公認会計士・税理士の藤沼です。
日商簿記1級を取得した後、公認会計士試験に合格、その後いくつかの職種を経験し独立しました。
現在は自社の経理も自ら行っており、そう考えると会計税務業界の大半の職種を経験したと言えるかもしれません。
今回は、簿記1級を活かせる仕事【全10種】と、その中でもオススメの職種3選を紹介します。
ここまで詳細にまとめ上げた記事は、他にないと思います。
ぜひご参考ください。
簿記1級を活かせる仕事10種
2010年 日商簿記検定1級 取得
2013年 公認会計士試験(論文式) 合格
2014年 EY新日本監査法人 入社
2018年 中堅会計事務所 入社
2019年 藤沼会計事務所 開業
2020年 アカウントエージェント㈱ 設立
経理支援サービス会社を経営しています。
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簿記1級を活かせる仕事【全10種】
簿記1級資格を活かせる仕事(転職先)は、全10種あります。(関係性は上記画像を参照ください)
それぞれ、特徴を解説します。
① 上場経理・大会社経理
簿記1級を活かせる仕事として、最もオーソドックスなのが「上場企業の経理部門」です。
未経験から転職するのであれば、私は上場経理が最もオススメだと感じます。
上場経理でのスキルは汎用性が高く、また安定した職種であることから、「上場企業の経理に転職するために簿記1級を取得した」という方も多いでしょう。
上場経理では、主に次のスキルを磨くことができます。
- 企業会計に関する知識・実務
- 税務会計に関する知識・実務
- 管理会計(予算管理など)に関する知識・実務
- J-SOX(内部監査・外部監査への対応)に関する実務
簿記1級で主に学習する「商業簿記」「会計学」の知識をフルで活かせるほか、あまり触れることのなかった「税務」「監査」についても触れることができます。
一方、「工業簿記」に触れることのできる業種は限られており、(上場経理の本社であれば)不動産業・製造業で少し触れることができるでしょう。
また、「原価計算」については主に 予算管理 の面で携わることができますが、ある程度の役職(課長クラス)以上で関わるケースが一般的です。
また、前掲の画像 をご参照いただければ分かるとおり、上場経理はほぼ全ての転職先(キャリア)と接点があり、基盤となる職種です。
そのため、例えば次のようなキャリアプランが考えられます。
- 上場経理で企業会計のスキルを磨く → ベンチャー経理でIPOのスキルを磨く → IPOコンサルとして活躍
- 上場経理でM&Aを経験 → M&Aコンサルとして活躍
- 上場経理で監査対応を務める → 内部監査として活躍
- 上場経理で経理部長へ昇進 → 経営企画として経営に関与
このように、IPO・ファイナンス・監査・経営など、幅広くキャリアを設計できるのが「上場経理」の大きなメリットです。
私は上記10種すべての職種と関りがありますが、(簿記1級を活かすなら)上場経理が最も将来性のある仕事であると、強く感じます。
なお会社法上の大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上の会社)の経理でも上場会社の経理に近い経験を積むことができますが、四半期決算・J-SOXがなく、上場経理に比べるとやや働き方になる傾向にあります。
② 中小経理
「中小企業の経理」も、簿記1級を活かせる仕事としてオーソドックスな転職先の1つです。
ただし、①の上場企業・(会社法上の)大会社に比べると、ややオーバースペックであり、活かしきれない知識があります。
というのも、中小企業ではそもそも「企業会計基準」に準拠せず、「税法ベース」での仕訳記帳・決算が求められるケースが一般的だからです。
中小企業庁の公表する「中小企業の会計に関する基本要領」を見れば分かりますが、本文中にの至るところで法人税法上の規定を適用する旨が記載されています。
つまり、簿記1級で培った企業会計に関する知識がフルで活用できるとは限りません。むしろ税法ベースでの処理が求められることで、初めは混乱するかもしれません。
また、大会社・上場会社でない限り「連結決算」は義務付けられないため、連結会計の知識も活用できないケースが多いでしょう。(任意で連結決算を行うことは可能ですので、絶対に活用できないわけではありません)
