公認会計士・税理士の藤沼です。
税理士事務所で働くメリットはかなり大きいです。
超オススメの仕事ですし、この仕事に興味を持ったあなたは目の付け所が良い。
しかし、いくつかデメリットがあります。
向き不向きもあるし、ブラックな事務所もある。そういう業界です。
そこで本記事では、税理士事務所で働くメリット・デメリット・向き不向き、そして転職時のポイントを全て解説します。
なお、筆者は税理士事務所の所長ですので、採用官としての視点も含めてお話します。
税理士事務所で働くメリット
税理士事務所で働くデメリット
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税理士事務所で働くメリット6選
税理士事務所で働くメリットは、次のとおりです。
それぞれ解説します。
税理士を目指す環境として最適|働きながら合格する人が大半
もし、あなたが税理士を目指すなら、絶対に税理士事務所で働くべきです。
それほどまでに、税理士事務所は税理士を目指す環境として最適です。
なぜ、税理士事務所は「税理士を目指す環境」として最適なのか?
理由は次のとおりです。
- 職場に受験仲間が多いため、切磋琢磨できる
- 税理士試験の学習内容が、そのまま実務に活きる
- 一般企業よりも、税理士受験に協力的である
- 税理士登録のための実務要件(2年)を満たせる
- 勉強の悩みを先輩税理士に相談できる
- 仮に税理士受験を撤退した場合でも、空白期間ができない
税理士受験生にとって、税理士事務所で働くメリットは非常に多いです。
税理士を目指すにあたり、ここまで最適な環境は他にありません。
もちろん事業会社などで働きながら税理士を目指すことも可能ですが、仕事内容と学習内容が必ずしもリンクせず、また受験仲間もいないため長期間孤独との戦いを強いられるでしょう。
ただし、全ての税理士事務所が税理士受験に適している、というわけでもありません。
中には、税理士受験生に協力的でない税理士事務所もあるので、注意が必要です。
税理士受験生にとって良い職場の探し方は、無理なく働きながら税理士に合格できる「職場」の選び方を公開の記事内で解説しています。
税理士を目指す方は、必ず読んで下さい。
税務のスペシャリストになれる|税金が存在する限り必要とされる仕事
税理士事務所での仕事では、「税務」の知識が養われます。
経験を積むごとに専門性を高めることができるため、税務スキルを極めることができます。
税務の知識は汎用性が高く、世の中から「税金」が消えない限り、常に求められる知識です。
ちなみに、よく「経理・税理士事務所スタッフの仕事はAIに奪われる」と言われますが、、、私はそんなことは無いと思っています。
2014年にオックスフォード大学の教授らが「10年~20年後になくなる仕事」として、経理・会計事務所スタッフを挙げていました。 しかし、今現在も私たちの仕事は全くなくなる気配を見せていません。
答えは簡単で、経理・会計事務所の仕事はそんなに単純な仕事ではないからです。
会社・人ごとに請求書・領収書などのフォーマットは異なりますし、業種によって会計処理も異なり、専門家としての判断も必要になります。
話が逸れましたが、税理士事務所で働くことで「税務のスペシャリスト」になることができ、将来もこのスキルを活用して働き続けることができるでしょう。
なお、税理士事務所での仕事内容については、会計事務所での仕事内容を詳細解説します。【所長が解説】の記事で全て解説しています。
将来のキャリアの選択肢が多い|会計・税務業界は常に人材不足
「将来のキャリアの選択肢が多い」ことも、税理士事務所で働くメリットの1つです。
その理由は次のとおりです。
- 税理士事務所業界内での転職が容易
- 経理への転職も可能
- 会計税務の業界は、人手不足で売り手市場
- 税理士になれば独立する選択肢もある
税理士事務所で培った「税務のスキル」は、基本、他の税理士事務所でもそのまま使えます。
また、経理に関連したスキルであることから、税理士事務所での実務経験を「経理への転職」に活かすこともできるでしょう。(ただし、この点は組織によって異なります)
そして、税理士になることで「独立開業」というキャリアも可能になります。
これは、他の職種では出てこない選択肢の1つです。
キャリアの選択肢が多いという点は、税理士事務所で働くメリットの1つと言えます。
保有資格が給与に反映されやすい|勉強がそのまま年収に直結
税理士事務所では、保有資格が給与に反映されやすいという特徴があります。
そのため、自己学習がそのまま年収アップに繋がりやすいというメリットがあるのです。
