役」も目指すべきゴールの1つです。

コンサル

  • 需要  :
  • 汎用性 :
  • 年収  :
  • やりがい:
  • 特徴  :やりがいはあるが、激務。若手向き。
  • ゴール :コンサルティング会社役員、起業

会計士のキャリアにおけるコンサルには、大きくFAS戦略コンサルBIG4(アドバイザリー)の3種類があります。

FAS・監査法人(アドバイザリー部門)では、M&Aに関する財務アドバイザリーサービス業務に従事するケースが一般的です。

FASではM&A支援以外のコンサルティング業務にも関与できるケースが多いですが、監査法人のアドバイザリー部門では、同じ種類のM&Aアドバイザリーのみに関与するケースが多いです。

FAS・監査法人(アドバイザリー部門)のいずれにおいても、会計監査のスキル・公認会計士試験での知識・資格を活用できるため、監査法人(監査部門)の次のキャリアとして選ばれやすい転職先です。

一方、戦略コンサルでは公認会計士としてのスキル・知識・経験をほとんど活かすことができないため、戦略コンサルを選択肢として選ぶ会計士は非常に少ないです。

なお、いずれも激務であることから定年までコンサル業務に従事することは難しく、多くの場合、その後監査法人に戻る、または事業会社の経理などに転職するケースが多いです。

会計監査

  • 需要  :
  • 汎用性 :
  • 年収  :
  • やりがい:
  • 特徴  :汎用性が非常に高く、ファーストキャリアに最適。
  • ゴール :監査法人内のパートナー、事業会社の監査役

会計監査は、大手監査法人または中小監査法人において従事する領域です。

しかし、この会計監査で培ったスキルは汎用性が非常に高く、ほぼ全ての職種に活用できるスキルです。(ただし金融系は除く。)

そのため、公認会計士試験合格後は大半の人が監査法人に入社しますし、私もそうあるべきだと思います。

もちろん、監査法人内でキャリアアップを図ることもできますが、大手監査法人内でパートナーになるには難易度が非常に高いです。

一方、中小監査法人であればパートナーへの昇格は比較的難易度が低いため、中小監査法人への転職もオススメです。

実際、中小監査法人では30代でパートナーに昇格する(または創設メンバーとして参画する)公認会計士が多いです。

金融

  • 需要  :
  • 汎用性 :
  • 年収  :
  • やりがい:
  • 特徴  :年収が非常に高いが、激務。
  • ゴール :ファンドマネージャー

会計士のキャリアとしての金融領域には、PEファンド投資銀行の2つがあります。

PEファンドではベンチャー企業等への投資を行うため、投資判断、及び経営能力が重要になります。

投資銀行では、M&Aを希望する顧客に対して助言等を行うため、提案・営業能力が求められます。

いずれにおいてもM&Aに関するスキル・財務諸表を読み取るスキルが必要になり、この点で公認会計士としての知見が活用できます。

ただし、比重としては経営・投資スキルの方が求められるため、公認会計士としての経験を活かしづらいキャリアではあります。

他の職種への汎用性はあまり高くなく、基本的には、同業他社となる金融系を渡り歩くケースが多いです。

またいずれも年収水準は高いですが、激務の業界であり、バイタリティが強く求められます。

独立

  • 需要  :
  • 汎用性 :
  • 年収  :
  • やりがい:
  • 特徴  :年収は青天井。会社員では味わえないやりがいがある。
  • ゴール :そのまま会計事務所を経営。

公認会計士は税理士に比べて独立する方が少なく、税理士は半数以上が独立するものの、公認会計士は(体感では)独立する人は10%以下でしょう。

独立のためには経営に関する素養が必要ですが、まぁやってみないと分からないというのが正直なところです。

私自身も若干ネガティブな理由で独立をしましたが、5年間で増収増益真っ最中です。
人間、何が向いているか分かりませんね。

また、公認会計士の場合監査法人で高時給の非常勤バイトがありますし、初期投資不要・身一つで独立できるので大きな失敗はまずありません。

独立のためには税務の知識がほぼ必須ですが、この点は、会計事務所・税理士法人など2~3年経験を積めば、独立できるまでの経験値は十分積めます。

年収も人によりますが、一般的な会計士であれば1人で年商1,000万~2,000万はすぐにクリアできます。

感覚的には、従業員なし(外注は含む)の1人事務所だと年商3,000万程度が限度と思われます。

独立は、何よりやりがいしかありません。

全て自分の責任ですが、全て自分で管理可能ですので会社員時代のようなストレスを感じることがなく、面白いです。

また、仮に独立が失敗しても非常勤だけで生計を立てることができますから、最近ではフリーランスの公認会計士もかなり増えています。

なお、公認会計士協会のキャリアマップはあまり参考にならない。

日本公認会計士協会「公認会計士のキャリアマップ」
引用:公認会計士協会「公認会計士キャリアマップ」

日本公認会計士協会のHPでは、上記の公認会計士のキャリアマップが公開されています。

しかし、これはちょっと大袈裟すぎでは?と私は思います。

公認会計士で「教授」「政治家」になる人はほとんどいませんし、レアケースをゴールに設定してしまうと、結果的に中途半端なキャリアに落ち着いてしまう危険性があります。

もちろん、「目標は高くあるべきだ!」という人もいるでしょう。
否定はしません。

でも、キャリアアップには時間がかかります。
時間とは私たちの人生です。

貴重な自分の人生をムダにする可能性があります。

それでも「目標は高くあるべきだ!」と言えるでしょうか。

ごく一部の人の成功体験をさも万人のゴールのように捉えるのは、かなり偏った考え方だと思います。

あくまでこのような選択肢がある、程度に捉えましょう。

監査法人から次のキャリアプランとして選ばれやすい職種【全5種】

監査法人から次のキャリアとして選ばれやすい職種は、次のとおりです。

監査法人から次のキャリアプランとして選ばれやすい職種
  • 経理
  • 監査法人(中小・大手)
  • FAS・アドバイザリー
  • 会計事務所・税理士法人
  • ベンチャーCFO