一方で、税金担当者でなくとも法人税法ベースでの仕訳を起票するケースが増えるため、法人税法の知識が身に付きやすいという利点はあるでしょう。
③ ベンチャー経理
上場経理と区別し、ベンチャー経理というポジションもあります。
ベンチャー経理も上場経理と同じく「経理」ではあるものの、次の点で異なります。
- 人員が少なく、幅広い業務・裁量を与えられる
- IPOを見据えたスケジューリング
- M&Aに関与するケースが多い
IPO(新規上場)を目指すかどうかに関係なく、ベンチャー企業では基本的に人手が足りません。
そのため、経理部員1人に与えられる裁量の幅が広く、また業務の幅も広がります。(例:人事部や総務部の仕事が、一部回ってくる等)
また、IPOを見据えているベンチャー企業の場合、IPO特有の決算スケジュールでプロジェクトが進みます。
すなわち、上場前であっても「四半期決算」を求められるため、上場会社と同じようなスケジューリングで作業が進みます。
そして、IPOを見据えたベンチャー企業の場合、M&Aに触れる機会が増える傾向にあります。(ケースバイケースですが、一般的な企業に比べてM&Aの発生が多いです)
そのため、M&A関連のプロジェクトに触れ、M&A関連の会計処理・税務処理のスキルが身に付くでしょう。
以上から、ベンチャー経理は上場経理に比べて残業時間が増える傾向にあります。
④ 財務部
企業によっては、「経理部」と「財務部」を区別しているケースがあります。
財務部では、たとえば次のような業務に関与します。
- 銀行との融資交渉(資金調達)
- 投資管理(運用)
- 予算管理など
経理部ではないため、やや「会計」「税務」から遠ざかる転職先です。
しかし、広く「ファイナンス」に携わることから、会計と親和性の高い分野ではあります。
特に、金融機関との資金調達交渉に携わる経験はレアであり、金融系の業種(銀行・証券会社など)では重宝されるでしょう。
⑤ 内部監査部
簿記1級を活用した「事業会社への転職」としては、経理・財務以外にも選択肢があります。
その1つが「内部監査」です。
我が国の制度上、上場企業には独立した部門として「内部監査」を設置しなければならないルールになっています。
そのため、内部監査=上場企業の内部監査部門 ということになります。
内部監査の仕事内容は、次のとおりです。
- 重要な業務プロセスのテスト
- 決算処理の正しさのテスト
- 監査役・監査法人との連携
かなりイメージが沸きづらいと思いますが、各部門が行っている業務処理をピックアップし、途中で数値などが間違って伝達されていないかをチェックする仕事 と考えると良いでしょう。
内部監査の最終目的は、「財務諸表が正しく作られていること」を確認することですので、このチェックの中には必ず「会計数値のチェック」が入ります。
この点で、簿記1級の知識を活かすことができるでしょう。
内部監査というポジションは他のキャリアに比べて専門性が高いですが、その分、実は汎用性が低いというデメリットもあるため注意が必要です。
⑥ 経営企画部
簿記1級を活かせる全ての仕事の中で、最も簿記1級の知識が活かしづらいのが「経営企画部」です。
※ ただし、求人は少なからず存在するため、10種の中に含めました。
経営企画ポジションで簿記1級を活かす場合、IR(開示)というポジションで知識を活かすことができるでしょう。
IRでは、決算書に似たものを作成・開示することになるため、簿記1級の知識を活かすことができます。(ただし、作成のルールは決算書よりもゆるい)
とはいえ、IR情報は決算後に開示されるケースが多いため、通常期は予算編成や経営企画など、「企業経営」に近い業務がメインになります。
何のバックボーンもない未経験者が「経営企画」に転職することは難しいため、ファーストキャリアとしてはオススメしません。
⑦ 会計事務所・税理士法人
簿記1級を活かした仕事として、会計事務所(および税理士法人)は「経理」の次にメジャーな職場です。
しかし、仕事内容は経理とやや異なり、「税務」がメインになります。
- 仕訳の記帳代行(税務基準)
- 確定申告
- 「監査」「アドバイザリー」等の補助
ご存じのとおり、会社の会計処理は通常「企業会計原則」に基づいて仕訳が処理されます。
