中小監査法人での年収をあらゆる角度から調べてみた【データ分析】

中小監査法人での年収を、あらゆる角度から調べてみた。【データ分析】

公認会計士・税理士の藤沼です。

中小監査法人に転職した公認会計士の年収は、平均1,043万円です。

意外と思う方もいるかもしれませんが、実はBIG4よりも中小監査法人の方が平均年収は高いです。

近年、大手監査法人からの転職者が増えていますが、「中小監査法人」は働きやすく年収が高いため、人気のキャリアになりました。

私自身も中小監査法人での勤務経験がありますが、BIG4時代と比べると圧倒的に働きやすい環境でした。

本記事では、そんな中小監査法人での年収をさらに細かく分析し、結果を公開します。

内容に自信あり。

ぜひ最後まで読んでください。

この記事で分かること


  • 中小監査法人に転職した会計士の年収は、平均1,043万円
  • なお、東京事務所はもっと給与水準が高い
  • 中小監査法人のパートナーの平均年収は、2,100~2,200万円
  • 中小監査法人なら、非常勤でも年収2,000万円が理論上可能
  • 監査トレーニーは、残業代・賞与・学費補助を含めると年収は400万円程度になる
この記事を書いた人

1986年生まれ(38歳)
公認会計士税理士

2014年 EY新日本監査法人 入社
2018年 中堅コンサル事務所 入社
2019年 藤沼会計事務所 開業
2020年 アカウントエージェント株式会社 代表


目次

中小監査法人の公認会計士の年収は平均1043万円(残業・賞与込み)

先に結論ですが、中小監査法人における公認会計士の年収は 平均約1,043万円 です。(残業・賞与込み)

「高すぎでは?」と感じる方もいるとと思いますが、パートナーも含めた職員全体の年収なので、肌感よりも高いと感じる方が多いかもしれません。

計算手順は次のとおりです。

中小監査法人における平均年収の計算過程
  1. JICPAアンケート調査結果から、職階別年収データを抽出
  2. ①のデータを基に、職階別平均年収を算出
  3. 各BIG4公表の業務及び財産状況報告書を基に、職階別職員割合を算出
  4. ②・③を加重平均し、BIG4における平均年収を算出
  5. 大手転職エージェント公開の求人データを抽出
  6. ⑤のデータを基に、BIG4・中小監査法人それぞれに転職した時の会計士の平均年収を算出
  7. ⑥のデータを基に、BIG4の年収に対する中小監査法人の年収倍率を算出
  8. ④に⑦を乗じることで、中小監査法人の職員全体の平均年収を算出

やや計算が複雑です。

しかし、実際にBIG4・中小監査法人のそれぞれで働いていた身として、結果は肌感覚にも馴染むと感じます。

イメージ的に「BIG4のほうが年収は高いはず」と思っている人も多いようですが、実際は逆でしょう。

なお、BIG4も含めた会計士全体の(転職時の)年収については、下記の記事で詳細解説しています。

次に、参考として具体的数値を示した計算過程を掲載します。

(参考)計算過程|JICPAアンケート調査結果を用いた推計

職員年収の計算過程はかなり長くなるため、読み飛ばしても差し支えありません。

では、中小監査法人での年収を計算してみましょう。

まず職員の職階別年収分布を参照します。

①大手監査法人法人職員の職階別年収分布

(単位:人)

年収StSrMgPr
~300万412
~350万41
~400万122
~500万17063
~750万336151101
~1,000万122031513
~1,500万11217850
~2,000万11118
~2,500万151
~3,000万38
3,000万~23
合計539375352289
(JICPA「組織内会計士に関するアンケート最終報告」を基に作成)

これを基に、各職階の平均年収を算出します。

②人員数と年収の積数から導いた職階別平均年収

(単位:万円)

年収StSrMgPr
3001,2003000600
3251,30003250
3754,50075000
45076,5002,70001,350
625210,00094,3756,250625
87510,500177,625132,1252,625
1,2501,25015,000222,50062,500
1.7500019,250206,500
2.250002,250114,750
2.750000104,500
3.00000069,000
合計305,250290,750382,700562,450
平均年収5667751,0871,946

