税理士事務所でのパートって難しい?きつい?仕事内容を税理士が全て解説します。

会計事務所でのパートの仕事内容を、所長が解説

所長税理士の藤沼です。

以前は会計事務所でスタッフとして働いていましたが、現在は会計事務所を経営しています。

私の事務所もそうですが、パート職員の応募がとても多く、ニーズの多さを特に感じます。

そして、パートさん・アルバイトさんから最もよく受ける質問が「仕事は難しいですか?」「きついですか?」というご質問。

分かります。
パートさんは時短勤務を望む方が多いので、業務量・難易度を気にされる傾向にあります。

そこで本記事では、税理士事務所のパートさんの仕事量仕事内容、そして働くメリットデメリットを解説します。

採用者目線・所長視点での解説もしていますので、パートに応募される前にご参考いただき、事前に失敗を回避していただければと思います。

この記事で分かること


  • パートの業務量は、その事務所の方針によって大きく異なる
  • 仕事内容は正社員に比べると雑務の比重が増える
  • 専門性が求められるが、業務の難易度は正社員よりもやや低い
  • 専門職なので、初めは当然きつい
  • 簿記資格はほぼ必須
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目次

税理士事務所でのパート職員の仕事内容

税理士事務所でのパート職員の仕事内容は、次のとおりです。

会計事務所でのパートの仕事内容(代表例)
  • 記帳代行(会計ソフトへの仕訳入力)
  • 決算業務・補助
  • 給与計算・年末調整
  • 証憑類(領収書・請求書・契約書など)の整理
  • 電話応対・来客対応
  • コピー取り
  • その他、雑務

通常の税理士補助業務もありますが、正規職員に比べると、総務的な作業(雑務など)も任される傾向にあります。

しかし、これらも税理士事務所では必要な仕事です。

たとえば「証憑類の整理」については、電子帳簿保存法という税法上の規定があり、書類を7年間適切に保存しなければならないと定められています。

そのため、「書類整理」という仕事も(税理士事務所として)重要な業務の1つです。

ただし、パート職員の仕事内容は、他の職員と比べて難易度の低い業務が割り当てられる傾向にあります。

完全未経験の場合は「難しい」と感じるかもしれませんが、1年ほど経験を積めば、あとは同じ作業の繰り返しです。

具体的な会計事務所での仕事内容について、詳しくは会計事務所での仕事内容を詳細解説します。の記事内で紹介しています。

税理士事務所でのパートはきつい?仕事量は多い?

これはパートに限った話ではありませんが、税理士事務所での仕事が未経験の方の場合、1年目は「きつい」と感じるケースが多いです。

先述の仕事内容の項目でもサラッと触れましたが、税のスペシャリストとして専門知識・経験が求められるからです。

もちろん未経験でも採用はされるのですが、仕事を進めながら知識を蓄えていく必要はあります。

税の仕事は、日常ではまず培われない知識が必要になるため、初めは難しいと感じる方も多いです。

一方、「業務量」については税理士事務所の方針によって異なります。

例えば、私の事務所ではパート職員は残業ゼロにしていますが、逆にパート職員にも非常に多くの残業をさせている事務所も存在します。

この辺りは所長の方針によって大きく異なるので、ゆるい働き方を望む方は、転職エージェントの担当者経由で確認する、または面接時に直接確認すべきです。

会計事務所でパートとして働いている人の属性

会計事務所では、大きく4種類の人がパートとして働いています。

どんな人がパート職員として働いている?

主婦の方|会計事務所は女性が働きやすい職場

最も多いのが、主婦の方です。

私の会計事務所にも、一番多く応募があります。

主婦の方と一緒に働いてみて思ったのが、とても細やかな仕事をされる方が多いということです。

女性特有だと思いますが、細やかな作業を得意とされる方が多く、非常に助かっています。

おそらく、主婦の方に向いている仕事だろうと思いますし、だからこそ主婦の方を積極的に採用する会計事務所が多いです。

税理士受験生|働きながら税理士を目指す環境としてベスト

次に多いのが、税理士受験生の方です。

会計事務所は、税理士を目指しながら働く環境としてベストな環境であるといえます。

なぜなら、税理士補助としての実務経験を積みながら、受験の知識を活かし、かつ独立後のイメージを知ることができるからです。

また 会計事務所側からすると、税理士受験生は即戦力となるほか、「少なくとも試験合格までは辞めないだろう」という印象があることから、積極的に採用しやすいのです。

会計事務所には税理士受験生が多いため、受験勉強に対する理解ある事務所が多いです。

公認会計士受験生

かなりレアケースですが、会計士受験生の方も会計事務所で働くケースがあります。

所長が公認会計士であり、会計監査サービスを提供しているような会計事務所では、公認会計士登録に必要な実務経験を満たせるケースがあるからです。

とはいえ、会計士は税理士と働き方が大きく異なり、税務のスキルはそこまでキャリアに活かせませんから、会計士受験生が会計事務所で働くメリットは(税理士受験生に比べると)小さいです。

