簿記1級を取得すると、簿記2級に比べて年収が約50万円上がります。
ただし、これは「経理」に限った話であり、年収水準は職種によって大きく異なります。
そこで今回はこれを深掘りすべく、簿記1級の職種別平均年収をリサーチし、結果を公開します。
これから簿記1級を取ろうか検討中の方には、きっと参考になるはずです。
ぜひ最後まで読んでください。
簿記1級の年収サマリー
職種 | 地域 | 未経験OK の平均年収 | 経験者のみ の平均年収 |
---|---|---|---|
経理 | 東京 | 543万円 | 674万円 |
その他 | 436万円 | 575万円 | |
会計事務所 | 東京 | 461万円 | 561万円 |
その他 | 445万円 | 503万円 | |
コンサル | 東京 | 552万円 | 686万円 |
その他 | 689万円 | 564万円 | |
経営企画 | 東京 | 650万円 | 829万円 |
その他 | 550万円 | 618万円 | |
内部監査 | 東京 | 597万円 | 597万円 |
その他 | 550万円 | 550万円 | |
監査法人 | 東京 | 700万円 | – |
その他 | 550万円 | – |
2010年 日商簿記検定1級 取得
2013年 公認会計士試験(論文式) 合格
2014年 EY新日本監査法人 入社
2018年 中堅会計事務所 入社
2019年 藤沼会計事務所 開業
2020年 アカウントエージェント㈱ 設立
経理支援サービス会社を経営しています。
簿記1級を取ると年収はいくらになる?
簿記1級の平均年収は、次のとおりです。
職種 | 平均年収 | 求人件数 |
---|---|---|
経理 | 632万円 | 297件(37%) |
会計事務所 | 507万円 | 369件(46%) |
コンサル | 612万円 | 90件(11%) |
経営企画 | 715万円 | 17件(2%) |
内部監査 | 593万円 | 10件(2%) |
監査法人 | 650万円 | 15件(2%) |
職種ごと・地域ごとに年収は異なります。
それぞれ、職種ごとに詳細・内訳を解説します。
経理
地域 | 平均年収 | 求人件数 |
---|---|---|
東京 | 667万円 | 189件 |
その他 | 570万円 | 108件 |
全体 | 632万円 | 297件 |
簿記1級・経理の年収は、東京とその他で約100万円の開きがありました。
それもそのはず。日本国内における上場企業の数は東京だけで50%以上をカバーしており、東京都内でのニーズが最も高いのです。
地方との格差が非常に大きいため、経理マンとしてのキャリアアップを本気で考えるのであれば、地方から都内に移住することも十分検討の余地があります。
求人数自体も多く、安定しています。
会計事務所
地域 | 平均年収 | 求人件数 |
---|---|---|
東京 | 534万円 | 143件 |
その他 | 490万円 | 226件 |
全体 | 507万円 | 369件 |
簿記1級・会計事務所の年収は、東京とその他で44万円の開きがありました。
会計事務所は全国各地にあり、リモートでのクライアントワークも可能であることから、給与水準の格差が少ないようです。
しかし、平均年収は全職種の中で最も低く、簿記1級の恩恵をあまり得られない職種でもあります。
会計事務所内でキャリアアップを目指すのであれば、税理士資格の取得も視野に入れるべきです。
コンサル
地域 | 平均年収 | 求人件数 |
---|---|---|
東京 | 652万円 | 36件 |
その他 | 585万円 | 54件 |
全体 | 612万円 | 90件 |
簿記1級・コンサルの年収は、東京とその他で67万円の開きがありました。
簿記1級資格を活かしたコンサルはいわゆる「会計コンサル」であり、具体的にはM&Aコンサルティング・IPOコンサルティング・会計システムコンサルティング等があります。
残業時間が多くなりやすい反面、残業代で給料を稼ぐこともできるため、バイタリティのある方には選択肢の一つに入るでしょう。
経営企画
地域 | 平均年収 | 求人件数 |
---|---|---|
東京 | 809万円 | 9件 |
その他 | 609万円 | 8件 |
全体 | 715万円 | 17件 |
簿記1級・経営企画の年収は、東京とその他で200万円の開きがありました。
かなり差があるようにも見えますが、そもそもの求人数が少ないため参考程度に抑えてください。