年収の積数は、各年収帯の中央値と人数の積数で示しています。
また「~300万未満」は300万とし、「3,000万~」は3,000万として計算しています。

次に、法人全体としての年収を求めるべく、各職階の人員数割合を求め、職階ごとに積数を算出ます。

③各職階の人員数割合と、職階別積数

StSrMgPr
平均年収566万775万1,087万1,946万
職員割合29%32%26%13%
積数164万248万283万253万
(各BIG4公表の業務及び財産状況報告書を基に作成)

積数を合計すると、BIG4における平均年収が算出されます。

④BIG4における職員全体の平均年収

164+248+283+253 = 948万円

次に、大手転職エージェントから求人データを全て抽出し、転職時における大手監査法人・中小監査法人の平均年収をそれぞれ算出します。

以下はその抽出結果です。

⑤・⑥ 大手・中小監査法人の転職時の年収平均値

  • 大手監査法人:649万円
  • 中小監査法人:716万円

これにより、大手監査法人に対する中小監査法人の年収倍率が算出できます。

⑦ 中小監査法人の年収倍率(対BIG4比)

(716 – 649)÷ 649 ≒ 10%

ということで、中小監査法人は大手監査法人に比べ、約10%年収が高いということが分かります。

これを先に求めたBIG4職員の平均年収に乗じます。

⑧ 中小監査法人職員全体の平均年収

948万円 × (1 + 10%)= 1,043万円

以上より、中小監査法人職員全体の平均年収は「1,043万円」と算出できました。

もちろんあくまで仮定計算ですから、絶対的なものではなく参考値としてご確認ください。

東京事務所の年収はもっと高い?|全国平均よりも3~4%上がる

大手転職エージェントの求人データを抽出・集計すると、地域ごとの年収差が大きいことが分かります。

下記は、当該求人データを地域別に比較した結果です。

東京東京以外全体
大手監査法人676万639万648万
中小監査法人741万699万716万
(マイナビ会計士の求人データを抽出し集計した)

このデータによれば、東京での求人は、全国の求人に比べて3~4%程度年収が高いことが分かります。

仮に東京での年収増加率が3%であると仮定すると、東京事務所での中小監査法人職員の平均年収は次のように算出されます。

1,043 × (1 + 3%)= 1,074万円

念のため繰り返しですが、上記はパートナーも含めた全職員の年収平均です。

スタッフ層からすると「高すぎでは?」と感じるかもしれませんが、昇格が進めばこの水準です。

また、中小監査法人ではBIG4よりもパートナー昇格へのハードルが低いため、高所得者層が多くなることも理由の1つに挙げられます。

(参考)厚生労働省「賃金構造基本統計調査」はアテにならない

よく、厚労省による「賃金構造基本統計調査」を基に年収を算出しているサイトを見かけますが、この調査は全く参考になりません。

なぜなら、この調査で明かされている職種に「監査法人」という職種(産業)は無いからです。

もちろん「サービス業」といった大きな括りで算出はされていますが、監査法人に限定した調査結果ではありません。

また、「公認会計士・税理士」という職種の賃金データは算出されているものの、税理士が含まれているほか、こちらも監査法人に限定した調査結果ではありません。

一応参考までに、当該データを集計したものを以下に記載します。

(規模別)公認会計士・税理士の年収|賃金構造基本統計調査ver

組織規模月額賞与年収
10~99人496.51,105.37,063.3
100~999人476.81,464.67,186.2
1,000人以上583.22,224.59,222.9
e-stat|令和5年賃金構造基本統計調査を集計)

上記データの中には、「税理士」が含まれますし、そもそも業種は監査法人に限定されていません。

一般に税理士よりも会計士の方が収入は高く、かつ監査法人の利益率の高さを鑑みれば、最低でも上記の水準以上であるという参考値としては使えるでしょう。

結局のところ、「厚労省による賃金構造基本統計調査」を参照して監査法人の年収を算定しているサイトの情報は、全て嘘だと思って差し支えありません。

中小監査法人のパートナーの年収は平均2100~2200万円!

