「会計事務所」「税理士事務所」「税理士法人」の違いは何?【所長が解説】

「会計事務所」と「税理士事務所」の違いは何?【所長が詳細解説】

公認会計士・税理士の藤沼です。

会計事務所業界を調べていると、「会計事務所」「税理士事務所」「税理士法人」など、似たような組織名称が多く出てきますよね。

しかし、この業界に初めて触れる方にとっては、何が違うのか・なぜ呼び方が違うのかよく分からないはずです。

そこで今回は、会計事務所・税理士事務所の違いや、その他似た名称の組織形態との違いを解説します。

結論から言えば、求職者の方がこれら組織の違いを覚える必要性は少なく、ほぼ同じ組織であるという認識で問題ないでしょう。

ただし、細かな違いはありますので、本記事ではその違いを詳細解説します。

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  • 転職活動のため、会計事務所業界のことを調べている方
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目次

「会計事務所」と「税理士事務所」の違い

「会計事務所」と「税理士事務所」の違い

会計事務所と税理士事務所の違いは、次のとおりです。

「税理士事務所」と「会計事務所」の違い

税理士事務所会計事務所
組織形態個人事業個人事業
名称正式名称屋号
所長税理士税理士
or
公認会計士
仕事内容税務のみ・税務    
・会計監査  
・コンサル 等

結論としては、会計事務所と税理士事務所はほぼ同じもの、と言っても過言ではありません。

実務上も、両者を使い分けて表現することはほとんどありません。

ただし、所長が「税理士」なのか「公認会計士」なのかによって、仕事内容が若干異なることがあります。

つまり、事務所の名称によってある程度仕事内容をイメージできる、ということです。

求職者の方にとっては、「どんな仕事ができるのか」が最も気になるはずですから、以下、会計事務所・税理士事務所での仕事内容の違いを深掘り解説します。

会計事務所での仕事内容

会計事務所での主な仕事内容は、次のとおりです。

会計事務所での仕事内容(代表例)
  1. 記帳代行
  2. 巡回監査
  3. 決算業務
  4. 税務申告
  5. 給与計算・年末調整
  6. コンサルティング業務
  7. 会計監査
  8. その他事務作業

1~4は「税務」に関する業務であることから、これらを総称して「税務業務」と呼ぶこともあります。

5「給与計算・年末調整」は厳密には税務業務ではありませんが、付随して提供するケースもあるでしょう。

また、税務に関連したサービスとして6「コンサルティング」を提供するケースもあります。

ここまでは、所長が税理士(公認会計士でない)のケースです。

7「会計監査」については、公認会計士のみに許された独占業務であることから、所長が公認会計士の場合にのみ関与する可能性があります。

つまり、「税理士事務所」と名の付く事務所では、所長が税理士(公認会計士ではない)ケースが多く、会計監査に従事することはまずないでしょう。

また、「会計事務所」と名の付く事務所では、税理士がいない(=公認会計士が所長)のケースがあり、所長が税理士資格を有していない場合には、会計監査+コンサルティング業務のみに従事することになります。

さらに、「会計事務所」と名の付く事務所では、所長が公認会計士の場合もあることから、会計監査に従事する可能性が残されています。(ただし、会計監査は一般に大企業に対して行うサービスであることから、従事できるシチュエーションは少ないです)

なお(ややこしいですが)、公認会計士は税理士試験に合格しなくとも「申請」のみで税理士登録を行うことができるため、厳密には「公認会計士資格を有している税理士」が税理士事務所の所長となっているケースもあります。(ただし、会計士資格をもっていながら業務を「税務」に限定する必要性は低いため、「会計事務所」の名称を付けることが一般的です)

以上、ここでは仕事内容の違いについて解説しました。

更に具体的な会計事務所での仕事内容については、下記の記事内で詳細解説しています。

長くなりましたが、結局のところ求職者の方が見るべきは「求人票に記載されている仕事内容」です。

名称の違いから仕事内容を判断するのではなく、しっかりと応募前に各求人1つ1つの仕事内容を確認してください。

記帳代行会社も「会計事務所」に含まれるケースもある

少し専門的な話ですが、会計事務所でのメイン業務の1つに「仕訳の記帳代行」という仕事があります。

記帳代行は、簡単に言えば「取引を会計ソフトに入力する作業」のことです。

実は、この業務は税理士の独占業務ではないため、株式会社としてサービス提供している会社(いわゆるBPO)もあり、このような会社も「会計事務所」に含めて総称することがあります。

