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プロフィール

藤沼 寛夫
公認会計士・税理士
1986年1月10日生まれ(36歳)

 2014年:EY新日本監査法人 入社
 2018年:中堅コンサル事務所 入社
 2019年:藤沼会計事務所 開業
 2020年:アカウントエージェント株式会社 設立

ほとんどの人に「簿記1級はやめとけ」と言いたい理由。【公認会計士が解説】

ほとんどの人に「簿記1級はやめとけ」と言いたい理由。

公認会計士・税理士の藤沼です。

もし私の目の前に「簿記1級を取ろうと思う」という人が現れたら、私はほとんどの人に「簿記1級はやめとけ」と言います。

なぜ?

答えは簡単。ほとんどの人にとって簿記1級は意味のない資格だからです。

やる気のある方を煽っているわけでも、やる気を削ぎたいわけでもありません。

私は事実を伝えるべきだと思っているので、そう言います。

ポジショントークで簿記1級を勧める人・組織が多いですが、ふざけるなと言いたくなります。

※ ちなみに、私自身も2010年6月に簿記1級を取得しています。

本記事では、なぜ「簿記1級はやめとけ」と言われるのか、その理由を紹介します。

もちろん簿記1級にはメリットもありますので、利点・欠点を天秤にかけ、実際に目指すかどうかご検討ください。

この記事で分かること


  • 簿記1級を就職・転職に使えるシチュエーションは限定的。
  • 「上場経理」への就職・転職なら、簿記1級は有利に働く。
  • 独学はやめたほうがいい。筆者(会計士)も昔独学で目指したが、落ちた。
  • どうしても簿記1級を目指したい!という人は、いっそのこと会計士を目指してみては?
この記事を書いた人

経理支援サービス会社を経営しています。


目次

簿記1級はやめとけと言われる理由

簿記1級やめとけと言われる理由は、次のとおりです。

それぞれ解説します。

上場経理以外ではオーバースペック

簿記1級で主に学習するのは「連結会計」という論点です。

上場会社では連結決算が義務化されているため、経理部門で連結会計の知識を持つ人材は必須であり、この点で上場経理からのニーズは一定数あります。

一方、その他の職種では連結会計・管理会計の知識を活用するシチュエーションが著しく少ないため、簿記1級をほぼ評価されません。

たとえば、「会計事務所」では簿記の基礎さえ分かれば記帳業務ができるため、簿記1級は明らかにオーバースペックです。

あなたが何の仕事をしたいのかによって、簿記1級の価値は変わります。

「上場経理に転職したい!」という方には簿記1級はオススメですが、そうでない方には全くオススメしません。

独学での合格は非常に難しい

簿記1級はかなり難易度が高く、多くの人の想像を超えてきます。

私も簿記2級までは独学で余裕で合格できましたが、簿記1級は無理でした。
半年独学で挑戦しましたが、100点中50点しか取れず不合格でした。

簿記1級の合格には平均600~800時間かかると言われています。

1日4時間、半年間毎日休まず勉強してようやく合格できるレベルの試験です。

気軽な気持ちで独学に挑戦するのは無謀だと思います。

独学で合格される方も稀におられるようですが…私には無理でした。

合格までに多くの勉強時間を要する

簿記1級は難しい試験です。

簿記2級までとは比べ物にならないレベルです。
私自身も簿記1級に一度落ちていますが、当時は難易度の高さに愕然としたものです。

簿記2級を取得している方が簿記1級に合格するためには、平均600~800時間必要と言われています。

私自身も700時間以上の時間をかけ、簿記1級を取得しました。(独学期間も含めると1,000時間以上かかった。)

期間にすると、半年~1年間です。

限りある人生の半年~1年もかけて簿記1級を取得する価値が本当にあるのか、よく考えてください。

簿記1級を取得するメリットはある?