会計事務所でパートをする3つのメリット

会計事務所でパートとして働くメリットは、大きく3つあります。

それぞれ、かんたんに解説します。

選べる条件が豊富|柔軟な働き方でリモートが可能な場合もある

会計事務所でのパート勤務は、働き方のバラエティが豊富です。

たとえば…

  • 週3日勤務
  • 1日4時間勤務
  • 扶養枠内で勤務したい
  • 服装・髪型・髪色・ネイル自由など
  • リモート可
  • 学校行事等での休暇にも対応

といった感じです。

パートさんはお客様と直接接する機会がほぼありませんから、身なりの制限はないケースが多いです。

また、主婦の方が多いことから、パートさんごとに様々な働き方を認めているケースが多いのです。

ここまで自由度の高い組織は、少ないでしょう。

税理士受験生が働きやすい|仲間が多く実務・座学の親和性が高い

多くの会計事務所では、税理士受験生を積極的に採用しています。

その理由は、次のとおりです。

税理士受験生を積極採用する主な理由

  • ある程度の知識レベルが担保され、採用後すぐに戦力になる
  • 所長自身も受験生活の大変さを知っているため、学習への配慮がしやすい
  • 少なくとも5科目合格までは、会計事務所を辞める可能性が低い
  • 後継者問題を解決できる可能性がある

もちろん、私の事務所でスタッフを採用する際にも、上記の視点が入っています。

主婦パートの方があくまで一時的な勤務であるのに対して、税理士受験生の方は、ある程度の年数関与してくれる傾向が強いです。

そのため、受験生の方とは良好な関係を築きたいというファクターが生まれ、税理士受験生の方にとって働きやすい環境が整備されやすいでしょう。

また、受験勉強で学習している知識をそのまま実務で活用できることは、インプットの強化(忘却対策)になることから、受験勉強との相乗効果も生まれます。

税理士受験生にとって、会計事務所はベストな環境だと思います。

未経験から専門スキルを学べる|その後のキャリアの選択肢も多い

会計事務所は、「会計・税務」業界へのファーストキャリアとしてお勧めです。

なぜなら、税務の知識はほとんどの企業で必要とされるスキルだからです。

税務の知識を活用できる職種

  • 会計事務所
  • 税理士法人
  • 事業会社の経理部
  • 監査法人
  • 会計系コンサルティング会社

上記の職種のうち、最も未経験者が参入しやすいのが「会計事務所」です。

これから会計・税務業界でスキルを磨きたい方には、強くオススメできる職種です。

会計事務所でパートをする3つのデメリット

一方、会計事務所でパートとして働くことには、デメリット(注意点)があります。

それぞれ、解説します。

未経験だと1年目に覚えることが多い|最初はきついと感じるかも

会計事務所の仕事は、非常に専門性が高いです。

簿記3級・簿記2級を持っていたとしても、実際に仕事をしてみると、本当に分からないことだらけのはずです。

私は公認会計士・税理士資格を持っていますが、初めて会計ソフトに触れたときは、教わりながらでなければ操作できませんでした。

それほどまでに、1年目は覚えることが多いのです。(複雑というわけではなく、単純に覚える量が多い)

「未経験者歓迎」の求人だからと言って、誰でもできる楽な仕事というわけではありませんから、気合を入れて臨まれたほうが良いと思います。

細かい作業が多く集中力が求められる|真面目さ・丁寧さが必要

会計事務所では、お客様のお金を計算することになります。

扱うのがお客様のお金であることから、計算を間違うことは許されず、集中力が求められます。

たとえば、領収書を1枚1枚チェックし、すべて網羅的にExcelに数字を入力するような仕事があります。

この時、雑に仕事をしていると領収書を1枚チェックし忘れたり、数値を二重に入力してしまったりします。

そのため、常に仕事に細やかさが求められます。

(たまに「1円単位で合わせないと~」などと表現されることがありますが、正直、計算はExcelで行うので1円のような端数がズレることはありません。)

ちなみに、算数や数学などの知識はほとんど必要ありません。

足し算・引き算ができれば問題なく、難易度は高くないものの「真面目さ」が必要だと思います。

所長の性格によって事務所の雰囲気が大きく異なる

デメリットというよりも、会計事務所を選ぶ際の注意点です。

会計事務所はとても小さな組織であるため、所長の権限が強く、事務所によって雰囲気が大きく異なります。

また、組織経営を経験したことのない税理士が簡単に開業できるため、ブラックな(酷いとパワハラをするような)会計事務所も存在します。

このような会計事務所を回避するためには、面接時に所長の性格を見極める必要があります。

面接だからと言って受け身にならず、相手の性格が自分に合うかどうか、という視点で面接を受けることをオススメします。

会計事務所でのパートの時給はいくら?

