会計事務所に就職するには、どんな能力が求められる?【所長税理士が解説】

会計事務所で働くには、何が求められるの?【所長税理士が解説】

所長の藤沼です。

会計事務所で求められる能力は、非常に幅広く、多種多様です。

色々調べてみると、「経営スキルや資金調達のスキルが必要」と言った声も耳にします。

しかし、業界未経験者の方が求められるのは、もっとシンプルなスキルです。

そこで今回は、主に「会計事務所業界が未経験の方」に向けて、会計事務所で働くために必要なスキルを紹介します。

そんなに特異なスキルは求められないものの、人によっては向き不向きがあるでしょう。

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会計事務所で働くには、どんな「能力」が必要?

会計事務所で働くには、どんな「能力」が必要?

会計事務所で働くときに必要な「能力」は、大きく次の3つが挙げられます。

会計事務所で働くときに必要な「能力」
  1. PCの操作スキル
  2. コミュニケーション能力
  3. 税務に関する知識

それぞれ解説します。

PCの操作スキル

会計事務所で働く以上、必ずPCを操作することになります。

PCを触る具体的なシチュエーションは、次のとおりです。

PC操作が必要な具体例
  1. 会計ソフトへの入力作業
  2. 管理資料としてExcelに数値等を入力・修正する作業
  3. 組織概要などをWordにまとめる作業

上記に例として挙げましたが、基本、会計事務所での仕事はすべてPC作業になると思って差し支えありません。

中には紙(領収書)などの数値を手計算(電卓を使って計算)する、などアナログな作業も少しありますが、基本的にはExcelで計算したものを会計ソフトに入力します。

とはいえ、そこまで高いレベルのPCスキルは必要とされません。

初めてExcelに触れる方や、ブラインドタッチ(キーボードを見ずにPCを操作する)のできない方も、多くいます。

これらのスキルは、働きながら自然と身に付くのです。

なお、最近は自宅にパソコンがない方も増えているようなので、「PCが使えるかどうか」は採用時に確認されるケースが増えているように感じます。

コミュニケーション能力

会計事務所において、コミュニケーション能力が求められるシチュエーションは多いです。

具体的には、次のようなコミュニケーション能力が求められます。

コミュニケーション能力が求められる具体例
  1. チーム内での報告・連絡・相談など
  2. クライアント経営者に質問する力
  3. クライアント経営者の回答を整理する力
  4. クライアント経営者の回答から問題点を聞き出す力
  5. クライアント経営者に対して分かりやすく説明する力

会計事務所での主な仕事は、「会計ソフトへの入力作業」です。

しかし、そのためにはクライアント企業の「ビジネススキーム(お金の流れなど)」を理解できていることが前提にあります。

なぜなら、クライアント企業のビジネスによっては、同じ取引であっても異なる会計処理を行うケースがあるからです。

そのため、クライアント企業がどのようなビジネスを行っているのか、正しく聞き出す能力は大切です。

もちろん、未経験者の方が初めから経営者と対峙してヒアリングするようなケースは無いと思いますが、次第にこのような仕事も任されるようになるでしょう。

また、クライアント経営者と話をする際、税務に限らず様々な相談(人材の確保や、売上の増加など)をされることがあります。

このような税務以外の疑問・問題に対しても、情報を整理し、うまく説明するスキルも求められます。

私の周りを見ていても、こうしたコミュニケーションを得意とする方ほど、組織内で高い評価を得ていると感じます。

税務に関する知識

当然ですが、会計事務所では税務に関する知識が必要です。

もちろん、初めはなくて当然です。

税務に関する知識・スキルは働きながら徐々に身に付きますが、専門職である以上、多少の自己研鑽が求められることもあります。

最も早く税務スキルを身に着けたいのなら、私は「税理士試験科目」の学習をオススメします。

税理士は国家資格であり、一部科目合格であっても履歴書に書くことができます。

また、就活時においては高く評価される「日商簿記」の資格は、企業会計に関する資格であり、税務に関する資格ではありません。

あくまで仕事に最も役立つスキルは「税務」のスキルですので、より組織内で高く評価されるためにも、税理士資格の学習はオススメです。

仮に合格できなかった場合であっても、税法の読み方や体系を理解することができるため、実務には大きく役立つはずです。

会計事務所で働くには、どんな「資格」が必要?

会計事務所で働くには、どんな「資格」が必要?