ここまでボロカス言いましたが、簿記1級資格は一部の方にとっては大きなメリットがあります。

それぞれ解説します。

公認会計士試験への適性判断になる

これは、私自身のケースです。

私のように元々学力に自信のない方(大学の偏差値は40くらいでした)は、いきなり公認会計士を目指すことに敷居の高さを感じるでしょう。

公認会計士試験の合格には平均6,000時間~8,000時間かかるため、受かる能力がないにも関わらずいきなり公認会計士の勉強をスタートしてしまうと、気付いた時には2~3年をムダにしている可能性があります。

この点、簿記1級は全て公認会計士試験の範囲内であり、取得までに600時間~800時間の勉強時間で済むため、適性判断には最適です。

ちなみに私自身はというと、一度独学で挑戦して不合格になりましたが、その後6ヶ月間予備校に通って合格し、その後3年間勉強し公認会計士試験に合格しました。

公認会計士試験の平均勉強期間は2年~4年ですので平均的な勉強期間で合格できたことになり、適性判断は正しかったと感じます。

税理士試験(税法科目)の受験資格が得られる

簿記1級を取得することで、税理士試験の税法科目(所得税法・法人税法・相続税法・消費税法・酒税法・国税徴収法・住民税・事業税・固定資産税)の受験資格を得ることができます。

税理士試験の受験資格は、簿記1級の取得以外にも「大学での所定科目単位の取得」など道がありますが、既に大学を卒業してしまっている方で指定された科目の単位数が足りない方は、簿記1級を取るのが最も近道です。

ちなみに、会計科目(簿記論・財務諸表論)には受験資格が求められず、誰でも受験することが可能です。

経理への転職では年収が約60万上がる

簿記1級を取ると、唯一「経理」への転職で年収が約60万円上がります。

下記は、東京都内・未経験者が経理に転職した際の年収平均値です。

未経験者の平均年収
簿記1級543万円
簿記2級479万円
(大手エージェントMS-Japanの求人データを集計した。)

会計事務所などではほぼ年収が変わらないにもかかわらず、経理だけは提示される年収が大きく変わります。

これは、主に上場会社において簿記1級へのニーズが強いからと推察できます。

なお、簿記1級の年収について詳しくは次の記事でリサーチ結果を報告しています。(会計事務所やコンサル・監査法人など、その他の職種の年収も公開しています)

簿記1級があれば食いっぱぐれない?いやいや…。

巷では「簿記1級があれば食いっぱぐれない」といった噂も流れているそうですが…

いやいや、絶対にそんなことありません。

そもそも資格で安泰を手に入れようという思考が怠惰であり、本当の意味での安泰は「経験」でしか手に入りません。
経験を手にれるには毎日努力するしかありません。

簿記1級を持っていても無職になる方はいますし、資格を活かして就職・転職を有利に進め、そこでコツコツと実務経験を積むことこそが簿記1級の真価・本質です。

たった半年~1年程度の努力で、その後の人生が保証されるようなことは有り得ません。

ちなみに公認会計士・税理士だけは別です。
これらの資格は、取得すればほぼ一生安泰です。

(参考)簿記1級を持っている芸能人・有名人一覧

参考までに、簿記1級を取得している芸能人・有名人を調べましたので紹介します。

こんな人たちが簿記1級をもっています。

勝間和代さんは公認会計士資格を取得している証券アナリストであり、公認会計士資格取得の過程で簿記1級を取得されています。

他の方々は、仕事では簿記1級をほぼ使っていないことが分かります。

簿記1級に関するよくある疑問

その他、簿記1級に関するよくある疑問をまとめました。


簿記一級は希少性が高いですか?

はい。簿記1級の希少価値は高いです。

しかし、希少価値が高いことと市場価値が高いことはイコールではありません。

先述のとおり、簿記1級の価値は上場経理では活かせますが、その他の職種では活かすことができません。

簿記1級は何に使える資格ですか?

