公認会計士・税理士の藤沼です。
税理士事務所を開業して5年程経ち、今まで様々な事務スタッフの方の採用に携わってきました。
そこで今回は、税理士事務所の事務の仕事について解説します。
主に未経験者の方に向けて書きますので、できる限り、分かりやすく解説します。(もし分かりづらければ、コメントで質問ください)
この記事で分かること
- 他の職員同様、税理士補助業務がメイン
- 電話対応や書類整理など、雑務を一手に任されやすい
- 一般事務とは仕事内容が全く異なる
- 事務は内勤なので「外回り」はない
- 年収は500万前後だが、資格の有無・実務経験の有無によって大きく違う
- 必ず税理士事務所に強い転職エージェントを使うべき
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税理士事務所の事務の仕事内容
税理士事務所の事務の仕事内容は、次のとおりです。
税理士事務所での事務はいわゆる「一般事務」ではありませんので、税務に関する専門的な業務を割り当てられます。(総務的な業務だけが仕事ではありません)
また、税理士事務所内で事務の仕事をする人のことを「事務員」と呼びます。
そもそも税理士事務所の仕事は、大きく「外回り」と「事務」に分けることができます。
図にすると、こんなイメージです。
事務は、いわゆる「内勤」とイメージすると良いでしょう。
お客様の会社に伺ったり、出張したりすることはありません。
一方、外回りはお客様の会社に行くこともあるものの、俗にいう「営業マン」ではないので、普通に内勤業務もこなします。
以下、事務の仕事内容を分かりやすく解説します。
記帳代行
記帳代行とは、お客様の取引を1つ1つ会計ソフトに入力していく業務をいいます。
「複式簿記」という入力ルールに基づき、「仕訳」と呼ばれるフォーマットを1つ1つ入力していきます。
複式簿記のルールはさほど難しくありませんが、仕訳を覚えるのが大変です。
なぜなら、仕訳は税法に則って入力する必要があり、税法の勉強をしなければならないからです。
事務で求められる税法は、主に次の税法です。
- 法人税法
- 所得税法
- 消費税法
基本的に事務員はそこまで高いスキルを求められないため、税理士や税理士補助スタッフに聞きながら業務を進めるのが一般的です。
ただし、知識レベルの高い方の方が評価されますし、それが税理士事務所です。
記帳代行をマスターしたい場合は、日商簿記に加えて税理士試験科目の勉強もすると良いでしょう。
決算業務
決算業務とは、お客様の会社の決算書を作成する業務をいいます。
最終的には「確定申告書」を作成する必要がありますが、その前段階として「決算書」というものを作成します。
決算書は、基本的には「仕訳」を積み上げることで作成されます。
つまり、記帳代行で日々の取引を会計ソフトに入力しておけば、ほぼ決算書は完成です。
しかし、実際にはもう少しだけ手を加える作業が必要になり、これを決算修正といいます。
決算修正にも簿記・税法の知識が求められるため、専門知識が必要になります。
日々の仕訳・決算修正を合わせることで、会計ソフトが自動的に決算書を作成します。
正しい決算書を作成するためには、日々の正しい仕訳を入力し、正しい決算修正を行う必要があります。
しかし、会計ソフトへの入力はヒトが行うため、ミスも発生します。
そのため、決算書作成に必要な1次的な作業は事務員が行い、それを税理士や税理士補助スタッフが確認する、というフローが一般的です。
税務申告
税理士事務所での作業のゴールが、この税務申告(=確定申告書の作成)です。
前述の決算書が正しく作成できていれば、基本的には、会計ソフトによって確定申告書も自動的に作成されます。
しかし、確定申告書は何十ページにもわたり、実際に出力してみるとエラーが起こるケースも多くあります。
そこで、数値の記入漏れや異常値が出ていないかを確認する必要があります。
確定申告は、いわばお客様が納付するお金を確定する作業ですから、非常に重要度が高いです。
このため、事務員が作成した申告書がそのまま提出されることはなく、必ず税理士補助スタッフ・税理士・所長税理士の確認作業が行われます。
