公認会計士・税理士の藤沼です。
2013年に公認会計士試験に合格後、EY日本有限責任監査法人で約5年間働きました。
実際に働いてみると分かるんですが、実は資格なしでも監査法人に就職できます。
具体的には、次のようなポジションなら資格なしでも監査法人で働くことができます。
ポジション | 内容 |
---|---|
監査トレーニー | 公認会計士試験受験生を対象に、監査法人で勤務しながら学習支援を受けられる。会計監査業務にも従事できる。 |
アドバイザリー | アドバイザリー部門でコンサルタントとして働く。ただし、会計監査業務には従事できない。 |
監査アシスタント | 公認会計士のサポート業務や、監査チームの雑務等を請け負う。一部、公認会計士の管理下において監査調書の作成を担当。 |
事務職 | 監査部門での事務職のほか、総務・人事など一般企業と同様の部門がある。なお監査業務に従事することはない。 |
意外とポジションが多いですよね。
本記事では、資格なしで監査法人で働けるポジションや、その他取得していると有利になる資格を紹介します。
私はBIG4でリクルーター・面接官をしており、中小監査法人では採用コンサルタントをしていましたので、採用感の目線でもお話しします。
内容に自信あり。
ぜひ最後まで読んでください。
2014年 EY新日本監査法人 入社
2018年 中堅コンサル事務所 入社
2019年 藤沼会計事務所 開業
2020年 アカウントエージェント株式会社 代表
資格なしでも就職できる監査法人のポジション
監査法人には、公認会計士以外にも就職することができます。
資格なしでも就職できる監査法人の「ポジション」は、次のとおりです。
※ 各ポジション名を選択すると、該当項目にジャンプします。
それぞれ解説します。
監査トレーニー
監査トレーニーとは、監査法人で働きながら公認会計士を目指せる制度・ポジションをいいます。
監査法人は慢性的な人手不足(特に、公認会計士不足)に陥っているため、近年は受験生の時点で採用し、公認会計士資格取得を支援するという制度が出来上がっています。
監査トレーニーとして働くメリットは、次のとおりです。
- 公認会計士資格なしでも監査法人で働ける
- 予備校代などの資金援助を受けられる
- 監査法人での仕事が、公認会計士試験の学習に役立つ
- 公認会計士試験合格後も、そのまま監査法人で働ける
私自身もEY時代、監査トレーニーの方と一緒に仕事をしていましたが、監査実務に触れることで公認会計士試験の学習効率が上がると感じました。
もちろん、公認会計士を目指していることが前提ですが、将来公認会計士になりたいという方にはオススメです。
また、たまに「監査トレーニーは新卒でしか採用されないのでは?」という声を聞きますが、そんなことはなく、既卒の方でも採用されます。
監査トレーニーについて、詳しくは監査トレーニーの求人の探し方と、内定率を高める方法の記事で具体的に解説しています。
アドバイザリー
監査法人には、監査部門以外に「アドバイザリー部門」があります。(又は別会社として設立)
監査部門で働けるのは、(基本的には)公認会計士のみです。
これは、「会計監査」が公認会計士の独占業務だからです。
独占業務とは、その名のとおり、該当の資格者のみに実施することが許された業務をいいます。
しかし、アドバイザリーでは「独占業務」というものがないため、公認会計士資格がなくとも就職することができます。
監査法人アドバイザリー部門での仕事内容は様々ですが、例えば次のようなサービスがあります。
- M&Aに係る会計税務アドバイザリー
- 事業再生・企業再生にかかるアドバイザリー
- 不正調査・内部統制構築支援
監査法人のアドバイザリー部門では、主に監査法人と親和性の高い「会計・税務」に関連するアドバイザリー業務に従事することになります。
アドバイザリー業務とは、端的に言えばコンサルティングのことであり、外部機関として処理をアドバイス・指南する仕事をいいます。(アドバイザリーとコンサルティングに違いはほぼありません)
監査アシスタント
監査アシスタントとは、監査法人で働く公認会計士のもとで監査業務を補助する仕事をいいます。
監査アシスタントの仕事内容には、例えば次のようなものが挙げられます。
- 紙とデータの数値の照合作業(突合)
- 数値の計算の正確性確認(計算チェック)
- その他、単純作業・事務作業