中小監査法人に転職した後、パートナーへの昇格を視野に入れている方も多いはずです。

ここでは、中小監査法人のパートナー陣の平均年収を算出します。

ただし、中小監査法人ではパートナーの中でも「理事クラスのパートナー」が占める割合が高いと想定されるため、ブレ幅は大きいでしょう。(理事パートナーと平パートナーとでは、年収にやや大きな開きがあるため)

先述の職員別年収の計算過程で少し触れましたが、ここまでの計算過程をすべてまとめると、中小監査法人のパートナー平均年収は次のとおりです。

東京全体
中小監査法人のパートナー2,204万2,140万

中小監査法人におけるパートナーの平均年収は、平均2,100万~2,200万という結論です。

ただし、前掲の年収分布からも分かるとおり、中央値は1,500万~2,000万でしょう。

BIG4でパートナーになるには非常にハードルが高いですが、中小監査法人では30代でもパートナーに昇格しやすいため、「中小監査法人でパートナーを目指す」という選択は大いにアリだと思います。

特に、昨今は大企業の粉飾決算が目立つようになってきました。

BIG4でパートナーに上がれたとしても、社会的影響度の高い大企業を担当し、万が一大規模な粉飾を見抜けなかった場合、立場を追われるリスクが高いです。

一方、中小監査法人であれば担当する上場会社数も少ないため、比較的リスクの低い会社を担当することができます。

監査に絶対はありませんから、規模の小さな(ある意味でリスクの低い)クライアントを担当できる中小監査法人でパートナーになるという選択は合理的と言えます。

中小監査法人のサービスラインごとの年収の違い

中小監査法人での業務はBIG4とは異なるケースがあり、例えば監査業務とアドバイザリー業務の両方に関与することがあります。

実際に中小監査法人の求人を見てみると、「監査+M&A」「監査+IPO」といった採用枠での募集も散見されます。

そこで、各サービスラインをカテゴライズした上で、カテゴリー別に年収を集計しました。

平均年収求人件数
監査+アドバイザリー716万24件
監査+IPO726万4件
監査のみ715万84件
716万112件
(マイナビ会計士の求人データを抽出し集計した)

結論、サービスラインの違いによる年収はほぼ変わらずでした。

中小監査法人でのアドバイザリーは、そもそも依頼件数が少ないため、報酬への反映度が薄いためと考えられます。

なお、中小監査法人での働き方については、次の記事内で詳しく解説しています。

中小監査法人の非常勤職員の年収

監査法人での非常勤は、総じて時給制の契約です。

監査法人非常勤がオススメな理由でも解説していますが、非常勤職員の時給は平均7,000円です。

中には、最大で時給単価20,000円の求人までありました。ちょっと驚愕。

また、非常勤職員は残業時間もかなり少ない傾向にあります。

1日8時間(残業なし)働いた場合、勤務日数別の年収は次のようになります。

非常勤での勤務日数と年収

年間勤務日数時給7,000円時給10,000円
30日168万円240万円
50日280万円400万円
100日560万円800万円
150日840万円1,200万円
200日1,120万円1,600万円
250日1,400万円2,000万円

仮に週5日(年間250日)勤務した場合、年収は1,400万~2,000万まで上がります。

しかも残業なし。

ちなみにこの時給水準は、BIG4におけるシニアクラスの方の水準です。(会計士歴4年目あたりからこの水準。)