給与計算・年末調整
給与計算とは、お客様の会社で毎月発生する給料の「源泉徴収税」および「社会保険料」の金額を計算する業務をいいます。
皆さんもご自分の給与明細を見たことのある方なら分かると思いますが、給料からは源泉徴収として所得税・住民税が差し引かれ、社会保険料として年金保険料・健康保険料などが差し引かれているでしょう。
これら給料から差し引く(天引きする)お金を計算するのが、給与計算の仕事です。
また、所得税・住民税の金額はあくまで概算(おおよその金額)を毎月天引きしているだけなので、正確な金額を計算・調整し、多く天引きしすぎた分を従業員に返還する必要があります。
これが、年末調整の仕事です。
いずれも会計ソフトが全て計算してくれるので難易度は低いのですが、入力作業が多く面倒なので、事務員の仕事として割り振られるケースが多いです。
その他事務作業
事務員に求められるその他の作業は次のとおりです。
事務作業 | 内容 |
---|---|
受付・電話応対 | 事務所への訪問客の対応や、クライアント・業者からの電話応対 |
書類の作成 | 請求書・見積書・契約書などの書類作成 |
資料のコピー・スキャン | 文書の複製や電子データとして保存 |
書類の整理・管理 | 契約書など、重要書類の管理および整理 |
郵便物の管理 | 受取・発送の手配、その他郵便関連書類の整理・保存 |
会議の準備 | 会議室の予約や、必要書類のコピーなどの準備 |
スケジュール管理 | 税理士の日程調整や期限の管理 |
経費精算 | 接待交際費・交通費などの経費精算 |
事務用品の発注 | オフィスの備品や消耗品の発注・受取 |
事務所の清掃 | 清掃員がいない小さな事務所では、分担して掃除機をかける |
税理士事務所には、「総務」「人事」といった部署がないケースも多く、それら管理部門としての仕事を事務員がこなすケースが多いです。(中には、税理士・税理士補助スタッフたちと分担・交代するケースもあり)
「税理士事務所の事務」と「一般事務」の仕事内容の違い
税理士事務所の事務の仕事は、基本的にエクセル・会計ソフト・紙資料を扱い、数値と向き合う作業が中心になります。
また、内容は税金・会計に関する専門的な業務がメインです。
一方、いわゆる「一般事務」では総務的な作業が中心であり、(悪い言い方をすれば)誰でもできる仕事が多いです。
何かしらの専門性を身に着けたいという方には、税理士事務所の事務はかなりオススメです。
税理士事務所の事務は未経験者にはきつい?
税理士事務所の事務は、特に未経験者の方「きつい」と感じるケースがあります。
というのも、税理士事務所で求められる「簿記」「税法」の専門知識は、日常生活では絶対に使ったことのない知識ですから、初めのうちは未経験者はきついと感じることがあるのです。
しかし、これは初めの1年間だけです。
税理士事務所での仕事は、毎年同じような仕事の繰り返しであり、1年目を乗り切るとあとは同じルーティン作業になります。
慣れないうちは勉強すべきことが多いため大変ですが、慣れると楽をできるようになります。
なお、未経験で会計事務所に就職するコツは、次の記事で具体的に解説しています。
税理士事務所のパートって難しい?
税理士事務所のパート事務は、求人こそ多いものの、作業の難易度は高いです。
なぜなら、税理士事務所のパート募集は大半が「経験者のみ採用」であり、未経験者を雇うケースは少ないからです。
私の事務所でもそうですが、パート職員には「即戦力」を期待します。
教える時間をかけず、時短でもいいから要所要所で作業を任せられる人をパートとして採用します。
逆に言えば、未経験で1から仕事を教えなければならない人は、パートとしては採用しません。(中堅以上の規模は別ですが)
そのため 税理士事務所のパート事務は、未経験者にとっては難易度が高いといえます。
税理士事務所でパートをしたい方は、まず正社員から経験を積み、その後パートにシフトすることをオススメします。
その他、税理士事務所でのパートについて、詳しくは次の記事で解説しています。
税理士事務所の事務の給料はどのくらい?