経営企画では、簿記1級の知識を用いて事業計画の策定に役立てたりしますが、業務の多くが簿記・会計とはやや遠い仕事になります。
内部監査
地域 | 平均年収 | 求人件数 |
---|---|---|
東京 | 597万円 | 9件 |
その他 | 550万円 | 1件 |
全体 | 593万円 | 10件 |
簿記1級・内部監査の年収は、東京とその他で47万円の開きがありました。
内部監査部門は上場企業において設置が必須となる部門であり、求人も上場企業の多い「東京」に集中していました。
なお、内部監査はそもそも組織内(主に経理部)からの異動により配属されるケースが多く、外部からリクルートする企業は少ないです。
監査法人
地域 | 平均年収 | 求人件数 |
---|---|---|
東京 | 700万円 | 10件 |
その他 | 550万円 | 5件 |
全体 | 650万円 | 15件 |
簿記1級・監査法人の年収は、東京とその他で150万円の開きがありました。
かなり差があるようにも見えますが、そもそもの求人数が少ないため参考程度に抑えてください。
監査法人では、監査トレーニーとして働きながら公認会計士を目指すことができたり、公認会計士のアシスタントとして働くことができます。
あまり知られていないポジションですが、給与水準が非常に高く、意外と穴場です。
簿記1級・未経験の年収はいくら?
簿記1級を使って未経験職種に転職した場合、年収は次のようになります。
職種 | 地域 | 未経験OK の平均年収 | 経験者のみ の平均年収 |
---|---|---|---|
経理 | 東京 | 543万円 | 674万円 |
その他 | 436万円 | 575万円 | |
会計事務所 | 東京 | 461万円 | 561万円 |
その他 | 445万円 | 503万円 | |
コンサル | 東京 | 552万円 | 686万円 |
その他 | 689万円 | 564万円 | |
経営企画 | 東京 | 650万円 | 829万円 |
その他 | 550万円 | 618万円 | |
内部監査 | 東京 | 597万円 | 597万円 |
その他 | 550万円 | 550万円 | |
監査法人 | 東京 | 700万円 | – |
その他 | 550万円 | – |
※ 参考として、「経験者のみ」の求人の平均年収も併記しています。
実務経験の有無によって、大体100万~150万ほど年収が変わります。
いかに「実務経験」が重要かが分かるでしょう。
なお、簿記1級・未経験で転職する場合のポイントについては、次の記事で解説しています。
簿記1級で年収1000万を目指すには?
簿記1級を使って年収1000万を目指すプランとしては、次のプランが最速と考えられます。
- 未経験OKの経理に転職する…年収543万円
- 3年間の実務経験を積む
- 経験者のみOKの上場経理に転職する…年収674万円
- (昇給率3%と仮定し)14年間勤務する…年収1,019万円
日本労働組合総連合会の調査によれば、大企業の昇給率は約3.7%です。
保守的に昇給率3%であると仮定した場合、初めの転職から17年後に年収1,000万に到達する見込みです。
もちろん、平均年収の高いコンサルでのキャリアアップを目指せば、もっと早い段階で年収1,000万に到達するでしょう。
ちなみに、年収水準の低い「会計事務所」の場合は、初めの転職から23年後に年収1,000万に到達する計算です。
(あくまで計算上。実際はアッパーがあるため税理士資格がないとほぼ不可能です。)
どのキャリアを選ぶかによって、年収1,000万に到達するスピードは大きく異なります。
転職において年収を重視される方は、ぜひ上記をご参考ください。
簿記1級を活かせる仕事は?
簿記1級を活かせる仕事は、大きく6種あります。
- 経理
- 会計事務所
- コンサル(税務・会計系)
- 経営企画
- 内部監査
- 監査法人
この中でも、王道は経理です。
会計事務所も求人数自体は多いですが、わざわざ簿記1級を取得してから転職するような職種ではありません。
なぜなら、会計事務所では「企業会計」の知識はさほど求められず、「税法」の知識の方が求められるからです。
税務を極めたい方、税理士を目指す方は会計事務所を選ぶべきですし、企業会計を極めたい方は経理を目指すべきです。
なお、上記の職種は大まかな区分です。
簿記1級を活かせる仕事について、更に詳しくは次の記事内で紹介しています。
50代でも簿記1級を取れば転職できる?