経理や会計事務所に勤務したことのない方には、ややイメージしづらいと思いますが、要するに「チェック作業」「事務作業」が中心です。
公認会計士には、取引に対してどのような会計処理をすべきか?を実態に即して判断する仕事があり、単純な作業に時間を割く余裕がありません。
そこで、判断を要することのない単純作業をお任せするために、監査アシスタントを採用しているのです。
当然、監査アシスタントにも資格は必要なく、未経験でも採用されます。
監査アシスタントについて、詳しくは監査アシスタントの仕事内容・求人の探し方で具体的にお話しています。
かなり細かく書きましたので、きっと参考になるでしょう。
事務職
監査アシスタントとやや似ているかもしれませんが、監査法人には「事務職」というポジションもあります。
具体的なポジションは、例えば次のとおりです。
- 監査部門における調書整理担当
- 監査部門におけるアサイン事務担当
- その他、経理、広報・PR、総務、人事・採用など
監査アシスタントと異なるのは、「監査チームに属さない」という点です。
監査アシスタントは監査チームの一員として動くため、必要に応じてクライアント先(現場)に往査します。
一方、監査法人の事務職は特定の監査チームに属するわけではなく、監査部門内での間接業務を行うことになります。
また、監査法人も1つの組織ですから、(監査とは直接関係のない)経理・人事・総務など、一般的な事務職ポジションも存在します。
監査法人の事務職ポジションは多種多様であることから、一括りに仕事内容を明示することはできませんが、おおよそ、一般企業での総務のようなイメージが最も近いでしょう。
USCPA資格があれば、監査法人に就職できる可能性はある
ご存じない方もいるようですが、USCPA資格があれば監査法人(の監査部門)に就職できるケースがあります。
もちろん、監査業務に従事することができます。
また、給与水準も日本の公認会計士資格(JICPA)と同テーブルであることが多く、パートナーになることも可能です。
ただし、USCPAの採用は「英語力があること」が前提のケースが大半です。
そして、日本の公認会計士と違って4大監査法人の就職倍率も高いため、「USCPA資格を取得したとしても就職できるかどうかは分からない」という不安材料があります。
会計・税務の仕事が未経験の場合、(20代までならギリギリ可能性があるかもしれませんが)30代になるとほぼ入社は無理では?という印象があります。
年齢的な問題で就職に不安を感じる方は、経理などの会計系の職種に転職し、働きながらUSCPAを目指すという選択がオススメです。
その他、監査法人の就活で有利になる資格は?
公認会計士・USCPA資格は、取得までに相当の年数を要します。
一方、次の資格は比較的短期間で取得・受験することができ、監査法人への就活を有利に進めることのできる資格です。
- 簿記2級
- TOEIC
- MOS
- 内部監査系の資格
※ 各資格名称を選択すると、該当項目にジャンプします。
ただし、「有利」と言っても上記資格があれば必ず内定が出るという程のものではなく、あくまで持っていない人に比べて有利になるというレベル感であることをご理解ください。
以下、それぞれ簡単に解説します。
簿記2級
監査法人への就職活動で、最もコストパフォーマンスが高い資格は「日商簿記検定2級」でしょう。
監査アシスタント・監査トレーニーへの応募であれば、取っておいて損はありません。
また、アドバイザリーへの応募ならむしろ必須の資格と言えるでしょう。
なお、監査法人の事務職(経理以外)への就職活動では、簿記2級は不要です。
なぜなら、業務で会計に触れることがないからです。
簿記2級資格は知識ゼロから3ヶ月~5ヶ月ほどで取得できますので、監査法人への就職意欲をアピールし、就活を有利に進めるためにもオススメの資格です。
ちなみに、簿記3級は簡単すぎるので評価がほぼされず、簿記1級は難易度が高い一方で評価がさほど上がらないので、ちょうど中間に位置する簿記2級がおすすめです。
TOEIC
TOEICは、監査法人のアドバイザリーへの就活の際、有利に働く傾向にあります。
特に、BIG4はグローバルに展開しており、外国語を利用するケースが多くあります。(会話はしなくとも、クライアント資料が英語であったり、メールでの英語力を求められる)
就活で有利になる点数としては、TOEIC800点以上が1つの目安です。
