会計事務所への就職におすすめの資格は4種ある。【所長税理士が解説】

会計事務所に強い!おすすめ資格ランキング【所長税理士が解説します】

所長の藤沼です。

会計事務所への就職・転職のために、「資格を取りたい」と考える方は多いでしょう。

しかし、中には役立つ資格役立たない資格があります。

就職に役立たない資格を取ってしまっては、就活を有利に進めることができないほか、「時間のムダ」になることさえ考えられます。

そこで今回は、会計事務所の採用側の視点として、「こんな資格を持っていたら就活に有利になる」と感じる資格を紹介します。

想定読者
  • 会計事務所業界が未経験の方。
この記事を書いた人

1986年生まれ(37歳)
税理士・公認会計士

2014年 EY新日本監査法人 入社
2018年 中堅会計事務所 入社
2019年 藤沼会計事務所 開業
2020年 アカウントエージェント㈱ 代表取締役


目次

会計事務所に強い!おすすめ資格ランキング【4選】

会計事務所に強い!おすすめ資格ランキング【4選】

会計事務所への就職・転職に役立つ、おすすめの資格は次の4種です。

会計事務所に強い!おすすめ資格ランキング

資格コストパフォーマンス
1位:日商簿記2級
2位:日商簿記3級
3位:税理士科目(1~2科目)合格
4位:MOS

※ 各資格名をタップすると、該当の見出しにジャンプします。

私自身、過去に上記4種すべてに合格していますので、「時間効率」の観点からも解説します。

なお、「公認会計士資格」及び「税理士資格」については、未経験の方が会計事務所へ就職するために取得を目指す資格ではないため、ここでは取り上げません。(どちらかの資格があれば、大半の事務所で採用されます。)

【1位】日商簿記2級

会計事務所に就職・転職するなら、簿記2級が最もコストパフォーマンスに優れています。

理由は3つあります。

日商簿記2級のコスパが高い理由
  1. 求人数が多い(採用ニーズが高い)
  2. 3ヶ月~6ヶ月程度で取得できる
  3. 簿記3級と比較し、平均年収が約40万円高い

第一に、簿記2級取得者向けの求人が多いです。

下記の表は、Huproという会計事務所専門エージェントの「求人票」を抽出し、集計した表です。

簿記2級取得者向けの求人数(未経験者OK)

簿記2級求人全体
東京都241件(45%)533件
東京都以外350件(49%)708件
(合計)591件(48%)1,241件
Hupro求人検索システムより抽出・集計)

「未経験者OK」の求人のうち、約半数の会計事務所が応募条件に「簿記2級」を含めていることが分かりました。

後述しますが、「資格不問」の求人に対しても応募できるため、求人全体の60~70%程度の需要があることが分かります。

また、簿記2級を取ると「年収が上がる」というメリットもあります。

簿記2級・3級の会計事務所の年収比較(未経験者OK)

簿記2級簿記3級
東京都450万円405万円
東京都以外448万円411万円
(全体)449万円409万円
Hupro求人検索システムより抽出・集計)

上記のとおり、簿記2級取得者向けの求人は、簿記3級取得者向けの求人に比べ、平均約40万円ほど年収が高くなります。

単純に求人が多いだけでなく、年収水準が高いことからも、「簿記2級取得者」へのニーズの高さが伺えます。

たった3ヶ月~半年程度勉強するだけで年収が40万円上がるのですから、自己投資という意味でも、簿記2級はコストパフォーマンスの高い資格であると断言できます。

なお、会計事務所の年収に関しては、会計事務所に転職すると、年収はいくらになる?の記事で詳細リサーチの結果を公開しています。

【2位】日商簿記3級

日商簿記2級ほどではありませんが、日商簿記3級も(会計事務所への就職において)コスパに優れた資格です。

理由は2つあります。

日商簿記3級のコスパが高い理由
  1. 応募できる求人が少し増える
  2. 1ヶ月~3ヶ月程度で取得できる

実際に転職サイトの求人票を見ていると、応募条件に「簿記3級」と記載している会計事務所が散見されます。

実際の簿記3級に対するニーズ(求人数・割合)は、下記のとおりです。

簿記3級取得者向けの求人数(未経験者OK)

簿記3級求人全体
東京都64件(12%)533件
東京都以外120件(17%)708件
(合計)184件(15%)1,241件
Hupro求人検索システムより抽出・集計)