簿記1級は、主に経理部での仕事に使える仕事です。

具体的には、簿記1級で学ぶ「連結会計」の知識を使えます。

簿記1級はどれくらいすごい資格ですか?

簿記1級は、合格率が概ね10%前後で推移している難関資格です。(参照:日本商工会議所「1級受験者データ」

受験生の母集団の中には、公認会計士受験生も多く含まれているため、かなり難易度の高い資格と言えます。

簿記1級を取得すると年収はいくらくらいになりますか?

簿記1級を取った場合の年収は、次のとおりです。

  • 経理:632万円
  • 会計事務所:507万円
  • コンサル:612万円
  • 経営企画:715万円
  • 内部監査:593万円
  • 監査法人:650万円

簿記2級とほぼ変わりませんが、経理への転職に限っては年収が上がります。

これは、簿記1級の知識が経理部において主に求められるからです。

簿記1級を取ってよかったと思ったことは?

私が簿記1級を取ってよかったと感じたのは、自信がついたことです。

私は元々公認会計士への挑戦を視野に入れていましたが、自分の学力に自信がなく、まずは腕試しとして簿記1級に挑戦しました。

結果なんとか合格することができたため、それが自信につながり、公認会計士試験への挑戦に繋げることができました。

簿記1級は天才しか合格できませんか?

いいえ、簿記1級は努力さえできれば誰でも合格できる試験です。

ただし、簿記2級までとは難易度が格段に異なるため、努力量がグンと増えます。

簿記1級を取れば人生変わる?

いいえ、簿記1級を取っただけでは人生は変わりません。

ただ、私の場合は人生を変えるきっかけにはなったと思っています。

というのも、公認会計士試験への挑戦のトリガーになったからです。

もし簿記1級に落ちていたら、私は公認会計士への挑戦も諦めていたと思います。

簿記一級のすごさとは?

簿記1級の合格には、凡そ600~800時間の勉強時間を割かなければならず、その努力が「すごい」と言われます。

特に学生はつい遊ぶ時間が増えてしまうため、周囲が遊んでいる間に簿記1級を取得できると「すごい」と言われるでしょう。

一方、社会人になると努力・自己研鑽することが当然になるため、簿記1級を取得していてもあまり「すごい」とは言われなくなります。

簿記一級って意味ないのでは?

はい。人によっては簿記1級は取得しても意味がありません。

先述のとおり、簿記1級が意味を成すシチュエーションは限定的です。

将来何がしたいのか考え、その過程に簿記1級が必要ないのであれば、その人にとって簿記1級は取っても意味がありません。

未経験者が簿記1級を取った場合の転職先は?

未経験者が簿記1級を取ると、次のような転職先を選べます。

  • 経理
  • 会計事務所
  • 会計コンサル
  • 経営企画
  • 内部監査
  • 監査法人

ただし、先述のとおり簿記1級をフルに活かせる転職先はかなり限られます。

詳しくは次の記事で解説しています。


【必見】監査法人で働きながら会計士を目指せる、驚きの方法

簿記1級を目指すくらいなら、監査トレーニーという制度を使って公認会計士を目指した方が良いです。

監査トレーニー制度とは、監査法人内で働きながら公認会計士を目指すことのできる制度をいいます。

近年、公認会計士試験の社会人合格者数が増加しており、もはや公認会計士試験は働きながら合格できる試験です。

簿記1級の価値は低いですが、公認会計士資格の価値は非常に高く、たとえば10年の実務経験で誰でも年収1,000万に到達します。

公認会計士試験は難しい試験ですが、決して天才でなくとも合格可能であり、偏差値40だった私でも合格できています。

簿記・会計の世界に足を踏み入れたのなら、どうせなら会計最高峰の国家資格を手に入れてみてはいかがですか?

働きながら公認会計士を目指す手法について、詳しくは次の記事内で解説しています。

監修者

前職では上場会社の経理部長として勤務し、現在は経理・財務支援サービス会社を経営しています。

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