実際、転職サイトの求人検索システムなどで、職種を「会計事務所」に絞って求人を抽出すると、このようなアウトソーシング会社も表示されることがあります。

ただし、組織形態はあくまで「株式会社」であり、会計事務所ではありません。

仕事内容が似ているため、就活・転職の際には「会計事務所」の括りで表現されることがあるのです。

「税理士事務所」と「税理士法人」の違い

「税理士事務所」と「税理士法人」の違い

税理士事務所と税理士法人も似ていますが、次のような違いがあります。

「税理士事務所」と「税理士法人」の違い

税理士事務所税理士法人
組織形態個人事業法人(合名会社)
所長税理士税理士
組織名称の制限原則「税理士事務所」
という文字を使用する
税理士法第四十八条2項
ただし屋号での営業も可
必ず名称に「税理士法人」
という文字を使用すること
税理士法第四十八条の三
約 55,000人約 4,000社
税理士の数所長1人のケースあり必ず2名以上
税理士法第四十八条の十八
支店の展開支店展開できない支店展開できる
組織規模小~中中~大
代表が死亡した時事務所は消滅する法人は継続する
社会保険への加入加入できない可能性あり加入できる
仕事内容税務のみ税務のみ

「税理士事務所」と「税理士法人」については、組織規模が違うだけで、ほぼ同じ類のものという認識でOKです。

たとえば転職サイトの求人検索システム等では、「会計事務所・税理士事務所」という職種でソートをかけると、「税理士法人」も当たり前に抽出されます。

実際、私たち会計人がリアルに話をするときも、税理士法人のことを「会計事務所」「税理士事務所」と呼ぶことはよくあります。(特に区別しない)

ただし、仕事内容は同じものの、税理士法人の方が組織規模が大きい(税理士が必ず2名以上必要であり、支店展開できる)ことで、社内研修が充実していたり、未経験者への指導方法が仕組化されていたり、といった傾向はあると思います。

もちろんこれはあくまで傾向ですので、応募前にしっかりと求人の仕事内容を見て、詳細をエージェントから聞き出すというプロセスは必須です。

結局のところ、組織によって強みとする市場・業界・分野は違いますから、仕事内容も異なります。

社会保険への加入可否は応募前に確認したほうが良い。

税理士法人では、社会保険への加入が強制されます。

一方、個人事務所(=会計事務所・税理士事務所)では、常時5名以上の従業員が雇用されている事務所にのみ社会保険への加入が強制されており、職員が5名未満の事務所では社会保険への加入が強制されません。(参照:日本年金機構「健康保険・厚生年金保険の適用事業所における適用業種(士業)の追加(令和4年10月施行)」

そのため、小さな税理士事務所に就職・転職した場合、社会保険に加入できない可能性があります。

基本的には、国民年金よりも厚生年金(社会保険)の方がお得であると言われているため、特に法人化していない会計事務所に応募する際は、「社会保険への加入可否」も確認しておきましょう。

(将来年金が満額受給できるか、はまた別の話ですが…。)

「会計事務所」と「公認会計士事務所」の違い

「会計事務所」と「公認会計士事務所」の違い

「会計事務所」と「公認会計士事務所」の違いは、次のとおりです。

会計事務所公認会計士事務所
組織形態個人事業個人事業
名称屋号正式名称
所長税理士
or
公認会計士
公認会計士
仕事内容・税務    
・会計監査  
・コンサル 等
・税務    
・会計監査  
・コンサル 等

公認会計士事務所とは、所長が公認会計士の会計事務所です。

「公認会計士事務所」も「税理士事務所」と同様、公認会計士が開業した場合の正式名称として定められています。

ただし、先述のとおり公認会計士は税理士試験を受けなくとも「申請」のみで税理士登録できるため、開業後は税理士業務も行うのが一般的であることから、(税理士ではないと誤解される恐れを排除するために)屋号として「会計事務所」等を用いるケースが多いです。

結論としては、「会計事務所」も「公認会計士事務所」もあまり変わりませんが、公認会計士事務所は必ず所長が公認会計士であることから、税務以外にもコンサル・会計監査等のサービスに関与する可能性があります。

「監査法人」とは?