会計事務所でのパート・アルバイトの時給を、実際にリサーチしてみました。

会計事務所の給与相場(地域別)

会計事務所の給与相場(地域別)
参考ソース:求人ボックス

全国平均では、約1,000円/時 が相場といえるでしょう。

また、東京都では「派遣社員」の時給相場が非常に高いことも分かります。

私の事務所でもそうですが、未経験者の多いアルバイト・パート職員は給与を低めに設定し、スキルの高まった従業員・派遣社員以上の方には、給与水準を高く設定しています。

そのため、初めは給与水準が高くとも、スキルアップが認められるとグッと給与水準が上がる会計事務所は多いと思います。

未経験の方であっても、これから会計税務の専門性を高めていきたい、という方にはオススメの仕事です。

なぜ税理士事務所では未経験者をパートで採用するのか?

税理士事務所では、「未経験者」を求めるケースが多く、未経験OKのパート求人があふれています。

その理由は、業界全体としての人材不足があります。

というのも、日本では「法人数」が増加傾向にあるため、必然的にクライアント数も増え、税理士事務所では人手不足になるのです。

法人税申告件数の推移

法人税申告件数の推移グラフ
令和4事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要|国税庁

法人数が増えると法人税の申告件数が増え、結果として利子事務所へのニーズも増加します。

これにより慢性的な人手不足に陥っており、私の事務所でも年々、採用が厳しくなっています…。

ただし、1点注意してほしいことがあります。

「未経験者歓迎」と謳っている事務所であっても、教育環境が整っているわけではないのです。

小さな会計事務所の中には、未経験者への教育が十分でない事務所も、たくさんあります。

求人に「未経験者可」と明記されているからと言って、すぐに応募するのは危険です。

必ず、転職エージェントから内情をヒアリングし、教育環境が整備されているのか(丸投げされないのか)を確認してください。

私は、ブラックな会計事務所をいくつか目にしたことがあります。

ご注意ください。

会計事務所のパート求人の探し方

会計事務所のパート求人を探す際のポイントを解説します。

① 主婦の方が働きやすい会計事務所の探し方

主婦の方が働きやすい会計事務所のポイントは、次の3点です。

主婦が働きやすい会計事務所
  1. パート主婦の比率が高い
  2. 仕事内容以外の情報が豊富
  3. 家から近い、通いやすい

第一に見るべきポイントは、主婦の比率の高さです。

主婦の方が多い会計事務所は、それだけ「主婦の方にとって働きやすい環境であること」を示しています。

また、同じような悩みをもった先輩職員が多い会計事務所では、急な早退や休暇にも理解をしてもらえる可能性が高いです。

次に見るべきポイントは、仕事内容以外に、働きやすさに関する情報が豊富であることです。

たとえば次のような求人は、主婦の方が非常に働きやすいはず。

主婦向け求人の良い例

主婦向けの会計事務所求人の良い例

主婦の方目線で情報が多く記載されており、おそらく、主婦のスタッフの方が自ら作成した求人票だと思います。

パートで働く主婦の方が「オススメしたい」と思えるような会計事務所は、とても働きやすい事務所のはずです。

そして3つ目に見るべきポイントは、自宅からの通いやすさです。

主婦のスタッフの方からよく聞くのが、子供の送り迎えのための時間・出勤のための時間が長い、という悩み。

ただでさえ時間の足りない主婦の方にとって、「通勤時間」はできる限り削減したいものです。

そのため、自宅からの通いやすさも考えたり、または完全リモートの会計事務所を選ぶのも良いと思います。

② 税理士受験生の方が働きやすい会計事務所の探し方

働きながら税理士資格の取得を目指す場合、第一に優先すべきは学業でしょう。

仕事量が多いあまり、税理士試験に落ちてしまっては本末転倒です。

そこで、学業を優先するために、次の3点を確認しましょう。

税理士受験生が働きやすい会計事務所
  1. 「残業なし」と明記している
  2. できれば繁忙期も残業なし
  3. 自宅から通勤しやすい

第一に優先すべきは、残業がないことです。

求人票に「残業なし」と明記されていたとしても、その後条件が変わっている可能性がありますので、応募する際にも「残業の有無」を念のために確認してください。

また、できれば繁忙期も残業ゼロで帰れる会計事務所を選んだほうが良いです。

なぜなら、繁忙期が入ると自習時間が減り、せっかくインプットした知識が抜け落ちるリスクがあるからです。