これは私の主観ではなく、転職エージェントの求人票を見れば明らかです。
税理士事務所転職時の年収平均
保有科目 | 平均年収 |
---|---|
日商簿記検定3級 | 463万円 |
日商簿記検定2級 | 485万円 |
日商簿記検定1級 | 489万円 |
税理士科目一部合格 | 537万円 |
税理士 | 570万円 |
公認会計士 | 623万円 |
資格の難易度が上がるにつれて、どんどん平均年収も上がっていることが分かります。
ただし、上記はあくまで全体の平均年収であり、「地域」や「実務経験の有無」などによって年収は変わります。
更に具体的な年収データについては、会計事務所に転職すると、年収はいくらになる?の記事内で詳細を公開しています。
自宅から近い職場を選べる|税理士事務所は全国に25,000以上ある
税理士事務所の数は、全国に25,000以上あります。(参照:総務省統計局「経済センサス」)
日本国内のコンビニの数が5万店舗以上ですから、コンビニの約半分程度の数、というイメージです。
そのため、税理士事務所を探す際は「自宅から近い職場を選べる」というメリットがあります。
電車通勤が嫌な方や、子育て中の方などは、「家からの距離」を重視される方が多いです。
先述のとおり、会計税務業界は人手不足ですから、家から徒歩圏内にある税理士事務所で働ける可能性もあるでしょう。
組織経営を知ることができる|会社の仕組みが分かる面白さ
税理士事務所では、「中」と「外」の組織経営を知ることができるメリットがあります。
- 税理士事務所内の組織経営の仕組みが分かる(中)
- クライアント企業のビジネススキームが分かる(外)
一部の大手税理士事務所は別ですが、一般的な税理士事務所は組織規模が小さく、所長・幹部との距離が非常に近いという特徴があります。
そのため、スタッフレベルであっても営業に参加したり、人材確保(リクルート)に参加するケースがあり、小さな組織経営の仕組みを俯瞰することができるでしょう。
また、税理士事務所での仕事はクライアントのビジネスを理解しなければ進めることができません。
一人あたり15社~20社ほど担当するのが一般的ですから、15社~20社分のビジネスを理解することができます。
このように、自社・クライアント企業の多くのビジネスを理解することができるのは、税理士事務所の大きな特徴です。
いずれ自分自身が独立する際、この組織経営のスキルは大きく役立つでしょう。
税理士事務所で働くデメリット4選
税理士事務所で働くデメリットは次のとおりです。
それぞれ解説します。
繁忙期がある|12月~5月にかけて残業が増える傾向
税理士事務所には、「繁忙期」という忙しい時期があります。
税理士事務所の繁忙期は通常12月~5月と、比較的長いです。
この時期は残業が多くなりやすく、プライベートの予定が立てづらくなります。(パート職員などは残業少なめ)
なお、税理士事務所によっては、繁忙期の時期であっても残業がさほど発生しない事務所もあります。
しかし、そのような税理士事務所は人気が高いため、求人を出してもすぐに採用枠が埋まってしまう傾向にあります。
もしできる限り残業の少ない税理士事務所を探しているのであれば、まず転職エージェント等に登録しておき、新規の求人をすぐにキャッチアップできるようにしておきましょう。
初めは慣れるまでに時間がかかる|未経験者は教わりながら仕事
小さな税理士事務所では、一般企業のような「育成制度」「研修制度」が整っていないケースが多いです。
そのため、未経験者の方はOJTにより教わりながら作業を進めることになります。
しかし、未経験者の方は「税務の知識」「会計ソフトの使い方」など、全てが分からないことだらけであり、初めは仕事を覚えるのに苦労します。
分からないことがあまりにも多いため、「何度も先輩に質問するのが億劫になる…」といったシチュエーションもあるでしょう。
ただし、税理士事務所での仕事は1年で完結(1年間の取引を入力し、確定申告で完結)する仕事ですから、1年間働くことで慣れ始めるでしょう。
より早く仕事に慣れるための方法としては、税理士科目の勉強をしてみることをオススメします。
予備校などのテキストを見ると、税法の全体像を体系立てて理解できるのでオススメです。
先述のとおり、「税理士科目」は所内での評価を高めることにも繋がります。
所長の性格によって事務所の雰囲気が左右されやすい
税理士事務所は、「所長」の権限が非常に強い組織構造です。
やや難しい話ですが、税理士事務所や税理士法人は「株式会社」ではないため、会社法による厳格な機関設計が求められず、所長の強い権限(ワンマン経営)が法的にも認められているのです。