税理士事務所の事務の給料水準について知るには、実際の求人票を見るのが一番早いです。
そこで、税理士事務所に特化した大手エージェントヒュープロが公開する求人データを全て集計し、平均値を算出しました。
地域 | 下限平均 | 上限平均 | 平均年収 | 求人数 |
---|---|---|---|---|
未経験者OK | ||||
東京 | 384万円 | 620万円 | 502万円 | 534件 |
東京以外 | 350万円 | 586万円 | 468万円 | 707件 |
全体 | 365万円 | 600万円 | 483万円 | 1241件 |
経験者のみ | ||||
東京 | 454万円 | 760万円 | 607万円 | 1786件 |
東京以外 | 389万円 | 657万円 | 523万円 | 2440件 |
全体 | 416万円 | 700万円 | 558万円 | 4226件 |
おそらく今このブログを読んでいる方の大半が「未経験者」の方だと思います。
全体平均は年収500万弱と、(未経験OKにしては)決して安い給料ではないのですが、これは有資格者も含まれるからです。
たとえば、簿記3級を保有している未経験者の場合、年収は400万ほどです。
年収400万ですから、月の給料は26万円前後+ボーナス3ヶ月分程度が目安です。
資格なし(無資格者)で未経験の方だと、もう少し下がります。
また、税理士事務所業界では年齢はあまり関係がなく、新卒でも30歳でも、資格・経験値によって年収が決定します。
税理士事務所での年収・給与について、詳しくは次の記事でかなり細かく解説しています。
税理士事務所の事務の志望動機【例文あり】
税理士事務所の事務としての採用は、そこまでハードルは高くありません。
未経験者の採用率は高く、あまり凝った志望動機にする必要もありません。
私の事務所に次のような志望動機で応募が来た場合、特にマイナスイメージはありません。
私は事務として税理士の方々をサポートしたいと思い、貴事務所に応募しました。
前職ではエクセルを使った一般事務をしていましたが、何か専門知識を身に着けたいと思っていました。
そんな折、税理士事務所という仕事に興味をもち、自分も税理士の方々をサポートしながら専門家としての道を歩みたいと思うようになりました。
ポイントは、「サポート」という言葉です。
私たち税理士が事務に求めるのは、かゆいところに手が届くような細かな仕事・私たち税理士のサポートです。
リスクが高い大きな仕事は私たち税理士が責任をもって対応しますが、いわゆる事務的で面倒な仕事こそ、事務の方々にサポートしてほしいのです。
なので、「細やかさ」「サポートしたい」「コミュニケーションが得意」といった点は、積極的にアピールすると加点要素になります。
逆に、独りよがり・自分勝手な志望動機を書いてしまうと、「分かってないな…」と思われてしまうので要注意です。事務スタッフに何が求められているのか、理解しましょう。
また小ワザですが、「貴社」よりも「貴事務所」と書いた方が良いです。
「貴社」と書かれると、一般事業会社への志望動機を転用しているのでは?と思われる恐れがあるので。
税理士事務所未経験者向けの志望動機の例文は、次の記事で6パターンを掲載していますので、そのままパクっても大丈夫です。
税理士事務所の事務として働くメリット・デメリット
税理士事務所の事務として働くことには、メリット・デメリットがあります。
ここでは、それぞれ簡単に解説します。
なお、税理士事務所で働くメリット・デメリットについて、詳しくは次の記事内でも解説しています。
メリット
- 税務の専門知識を身に付けることができる
- 自宅から近い職場を選べる
- 将来のキャリアの選択肢が多い
- 保有資格が給与に反映されやすい
- 税理士を目指す環境として最適
※ 上から順番に重要度が高いです。
税理士事務所の事務として働く場合の1番大きなメリットは、税務の専門知識を身に付けることができる点です。
先述のとおり、税理士事務所での事務は「一般事務」とは異なり、税務の専門的な業務を任されます。
そのため、税務の専門家としてキャリアをスタートしやすく、専門知識をもって転職することも容易になります。
かなり昔から「税務職員はAIに代替される」とか言われていますが、現在、その兆候は全くありません。
日本の税制は海外とは違い、非常に複雑ですので、今後も私たちの仕事がなくなることはないと確信しています。
デメリット
- 所長の性格によって、当たり外れがある
- 初めは慣れるまでに時間がかかる
- 社会保険に加入できない事務所がある
※ 上から順番に重要度が高いです。
税理士事務所の中には、税理士所長の権限が強すぎるケースがあり、所長の性格が所内の雰囲気に影響を与えることが多いです。
経営トップであることに加え、確定申告の税額を誤ると所長個人に賠償請求がくる可能性があり、かつ組織規模が小さいため、自然と所長の権限が強くなるのです。
パワハラ気質な所長がいると所内の雰囲気はピリつきますし、逆に真面目過ぎる所長のいる事務所では会話もほとんどなかったりと…かなり雰囲気が変わります。
税理士事務所内の雰囲気を知るためには、転職エージェントを活用し、事前に内情を聞き出しておく必要があります。
逆に言えば、事前のリサーチで「外れ」の事務所を除外しておけば、転職で大きく失敗することはありません。
税理士事務所の事務に向いている人・向かない人
