企業内会計士(組織内会計士)になるメリット・デメリットを全部まとめました。

企業内会計士になると、年収が上がるって本当?【調査結果まとめてみた】

公認会計士・税理士の藤沼です。

最近では、監査法人を辞め「企業内会計士」として働く方が随分増えました。

企業内会計士(組織内会計士)になるメリット・デメリットは次のとおりです。

メリットデメリット
新たなスキルが得られる

年収が増加する

ワークライフバランスが改善されやすい
情報のキャッチアップを自分で行う

監査経験がない場合、正当な評価を得られない可能性がある

私の考えですが、メリットの方がデメリットよりも大きいため、多くの人が企業内会計士になるべきだと思っています。

公認会計士の転職先は計13種もあります。

せっかく「公認会計士」という資格を取ったのですから、この強みを最大限に活用すべきです。

本記事が、いま転職を考えている会計士の参考になれば幸いです。

この記事を書いた人

1986年生まれ(38歳)
公認会計士税理士

2014年 EY新日本監査法人 入社
2018年 中堅コンサル事務所 入社
2019年 藤沼会計事務所 開業
2020年 アカウントエージェント株式会社 代表

目次

企業内会計士(組織内会計士)とは?

「組織内会計士」とは、日本公認会計士協会の会員及び準会員のうち会社その他の法人(監査法人、税理士法人及びネットワークファームに該当する法人を除く。)又は行政機関に雇用され、又はその業務に従事している者(役員(※)に就任している者を含む。)をいいます。

引用:日本公認会計士協会 組織内会計士ウェブサイト

要約すると、「監査法人・税理士法人以外に所属する会計士」です。

つまり「公認会計士事務所」「税理士事務所」等に勤務する会計士も、すべて「企業内会計士」に含まれます。(但し、ネットワークファームに所属する事務所を除く)

なお「企業内会計士」とよく表現されますが、正式名称は「組織内会計士」です。

企業内会計士(組織内会計士)の年収

結論から言えば、企業内会計士の方が年収は高いです。

なぜなら、公認会計士協会の実施したアンケートにおいて「監査法人退職時よりも、現在の方が年収が高い」という結果がでているからです。

組織内会計士ネットワークアンケート結果(退職時と現在の年収)
(引用:公認会計士協会 組織内会計士に関するアンケート

企業内会計士(組織内会計士)の40%が、年収1,000万~2,000万に到達しています。

「監査法人を辞めると年収が下がる」

と思っていた方も多いと思いますが、むしろ年収は上がります。

また、「どのくらい年収が増えるのか?」も気になるでしょう。

実際に調べてみました。

情報ソースとして、大手転職エージェントの公開する求人データを抽出し、集計してみました。

会計士が転職した時の年収(職種別)

(年収平均を降順で表示)

職種年収平均件数
PEファンド934万14
戦略コンサル926万22
経営企画801万26
独立系FAS766万223
投資銀行764万9
ベンチャーCFO756万21
内部監査700万15
経理689万253
BIG4アシュアランス648万31
会計事務所609万328
(会計系転職エージェントから求人データを抽出し作成)

一目瞭然ですが、BIG4(監査部門)の年収は下から2番目であり、他の職種の方が年収平均は高いです。(但し、会計事務所は年収が下がる)

もちろん、これはあくまで転職時の年俸であり、その後の昇給等は加味されていません。

具体的な年収の算出過程や、その他職種の年収については、会計士が転職すると、年収はいくらになる?【全業種調べてみた】をご参照ください。

企業内会計士(組織内会計士)になるメリット

私自身も監査法人からFASに転職しましたが、とても多くのメリットを享受できたと感じます。

企業内会計士になるメリット
  1. 新たなスキルが得られる(キャリアアップ)
  2. 年収が増加する
  3. ワークライフバランスが改善されやすい

それぞれ解説します。

① 新たなスキルが得られる(キャリアアップ)

組織内会計士としての職種は、大きく9種に分けられます。

組織内会計士としての職種は全9種

※ 職種名をタップすると、関連記事が開きます。

また、得られるスキルは、大きく企業会計・税務・ファイナンスの3種に分けられます。

いずれも監査経験を活かすことのできるフィールドであり、キャリアの掛け算により、大きくキャリアアップすることができます。

会計監査のフィールドは狭いですが、企業会計・税務・ファイナンスのフィールドは広く、汎用性が高いのが特徴です。

監査+αの経験は、転職市場での価値を高めるため、更なるキャリアアップにも繋がるでしょう。

② 年収が増加する

先述のとおり、企業内会計士に転職することで年収は上がります。

転職市場においては、監査経験3年~5年の会計士に対するニーズが強いため、3年~5年目を転職の目安にすることで効率よく年収を上げることができるでしょう。

また、事業会社では福利厚生もありますから、額面には表れない部分でも恩恵を得られるケースが多いでしょう。

③ ワークライフバランスが改善されやすい

監査法人所属の会計士は、マネージャーになるにつれてワークライフバランスが取れなくなります。

しかし。

なんとも酷い話ですが、パートナーに上がると、むしろワークライフバランスが改善されるようです。

下記のアンケート結果を見れば、それは明らかです。

組織内会計士ネットワークアンケート調査結果(ワークライフバランス)
(引用:JICPA 「組織(企業)内会計士に関するアンケート最終報報告書」の公表について

(色々思う所がありますが、存在を消されそうなので、これ以上は何も言いません…。)