また、税理士事務所は基本的に小規模で閉鎖的な組織であるため、所長の性格=事務所全体の雰囲気になることも少なくありません。
そのため、所長がまともな人であればまともな組織になり、所長がパワハラ気質だときつい労働環境になりやすいのです。
組織の雰囲気は「働きやすさ」に直結します。
求人等に応募する際には、エージェントに雰囲気を聞いてみるなど、事前リサーチが必須です。
社会保険に加入できない事務所がある|国民年金は全額個人負担
「税理士法人」では、社会保険への加入が強制されます。
一方、「常時従業員数が5名未満の会計事務所」では、社会保険への加入が必ずしも強制されず、国民年金・国民健康保険に加入することになるケースがあります。(参照:日本年金機構「健康保険・厚生年金保険の適用事業所における適用業種(士業)の追加(令和4年10月施行)」)
社会保険に入ると、年金・保険料の半分を会計事務所側が負担するため、一般的には有利になると言われています。(必ずというわけではないものの、得するケースが多い)
社会保険に加入したい方は、求人へ応募する前に必ず「社会保険への加入が可能かどうか」を確認してください。
会計事務所に向いている人・向かない人の特徴
会計事務所に向いている人の特徴は5つありますが、中でも最も向いているのはコミュニケーション能力の高い人です。
逆に、会計事務所に向かない人の特徴も5つありますが、最も向いていないのはコミュニケーション能力が極端に低い人です。
「事務員」的なイメージの強い会計事務所ですが、チーム内や対クライアントにおいて、コミュニケーションが求められるシチュエーションは意外と多いです。
誰ともコミュニケーションを取らずに作業だけをしたい…という方は、正直あまり向かないと思います。
ただし、そういう私自身もあまりコミュニケーションの得意な方ではありませんので、仕事をしながら慣れる部分も多くありました。
残り4つの特徴については、会計事務所に向いている人の特徴6選【所長が解説】の記事で具体例を交えて解説しています。
未経験者が税理士事務所に転職するときのポイント|簿記2級を取る!
未経験で税理士事務所に就職・転職する際は、少なくとも簿記2級を取得されることをオススメします。
その理由は、次のとおりです。
- 初任給が上がる
- 求人数が3~5倍に増える
- (資格なしよりも)内定率がグンと上がる
- 就職後、仕事を覚えるのが早くなる(ブーストがかかる)
会計事務所への就職におすすめの資格は4種ある。の記事で詳細にリサーチされていますが、簿記2級取得者は、簿記3級取得者に比べて年収が20万円ほど高く、求人数は3倍以上に増えます。
単純に年収が上がるだけでなく、求人の選択肢が増えますから、より自分に合った環境の事務所を選べるようになるというメリットがあるのです。
(残念なことですが)税理士事務所の中には、雰囲気の悪い事務所が存在しますから、自分にマッチした事務所を選ぶことが大切です。
そして、未経験者で税理士事務所に就職すると、1年目は覚えることの多さに「きつい」と感じる方が多いです。
簿記2級さえ持っていれば、予備知識のある状態でスタートできますから、仕事のつらさを軽減することができます。
もちろん資格なしでもスタッフを採用する税理士事務所はありますが、足元を見ているケースが多いように感じます…。
簿記2級の取得には3~6ヶ月かかりますが、その期間をかけるだけのコストパフォーマンスはあります。
なお、未経験で会計事務所に就職するときのコツについて、詳しくは未経験で税理士事務所に転職するのはきついけど、コレをやると内定率が上がる。の記事が参考になるはずです。
ブラックな会計事務所の見分け方
会計事務所の中には、いわゆる「ブラック」と言われる事務所も存在します。
ブラックな会計事務所の特徴は、次のとおりです。
- 残業時間が極端に多い
- みなし残業時間が多い
- 土日に研修がある
- 放置される
- 所属税理士が1人しかいない
- 所長がワンマン・振り回すタイプ
- 男女比率が極端である
- ノルマがある
- 給与水準が極端に低い
- 残業代が出ない・給与が未払い
- 事務所の雰囲気が悪い
- どんどん人が辞めていく
いずれも、応募前に見極める方法があります。
詳しくは、ブラックな会計事務所の見分け方12選の記事で詳細解説しています。
転職を失敗したくない方は、ぜひ参考にしてください。
税理士事務所で働きたい人の、よくある疑問
その他、税理士事務所で働く際のよくある疑問をまとめてみました。
- 税理士事務所と税理士法人の違いは?
