公認会計士・税理士の藤沼です。
4年半勤めた監査法人を辞め、FAS系会計事務所に転職しました。
自分ではベストと思った転職でしたが、「これ、転職しない方が良かったかな…?」と後悔を感じたこともありました。
そこで今回は、私が転職して感じた後悔をお話したいと思います。
特に初めての転職は慎重になるかと思いますので、そんな方にご参考いただければ幸いです。
- 今の会社を「辞めようか」考え中の会計士の方
- 転職が未経験の会計士の方
会計士が転職して後悔した4つの事


「絶対に転職で失敗したくない」
そう思っていたのですが、結果的に「後悔」を感じたことが4つありました。
転職してみないと分からないこともあったので、ぜひ転職前に知って頂きたいです。
- IPOを経験しておくべきだった
- 人間関係をもっと大切にしておくべきだった
- 選択肢について、もう少し知っておくべきだった
- 転職により失った物もある
① IPOを経験しておくべきだった
監査法人の外に出ると、いかに「IPO」という経験が貴重であったか気付かされます。
よくよく考えれば、IPOを経験できる職種はかなり少ないです。
「ショートレビューから上場までのスケジュール感」「レビューのレベル感」などを理解している人は少なく、「自身がIPO監査に携わった」という人材は更に貴重です。
特に、IPO経験は次の転職先で評価されます。
- ベンチャー企業(経理)
- FAS
- 監査法人
- 税理士法人
会計士の転職先は全13種に分けられますが、このうち4種の転職先において、IPOの経験が重宝されます。
私の場合はFAS(M&Aがメイン)に転職しましたが、IPOを経験していれば更にFAS内でのキャリアを広げられたと思います。
スキルの「引き出し」は、絶対に多い方が良いです。
もし上記の転職先を検討されている方は、(早く辞めたいという方を除き)監査法人内でIPOの経験を検討されても良いと思います。
② 人間関係をもっと大切にしておくべきだった
監査法人の外に出ると気付くのが、「人脈の大切さ」です。
BIG4内では、企業会計に関する多くのナレッジがあり、気軽に聞けるメンバーも多く周りにいました。
しかし BIG4以外の組織に転職すると、ほぼ確実に「ナレッジ・聞ける人」が激減します。
そうなると「業界専門誌」や「基準」などを頼りにするのですが、やはり「今、BIG4がどのような処理をしているのか」という情報が一番気になります。
そんなときに、「転職した後も相談できる人間関係」を構築しておくと便利です。
私は、辞める時はごく身近な方だけに挨拶しただけで退職してしまいましたが、今思えばもう少し交友関係を広げておくべきだったと感じています。
転職後は、コネクションが仕事に直結するのです。
③ 選択肢について、もう少し知っておくべきだった
私自身もそうですが、他記事でインタビューした会計士陣がよく言うのが、「もう少し情報収集すべきだった」という失敗談です。
先述のとおり、会計士の転職先(キャリア)は多種多様であり、「どの職種で何が経験できるのか」のリサーチに時間がかかります。
情報収集は働きながら行うため、「時間がない」「早く辞めたい」という焦りも相まって、やや情報不足でも転職を決めてしまうケースが多いようです。
たとえば私の場合、「コンサル=FAS」ということしか理解できておらず、FASに関する詳細な情報収集ができていませんでした。
そのような情報不足から、望んでいた経験(M&A)の比率の少ない事務所に転職してしまい、「あ、やってしまったな…」と後悔しました。
個人的に、最も大きな失敗でした。
④ 転職により失った物もある
私は、「監査法人以外の転職先」に転職すれば、プラスアルファの知見が得られると考えていました。
これはある意味正しいのですが、ある意味で正しくありません。
会計監査から離れるということは、会計・監査にかかるスキルを失うことを意味します。
もちろん、基本的な知識は忘れないでしょう。しかし、細かな知識は忘れてしまいますし、最新の会計・監査基準からも遠ざかります。
そのため、新たな知見を得ることはできるものの、今までの知見の一部を失うことになります。
「この先のキャリアに必要ない」と言い切れるのであれば、失うことに何の問題もないでしょう。
しかし 何も考えずに転職してしまうと、後悔してしまう可能性があります。
逆に、転職して得たものもある