「未経験者OK」の求人のうち、約15%の会計事務所が応募条件に「簿記3級」を含めていることが分かりました。

簿記2級取得者に比べて求人数は減るものの、少なくとも、応募できる会計事務所は増えるでしょう。

簿記3級を取得しておくことで、会計税務に関する最低限の知識の証明ができるほか、会計税務業界へ志望意欲の証明にもなるため、内定率も当然上がります。

簿記3級試験はかなり難易度の低い試験であり、合格率は大体40%~50%程度です。(参考:日本商工会議所「3級受験者データ」

そのため、私たち採用者側としては「うちに応募するなら、普通は簿記3級くらい取っているよね?」という感覚があります。

勉強期間も1~3ヶ月程度で取得できてしまうため、簿記3級も(会計事務所への就職という観点で)コストパフォーマンスの優れた資格であると言えます。

【3位】税理士科目(1~2科目)合格

税理士科目(1~2科目)合格を、応募条件とする会計事務所も多くあります。

具体的な求人数は、次のとおりです。

税理士科目合格者向けの求人数(未経験者OK)

税理士科目合格求人全体
東京都229件(43%)533件
東京都以外374件(53%)708件
(合計)603件(49%)1,241件
Hupro求人検索システムより抽出・集計)

簿記2級と同程度の需要があり、また平均年収も簿記2級に比べて30万円ほど上がります。

しかし、税理士試験は非常に難易度が高く、1科目の合格に1年以上費やす方も多いでしょう。(試験は年に一度なので、一度落ちるともう一年掛かります)

あくまで本ランキングは「コストパフォーマンス」のランキングですので、時間効率を踏まえると、簿記2級・簿記3級ほどコスパは良くないと感じます。

ただし、会計事務所への就職を考える方の中には、将来税理士になることを目標にされている方も多いでしょう。

そんな方は、まず下記の科目の中から学習を始めることをオススメします。

特に評価されやすい税理士科目
  1. 消費税法
  2. 法人税法
  3. 所得税法
  4. 簿記論
  5. 財務諸表論

上記科目は、会計事務所への就職・転職において、評価されやすい科目です。(通常の税務でまず触れる分野なので)

上から順番に評価が高く、「消費税」は会計事務所において最も重宝される傾向にあると感じます。

逆に、たとえば「相続税」はリスク・難易度が高く、ベテラン税理士や所長税理士が担当するため、就活においてあまり評価されない傾向にあります。

税理士を目指しながら戦略的に就活を進めるのであれば、上記5科目のいずれかの学習からスタートされると良いでしょう。

なお、働きながら税理士を目指す方向けに、無理なく働きながら税理士に合格できる「職場」の選び方という記事が非常に参考になるはずです。

【4位】MOS

MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)は、主にExcel・Wordなど、マイクロソフトオフィス製品の利用スキルを証明できる資格です。(参照:MOS公式「MOSとは」

会計事務所での仕事では、ほぼ確実にExcel(エクセル)を用います。

そのため、エクセルを使いこなせる証明として、MOSもある程度の評価を得ることができます。

ただし、MOSを取得しているから直ちに採用、とはなりません。

MOSはあくまで予備としてアピールするための資格であり、簿記資格があることが前提です。

近年は自宅にPCがない方や、PCを利用したことがない方も増えているため、PCスキルの有無を事前に確認したいという会計事務所が増えています。

合格率は80%程度(非公表)とかなり高く、合格に必要な勉強時間も非常に短いため、簿記を既にお持ちであれば取得を検討するのもアリでしょう。

ただし(くどいですが)MOSの取得は必須ではありません。

会計事務所への就職にあまり役立たない資格

会計事務所への就職にさほど役立たない資格

逆に、会計事務所への就活・転職時、あまり役立たない資格は次のとおりです。

会計事務所への就活・転職であまり役立たない資格

資格あまり役立たない理由
 日商簿記1級・難易度が高いわりに評価されない 
・税務の知識があまり身に付かない 
 ビジネス会計検定・マイナーなため採用で評価しづらい
・簿記資格の方が評価される    
 建設業経理士・実務経験がなければ評価されない 
・単体では簿記資格の方が評価される
 FP・税務の知識があまり身に付かない 
・金融系の知識はあまり評価されない
 社会保険労務士・税務の知識があまり身に付かない 
・難易度が高いわりに評価されない 
 中小企業診断士・経営コンサルはほぼ必要とされない
・難易度が高いわりに評価されない 
 USCPA・税務の知識があまり身に付かない 
・難易度が高いわりに評価されない 