しかし、会計事務所でのゴールは「確定申告書の作成」であり、仕訳の起票から税法ベースで行われることが一般的です。
一方、会計事務所の方針によっては「監査」「会計アドバイザリー」にも携わるケースがあり、公認会計士の補助として業務を割り振られるケースがあります。
我が国の「会計事務所」は25,000所以上あり、事務所によってサービスの方針が大きく異なりますから、どのような仕事ができるのかは求人応募時に必ず確認しましょう。
なお、私の個人的見解ですが、簿記1級をフル活用したいなら「会計事務所」はあまりオススメしません。
なぜなら、税務のみではキャリアの幅がやや狭まってしまうからです。
会計事務所業界は慢性的な人手不足であることから、求人数は多いですが、求人が多い=キャリアが広いというわけではないのでご注意ください。
なお、会計事務所での仕事内容について、詳しくは会計事務所での仕事内容を詳細解説します。の記事で解説しています。
⑧ 中小監査法人
そこまで求人は多くありませんが、「中小監査法人」という選択肢もあります。
中小監査法人では、たとえば次のような仕事を任されるでしょう。
- 監査補助
- 税務アドバイザリー補助
- M&Aアドバイザリー補助
比較的規模の大きめな中小監査法人では、税理士法人・FAS会社を併設しているケースが多く、組織・部門をまたいで補助を任されるケースがあります。
そのため、(法人にもよりますが)比較的幅広い業務に携わることができるでしょう。
しかし、こちらも簿記1級取得者の方には、あまりオススメできない転職先です。
なぜなら、中小監査法人では公認会計士の割合が非常に多く、非有資格者に対しては「雑務」を任せやすい傾向にあるからです。(監査アシスタントのような立ち位置)
この結果、良いように使われてしまい、「あまり実務スキルが身に付かなかった」という残念な結果になる可能性があります。
私自身も監査法人で働いていましたが、同じチームに非有資格者がいたら、まずは事務的な作業をお願いするはずです。
だからこそ、あまりオススメしません。
なお余談ですが、「公認会計士を目指している」という人限定で、監査トレーニーになるという選択肢もあります。
監査トレーニーとは、監査法人で働きながら公認会計士を目指すことのできる制度をいいます。
監査トレーニーについて、詳しくは監査トレーニーの求人の探し方と、内定率を高める方法の記事で解説していますので、公認会計士に興味のある方はご参考ください。
⑨ M&Aコンサル
簿記1級を活かした「コンサル系」の仕事の1つが、M&A系のコンサルです。
個人的には、上場経理に次いでオススメの転職先です。
M&Aコンサルでは、主に次のような仕事内容を任されます。
- M&A前のデューデリジェンス業務
- M&A前のバリュエーション業務
デューデリジェンスとは、買収対象企業の「リスク評価」をいいます。
ここでは専門的な解説は省略しますが、かんたんに言えば、「決算書が正しく作成されていることを確かめる業務」です。
また バリュエーションとは、買収対象企業の「企業価値を評価すること」をいいます。
企業価値が分かることで、「企業の適正価格」が分かり、M&A時の買収価格を求めることができるのです。
実はこのM&A市場は、非常にニーズが大きいことで知られています。
専門性が高いことから専ら「公認会計士」に需要が集中しやすい傾向にありますが、そもそもコンサルに資格は必要ありません。
簿記1級で培った「企業会計」の知見をフルに活用でき、かつニーズの大きな市場で働くことができることから、個人的には非常にオススメの転職先です。
ただし、バックボーンなく転職するには「ポテンシャル」が大きく求められます。
⑩ IPOコンサル
簿記1級を活用したもう1つのコンサル職が、IPOコンサルです。
ベンチャー経理にも似ていますが、業務が「会計」に特化される点で異なります。
IPOコンサルは、全職種の中で最もニッチな職種です。
しかし、専門性を高めて極めると、全職種の中で最も稼ぐことのできる転職先と言えるでしょう。
近年は「上場屋」という言葉も出てきたそうですが、IPOに特化したキャリアを構築することで、文字どおり多くの企業を上場させる「上場屋」としてニーズが爆増します。
ベンチャー企業を上場させることで、ストックオプションの獲得による莫大な報酬を得ることもあり、最も夢のあるキャリアと言えるかもしれません。