「監査法人」とは?

監査法人とは、5名以上の公認会計士によって設立された、決算書の監査証明(いわゆる会計監査)を業とする組織を言います。

実は、広い意味での「会計事務所」の中には「監査法人」も含まれます。

しかし、一般的な「会計事務所」とは仕事内容が大きく異なるため、一般に「会計事務所」と言えば監査法人は含まないニュアンスとなることが多いです。

監査法人の特徴
所長公認会計士
職員原則、公認会計士または試験合格者
(その他、監査アシスタント・監査トレーニー)
仕事内容会計監査
規模中~大

監査法人で働くことができるのは、原則として「公認会計士」及び「公認会計士論文式試験合格者」に限られます。

しかし、最近では多様なバックボーンの職員を雇用する監査法人が増え、「監査アシスタント」や「監査トレーニー」などを雇用するケースが多いです。

監査アシスタント、監査トレーニーについては、次の記事内で詳細解説しています。

会計事務所に向いている人の特徴

会計事務所に向いている人の特徴

会計事務所に向いている人の大きな特徴は、5つあります。

会計事務所に向いている人の特徴
  1. 分からないことを自ら調べられる人
  2. コミュニケーション能力の高い人
  3. 細かい作業が好きな人
  4. 体力のある人
  5. 勉強が好き・向上心のある人

該当するものが多ければ多いほど、会計事務所業界への適性が高いです。

(5つ全てに該当する方は絶対に重宝されますし、むしろ私の事務所で雇用したいくらい…。)

意外かもしれませんが、会計事務所では「コミュニケーション能力」「体力」が求められます。

その他、各特徴の具体例や、逆に「向いていない人の特徴」などは、会計事務所に向いている人の特徴5選【所長が解説】の記事で詳細解説しています。

これから会計事務所業界で働くことを考えている方は、かんたんな適性診断として、上記記事をご利用ください。

会計事務所で働くには、何が必要?

会計事務所で働くには、何が必要?

会計事務所で働くなら、最低限「日商簿記2級」の資格が必要です。

実際、Huproという会計事務所専門のエージェントの求人検索システムを閲覧すると、簿記2級取得者に対する求人数が圧倒的に多いです。(詳細記事:会計事務所への就職におすすめの資格は4種ある。

「日商簿記3級ではダメか?」という疑問もありそうですが、個人的には簿記3級では足りないと思います。

簿記3級取得者向けの求人自体が少ないこともそうですが、そもそも簿記3級くらいの知識だと、入所後あまり役に立たないのです。

そのため、会計事務所への転職に必要な資格の中で、最もコスパが良いのは「簿記2級」であると断言できます。

また、「求められるスキル」としては、コミュニケーション能力PC操作スキルが求められます。

いずれも基本的スキルさえあれば問題ないのですが、極端にコミュニケーションが苦手な方や、PCに拒否反応のある方は向いていないかもしれません。(詳細記事:会計事務所で働くには、何が求められるの?

未経験者が会計事務所への転職を有利に進めるコツ

未経験者が会計事務所への転職を有利に進めるコツ

未経験者が会計事務所への転職を有利に進めるコツを紹介します。

未経験で会計事務所への転職を有利に進めるコツ
  1. 「簿記2級」は取っておく
  2. 「税理士補助」を選ぶ
  3. 「既に未経験者が働いている」事務所を選ぶ
  4. 必ず「転職エージェント」を使う

このうち、最も大切なのは必ず転職エージェントを使うということです。

会計事務所業界は、専門職です。

未経験の方が、インターネット上で調べた知識のみで実務をイメージすることは、不可能でしょう。

そのため、転職エージェント等を利用することで、ヒトから仕事のイメージを口頭で聞き、イメージを膨らませる必要があります。

また、具体的な仕事内容は各事務所によって異なるため、求人サイトなどで自ら求人を入手し、応募するのも危険です。(働き方が分からずに、合わない事務所に入社してしまうリスクがある)

業界未経験の方が会計事務所業界に入る際は、絶対に転職エージェントを利用しましょう。

なお、未経験者が会計事務所に転職する際のポイントについては、未経験で会計事務所に転職するコツ4選の記事で詳細解説しています。

会計事務所と税理士事務所の違いに関連する、よくある疑問

その他、会計事務所・税理士事務所の違いなどに関連する、よくある疑問をまとめてみました。


会計士と税理士の違いは何?

