公認会計士・税理士の藤沼です。
10年以上この仕事をしており、多くの経理部・経理スタッフの方々を目にしていました。
結論、こんな人は経理やめとけと言いたいです。
経理には、向き・不向きがあります。
本記事では、会計系のキャリアとして経理以外の選択肢も紹介しています。
内容に自信あり。
ぜひ最後まで読んでください。
2010年 日商簿記検定1級 取得
2013年 公認会計士試験(論文式) 合格
2014年 EY新日本監査法人 入社
2018年 中堅会計事務所 入社
2019年 藤沼会計事務所 開業
2020年 アカウントエージェント㈱ 設立
経理支援サービス会社を経営しています。
こんな人は経理やめとけ。頭おかしくなるよ。
経理をやめた方がいい人は、次のような人です。
それぞれ解説します。
繁閑のある仕事が苦手な人
経理の仕事には、繁忙期・閑散期があります。
このため、「長期休暇」は比較的取りやすいものの、繁忙期は忙しくて休む間がありません。
このように、一時的に急激な負荷をかけることが苦手な方は、経理はやめたほうが良いです。
ちなみに、経理部での繁忙期は大まかに決算期・四半期の2つあります。
3月決算会社なら3月末~4月末までが最も忙しいですし、上場会社であれば四半期ごと(6月・9月・12月の月と翌月)も忙しくなります。
3月決算の経理の年間スケジュール例
月 | 忙しさ | 主な業務内容(3月決算の場合) |
---|---|---|
1月 | 第3四半期決算(IR資料作成) 償却資産申告書の提出 年末調整 法定調書の提出 | |
2月 | 内部統制関連業務対応(監査法人、監査役、内部監査室などの対応) | |
3月 | 決算準備(監査対応含む) 棚卸立会・実査 | |
4月 | 年度決算(IR資料作成,監査対応) 帳簿(会計ソフト)の次期繰越作業 新入社員に対する事務作業 定期昇給に対する事務作業 | |
5月 | 税務申告 計算書類作成 内部統制関連業務対応(監査法人、監査役、内部監査室などの対応) | |
6月 | 株主総会 有価証券報告書 夏季賞与計算 労働保険料の申告・納付作業 住民税の決定通知書に関する業務 | |
7月 | 第1四半期決算(IR資料作成) | |
8月 | 内部統制関連業務対応(監査法人、監査役、内部監査室などの対応) | |
9月 | 棚卸立合 内部統制関連業務対応(監査法人、監査役、内部監査室などの対応) | |
10月 | 第2四半期決算(IR資料作成,監査対応) 法人税中間納付作業 | |
11月 | 内部統制関連業務対応(監査法人、監査役、内部監査室などの対応) | |
12月 | 冬季賞与計算 年末調整 |
会計系の仕事は、全て「決算」や「確定申告」が期限になる仕事なので、ほぼ確実に繁忙期・閑散期があります。
多かれ少なかれ忙しくなるのが嫌な人は、会計以外の世界で働いたほうが良いです。
経理での年収に満足していない人
会計系のキャリアにおいて、「経理」は比較的年収の高い職種です。
この水準の年収に満足できない人は、経理をやめたほうが良いです。
経理と会計事務所の年収比較(保有資格別)
資格 | 経理の年収 | 求人数 |
---|---|---|
簿記3級 | 540万円 | 899 件 |
簿記2級 | 582万円 | 1,532 件 |
簿記1級 | 620万円 | 271 件 |
もちろん経験年数にもよりますが、経理の年収の市場平均は上記のとおりです。
この水準で満足できない方や、年収よりも他の要素(キャリア・やりがい等)を重視される方は経理はやめておいた方が良いです。
コミュニケーション能力が低い人
コミュニケーション能力が低い人は、経理はやめたほうが良いです。
黙々と作業をするイメージのある「経理事務」ですが、実際は部署内・部署間・対社外とのコミュニケーションが求められる仕事だからです。
このイメージのギャップから、人間関係で頭がおかしくなりそうなくらい悩み、経理をやめる方もいます。