未経験者が簿記1級を活かせるオススメの転職先【厳選3選】
簿記1級を皮切りに「未経験分野」へ転職する場合には、次の3つの転職先がオススメです。
それぞれ解説します。
上場経理
先述のとおり、簿記1級を活かすなら「上場経理」が最もオススメです。
なぜなら、未経験者向けの求人数が最も多く、かつキャリアの幅も最も広いからです。
また、上場企業のような大組織であれば、研修・OJTが仕組化されているケースが多く、未経験者への教育体制も整っていることが多いです。
上場企業はベンチャーに比べて倒産リスクが低いため、安定志向の方にも人気ですが、私はぜひ「挑戦」したい方にこそ上場経理を選んでほしいです。
それほど、将来性のあるキャリアなのです。
ベンチャー経理
ベンチャー経理、特にIPOを見据えたベンチャー企業であれば、簿記1級の知識を大きく活かすことができます。
また、ベンチャーは人手不足であるケースが多いため、未経験者向けの求人もやや多いのが特徴です。
ただし、実務では(簿記1級の知識も役立つものの)「初めて知る」という業務が大半になるでしょう。
そのため、多くの場合は激務となります。
あくまで「スキルアップのためのポジション」と考えた方が良いでしょう。
会計事務所(所長が公認会計士)
未経験者向けの求人が最も多いのが、会計事務所です。
そのため、「転職しやすい」というメリットがあります。
また、簿記1級を活かすのであれば、「公認会計士が所長」の会計事務所を選ぶことをオススメします。
なぜなら、公認会計士が所長を務める会計事務所の場合、「税務」以外にも「M&Aコンサル」「監査」など、幅広い会計サービスに従事できる可能性があるからです。
簿記1級と税務は親和性が薄いものの、M&A系の各種コンサルや監査であれば、簿記1級の知識を大きく活かすことができます。
また、会計事務所では税理士を目指しながら働いている職員が多いため、その後税理士を目指す方には特にオススメの転職先です。(参照:無理なく働きながら税理士に合格できる「職場」の選び方を公開します。)
一言に「会計事務所」と言っても関与できる仕事内容は様々ですので、応募前には必ず転職エージェントに詳細を聞くようにしましょう。
簿記1級を活かせるワークライフバランスのとりやすい転職先
簿記1級を活かしながらも残業時間を減らし、ワークライフバランスをとりたいという方には次の3つの転職先がオススメです。
それぞれ解説します。
上場経理・大会社経理
企業にもよりますが、上場経理はワークライフバランスが比較的とりやすい転職先です。
簿記1級の知識をフルに活かすこともできますから、組織への高い貢献と私生活を両立できる、最良の転職先であると思います。
また、上場会社では在宅勤務(リモートワーク)が採用されているケースも多く、自宅で仕事をできるケースもあります。
なお、上場経理では四半期決算があるため、(3月決算の場合)繁忙期は4月・7月・10月・1月前後に集中します。
事業会社はコンサル系に比べて「スケジュールが予め決まっている」という特徴がありますから、予めライフイベントをスケジューリングできるというメリットもあるでしょう。
ちなみに、上場会社でなくとも大会社であれば、四半期決算がない分さらに残業時間が少なりやすい傾向にあります。
中小経理
中小企業の経理も、比較的ワークライフバランスの取りやすい職場でしょう。 基本的には四半期決算や外部監査対応がないからです。
ただし、零細企業などの人手が不足している会社や、人員数がギリギリの状態で欠員が出た場合などは、(早急な人員補填が難しいため)忙しくなるケースがあります。
また、親会社の存在にも注意が必要です。
親会社の干渉が強く頻繁な決算報告を求められるような場合は、早期の月次決算報告を求められるほか、数値の増減分析に関して詳細なヒアリングがなされる可能性もあります。
中小企業の経理を選ぶ際は、予め仕事内容をしっかり・細かく聞いておくべきです。
内部監査
あまり知られていませんが、内部監査はワークライフバランスのとりやすい転職先です。
先述のとおり、内部監査では各部署の業務フローのチェック、決算書の作成過程のチェックが主な仕事になります。
これらの業務は、基本的には毎年ルーティンワークとなることから、(よほど人手不足でない限り)残業時間があまり多くなりません。