上記の中でも、「簿記1級」を取ろうとされる方が比較的多いように感じます。

しかし、簿記1級で学習する科目となる「工業簿記」「原価計算」は、会計事務所ではほぼ使わない知識であり、完全にオーバースペックになります。

簿記1級は「経理」への転職ならオススメの資格ですが、会計事務所向きではありません。(断言)

取ったとしても応募できる求人はさほど多くなく、会計事務所側のニーズは低いのです。

ただし、簿記1級は税理士試験の受験要件の1つであるため、税理士を目指すために取るのは全く問題ありません。

あくまで本記事は、「直近で会計事務所に就職するための資格」のご紹介です。

会計事務所は資格なしでも就職できる?

会計事務所は資格なしでも就職できる?

結論から言えば、会計事務所へは「資格なし」でも就職・転職可能です。

ただし、未経験者向けの求人はやや少ないです。

資格不問の求人数(未経験者OK)

資格不問求人求人全体
東京都77件(14%)533件
東京都以外104件(15%)708件
(合計)181件(15%)1,241件
Hupro求人検索システムより抽出・集計)

「未経験者OK」の求人のうち、約15%が「資格不問」の求人であることが分かりました。

一見すると「簿記3級取得者」向けの求人数と同等に見えますが、簿記3級取得者の場合はこの「資格不問」の求人にも応募することができますから、簿記3級取得者の半分の求人しかないと捉えるのが正しいでしょう。

しかし、今すぐ会社を辞めたい方や、すぐに会計事務所で働き始めたい方も多いはず。

そんな方は、資格取得よりも就職を優先すべきだと思います。

なぜなら、会計事務所業界では「資格の有無」よりも「実務経験」の方が遥かに重視されるからです。

これも単なる私の感想ではなく、求人数として表れています。

下記のデータは、「実務経験あり」かつ「資格なし」の方に対する会計事務所の求人数です。

資格不問の求人数(実務経験あり

資格不問求人
東京都488件
東京都以外643件
(合計)1,130件
Hupro求人検索システムより抽出・集計)

「簿記2級・未経験者」の方向けの求人数に比べ、求人は2倍になっています。

つまり、ある程度実務経験を積んだほうが、その後のキャリアで選択肢が広がることを意味しています。

もちろん、簿記資格を取得することで更に応募できる求人が増えますから、まずは資格なしで会計事務所に就職・転職し、働きながら簿記資格・税理士科目を取得する、というプランがオススメです。

なお、会計事務所の求人数はHuproが全エージェント中最も多いため、Huproの利用をオススメします。

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会計事務所で働くには、どんなスキルが必要?

会計事務所で働くには、どんなスキルが必要?

資格以外に会計事務所で評価されるスキルは、次のとおりです。

会計事務所で働くときに必要な「スキル」
  1. PCの操作スキル
  2. コミュニケーション能力
  3. 税務に関する知識

会計事務所での仕事は、基本的にPC上で進めることになるため、PCの操作スキルは必要になります。

もし今までPCに触れたことがない方は、先述の「MOS」を取得しておき、最低限のPC操作・エクセル操作ができることを示すと良いでしょう。

また、会計事務所ではチーム内・対クライアントでのコミュニケーションが多いため、コミュ力も多少必要になります。

会計事務所で必要となるスキルの詳細は、会計事務所で働くには、何が求められるの?の記事内で続きを解説しています。

会計事務所は「未経験者にはきつい」って本当?

会計事務所は「未経験者にはきつい」って本当?

たまに、「会計事務所は未経験者にはきつい」という声を耳にします。

確かに、人によって「きつい」と感じる方はいるでしょう。

そのケースとして、おそらく次の3つのいずれかではないかと思います。

きついと感じるシチュエーション
  • 繁忙期がある
  • 自己研鑽の時間がなかなか取れない
  • 研修制度などが整っていないことがある

会計事務所には「繁忙期」という忙しくなる時期があります。(通常、12月~3月・5月が繁忙期)

閑散期(通常期)よりも残業が増えるため、1年目の方の場合、はいきなり忙しくなることに戸惑う方も多いでしょう。

また、特に1年目は覚えることが多いため、「自己研鑽」に当てる時間の余裕もないケースがあります。

例えば、未経験で会計事務所業界に入り「よし、税理士を目指すために勉強もしよう!」と意気込んだものの、あまりの忙しさに途中で挫折しそうになる…という話はよく耳にします。