逆に、例えば「会計事務所」では一人で黙々と作業をする時間が多く、極端にコミュニケーション能力が低くない限り働きやすい環境です。
経理と会計事務所の業務の違い(サマリー)
経理 | 会計事務所 | |
---|---|---|
仕事内容 | 企業経理 | 仕訳・確定申告の代行 |
専門分野 | 商業簿記 金商法 会社法 消費税法 など | 複式簿記 法人税法 所得税法 消費税法 など |
コミュニケーション | 多く求められる | さほど求められない |
組織規模 | 中~大 | 小~中 |
サービスの対象 | 自分の会社 | クライアント企業 |
経理資料の入手 | 自ら集める | クライアントから提供される |
キャリア | 組織内での昇格 他の経理に転職 | 税理士資格の取得 他事務所への転職 |
コミュニケーションをあまり得意とされない方には、会計事務所での仕事の方が私はオススメです。
ただし、仕事には向き・不向きがあります。
会計事務所での仕事が向いている人の特徴について、詳しくは次の記事内で解説しています。
組織への帰属意識が高くない人
企業・組織への帰属意識が高くない人は、経理はやめたほうが良いです。
帰属意識やその会社への貢献意欲が低い人は、大きな組織に属するよりも、小~中程度の組織で働くまたはやりがいのある仕事をする方が向いています。
経理という仕事は企業に勤める以上、仕方のない部分が大きいですが。
一方で、例えば会計事務所なら組織への帰属意識・愛着は求められず、むしろ独立志向の人が多く在籍しています。
私自身もそうでしたが、正直「どの会社に所属するか」よりも「自分が何をするか」の方がよっぽど重要だと思っていました。
大企業で働きたい!という人は経理が向いていますが、所属企業への忠誠心・帰属意識・愛着などがない方は、経理はやめたほうが良いです。
組織の評価制度に不満のある人
「経理」という部署は、組織の管理部門(=間接部門)に位置し、基本的にお金を生み出す部署ではありません。
そのため、営業や接客のように人事評価が難しく、上司との仲の良さや社内政治などで評価が変わりやすい傾向にあります。
もちろん、経理マンによって仕事のできる・できないはありますし、私も多くの経理を見てきて「この人はデキるな」と感じることはあります。
しかし、お金を生み出さないという部署の性質上、全社的に表彰されたりするケースは稀です。(組織内で目立ちにくい)
このように、組織内での評価制度に不満のある方は、経理はやめたほうが良いです。
逆に、企業会計のスペシャリストとしてスキルを磨きたい!という方など、評価よりもスキルアップや組織貢献を重視される方は、むしろ経理は向いていると言えます。
経理の仕事にやりがいを感じない人
正直、経理はやりがいを感じにくい仕事です。
組織の歯車として淡々と仕事ができる方なら、経理は向いていますが。
しかし仕事に「やりがい」を求めたり、そもそも「経理の仕事にやりがいを感じない」という方は、経理はやめたほうが良いです。
一方で、例えば会計事務所であれば仕事はクライアントワークですから、少なからず顧客の役に立ち感謝されるケースもあります。
やりがいを感じず淡々と仕事をしていると、「自分の存在意義」が分からなくなり、頭がおかしくなる人もいるようです。
人生一度きりですから、どうせなら自分が楽しめることを仕事にすべきでしょう。
経理以外のおすすめ会計系キャリア
経理以外の「会計系」のキャリアなら、次の職種・ポジションがおすすめです。
以下、それぞれ解説します。
会計事務所(転職難易度:低)
会計事務所は、会計税務系の職種の中では転職難易度が最も低い職種です。
経理以上に人手不足の業界ですので、経理経験者であれば優遇された条件で内定が出ます。
もちろん経理未経験者でも内定は出やすく、敷居は低いです。
また、経理が幅広い業務に従事するのに対し、会計事務所では「仕訳の記帳」「確定申告書の作成」の業務に特化します。
そのため、特に税法に関する深い知識・経験を養うことができます。