-
結論から言えば、「ほぼ同じ」です。
組織形態が「個人事務所」なのか「法人」なのかの違いです。
税理士法人では支店を展開することが認められているため、一般に組織規模は大きいです。
一方、税理士事務所では組織展開することが認められないため、組織規模は小さくなる傾向にあります。
税理士事務所・税理士法人・会計事務所など、紛らわしい名称の違いについては、「会計事務所」「税理士事務所」「税理士法人」の違いは何?の記事でかなり詳細に解説しています。
- 税理士事務所のパートは難しい?
-
いいえ、税理士事務所のパート職員の仕事はより単純作業が多く、難易度は下がります。
具体的には、外回り(月次監査)がなく、通常は内勤業務のみです。
顧客と直接対峙する必要がないため、臨機応変な対応を求められるシチュエーションは少ないでしょう。
- 税理士補助でも税理士を目指さないという選択はあり?
-
ありです。
税理士事務所のスタッフが全員「税理士」を目指さないといけないわけではなく、税務の専門家として働き続ける方も多いです。
税理士事務所は、あくまで「税理士を目指すのに最適な環境である」というだけです。
「税理士補助を目指さない」という選択について、詳しくは税理士補助になっても「税理士を目指さない」のはアリ?の記事内で解説しています。
- 税理士に向いているのはどんな人?
-
税理士に向いているのは、次のような性格の人です。
- コミュニケーションが好きな人
- 経営に興味がある人
- 勉強を続けることに抵抗のない人
税理士になれたとしても、税理士としての知識を常にアップデートする必要があり、自己学習は必須です。(税法は毎年必ず改正されます)
そのため、勉強が好きな方には向いていると言えるでしょう。
- 税理士に向いていない人はどんな人?
-
税理士に向いていないのは、「勉強が嫌いな人」です。
先述のとおり、税理士は(合格後も)常に勉強を続けなければなりません。
勉強をやめてしまうと、知識が古いままアップデートされず、税金計算を誤る可能性があります。
顧客の税金計算を誤ると、最悪の場合「損害賠償」を受けるケースがあります。
自分の身を守るためにも、常に自己学習を続けることが求められるのです。
- 税理士補助がきついというのは本当?
-
これは人によります。
ルーティンワークが得意な方にとっては、むしろ楽だと言う人もいます。
一方、細かな作業が苦手だったり、自己学習が嫌いな方にとっては、きついと感じる方もいるでしょう。
- 税理士は性格が悪いというのは本当?
-
人による部分もありますが、確かに、「性格が悪い」と感じる税理士もいます。(私の主観です)
税理士は税のプロフェッショナルであり、優秀な方ほど、専門家としてのプライドも持ち合わせています。
そのため、学習不足の方や礼節のない方に対して厳しい態度をとる、という税理士も多いでしょう。
もちろん全員がそうではありません。
しかし、「そのような考えの人がいる」ということを予め知っておけば、税理士とのコミュニケーションもよりスムーズになるはずです。
税理士事務所で働きたい方にオススメの転職エージェント
税理士事務所に強い転職エージェントは多いですが、その中でも特に有名な上位5社を比較してみました。
ヒュープロ (Hupro) | MS-Japan | 人材ドラフト | ジャスネット キャリア | マイナビ 税理士 | |
---|---|---|---|---|---|
総合評価 | ( 10/10 ) | ( 9/10 ) | ( 7/10 ) | ( 6/10 ) | ( 6/10 ) |
求人数 | 約 5,500 件 | 約 1,300 件 | 約 1,000 件 | 約 800 件 | 約 600 件 |
対象年代 | 20代~40代 | 20代~50代 | 20代~50代 | 20代~30代 | 20代~30代 |
設立 | 2015年 | 1990年 | 2000年 | 1996年 | 1973年 |
資本金 | 2億2740万円 | 5億8600万円 | 3400万円 | 3800万円 | 21億210万円 |
得意領域 | 会計事務所 税理士法人 | 経理 会計事務所 | 会計事務所 | 士業全般 | 税理士 |
特徴 | 求人数No.1 | 管理部門に強い | ややマイナー | 士業向け | 税理士向け |
利用料金 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 |
評判・口コミ | 評判をみる | 評判をみる | 評判をみる | 評判をみる | 評判をみる |
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上記のとおりですが、税理士事務所への転職・就職にはヒュープロが最も強いと感じます。
なぜなら、会計事務所専門のエージェントであり、「会計事務所」の求人数が群を抜いているからです。
以上、税理士事務所で働くメリット・デメリットを紹介しました。
税理士事務所には、「良い事務所」「悪い事務所」があります。
自分に合った税理士事務所を選ぶためにも、転職エージェント選びを間違わないよう、ご注意ください。
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