会計事務所で働くときに役立つ「資格」は、次のとおりです。

会計事務所で働くときに役立つ「資格」
  1. 日商簿記2級
  2. 日商簿記3級
  3. 税理士科目(1~2科目)合格
  4. MOS

上から順に、役立ちやすい順番になっています。(コストパフォーマンスを重視)

最も評価されるのは「税理士科目(1~2科目)合格」ですが、1科目合格までに1年以上要するケースが一般的ですので、取得・就職までに長期間を要してしまうリスクがあります。

一方、日商簿記2級は3ヶ月~半年ほどで取得できるケースが一般的であり、かつ就活時には高く評価されるため、会計事務所への就職用に取るという戦略は大いにアリです。

会計事務所で働くには、最低限「簿記3級」が必要であり、特に「簿記2級」はコストパフォーマンスが高いということを覚えておきましょう。

会計事務所への就活で評価される資格について、詳しくは会計事務所への就職におすすめの資格は4種ある。の記事内で具体的に解説しています。

会計事務所で働くには、どんな「道具」が必要?

会計事務所で働くには、どんな「道具」が必要?

会計事務所で働くと、1つだけ、自分で用意しなければならない道具があります。

それは「電卓」です。

先述のとおり、会計事務所での仕事は基本PCであり、数値計算もExcel上で行います。(その方が正確ですからね)

しかし、全ての動作がExcelによるわけではなく、電卓を使うシチュエーションもあります。

たとえば、紙で出力された領収書の内訳数値を合計して会計ソフトに入力するような場合、内訳数値1つ1つをPCで入力する必要はないでしょう。

そんな時は、電卓上で計算したほうが打ち込むスピードも速いため、電卓を使うことになります。

また、簿記検定試験や税理士試験においても電卓は必須ですので、(試験を見据える意味でも)電卓は必ず用意しておきましょう。

会計事務所で用いる電卓は、基本的にどのようなものでも問題ありませんが、購入時は次のような電卓を選ぶことをオススメします。

おすすめの電卓の条件
  • 12桁表示
  • 日数計算機能あり
  • 消費税計算機能あり
  • √(ルート)機能あり
  • メモリー機能あり
  • サイレントキー(静音)

上記全てが揃った電卓なら、簿記検定試験などでも使用できるのでオススメです。

価格はそこそこ良い値段(3,000円~7,000円くらい)しますが、まず壊れることはないので、自己投資と考えましょう。

なお、電卓は「SHARP製」か「CASIO製」かによってキーの配列が少し違うので、実際に家電量販店などで触ってみて使いやすそうな方を選ぶと良いですよ。

未経験で会計事務所に就職するには?

未経験で会計事務所に就職するには?

未経験で会計事務所に就職するには、資格の取得が必要でしょう。

もちろん、資格なし&未経験でも応募できる求人はありますが(参照:会計事務所に強い!おすすめ資格ランキング)、入所後の育成制度にあまり期待できないことを考えると、予め資格学習により素地を作っておく方が良いと感じます。

未経験者に最もオススメの資格は「日商簿記検定」であり、時間があれば2級の取得をオススメします。

また、会計事務所業界は専門職であるため、事前に仕事のイメージを膨らませておくことも大切です。

身近に公認会計士や税理士の知人がいる方は、ぜひ、働き方を聞いてみて下さい。最もリアルに仕事内容・その後のキャリアをイメージできるはずです。

身近に会計事務所で働いている方がいない方は、転職エージェントに登録した後、担当者から聞くのもオススメです。

会計事務所に特化した転職エージェントであれば、リアルな働き方を教えてくれるはずです。

新卒で会計事務所に就職するには?

新卒で会計事務所に就職するには?

新卒者の場合、「新卒採用」及び「通年採用」のいずれにも応募することができます。

中堅規模以上(50名以上)の会計事務所・税理士法人の場合、新卒者の採用も行っているケースがあるため、新卒枠として応募することができます。

一方、小規模(50名未満)な会計事務所・税理士法人の場合、新卒採用枠がなく、通年採用に応募することになります。

新卒一括採用がある場合、同時期に入所する「同期」がいるため、通年採用よりも入所後に働きやすいと考えられます。

また、新卒採用の枠を設けている会計事務所・税理士法人では、新卒者・未経験者に対する教育体制・研修制度があるケースも多く、新卒者にとっては働きやすい環境にりやすいと考えられます。

なお、会計事務所・税理士法人を志望する新卒者に対して、特に求められるのは次の素養です。

新卒者に求められやすい素養
  • 素直さ
  • 学習意欲
  • バイタリティ

会計事務所での仕事には高い専門性が要求されるため、実務を通じて素直に吸収する力が求められます。

また、新卒者を採用するような会計事務所・税理士法人では、「将来的には、税理士を目指してほしい」というニーズが強いため、学習意欲も求められます。

そして、会計事務所には繁忙期があるため、それを乗り越えられるようなバイタリティも多少求められるでしょう。

なお、中堅以上の規模の会計事務所・税理士法人に応募する場合は、税理士科目(1~2科目)合格が要件とされるケースが多いため、念頭に置いておきましょう。

会計事務所に就職すると年収はいくらになる?