監査トレーニー・監査アシスタントを希望する方にとっても、国際部チームへの配属がしやすくなることから、就活で必ず有利になります。
※ ただし、監査トレーニー・アシスタントになるために1年以上かけてTOEIC800点を目指す、というのはやりすぎです。オススメしません。
一方、・監査法人の事務職では英語力が求められるケースは少なく、取得するメリットは少ないです。
MOS
MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)は、マイクロソフトオフィスの提供するOfficeソフトの使用スキルを証明する検定試験です。
監査法人での仕事はいずれもデスクワークですから、確実にマイクロソフトExcelを使用します。(事務職の一部ポジションを除く)
そのため、最低限のExcelスキルがあることを証明するため、MOSを取得しておくのも良いでしょう。
ただし、MOSは難易度が非常に低く誰にでも取得できる資格ですので、優先度は低いです。(前職などの職歴でPCスキルをアピールできる方は、取得する必要はありません)
内部監査系の資格
「会計監査」に関する資格は、公認会計士・USCPA以外に存在しません。
一方、「内部監査」に関する資格は多く存在し、代表的な資格として下記の資格があります。
- 公認内部監査人(CIA)
- 内部監査士(QIA)
- 内部統制評価指導士(CCSA)
- 公認リスク管理監査人(CRMA)
- 公認情報システム監査人(CISA)
- 情報システム監査専門内部監査士
- 金融内部監査士
内部監査(内部統制監査)に関する資格が有利に働くのは、監査法人のアドバイザリーへの就職活動で、かつ不正調査・内部統制構築に関連するチームへの配属を希望する方のみです。
上記の中では、CIA・QIAがメジャーな資格です。
監査トレーニー・監査アシスタント・事務職志望の方は、業務で触れることがない(またはここまでの資格は必要としない)ため、取得する必要がありません。
また繰り返しですが、あくまで資格取得はおまけ程度ですから、「これらの資格を取ることで就活で大きく有利になる」とは考えないでください。
監査法人では、新卒採用をしている?
BIG4と呼ばれる大手監査法人では、毎年必ず新卒採用を行います。
以下、大手監査法人4社の新卒採用ページへのリンクを載せておきます。
ただし、当然ながら資格なしで入社できるのは、「アドバイザリー(コンサルタント)職」「監査トレーニー」「事務職」のみです。
公認会計士資格・USCPA資格がなければ監査部門での監査スタッフとして働くことはできません。
また、BIG4は競争倍率が高いことでも有名であり、就職難易度は高めです。
監査法人では、インターンの募集をしている?
インターンについては、ほぼBIG4でしか募集していません。
また、必ず毎年募集するわけではなく、募集したりしなかったり年度によって傾向が異なります。
なお、KPMGあずさ監査法人・PwCあらた監査法人ではインターンが実施されやすく、EY新日本監査法人・デロイト監査法人トーマツではあまりインターンが実施されない傾向にあるようです。
概ね短期インターンであり、アドバイザリー志望の方は参加によって内定率が上がるかもしれませんが、その他のポジションを志望している方は参加不要です。(長期インターンは実施されない模様)
あくまで雰囲気を知るため・情報収集の目的で参加すると良いでしょう。
ちなみに、公認会計士(受験生)の方も、インターンに参加する必要はありません。
その他、資格なしで監査法人に就職する際のよくある疑問
その他、資格なしで監査法人に就職したい方のよくある疑問をまとめてみました。
- 監査法人への就職難易度は高い?
-
高いです。
特に、BIG4のアドバイザリーは非常に人気が高く、就職難易度が高いです。
一方、監査アシスタント、及び中小監査法人の監査トレーニーについてはそこまで就職難易度は高くありません。
また、公認会計士試験合格者の方の場合、就職難易度は非常に低いです。
- 監査法人への就職において、学歴は関係ありますか?
-
公認会計士の方については、監査法人への就職時に学歴はほとんど関係しません。
一方、アドバイザリー・事務職への就職においては、学歴を見られます。
なお、監査トレーニー・監査アシスタントの就活では、そこまで学歴の比重は高くなく、(どちらかと言えば)ポテンシャルやコミュニケーション能力を見られる傾向にあります。
- 監査法人に就職できる年齢は?