50代になると、簿記1級を取ったとしても未経験の職種に転職することはほぼ不可能と言っても過言ではありません。
ただし、既に経理等の実務経験がありながら簿記1級を使って転職するケースであれば、転職は可能でしょう。
また、会計と親和性の高いスキルや経験(英語力・ITスキル・M&Aの経験・IPOの経験など)があれば、簿記1級を使って未経験職種に転職することも可能でしょう。
(参考)簿記2級の年収
参考に、簿記2級の平均年収も掲載しておきます。
職種 | 地域 | 未経験OK | 経験者のみ |
---|---|---|---|
経理 | 東京 | 479万円 | 622万円 |
その他 | 425万円 | 544万円 | |
会計事務所 | 東京 | 458万円 | 545万円 |
その他 | 460万円 | 491万円 | |
コンサル | 東京 | 614万円 | 662万円 |
その他 | 595万円 | 580万円 | |
経営企画 | 東京 | 650万円 | 773万円 |
その他 | – | 608万円 | |
内部監査 | 東京 | – | 637万円 |
その他 | – | 523万円 |
簿記1級の年収と比べると、経理を除けばさほど年収に変動がありません。
ただし、経理についてはかなり年収に差があり、簿記2級→簿記1級で50万近く年収が上がっています。
このことからも、簿記1級資格は主に経理業界において必要とされる資格であることが分かります。
簿記一級を取っても意味ないってホント?
簿記一級を取る意味は、人によって異なります。
簿記一級を取るメリットを、以下にまとめてみました。
- 経理に転職するために取る
- 社内での昇給のために取る
- 学生が新卒の就活を有利にするために取る
- 公認会計士試験への適性判断のために取る
- 税理士科目(税法科目)の受験資格を得るために取る
逆に言えば、上記以外に取る意味はほぼないと感じます。
よく「お金の流れが分かるようになる」とか「起業に役立つ」とか聞きますが、そんなものは簿記2級で十分です。予備校やメディアの宣伝に過ぎないと思います。
体よく理由を付けたいのだろうと思いますが…上記以外にメリットはほぼないでしょう。あったら教えて欲しいものです。
簿記一級は、最低でも半年間は勉強しなければ取得できません。
人生において資格は大切かもしれませんが、「時間」も大切です。
その大切な時間を何に使うべきなのか、しっかりと考えてから行動すべきです。
簿記1級の年収に関するよくある疑問
その他、簿記1級の年収に関するよくある疑問をまとめました。
簿記1級の平均年収はいくらですか?
簿記1級の平均年収は、次のとおりです。
- 経理: 632万円
- 会計事務所:507万円
- コンサル: 612万円
- 経営企画: 715万円
- 内部監査: 593万円
ただし、経験者or未経験者、都心or地方 などによっても年収は変わります。
簿記1級で20代の年収はいくらですか?
上場経理で働く20代を前提にすると、簿記1級があれば年収500万~600万ほどです。
簿記一級は希少性が高いですか?
はい。簿記一級の希少性は高いです。
ただし、それは世間一般の中での話です。
例えば、「上場経理」の中では簿記一級の希少性はさほど高くありません。
ステージが上がるにつれて資格に対する評価の比重は下がり、経験値に対する評価の比重が上がります。
公認会計士と簿記1級の年収はいくらですか?
公認会計士と簿記1級の年収は、次のように比較できます。
職種 | 簿記1級 | 公認会計士 |
---|---|---|
経理 | 632万円 | 689万円 |
会計事務所 | 507万円 | 609万円 |
コンサル | 612万円 | 766万円 |
監査法人 | 650万円 | 716万円 |
上記は、あくまで転職時の年収です。
公認会計士の方が年収の上限が高いため、その後の昇給スピードも速く、10年程度で年収1,000万の水準に到達します。
簿記一級があれば就活で無双できますか?
新卒の就活であれば、簿記一級はある程度評価されます。
特に、上場企業では連結決算が義務付けられるため、簿記一級取得者へのニーズは高いです。
ただし、無双できるかと言われると疑問です。
「簿記一級もってるんですね!すごい!即採用!」とかはありません。
経理や会計事務所では、他者とのコミュニケーションスキルも必要とされますから、コミュニケーション能力も見られます。
簿記一級を持っていたとしても、コミュニケーション能力に難があると判断された場合、不採用となる可能性が高いでしょう。
簿記1級は独学で合格できますか?