その分、「面白味がない」というデメリットもありますが、やりがいよりもワークライフバランスを重視される方は、選択肢の1つに加えても良いはずです。
簿記1級を活かせる「年収の高い」転職先
高収入を求める簿記1級取得者の方には、次の3つの転職先(ポジション)がオススメです。
それぞれ解説します。
各種コンサル
M&Aコンサル・IPOコンサルは、管理職でなくとも給与水準が高く、稼げる職種です。
私も転職してM&A系のコンサルに入社しましたが、年収は1.4倍ほどに上がりました。
ただし、コンサルは漏れなく激務であり、ワークライフバランスは望めません。
スキル・年収アップを目的に転職される方は、選択肢の1つに入れると良いでしょう。
経理+α
一般的な経理職に加えて、たとえば次のようなスキルがあると年収が一気に上がる傾向にあります。
- 英語力
- 海外の会計基準・税法に関する知見
- IT(会計ソフトに関連するプログラミング等)
- M&A周りの会計・税務に関する知見
経理スキルに加えて上記のようなスキルを掛け合わせることで、希少価値が高まり、年収が上がります。
たとえば、簿記1級に加えてTOEIC900点などがあると、外資系経理への内定可能性がかなり上がるでしょう。(英語でのコミュニケーションができることも求められます)
また、これは上場会社・大会社に限った話ではなく、中小企業であっても同様です。
中小経理であっても、年収1,000万に到達する経理マンはいます。
【年齢別】簿記1級を活かせるオススメの転職先
簿記1級を活かせる仕事は、年齢によっても異なります。
そこで、ここでは20代~50代までの別に、おすすめの転職先を紹介します。
20代|簿記1級保有者の転職先
20代の方であれば、上記10種の転職先の大半が選択肢に入りますが、最もおすすめなのは上場経理です。
なぜなら、上場経理では企業会計のあるべき理想形を知ることができ、また最も汎用性の高いキャリアだからです。
若さという武器があるため、経理未経験者であっても就職できる可能性があります。
一方、「内部監査」だけはあまりオススメしません。
なぜなら、この中では最もスキルの汎用性が低く、キャリアが狭まりやすいからです。
20代の方は、できる限り将来性の広がるようなキャリアを選択すべきであると感じます。
30代|簿記1級保有者の転職先
30代に入ると、様々なライフイベントが発生するようになり、ワークライフバランスを考え始める方も多いですが、一方で大きなキャリアチェンジのできる最後のタイミングでもあります。
経験者の場合には、上記10種の転職先のうち、同一枠内の職種を選ぶのがおすすめです。
ただし、職種を変える場合にはその後のゴールも必ず見据えるべきです。
「上場経理」であれば部長職ポジションを狙うのがゴールの1つになるでしょう。
一方で「会計事務所」を選んだ場合、税務スタッフから上に上がるには税理士にならなければなりません。
見切り発車で転職先を選んでしまうと、いつしかキャリアの袋小路に迷い込んでしまうため、非常に危険です。
様々なライフイベントを控える中で難しい選択だとは思いますが、人生がかかっているからこそ、慎重に各職種をリサーチすべきです。
40代|簿記1級保有者の転職先
40代になると、未経験分野への転職はかなり難しくなります。
特に、簿記1級を最も活かしやすい「経理」では、40代未経験者はほぼ採用されないでしょう。(ただし、他に何か突出したスキルがあれば別です)
一方、経理経験者であったとしても「管理職経験」は求められます。
その後のキャリアも考えると、ベンチャー以外の経理、内部監査、会計事務所のいずれかがおすすめです。
50代|簿記1級保有者の転職先
50代になると、簿記1級を持っていたとしても未経験分野への転職は無理に近いと感じます。
そのため、50代以降では「簿記1級を活かす」というよりも、「今までの実績の証明」としての面が強くなります。
例えば、40代で会計系へのジョブチェンジを行い実績を積んだ方が、50代で同業界への転職をする際、念のため簿記1級を取るといったイメージです。
50代になると異業種への転職が難しいため、同業界での転職が望ましいでしょう。
簿記1級を活かせる仕事に関するよくある疑問
その他、簿記1級を活かせる仕事に関するよくある疑問をまとめました。
- 簿記1級があれば就活で無双できますか?