主として、独占的に関与できる業務(独占業務)が異なります。

会計士の独占業務は「会計監査」であるのに対し、税理士の独占業務は「税務代理・税務書類の作成・税務相談」です。

会計士の独占業務である会計監査では、企業の作成した決算書を監査することになるため、クライアントが企業に限定されます。

一方、税理士の独占業務である税務は、企業のほか個人事業主等もクライアントになるため、顧客が非常に幅広いという特徴があります。

「公認会計士」と「会計士」の違いは何?

違いはなく、全く同じものです。

正式名称は「公認会計士」ですが、たとえば私たち会計士が自己紹介等をする際には、短く「会計士」と言ってしまうことが多いです。

「税務署」と「税理士」の違いは何?

税務署は国税を収める場所であり、納税者視点でいえば「国税を徴収する組織」と言えるでしょう。

一方、税理士は「個人・法人の収めるべき税金を計算する職業」です。

個人・法人が税理士と契約をすることで、税金計算・確定申告を委託することができるほか、必要な節税対策について相談することもできます。

つまり、税務署に納付する税額を計算するのが税理士である、という関係にあります。

新卒で会計事務所に就職するのは難しいですか?

いいえ、むしろ簡単です。

会計事務所業界では高い専門性が求められますが、繁忙期は忙しく離職率も(比較的)高いため、慢性的な人手不足にあります。

完全な売り手市場ですので、新卒で会計事務所に就職するのは簡単です。

会計事務所でのパートの働き方は?

会計事務所のパートさんは、基本的に「税理士補助」という仕事をします。

税理士や公認会計士の下で税務書類を作成・整理するほか、電話番やコピー等の雑務も任されるケースが多いです。

会計事務所・税理士事務所でのパートについて、詳しくは次の記事で解説しています。

税理士事務所で働くメリットは何ですか?

税理士事務所(会計事務所)は専門職なので、経験を積むことで専門性が高まり、転職市場での市場価値を高めることができます。

また、税理士事務所は働きながら税理士を目指すには最適な環境です。

働きながら市場価値を高め、最終的には税理士になって独立する、というのが会計事務所職員の王道キャリアです。

税理士事務所は雰囲気が悪いと聞きましたが、本当ですか?

全ての税理士事務所(会計事務所)がそうと言うわけではありませんが、雰囲気の悪い会計事務所があることは事実です。

実際、私が働いていた会計事務所の一部部署は、非常に雰囲気が悪かったです。

会計事務所は、一般企業に比べると規模が小さく閉鎖的であるため、所長やマネージャーの性格によって、組織・チームの雰囲気がガラッと変わります。(これは会計事務所あるあるです。)

このような内部情報は、求人票を見ているだけでは絶対に分からないため、転職エージェントを利用し内情を聞き出すことが大切です。


会計事務所に強い転職エージェントは?

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総合評価
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求人数約 5,500 件約 1,300 件約 1,000 件約 800 件約 600 件
対象年代20代~40代20代~50代20代~50代20代~30代20代~30代
設立2015年1990年2000年1996年1973年
資本金2億2740万円5億8600万円3400万円3800万円21億210万円
得意領域・会計事務所
・税理士法人
・経理   
・会計事務所
会計事務所士業全般税理士
特徴求人数No.1管理部門に強いややマイナー士業向け税理士向け
利用料金無料無料無料無料無料
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会計事務所業界での転職ならヒュープロ(Hupro)1択です。

なぜなら、上記のとおり会計事務所専門の転職エージェントであり、求人数もNo.1だからです。

会計事務所業界はとても専門性が高く、一人だけで情報収集をするのはほぼ不可能でしょう。

求人サイトから自分で求人を選んでしまうと、自分には合わない雰囲気の会計事務所に入所してしまう危険性もあります。

会計事務所業界で転職するなら、必ず「転職エージェント」を利用すべきです。

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