税理士事務所の事務には、向いている人・向かない人がいます。
ここでは、それぞれ簡単に解説します。
なお、会計事務所に向いている人・向かない人の特徴について、詳しくは次の記事内で解説しています。
向いている人
- 細かい作業が好きな人
- コミュニケーション能力の高い人
- 分からないことを自ら調べられる人
- 体力のある人
- 勉強が好き・向上心のある人
※ 上から順番に重要度が高いです。
税理士事務所の事務の仕事は、「細かい作業が好きな人」に向いています。
先述のとおり、リスクの高い論点や大きな仕事については税理士が責任をもって担当しますが、細かな作業(たとえば領収書・請求書の整理や、来客対応など)については事務スタッフにお任せしたいのです。
このため、細やかな仕事ができる方は税理士事務所内でも重宝されます。
また、仕事の細やかさにはコミュニケーション能力も求められますから、人とのコミュニケーションが得意な方も税理士事務所には向いています。(意外かもしれませんが。)
向かない人
- 仕事を抱え込んでしまう人
- ケアレスミスの多い人
- 大雑把な性格の人
※ 上から順番に重要度が高いです。
まじめな方に多いのが、仕事を抱え込んでしまうケースです。
真面目なことはとても良いことですが、仕事を一人で抱え込んでしまうと事務所全体のパフォーマンスを低下させます。
誰でも初めは知識がないため、分からないことが多いです。これは所長も重々分かっています。
そのため、分からないことがあれば、すぐに聞けるような関係性を構築しておくことが大切です。
また、事務スタッフには仕事の細やかさが求められますので、「大雑把に仕事をする人」も税理士事務所には向きません。
税理士事務所の事務に関するよくある疑問
その他、税理士事務所の事務に関するよくある疑問をまとめました。
税理士事務所と会計事務所の違いは何ですか?
「税理士事務所」は所長が税理士ですが、「会計事務所」は所長が税理士資格を有しない公認会計士であるケースがあります。
一般的にはどちらも仕事内容に違いはないのですが、公認会計士が所長の場合、税務ではなく「コンサルティング」「会計監査」に従事するケースがあります。
(ただし、公認会計士は税理士登録もできるため、一般的な税理士事務所と同じ仕事に従事するケースもあります)
税理士事務所・会計事務所の違いについて、詳しくは次の記事で解説しています。
会計事務所におすすめの資格は?
会計事務所に就職するなら、簿記2級が最もオススメです。
なぜなら、簿記2級は3ヶ月程度の勉強期間で取得できるにもかかわらず、取得することで応募できる求人数がかなり増えるからです。
会計事務所への就職におすすめの資格について、詳しくは次の記事で解説しています。
税理士事務所は未経験・資格なしでも就職できる?
はい。税理士事務所は未経験・資格なしでも就職できます。
ただし!面接時にコツが必要です。
未経験者としてアピールすべきポイントを押さえ、面接対策を万全に行わなければなりません。
資格なし・未経験者が税理士事務所に転職する方法について、詳しくは次の記事内で解説しています。
税理士事務所は未経験・40代でも就職できる?
不可能ではありませんが、かなり難易度が上がります。
税理士事務所での経験がなくとも、経理経験があれば内定可能性は高いですが、会計・税務の経験が一切ない場合には、給与面で妥協する必要が出てきます。
税理士に向いてる性格は?
税理士に向いている性格は、次のとおりです。
- 勉強を続けることに抵抗のない人
- コミュニケーションが好きな人
- 経営に興味がある人
税理士になると、毎年改正される税の知識をアップデートしなければならず、常に勉強をしなければなりません。
また、税理士には仕事を取る(=営業する)能力も必要になるため、コミュニケーション能力や経営の理解力も大切です。
税理士の年収はいくら?
税理士事務所の事務の求人が一番多い転職サイトは?
税理士事務所の事務にオススメの転職エージェント
ヒュープロ (Hupro) | MS-Japan | 人材ドラフト | ジャスネット キャリア | マイナビ 税理士 | |
---|---|---|---|---|---|
総合評価 | ( 10/10 ) | ( 9/10 ) | ( 7/10 ) | ( 6/10 ) | ( 6/10 ) |
求人数 | 約 5,500 件 | 約 1,300 件 | 約 1,000 件 | 約 800 件 | 約 600 件 |
対象年代 | 20代~40代 | 20代~50代 | 20代~50代 | 20代~30代 | 20代~30代 |
設立 | 2015年 | 1990年 | 2000年 | 1996年 | 1973年 |
資本金 | 2億2740万円 | 5億8600万円 | 3400万円 | 3800万円 | 21億210万円 |
得意領域 | 会計事務所 税理士法人 | 経理 会計事務所 | 会計事務所 | 士業全般 | 税理士 |
特徴 | 求人数No.1 | 管理部門に強い | ややマイナー | 士業向け | 税理士向け |
利用料金 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 |
評判・口コミ | 評判をみる | 評判をみる | 評判をみる | 評判をみる | 評判をみる |
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