-
公認会計士の場合、30代前半までであれば職歴なしでも大手監査法人に就職できる可能性があります。
監査トレーニー志望の方は、30代後半になるとほぼ採用されないと思います。
監査アシスタント志望の方は、40代であっても採用される可能性がありますが、経理・会計事務所での経験や、PCスキルなどを見られるでしょう。
- 監査法人が求める人材とは?
-
希望する部門やポジションによって異なりますが、監査アシスタント・監査トレーニー・アドバイザリーについては、コミュニケーション能力の高い人材・ポテンシャルの高い人材を求める傾向にあります。
なぜなら、監査法人での仕事ではチームワークが必須だからです。
一方、事務職の方は(配属先にもよりますが)事務処理能力・手際の良さが求められるでしょう。監査チーム属するわけではないため、コミュニケーション面はそこまで見られません。
- 監査法人の就活では、どんな質問がされる?
-
質問自体は一般的なものが多いですが、よりチームワークにフォーカスした回答が求められます。
例えば、よくある質問に「今までの人生で失敗した経験を教えてください」というものがあります。
もちろん、失敗談だけでなくその後の解決策まで話す必要がありますが、「周囲と協力できたか」「周囲に良い影響を与えることができたか」という視点で回答ができるとより良いでしょう。
また、仕事には論理的思考力も求められますから、質問に対して即座に論理的な回答をすることが必要でしょう。
- 監査法人では転勤はありますか?
-
まずありません。
希望して転勤するケースはありますが、辞令により転勤を強いられるようなケースは聞いたことがありません。
- 公認会計士には誰でもなれますか?
-
はい、誰でもなれます。
というのも、公認会計士試験には「受験資格」がなく、誰でも受験することができるからです。
公認会計士試験合格後、監査法人の就職活動において「学歴」が問われることもほぼ無いため、就活時に学歴で弾かれることもありません。
監査法人の就活(転職活動)の流れ
監査法人の就活(転職活動)の流れは、次のとおりです。
監査法人に就職するためには、必ず転職エージェントに登録しましょう。
特に、BIG4は就職難易度が高いため、エージェントによるサポートが強く頼りになります。
転職エージェントへの登録後は、キャリアカウンセリングを受けてください。
これにより、自分がどの監査法人に向いているのか明確になります。
もちろん、カウンセリングも無料です。
自分に合った監査法人の求人を選び、応募しましょう。
なお、転職エージェントでは各監査法人ごとの面接対策を受けることができます。
面接対策も無料で利用できるため、必ず活用すべきです。
面接対策で得た「よく聞かれる質問」の情報をもとに、面接に臨みましょう。
面接ではいかに論理的な回答ができるかが大切です。
事前に得た情報をもとに面接練習を行い、複数の角度からのツッコミに対する理論武装をしましょう。
内定が出ると、通常1~3ヶ月以内で入社します。
これで就職活動は終了です。
監査法人の就職活動はシンプルですが、転職エージェント選びを失敗すると、就職活動が長引くでしょう。
監査法人に強いオススメの転職エージェントは、下記で紹介します。
監査法人に強い転職エージェント
監査法人に強い転職エージェントは、次の3社です。
ヒュープロ (Hupro) | MS-Japan | 人材ドラフト | |
---|---|---|---|
求人数 | 約 250 件 | 約 200 件 | 約 20 件 |
対象年代 | 20代~50代 | 20代~50代 | 20代~50代 |
設立 | 2015年 | 1990年 | 2000年 |
資本金 | 2億2740万円 | 5億8600万円 | 3400万円 |
特徴 | 求人数No.1 | 管理部門に強い | 求人数少ない |
総合評価 | |||
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監査法人への就職なら、ヒュープロが最もオススメです。
なぜなら、ヒュープロは会計税務専門の大手エージェントであり、監査法人の求人数がNo.1だからです。
監査法人という組織は、非常に専門性の高い組織であり、業界への深い理解が大切です。
監査業界に精通していない質の低い転職エージェントを選んでしまうと、十分な面接対策ができないおそれがあります。
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