会計事務所に就職すると年収はいくらになる?

会計事務所に就職・転職した場合の平均年収は、約550万円です。

会計事務所全体の平均年収

地域下限平均上限平均平均年収求人数
東京444万円740万円592万円2,320件
東京以外383万円647万円515万円3,147件
全体409万円686万円547万円5,467件
(Hupro求人検索システムより抽出し集計した。)

「意外と高い」と感じた方も多いはずです。

ただし、会計事務所での年収は持っている「資格」や「経験」そして「仕事内容」によって異なります。

もちろん「未経験者」「無資格者」の場合は、もう少し給料水準は低くなります。

詳細は会計事務所に転職すると、年収はいくらになる?の記事でリサーチ結果を公開しているので、気になる方はご参考ください。

会計事務所に向いている人の特徴

会計事務所に向いている人の特徴

会計事務所業界が未経験の方にとっては、「自分が会計事務所業界に向いているのか?」も気になるでしょう。

会計事務所に向いている人の特徴は、次のとおりです。

会計事務所に向いている人の特徴
  1. 分からないことを自ら調べられる人
  2. コミュニケーション能力の高い人
  3. 細かい作業が好きな人
  4. 体力のある人
  5. 勉強が好き・向上心のある人

当てはまるものが多い人ほど、会計事務所に向いています。

また逆に、会計事務所に向いていない人の特徴もありますので、注意が必要です。

詳細は会計事務所に向いている人の特徴5選の記事で続きを解説しています。

会計事務所で働く際に、よくある疑問

その他、会計事務所で働く際によくある疑問をまとめました。


税理士事務所に就職するメリットは何?

税理士事務所(会計事務所)に就職メリットは、大きく6つあります。

  1. 税理士を目指す環境として最適
  2. 税務のスペシャリストになれる
  3. 将来のキャリアの選択肢が多い
  4. 保有資格が給与に反映されやすい
  5. 自宅から近い職場を選べる
  6. 組織経営を知ることができる

いずれも、税理士事務所で働いた場合特有のメリットです。

中でも、最も大きなメリットが「税理士を目指せる」ということです。

具体的な内容・例示は、税理士事務所で働くメリットは何? デメリットは?の中ですべて解説しています。

会計事務所に就職するのは難しい?

会計事務所への就職難易度は低く、会計事務所に就職するのは比較的簡単だと思います。

というのも、総務省統計局「経済センサス」の調査結果によれば、会計事務所の数は全国に25,000以上あります。(全国のコンビニ数の半数程度)

そして、会計事務所が多い結果として人材が確保できない状況となり、会計事務所業界は慢性的な売り手市場(求職者にとって有利な状況)にあります。

それこそ、複数の内定を獲得することも難しくはないでしょう。

私自身も会計事務所を経営していますが、常に人材確保には悩んでいますし、周りの税理士・公認会計士からもよく相談を受けます。

もちろん誰でも内定が取れるわけではありませんが、他の企業に比べれば、比較的就職しやすいのが会計事務所です。

会計士と税理士の違いは何?

会計士と税理士はいずれも高難度の国家資格ですが、独占業務に違いがあります。

すなわち、会計士の独占業務は一般企業の財務諸表を監査する仕事(会計監査)ですが、税理士の独占業務は個人及び法人に対する税務顧問等の税務業務です。

専門分野が「会計」なのか「税務」なのかという違い、またクライアントが「企業」なのか「企業・個人」なのかの違い等、両者は専門分野・クライアントの種類が大きく異なります。

会計事務所の就活時期はいつですか?

特に決まっていません。

大手会計事務所であれば、一般的な新卒採用の時期と合わせることが通例ですが、大半の会計事務所では通年採用をしており、基本的にはいつでも募集をしています。

ただし、多くの会計事務所では12月~5月が繁忙期となるため、6月~11月にかけて求人数が多くなる傾向にあり、この時期に就活をすることで多くの選択肢の中から選べる可能性があります。

税理士事務所の雰囲気が悪いというのは本当?