私も中小監査法人で非常勤職員をしていましたが、正直かなり美味しい仕事だと感じました。

最近では、非常勤だけで生計を立てるフリーランスの公認会計士がかなり増えています。

なお、BIG4だと時給単価が半分くらいになるので、非常勤をやるなら絶対に中小監査法人を選ぶべきです。

中小監査法人の監査トレーニーの年収は350~450万

一部の監査法人では、公認会計士受験生を監査トレーニーとして採用しています。

監査トレーニーとは、公認会計士短答式受験生や論文受験生を対象に、監査法人内で働きながら受験を目指せる任意の制度をいいます。

受験生としては、勉強をしながら監査法人での実務に触れることができ、また予備校費用・生活費も稼ぐことができるメリットがあります。

大手監査法人(BIG4)でも募集をしていますが、こちらは採用倍率が非常に高く(推定10倍以上)、かなりの狭き門です。

一方で、中小監査法人では若手人材が不足しており、なぜか中小監査法人でトレーニーを志望する受験生が少ないため採用倍率が非常に低いです。

そのため、監査トレーニーを目指すなら中小監査法人の方がオススメです。

中小監査法人の監査トレーニーの月収はまちまちですが、20~25万円が相場です。

しかし、その他の収入を含めると年収は350~450万になります。

収入
基本給月20~25万円
残業代月0~2万円
賞与0~50万円
予備校代補助年間50~100万円
(計)年間350~450万円

予備校代については補助が出ない法人もあるため、この辺りの雇用条件はしっかりと調べた上で、選考に応募するようにしましょう。

監査トレーニーについて、詳しくは次の記事に全てまとめました。

中小監査法人の年収に関してよくある疑問

そのほか、中小監査法人や年収に関するよくある疑問・回答をまとめました。


中小監査法人では、新卒採用をしていますか?

原則、新卒採用はしていません。
中小監査法人では「公認会計士」または「監査トレーニー」の採用がほとんどだからです。

監査法人では、年齢によって年収が変わりますか?

監査法人では、年齢による年収差はまずありません。
スキル・経験年数などにより年収が決まります。
20代・30代・40代であっても、経験年数・スキルが同程度であれば、基本的に年収はさほど変わりません。

副業OKの中小監査法人もあるって本当?

本当です。
私自身も副業OKな中小監査法人で働いていましたし、求人をざっと眺めればすぐに見つかります。
BIG4では副業がほとんどできないため、副業をしたい方は中小監査法人がオススメです。

無資格者でも中小監査法人に転職できますか?

監査トレーニー以外の無資格者はほぼ採用されません。
BIG4とは違い、事務職員やアシスタントの割合は非常に低いです。

中小監査法人では、USCPAの採用は行っていますか?

USCPAを採用している中小監査法人もありますが、数としては少なめです。

中小監査法人では、副業はできますか?

はい。大手監査法人に比べると、副業をしやすい環境にあります。

大手監査法人では利害関係者があまりに多いため、独立性の問題が常につきまとい、たとえばNISAを利用したインデックス投資などは申請が非常に面倒です。

一方、利害関係者が少ないため株式投資などが容易であり、また副業を広く認めている中小監査法人も多いです。


中小監査法人にオススメの転職エージェント

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マイナビ
会計士
ヒュープロ
(Hupro)
MS-Japanレックスアド
バイザーズ
人材ドラフト
マイナビ会計士ヒュープロロゴMS-Japanロゴレックスアドバイザーズ人材ドラフト
総合評価
( 10/10 )

( 9/10 )

( 8/10 )

( 7/10 )

( 7/10 )
求人数約5,000件約2,000件約1,500件約1,500件約500件
対象年代20代~30代20代~50代20代~30代20代~30代20代~50代
対応エリア関東
近畿
愛知県
静岡県
全国全国全国全国
設立1973年2015年1990年2002年2000年
資本金21億210万円2億2740万円5億8600万円6000万円3400万円
対象者公認会計士限定会計・税務管理部門全般会計系全般会計事務所
得意領域公認会計士経理
会計事務所
監査法人
コンサル
FAS
監査法人
会計
税務
コンサル
会計事務所
評判口コミ評判を見る評判を見る評判を見る評判を見る評判を見る
利用料金無料無料無料無料無料
公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト
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人材ドラフト
マイナビ会計士ヒュープロロゴMS-Japanロゴレックスアドバイザーズ人材ドラフト
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( 10/10 )

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設立1973年2015年1990年2002年2000年
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対象者公認会計士限定会計・税務管理部門全般会計系全般会計事務所
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上記のとおりですが、中小監査法人への転職ならマイナビ会計士1択です。

なぜなら、唯一の公認会計士専門エージェントであり、監査法人の求人数が最も多いからです。

中小監査法人の数は、計200社以上あります。

自分で求人を探すことは極めて困難ですので、転職エージェントを使い、効率的に求人をピックアップすることをオススメします。

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