また、会計事務所には「働きながら税理士を目指せる」という大きなメリットがあります。
税理士になれば年収の大幅UPは勿論、「独立開業」という新たな選択肢が手に入ります。
働きながら税理士を目指せる職場について、詳しくは次の記事内で解説しています。
事業会社以外の経理(転職難易度:普)
意外と知られていないのが、「事業会社の経理」というキャリアです。
具体的には、次のような業種での経理の仕事があります。
- 学校法人の経理
- 医療法人の経理
- NPO法人の経理
- 一般社団法人の経理 など
上記の経理部門は、一般企業の経理に比べて関連法規が緩いという特徴があります。
一般企業では、企業会計基準・会社法・金融商品取引法などの厳格な法規制があり、これに則った経理処理が求められます。
しかし、上記のような事業会社以外の業種では「会社法」「金商法」などは適用されず、法規制が緩いのです。
分かりやすく言えば、仕事が楽です。
私は公認会計士として監査法人で働いていた頃、数多くの学校法人・医療法人に足を運び、経理部の方々と仕事をしていました。
誤解を恐れずにハッキリ言えば、これら事業会社以外の経理の人たちはかなり働きやすい環境にあると感じました。
繁忙期でも定時での帰宅が当たり前でしたし、入手する資料もやや曖昧なものが多かった。そう感じました。
もちろん、全ての法人がそういうわけではないでしょう。
しかし、私の経験上はその傾向が非常に強いと感じます。
※ 私自身も会計業界に身を置いているのでハッキリとは断言しませんが、これ以上は雰囲気を察してもらえればと思います。
事業会社以外の経理はかなり穴場でオススメです。
FAS(転職難易度:難)
FASとは会計系のアドバイザリー業務をいい、「会計コンサルタント」と呼ばれる職業です。
FASでは、具体的に次のような業務に従事します。
- M&Aの会計税務コンサルティング
- IFRS導入支援
- 内部統制構築支援
- 不正調査 など
業務の種類はとても幅広いですが、M&Aに関連した会計・税務に関与するケースが多いです。
非常に面白くやりがいのある仕事である反面、残業は多くなります。
また、転職難易度がかなり高く、会計系の経験はほぼ必須です。
30代後半になると未経験での採用はかなり厳しいですが、20代なら未経験であってもポテンシャルで採用される傾向にあります。
私自身もFASでの就労経験があり、とてもやりがいを感じました。
それこそ、経理とは比べ物にならない程のやりがいだと思います。
経理はやめたほうがいい人に関するよくある疑問・回答
経理はやめたほうがいい人に関するよくある疑問・回答をまとめました。
経理はおっちょこちょいな人でもできますか?
正直、ケアレスミスの多い人に経理は向いてません。
ただし、先述で紹介した事業会社以外の経理であれば、多少のミスは許されやすい傾向にあると言えます。(もちろんすべての組織がそう、というわけではありません)
おっちょこちょいなミスの多い方は、事業会社の経理をおすすめします。
経理が難しいので辞めたいのですが…
まずは、具体的に「何が難しいのか」を明らかにすることをオススメします。
なぜなら、なんとなく難しいからという理由で辞めたのでは、また同じような失敗を起こす可能性があるからです。
簿記が難しいのであれば、会計・税務以外の職種への転職が必要です。
一方で、コミュニケーションに難があるのであれば、先述の会計事務所への転職も選択肢に入ります。
面倒かもしれませんが、まずは現上の分析を行い、原因を突き止めるべきです。
そんなに時間はかからないはずです。
経理って変な人が多いですか?
いいえ、私はそうは思いません。
私は多くの経理を見てきましたが、「監査法人」「会計事務所」に比べると、変な人はむしろ少ないと感じます。
何を以て「変」と言うかは分かりませんが、経理の方々はむしろ常識ある方が多いです。
ただし、小さな会社の経理は組織が閉鎖的になっているため、やや癖のある人の比率は高まるとも思います。
経理はミスが許されないのでしょうか?