昔は誰でもパートナーに上がれたそうですが、最近はかなり厳しい。

そのため、企業内会計士に転身することで、ワークライフバランスを改善する方が多いそうです。

一方、下記は 「企業内会計士のワークライフバランス」 についてのアンケート結果です。

組織内会計士ネットワークアンケート調査結果(満足度)
(引用:公認会計士協会 組織内会計士に関するアンケート

監査法人内で「ワークライフバランスが取れている」と回答したのが30~40%前後であるのに対して、企業内会計士で「ワークライフバランスが取れている」と回答したのは約70%。

実に2倍もの会計士が、ワークライフバランスを改善させたことが分かります。

BIG4内の労働環境は、お世辞にも「良い」とは言えません。

実際に事業会社の求人を見てみると、「残業なし」という求人も結構見かけます。

ワークライフバランスを整えたい方は、転職すべきです。

企業内会計士(組織内会計士)になるデメリット

企業内会計士には、メリットが多いです。

しかし、転職する際にはデメリットも見ておきましょう。

企業内会計士になるデメリット
  1. 情報のキャッチアップを自分で行う
  2. 監査経験がない場合、正当な評価を得られない可能性がある

それぞれ解説します。

① 情報のキャッチアップを自分で行う

BIG4では、会計・税務に関する業界情報をタイムリーに得ることができます。

事務局が関連するニュースを逐一チェックしてくれるため、自分で情報源を取りに行く必要はないでしょう。

しかし企業内会計士に転職すると、業界情報の入手の機会が減ります。

もちろん、企業によってはニュースレターとして発信してくれる組織もありますが、漏れが発生するケースもあるでしょう。

そこで、多少自分で情報をキャッチアップする必要が出てきます。

そのため、例えば私はTKCエクスプレスというメールマガジンに登録し、情報をキャッチアップしていました。

自ら情報源を調べることに苦痛を感じる人は、デメリットに感じるでしょう。

② 監査経験がない場合、正当な評価を得られない可能性がある

先述のアンケートでは、「採用者側の懸念事項」として、「会計士をどのように評価して良いか分からない」という回答が多くありました。

上場会社として採用する場合の懸念事項

会計士よりも試験合格者の方が「専門性の評価が困難」とされ、監査経験の有無が評価に影響を与えることが分かります。

もし監査経験がない場合には、知人からの紹介や転職エージェントを介することで、正当な評価を得られるような工夫が必要になります。

企業内会計士(組織内会計士)になると、CPD単位はどうする?

監査法人・税理士法人の職員でなくなった場合にも、原則、CPD単位は取得する必要があります。

大手監査法人では「法人内の eラーニング」を視聴することで、単位を取得できました。

この点、監査法人・税理士法人を退職した場合にも、協会のeラーニングを受講することで単位が取得できます。

しかし、もう少しラクに取得する方法があります。

それが「読書感想文」です。

これについては具体的な取得方法を【画像付き】CPD単位の取り方を解説【監査法人退所後のCPD】で紹介していますので、ぜひご覧ください。

この方法を使うと、5~10分で1単位取得できます。

そのため、CPDに関してそこまで心配する必要はありません。

なお、「会計監査・税理士業務・会計税務コンサル」などの公認会計士業務に従事しない場合、CPD単位の軽減・免除制度があります。

  • 名刺等で「公認会計士」の資格を使用していない場合:全単位免除可
  • 名刺等で「公認会計士」の資格を使用している場合:20単位を上限に軽減可

CPD ONLINEから 毎年一定の時期に申請する必要がありますので、この点はお忘れなく。

公認会計士協会の「組織内会計士ネットワーク」に入会してみた感想

「組織内会計士ネットワーク」をご存知でしょうか。

私自身も  この記事を書くまでは知らなかったのですが、色々調べていて存在を知りました。

組織内会計士ネットワークとは、JICPAが組織内会計士の組織化を目的として作ったネットワークです。

実際私も会員になってみたのですが、、、正直、私はあまりメリットを感じませんでした。

というのも、「活動報告」を見ても、ほとんどが「研修会のお知らせ」だからです。(すべてCPDオンラインから見れます)

例外として、「年1回の先述のアンケート」と「年1回の新年交流会」がありますが、そのくらいです。

ちなみに「組織内会計士ネットワーク」は、公認会計士 or 準会員なら誰でも入会できます。(申請の審査に2~3日かかります)

企業内会計士(組織内会計士)に転職する場合のよくある疑問

その他、企業内会計士に転職する場合のよくある疑問をまとめてみました。


会計士登録前に転職する場合、気を付けるべきことはありますか?

「修了考査の勉強時間を確保できるか」が最重要でしょう。

最もオススメの転職先は中小監査法人です。

大手企業への転職難易度はどの程度ですか?

会計士登録後、かつ30代までであれば、大企業への転職は難しくありません。

実際、私も大手上場企業(経理)から内定が出ました。

経理は求人数も多いため、少なくとも現在は売り手市場が続いています。


企業内会計士を目指す人にオススメの転職エージェント

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バイザーズ
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マイナビ会計士ヒュープロロゴレックスアドバイザーズMS-Japanロゴ人材ドラフト
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求人数約5,000件約2,000件約1,500件約1,500件約500件
対象年代20代~30代20代~50代20代~30代20代~30代20代~50代
対応エリア・関東 
・近畿 
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・静岡県
全国全国全国全国
設立1973年2015年2002年1990年2000年
資本金21億210万円2億2740万円6000万円5億8600万円3400万円
対象者公認会計士限定会計・税務会計系全般管理部門全般会計事務所
得意領域公認会計士・経理   
・会計事務所
・監査法人 
・コンサル 
・会計  
・税務  
・コンサル
・FAS   
・監査法人 
会計事務所
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