もちろん、後悔ばかりではありません。
むしろ私は「転職して大正解だった」と感じています。
- 新たな経験値
- 年収の底上げ
- ワークライフバランス
① 新たな経験値
転職してみて気付きましたが、転職市場では「監査+α」という経験が高く評価されます。
私自身もそうですが、ほとんどの会計士が試験合格後に監査を経験するため、「監査経験のみ」というキャリアが評価されづらいのは当然なのかもしれません。
しかし、
「監査+M&A」
「監査+英語力」
「監査+税務」
など、「武器となるキャリア」をもう1つ手に入れると評価がグッと高まります。
これは私の感想ではなく、「求人票の年収欄」を閲覧&比較すると分かります。
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私たち会計士の多くが、人生で複数回の転職を経験します。
良いタイミングで転職を行うことで、市場での評価を高め、会計士としてのキャリアを高めていくことができます。
私は試験合格後5年ほどで独立できましたが、それも転職による「経験値の獲得」が大きいです。
② 年収の底上げ
転職時は、(基本的には)前職の年収をベースに給与が決定されます。
そのため、仮に年収の低い企業に転職してしまうと、その次の転職時には低い水準の給与を提示されやすくなります。
しかし、私たち会計士が転職すると 多くの場合年収は上がります。
たとえば私の場合は、EY5年目で転職し、年収700万→900万に上がりました。
同時期に転職した同期たちも、転職後3年(監査と合わせて計8年)で1,000万ほどになっているので、おそらく監査法人に居続けるよりも年収は増えます。
そのため、30代のうちに何度か転職を重ねておくことで、給与水準を底上げすることができるでしょう。
③ ワークライフバランス
大手監査法人の出身者限定かもしれませんが、ワークライフバランスは大きく改善されます。
私自身は(一般的に激務と言われる)FAS業界に転職しましたが、それでもワークライフバランスは多少取れるようになりました。
監査でのストレスと、コンサルでのストレスは「質」がやや異なると感じます。
コンサルは残業時間が多いものの、やりがいを感じるため、あまりストレスを感じませんでした。
そのほか、経理や一部の中小監査法人など、大きくワークライフバランスを取り戻せる転職先も多くあります。
私はBIG4でかなり疲れていたので、この点も大きなメリットでした。
会計士が転職して後悔しないために、やるべき3つの事


ぜひ私の後悔した経験をご参考に、転職に役立てていただければ幸いです。
- 転職の際は、必ず筋を通す
- 選択肢を知っておく
- 自分のキャリアを「今から」考え始める
① 転職の際は、必ず筋を通す
法人内での人間関係は大切ですが、最も人間関係を崩しやすいのが「退職直前」です。
- 「繁忙期に退職する」
- 「未了の調書を残して退職する」
- 「転職理由を偽る」
などは、絶対に避けるべきだと思います。(実際にコレをやって、人間関係を崩した方を見ました)
先述したように、今の法人内での人間関係は、近い将来大きな財産になります。
転職後にも良い関係を築けるよう、きれいに退職しましょう。
なお、会計士業界はとても狭く、転職先に「前職」の同僚が転職してくるケースはよくあります。(私自身、何度も経験しました)
関係性の悪化した人との再会はとても気まずく、社内での評価を下げるおそれもあるでしょう。
くれぐれもご注意ください。
② 選択肢を知っておく
まずは「どんな転職先(種類)があって、そこで何ができるのか」をざっくりと知りましょう。
いきなり求人1つ1つを確認してしまうと、全部が違って見えてしまい、時間だけをムダにしてしまいます。
全体感を知るには、「公認会計士の転職先を全て見せます【監査法人から、その先へ】」の記事が参考になるはずです。
初めに大枠を捉えておくことで、「情報不足」による転職の失敗リスクを軽減できます。
そして、興味のある業種について転職エージェントに詳細を聞く、というのが最も効率的です。
③ 自分のキャリアを「今から」考え始める
転職エージェントは、非常に有用です。
転職が初めての方にとっては、驚くほど魅力的な求人を紹介してくれるはずです。
しかし、「デメリット」や「リスク」を(積極的には)教えてくれません。
先述のとおり、転職によって失う物(キャリア)はありますし、転職前にすべき経験もあるかもしれません。
大切なのは、自分のキャリアについて「今から」考えることです。
受け身になってしまうと、情報不足のまま勢いで転職してしまい、私と同じような後悔をするかもしれません。
会計士におすすめの転職エージェント


私は慎重な性格のため、転職エージェントを20社ほど使用しました。
どのような職種を選ぶかによって、会計士が利用すべき転職エージェントは異なりますが、おおよそ「マイナビ会計士」を利用しておけば問題はありません。
会計事務所ならヒュープロがおすすめですし、経理ならMS-Japanがおすすめです。
転職活動は、失敗すると本当に後悔します。人生がかかっていますから。
必ず、事前に十分な情報収集をされることを推奨します。
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