可能ですが、相当ハードルは高いです。
私自身も一度独学で簿記1級にチャレンジしましたが、不合格になりました。(その後予備校に半年通って合格しました)
簿記1級を取れば食いっぱぐれないですか?
いいえ、そんなことはありません。
簿記1級があったとしても、実務経験がなければ食いっぱぐれる可能性があります。
大切なのは、簿記1級を活かしてどのような経験を積むかです。
一般的な経理経験も大切ですが、更に尖った経験(上場企業での経験、英語を活かした経験、IPOに関与した経験など)が得られると、その後更なるキャリアアップが見込めます。
簿記1級はやめとけと言われたのですが、なぜでしょうか?
理由はいくつか想定されますが、大きな理由は「難易度の高さ」でしょう。
先述のとおり、簿記1級資格は経理を目指すなら取得の価値があるものの、その他の用途ではあまり価値を見出すことができません。
経理を目指すわけでもなく、公認会計士・税理士などの国家資格を目指すわけでもない場合、私も「簿記1級はやめとけ」と言うと思います。
人生における限られた時間を、「本当に簿記1級の学習に費やすべきなのか」しっかりと吟味しておくべきです。
簿記1級の勉強時間はどのくらいですか?
簿記1級に合格するためには、一般に(簿記2級合格後から)600時間~800時間の勉強時間が必要と言われています。
実際、私も簿記1級に合格するまでに700時間ほど要しました。
高卒が簿記1級を取ると年収はいくらになりますか?
結論としては、高卒であること自体が年収を下げる要因にはならず、先述のとおりの年収が想定されます。
ただし、書類選考の際に学歴フィルターが適用されるケースは多いため、「そもそも採用されない」というケースは想定されます。
会計事務所ではあまり学歴を見られない傾向にありますが、経理(特に上場会社)では学歴を見られます。
そのため、学歴に不安のある方は面接対策がマストになります。
簿記1級を取っても就職できない人の特徴
簿記1級を取っても就職できない人の特徴をまとめると、次のとおりです。
- 年齢が高すぎる
- 応募企業に対する理解が浅い
- コミュニケーション能力が低い
- 実務経験がない
上記に当てはまったとしても、努力・戦略により内定率を高めることは可能です。
簿記1級を取っても就職できない人の特徴・内定率を高める手法について、詳しくは次の記事内で解説しています。
【比較表】会計・税務に強い!おすすめの転職エージェント
ヒュープロ | MS-Japan | ジャスネット キャリア | レックスアドバイザーズ | 人材ドラフト | |
---|---|---|---|---|---|
総合評価 | ( 10/10 ) | ( 10/10 ) | ( 7/10 ) | ( 7/10 ) | ( 7/10 ) |
経理 求人数 | 約 1,900 件 | 約 2,000 件 | 約 1,500 件 | 約 1,000 件 | 約 500 件 |
会計事務所 求人数 | 約 5,500 件 | 約 1,500 件 | 約 700 件 | 約 500 件 | 約 1,300 件 |
強み | 会計・税務 | 管理部門 | 士業 | 士業 | 会計・税務 |
対象年齢 | 20代~40代 | 20代~50代 | 20代~50代 | 20代~30代 | 20代~50代 |
評判・口コミ | 評判を見る | 評判を見る | 評判を見る | 評判を見る | 評判を見る |
公式HP | 公式HP | 公式HP | 公式HP | 公式HP | 公式HP |
経理への転職なら「ヒュープロ」または「MS-Japan」がオススメです。
会計事務所への転職なら「ヒュープロ」一択です。
ぜひ上記比較表をご参考に、ご自身に合った転職エージェントを使ってください。
1988年生まれ(36歳)
公認会計士・税理士
2012年 日商簿記1級 合格
2013年 公認会計士試験(論文式) 合格
2014年 EY新日本監査法人 入社
2021年 ニューラルグループ株式会社 入社
2024年 ARMS会計株式会社 代表取締役
前職では上場会社の経理部長として勤務し、現在は経理・財務支援サービス会社を経営しています。