いいえ、そんなことはありません。
経理での仕事は、必ず上長が作業を確認するため、そこでミスが防がれます。
ただし、小さな会社では上長のチェック体制が機能していないケースもあり、その場合、自分が起票した仕訳がそのまま大きな誤りに発展する可能性はあります。
もちろん、作業をチェックする義務(=内部統制構築義務)は会社にありますので、ミスが原因で訴訟されたりすることはありません。
経理ってむかつくことありませんか?
経理は細かな作業が多いため、イライラするような事は確かにあるかもしれません。
しかし、それが経理の仕事です。
細かな作業が苦手な方は、経理以外の職種への転職をおすすめします。
経理って仕事多すぎませんか?
確かに、企業によっては経理の負担が多すぎるケースはあります。
一言に「経理」と言っても、その仕事の範囲は組織によって様々だからです。
逆に言えば、暇な経理部もあります。
仕事の多くない経理を探す際は、「平均残業時間」を転職エージェントから聞き出すことをオススメします。
経理は頭いい人じゃないとなれませんか?
いいえ、そんなことはありません。
経理は確かに地頭の良さが発揮しやすい職種ですが、「地味な仕事を淡々とこなせる胆力」も求められる仕事です。
言われた仕事を正確にこなせる人が評価されるのが、経理という仕事です。
経理に向いている人の特徴は?
経理に向いている人の特徴は、次の通りです。
- 細かな仕事が好き
- 数字に苦手意識がない
- コミュニケーションが好き・得意
- PC作業を苦にしない
- 学習意欲が高い
経理職に何年で慣れますか?
経理職は、通常3年で慣れます。
1年目は分からないことだらけであり、目の前の仕事でさえ大変さを感じるでしょう。
2年目になると一年間の流れが分かっているため少しずつ楽になりますが、まだ理解しきれていない部分が多いはずです。
3年目になるとミスもだいぶなくなり、転職市場でも評価が高まる時期です。
経理が大変な時期はいつですか?
経理が大変な時期は、次の通りです。(3月決算の場合)
- 3~4月
- 6~7月
- 9~10月
- 12~1月
- その他、毎月末
ただし、忙しさは企業によって大きく異なります。
上記の時期でも残業ゼロの会社もありますし、上記以外の月が忙しくなる会社もあります。
具体的に忙しくなる時期については、必ず事前に転職エージェントに確認すべきです。
【比較表】会計・税務に強い!おすすめの転職エージェント
ヒュープロ | MS-Japan | ジャスネット キャリア | レックスアドバイザーズ | 人材ドラフト | |
---|---|---|---|---|---|
総合評価 | ( 10/10 ) | ( 10/10 ) | ( 7/10 ) | ( 7/10 ) | ( 7/10 ) |
経理 求人数 | 約 1,900 件 | 約 2,000 件 | 約 1,500 件 | 約 1,000 件 | 約 500 件 |
会計事務所 求人数 | 約 5,500 件 | 約 1,500 件 | 約 700 件 | 約 500 件 | 約 1,300 件 |
強み | 会計・税務 | 管理部門 | 士業 | 士業 | 会計・税務 |
対象年齢 | 20代~40代 | 20代~50代 | 20代~50代 | 20代~30代 | 20代~50代 |
評判・口コミ | 評判を見る | 評判を見る | 評判を見る | 評判を見る | 評判を見る |
公式HP | 公式HP | 公式HP | 公式HP | 公式HP | 公式HP |
会計事務所への転職なら、ヒュープロがおすすめです。
経理への転職なら、MS-Japanがおすすめです。
上記のとおり、転職エージェントは各社特徴が異なります。
ぜひ上記比較表をご参考に、ご自身に合った転職エージェントを使ってください。
1988年生まれ(36歳)
公認会計士・税理士
2012年 日商簿記1級 合格
2013年 公認会計士試験(論文式) 合格
2014年 EY新日本監査法人 入社
2021年 ニューラルグループ株式会社 入社
2024年 ARMS会計株式会社 代表取締役
前職では上場会社の経理部長として勤務し、現在は経理・財務支援サービス会社を経営しています。