確かに、雰囲気の悪い税理士事務所はあります。

これは、一般に税理士事務所自体の規模が小さく、閉鎖的な雰囲気になりやすいからです。

もちろん全ての税理士事務所の雰囲気が悪いと言うわけではありませんが、そのような危ない税理士事務所を避けるためにも、就職前にリサーチすることが大切です。

ブラックな会計事務所に就職しない為の注意点は、ブラックな会計事務所の見分け方12選【所長が解説】の記事で詳細に解説しています。

会計事務所の離職率が高いというのは本当?

会計事務所業界全体の「離職率」というものは公表されていませんが、私自身の肌感覚でも、確かに会計事務所業界は離職率が高いと感じます。(外食産業や医療系ほどではないと思いますが。)

会計事務所の離職率が高い理由として、最も大きな理由は「繁忙期がある」ということでしょう。

繁忙期は残業時間が多くなり、私生活のスケジュールが立てづらくなります。

会計事務所の繁忙期について、詳しくは税理士の繁忙期はいつ?どのくらい忙しい?の中で具体的に解説しています。

会計事務所って何をするところ?

会計事務所での主な仕事内容は、次のとおりです。

会計事務所での仕事内容(代表例)
  • 記帳代行
  • 巡回監査
  • 決算業務
  • 税務申告

分かりづらいので要約すると、「取引を会計ソフトに入力し、決算書を作る仕事」です。

具体的な仕事内容については、会計事務所での仕事内容を詳細解説します。の記事で私たちのリアルを解説しています。


会計事務所で働くまでの流れ

会計事務所で働くまでの流れを、かんたんに解説します。


STEP
資格を取るか否かの意思決定をする

簿記2級や税理士科目などの資格を取ってから働くか、またはすぐに働くかの意思決定をします。

資格はあったほうが入所時の条件(年収や組織規模など)が良くなりますが、一方、無収入の期間ができ且つ長期間試験に合格でいないリスクもあります。

会計事務所に入所することさえできれば、働きながら簿記資格・税理士資格を取得することも可能です。

両者を天秤にかけ、今から就活をするか否かを決めます。

STEP
エージェントに登録する

就活をスタートする場合、第一に転職エージェントに登録します。

新卒でもエージェントを利用することは可能です。

なお、オススメの転職エージェントは後述します。

STEP
求人に応募&面接

自分の好きな条件を提示し、条件に合った求人に応募します。

会計事務所業界は非常に専門性が高い業界であることから、事前の業界リサーチは必須です。

エージェントは業界のプロですから、しっかりと税務業界の情報を聞き出し、自分の中で腑落ちしておくことが大切です。

STEP
複数の内定が出るので、その中から選ぶ

会計事務所業界は、常に人手不足の売り手市場です。

そのため、複数の会計事務所から同時期に内定が出ることも多いでしょう。

エージェントを通じて就活・転職活動をしている場合、内定獲得後に「年収交渉」を依頼することができます。

場合によっては年収アップを依頼し、より希望する条件に合った会計事務所を選ぶと良いでしょう。

STEP
入所

会計事務所の内定後、通常は1~3ヶ月以内に入所することになります。

ただし、個別の事情がある場合には、入所日を引き延ばしてもらう交渉もできます。


会計事務所に強い転職エージェントは?

先述のとおり、会計事務所に就職・転職するには、転職エージェントの利用が必須です。

会計事務所の求人を扱う転職エージェントは非常に多いですが、特に会計事務所に強い転職エージェントは、次のとおりです。

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ヒュープロ
(Hupro)
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キャリア
マイナビ
税理士
ヒュープロMS-Japan人材ドラフトジャスネットキャリアマイナビ税理士
総合評価
( 10/10 )

( 9/10 )

( 7/10 )

( 6/10 )

( 6/10 )
求人数約 5,500 件約 1,300 件約 1,000 件約 800 件約 600 件
対象年代20代~40代20代~50代20代~50代20代~30代20代~30代
設立2015年1990年2000年1996年1973年
資本金2億2740万円5億8600万円3400万円3800万円21億210万円
得意領域・会計事務所
・税理士法人
・経理   
・会計事務所
会計事務所士業全般税理士
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上記のとおりですが、最も強いと感じたのはヒュープロ(Hupro)です。

なぜなら、唯一「会計事務所に特化した転職エージェント」であり、求人数がダントツで多いからです。

会計税務の業界は「高い専門性」が求められるため、(転職においても)業界への深い知識が必要です。

業界への知識が浅いエージェントを選んでしまうと、自分に合わない会計事務所を選んでしまう可能性があります。

転職エージェント選びも間違えないよう、ご注意ください。

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