そして、多くの会計事務所は人員数50人未満の小さな組織であるため、研修・育成のための制度が十分でないケースがあります。

大手企業などを経験された方の場合、所内制度の少なさに驚くかもしれません。

ただし、いずれにも共通しているのは「結局は慣れる」ということです。

私自身も会計事務所業界に長いこと居ますが、初めは戸惑ったものの、2年目・3年目と経験を積むに連れて慣れました。

会計事務所で役立つ資格に関する、よくある疑問

その他、会計事務所で役立つ資格に関するよくある疑問をまとめました。


会計事務所では、何をするの?

会計事務所の仕事内容は、大きく次の3つです。

  • 記帳代行
  • 決算業務
  • 税務申告

いずれも「税金計算」に関する業務という共通点があります。

ただし、会計事務所の方針によっては、その他にも様々なサービスに関与する可能性があります。

会計事務所での具体的な仕事内容については、会計事務所での仕事内容を詳細解説します。の記事で細かく解説しています。

会計事務所で働くメリットは何ですか?

最も大きなメリットは、専門性が磨かれ、会計税務の業界で重宝されるようになることです。

会計事務所での経験から得たスキルは、他の会計事務所でも転用することのできるスキルであり、また経理においても一定の経験を活かすことができるため、汎用性の高いスキルです。

また、簿記資格の取得が容易になるほか、税理士資格の取得の為に役立つスキルが身に付く、というのも大きなメリットの1つです。

会計事務所が向いている人はどんな人?

会計事務所が向いている人の特徴は、次のとおりです。

  • 分からないことを自ら調べられる人
  • コミュニケーション能力の高い人
  • 細かい作業が好きな人
  • 体力のある人
  • 勉強が好き・向上心のある人

当てはまるものが多い人ほど、会計事務所が向いていると言えます。

また、逆に向いていない人の特徴もあります。

詳しくは、会計事務所に向いている人の特徴5選【所長が解説】の記事内で解説しています。

会計事務所への就職は難しいですか?

いいえ、一般的に会計事務所への就職難易度は低いと言われます。

なぜなら、会計事務所業界は慢性的な人手不足にあり、売り手市場だからです。(私もスタッフさん欲しいです…)

ただし、30代以降になると「完全未経験」の方は就職しづらくなります。

公認会計士って何する人?

公認会計士とは、主に企業の決算書を監査する人をいいます。

会社法上の大会社や上場会社には、決算書(会社の成績表)を公開する義務があり、この成績表をもって投資家から資金を調達しています。

しかし、決算書は企業自身が作成するため、意図的に売上を水増しすることで成績を良く見せること(粉飾)ができてしまいます。

そこで、公認会計士が第三者機関として監査人となり、独立の立場から決算書の正しさを証明する役割を担うのです。

公認会計士の初任給っていくら?

公認会計士試験に合格すると、大半の合格者が大手監査法人に就職することになります。

大手監査法人の初任給はその年によって若干変動しますが、おおよそ月30万円~35万円が近年の相場です。

公認会計士試験ってどれくらい難しい?

公認会計士試験の難易度に関しては、東京大学理科三類に現役合格し、在学中に司法試験に合格、そして公認会計士試験にも合格した河野玄斗さんの体験談が参考になります。

河野玄斗さんの話によれば、公認会計士試験の難易度は、東大理三・予備試験よりは易しいものの、司法試験よりも少し難しく、東大(理三以外)と同じくらいの難易度であったとのことです。

一応情報源として、当該難易度を解説している動画を貼り付けておきます。↓

ちなみに私自身は、1日7時間~8時間程度の勉強を3年間ほぼ毎日継続し、ようやく合格できました。

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未経験者が会計事務所に就職する際にやるべき事

以上、まとめると会計事務所への就職・転職においては、簿記2級が最もコストパフォーマンスに優れていると言えます。

なお、未経験者の方が会計事務所に就職する場合、「資格の取得」以外にも重要なことが3つあります。

未経験者が会計事務所に就職する際の重要ポイント
  • 「税理士補助」を選ぶ
  • 「既に未経験者が働いている」事務所を選ぶ
  • 必ず「転職エージェント」を使う

いずれも必須レベルの重要度です。

詳しくは、未経験で会計事務所に転職するコツ4選の記事で、続きを解説しています。

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