-
よく新卒の方がこのような質問をされますが、正直、「無双」できるとは思いません。
新卒者の場合、就職活動では主にポテンシャルを見られるからです。
私が自社の経理スタッフを採用する際も、若手にはポテンシャルを強く求めます。
簿記1級を取得していても、実務で即戦力になるわけではなく、初めは失敗ばかりです。 正直、実務を行っている経理スタッフからすると、さほど凄いものでもありません。
もちろん就活において多少有利にはなりますが、それは地頭の良さや熱意のアピールとして使うべきであり、「簿記1級を取っただけで就活で無双できる」ということは決してないのです。
- 簿記1級さえあれば、一生食いっぱぐれないですか?
-
それは絶対にありません。
簿記1級資格は単なる知識の証明であり、「仕事ができるかどうか」とは全く別です。
簿記1級を持っていたとしても、「扱いづらそうな人」「仕事をしてくれなさそうな人」は採用企業側にとっても大きなリスクです。
そのため、簿記1級を取得した後にどのよなキャリアを築き、履歴書をアップデートできるかが重要であると私は感じます。
- 簿記2級を活かせる仕事には、どんなものがある?
-
簿記2級になるとやや選択肢が少なくなり、次のような職場に限定されるでしょう。
- 上場経理・大会社経理
- 中小経理
- ベンチャー経理
- 会計事務所・税理士法人
経理または会計事務所、というのが一般的な転職先になります。
- 簿記3級を活かせる仕事には、どんなものがある?
-
簿記3級になるとさらに選択肢が少なくなり、次のような職場に限定されるでしょう。
- 中小経理
- 会計事務所・税理士法人
簿記3級は難易度が低く、誰でも短期間の学習で取得できてしまうため、市場価値が低く求人数もかなり少ないです。
簿記資格を活かすのであれば、私は最低でも簿記2級の取得を推奨します。
- 簿記1級を取っても就職できない人の特徴とは?
-
簿記1級を取っても就職できない人には、次の特徴があります。
- 年齢が高すぎる
- 応募企業に対する理解が浅い
- コミュニケーション能力が低い
- 実務経験がない
ただし、監査アシスタント・監査トレーニーには実務経験が求められません。
簿記1級を取っても就職できない人の特徴について、詳しくは次の記事内で解説しています。
簿記1級取得者に強い転職エージェント
会計・税務系に強い転職エージェントは全20社以上ありますが、この中で「簿記1級保有者」に強い転職エージェントは、MS-Japan・ヒュープロの2強でした。
MS-Japan | ヒュープロ (Hupro) | リクルート エージェント | |
---|---|---|---|
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うち未経験者向け の求人数 | 約 300 件 | 約 400 件 | 約 5 件 |
取扱い求人 | ・経理 ・会計事務所 | 会計事務所 | 経理 |
口コミ・評判 | 評判・口コミ | 評判・口コミ | – |
総合評価 | (9/10) | (10/10) | (6/10) |
公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
MS-Japanは主に「経理」に強い転職エージェントですが、会計事務所の求人も一部検出されました。
転職は人生のかかった大イベントです。
質の低い転職エージェントを選ばないよう、ご注意ください。
1988年生まれ(36歳)
公認会計士・税理士
2012年 日商簿記1級 合格
2013年 公認会計士試験(論文式) 合格
2014年 EY新日本監査法人 入社
2021年 ニューラルグループ株式会社 入社
2024年 ARMS会計株式会社 代表取締役
前職では上場会社の経理部長として勤務し、現在は経理・財務支援サービス会社を経営しています。