特に、簿記や税法は、少しでも「勉強しない期間」ができてしまうと、驚くほど忘却が進んでしまいます。

いくら仕事で会計税務に触れるとはいえ、仕事で携わらない論点の知識は、(復習をしなければ)どんどん忘れてしまいます。

あくまで税理士試験に合格することを目標にされるなら、残業量にはご注意ください。

また関連して、通勤時間もできれば短いほうが良いでしょう。

※ ただし、電車の中で学習できる環境がある方は、あまり問題ないと思います。

税理士事務所のパートに関するよくある疑問・回答

税理士事務所のパートに関するよくある疑問・回答をまとめました。


税理士事務所のパートの仕事って難しいですか?

経理・税務の実務経験がない場合、1年目は難しいと感じるでしょう。

なぜなら、税理士事務所での仕事では高い専門性が要求されるからです。

ただし、税理士事務所での仕事は毎年同じような業務の繰り返しですから、2年目以降は徐々に仕事が楽になる傾向にあります。

税理士のパートの時給相場はいくらですか?

税理士のパート時給相場は、1,000円~2,000円と幅広いです。

東京都内であれば時給単価は高くなり、地方になると時給単価は安くなる傾向にあります。

また、経験者ほど時給単価は高く、未経験者は時給単価が安いです。

50代でも税理士事務所でパートとして働けますか?

はい。可能です。

ただし、実務経験はほぼ必須です。

50代未経験でパートから採用されるケースは、少なくとも私は見たことがありません。

40代未経験でも会計事務所のパートとして働けますか?

はい。可能です。

実際、40代未経験の女性が会計事務所のパートとして働き、その後正社員として登用されているケースを沢山目にしてきました。

ただし、基礎的なPCスキル・簿記の知識は必須です。

会計事務所のパートについていけない事ってありますか?

はい。残念ながら人によって向き不向きがあるので、働いてみて「ついていけない」と感じる方も一定数います。

具体的には、「話ながら仕事をしたい人」「細かな作業が苦手な人」は、会計事務所に向いていません。

税理士事務所でのパート体験談が知りたいです

税理士事務所でのパート体験談については、次の記事内で40代女性パート職員にインタビューをしています。

パートとして働いていて「楽しい」と感じたことや、逆に「辞めたい」と感じたこと等、赤裸々に紹介していますのでぜひご覧ください。

未経験で税理士事務所のパートに応募する際の志望動機は何が良いですか?

未経験で税理士事務所のパートに応募する際の志望動機では、「淡々と作業をこなすのが好き」「コミュニケーションを取りながら作業を進めるのが得意」といった点をアピールすると良いです。

税理士事務所では事務作業がメインになりますが、高い専門性が要求されるため、適宜「先輩職員とのコミュニケーション」が必須です。

そのため、意外とコミュニケーション能力のアピールは有効です。

未経験で税理士事務所のパートに応募する際の志望動機は、下記記事内で例文付きで解説しています。

税理士事務所のパートを辞めたいと思うのはどんな時?

税理士事務所を辞めたいと思うよくあるケースとしては、「精神的ストレス」が挙げられます。

具体的には、所内でのお局様からの嫌味やいじめ、また所長と性格が合わず所内の雰囲気が悪い、等が挙げられます。

もちろん、すべての税理士事務所でこのようなストレスを感じるわけではありません。

しかし、人によって合う・合わないがあり、この点は面接でしっかりと見極めるべきです。

税理士事務所のパートが楽しいと感じるのはどんな時?

税理士事務所で最も「楽しい」と思うことが多いのは、会計・税金に関する専門知識が身に付くという点です。

税理士事務所での仕事は、最初はきついと感じるケースが多いです。

しかし、これは裏を返せば大きく成長していることを意味します。

今までニュースや新聞で見聞きした専門用語が分かるようになるため、仕事での知識が自分自身の成長にもつながり、この点が「楽しい」と感じる方は多いです。

税理士事務所のパートに受からないのですが…

税理士事務所のパートに受からない場合は、次の2点を振り返ってみてください。

  • 志望動機が明確か
  • 熱意がしっかりと伝えられているか

私は税理士事務所の所長として多くの応募者の方を見てきましたが、採用時に一番重視するのは「人間性」です。

熱意がなくボーっと働いている人とは、正直一緒に仕事をしたいとは思いません。

論理的な志望動機を作り、熱意を込めてアピールすることで、「一緒に働きたい」と思わせることが大切です。


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