私は今まで多くの公認会計士からキャリア相談を受けましたが、ほぼ全員が上記いずれかの職種に転職しています。

それぞれのキャリアが選ばれる主な理由は、次のとおりです。

キャリア選ばれる主な理由
経理ワークライフバランスが欲しい

財務諸表の作り手側を経験したい
監査法人監査が嫌いではないので、同業界に転職したい

会計士登録の実務要件を満たすため
FAS/アドバイザリーコンサルがやりたい

やりがいが欲しい
会計事務所/税理士法人将来的に独立したい

税務を勉強したい
ベンチャーCFO組織内で評価をされたい

ストックオプションを狙いたい

組織運営に興味がある

本来的には長期的なキャリアプランを考えて転職先を選ぶべきですが、多くの方は「次にやりたいこと」を考えて転職先を選びます。

ぶっちゃけ10年後に何をやりたいかなんて自分の成長と共に変化しまくるので、考えた通りに進むことの方が少ないです。

今監査法人にお勤めの方は、上記のモデルをご参考ください。

なお監査法人からの転職先について、詳しくは次の記事内で紹介しています。

公認会計士のキャリアアップ王道パターン【5選】

公認会計士の王道のキャリアアップパターンは、次のとおりです。

公認会計士のキャリアアップ王道パターン【5選】
  1. 大手監査法人内でパートナーを目指す
  2. コンサルに転職し、パートナーを目指す
  3. ベンチャーCFOに転職し、上場を目指す
  4. 上場経理に転職し、経理部長を目指す
  5. 中小監査法人に転職し、パートナーを目指す

難易度の高い順に並べました。

BIG4内でパートナーを目指すのは、かなりハードルが高いですが、対照的に中小監査法人でパートナーを目指すのは比較的難易度が低いです。

もちろん、全ての方が上記のキャリアを目指すべきだとは思いません。あくまで王道となるゴールを示しています。

様々な会計士のキャリアを見てきましたが、経理部長を目指す・中小監査法人のパートナーを目指すというキャリアプランは、最も再現性が高いと感じます。

監査法人内でのキャリアパスは?

ここでは、主に公認会計士受験生や監査法人での職務経験のない方に向けて、監査法人内でのキャリアパスを簡単に解説します。

なお、監査法人内での職階・階級については各社異なりますが、ここではEYでの職階を用いて解説します。(大手監査法人は4法人ほぼ同じような感じです)

職階内容
スタッフ未経験者はスタッフからスタート。
ただし、監査経験者やその他関連した職歴のある方はシニアからスタート。
優秀な人は3年目から主査も経験。
シニアシニアへの昇格基準は、公認会計士登録できること。
ほぼ全てのシニアが主査業務に従事。優秀な人は海外駐在できる可能性もある。
マネージャーマネージャーへの昇格は非常に狭き門。
10人中1人くらいがマネージャーに昇格できるイメージ。
シニアマネージャーシニアマネージャーへの昇格は、マネージャー昇格・パートナー昇格に比べると難易度は低い。
ただし、パートナーへの昇格を強く意識する年次のため、辞め時を見失う可能性がある時期。
パートナーパートナーへの昇格は更に狭き門。
マネージャー10人中1人くらいがパートナーに昇格できるイメージ。
監査法人内でのキャリアのゴールだが、個人としてリスクを負う立場になる。

4年で職階が上がっていきますが、マネージャー・パートナーへの昇格では滞留する方がほとんどであり、10年以上シニアマネージャーで滞留する方も多いです。

ちなみに(どの監査法人でも同様だと思いますが)、英語力があるとかなり昇格しやすいです。

BIG4はグローバルファームに所属するため、マネージャー以上では英語力が評価されます。

もしパートナーを目指すのであれば、英語力は必須です。(あ、でも昔パートナーに上がった人たちは英語が全然できなかったりしますが。)

監査法人でのキャリアを、もう少し細かく段階ごとに分けました。↓

監査法人内での大まかなキャリアの流れ
  • 第一関門:主査を経験する(3年目)
  • 第二関門:修了考査に合格する(4年目)
  • 第三関門:マネージャーに昇格する(最短9年目)
  • 第四関門:英語・IPO等、その他の経験値を身に付ける
  • 第五関門:パートナーに昇格する(最短17年目)

マネージャー昇格の前後(10年目前後)で、おおよそ年収1,000万に到達します。

また、金融業界のようなUP or OUTの文化はありませんので、クビになるようなことはありません。

公認会計士がキャリアを考える際は、「副業」も込みで考える

2024年より新NISAが始まったため、キャリアを考える際にはNISAも活用した副業を込みで考えるべきです。

イメージし易いように、NISAの簡易シミュレーションツールを置いておきます。

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