公認会計士・税理士の藤沼です。
簿記1級を取っても就職できない人の「特徴」は、次の通りです。
特徴 | 概要 |
---|---|
年齢が高すぎる | 40代以上になるとキツい |
応募企業に対する理解が浅い | 業界・会計処理の研究不足 |
コミュニケーション能力が低い | 意外とコミュ力は重要 |
実務経験がない | 職種によっては厳しい |
上記に当てはまったとしても、例外はあります。
本記事では、そんな簿記1級を取っても就職できない人の特徴と、内定率を高めるための手法を紹介します。
私は大手監査法人で面接官を経験しており、現在は会計事務所の所長として面接官をしていますので、採用担当としての率直な感想も交えてお話しします。
2010年 日商簿記検定1級 取得
2013年 公認会計士試験(論文式) 合格
2014年 EY新日本監査法人 入社
2018年 中堅会計事務所 入社
2019年 藤沼会計事務所 開業
2020年 アカウントエージェント㈱ 設立
経理支援サービス会社を経営しています。
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簿記1級があっても就職できない人の特徴4選
簿記1級があっても就職できない人の特徴は、4つあります。
それぞれ解説します。
年齢が高すぎる|40代以上になると未経験分野への転職は厳しい
元も子もありませんが、年齢が高すぎるとそもそも簿記1級を転職に活用できません。
40代以上になると、未経験者は相当きついです。
40代以上では即戦力が求められるため、実務経験で勝負しなければなりません。
もし、資格で勝負をしたいなら税理士資格の取得を目指すことをオススメします。
税理士は難関資格として有名ですが、それは5科目合格を目指す場合の話です。
例えば税理士科目の「簿記論」は、簿記1級と同程度の難易度として知られていますが、会計事務所への転職活動においては簿記論の方が高く評価されます。
また、会計事務所業界は慢性的な人手不足もあり、40代以降であっても税理士一部科目を使った転職は可能です。
働きながら税理士を目指せる職場の選び方については、次の記事内で詳しく解説しています。
応募企業に対する理解が浅い|リサーチが不十分な人は採用したくない
私は採用官をしていると、
「あ、この人あんまり調べて来てないな…」
と思うことがよくあります。
正直、そう感じると一気に採用する気がなくなり、定型的な質問だけをして終わります。(もちろん不採用)
私のような中小企業でそうなのですから、応募が多い人気企業ならもっとそうです。
企業研究はマストです。
- 応募先企業の一般的な情報
- 応募先企業の決算情報(直近のもの)
- 応募先企業が属する業界全般の情報
また、会計事務所の場合は所長が書籍を出しているケースもありますので、事前に読んでおくとかなり好印象を与えることができます。(見え見えの作戦ですが、やっぱり自分の本を読んでくれたら嬉しいですよ。)
コミュニケーション能力が低い|指示通りに仕事ができるか不安になる
簿記1級を活用する仕事では、コミュニケーション能力が求められます。
経理なら組織内(チーム内・他部署との連携)でコミュニケーション能力が問われますし、会計事務所ならクライアントからの相談対応・ヒアリング・提案においてコミュニケーション能力が問われます。
そのため、面接では受け答え・所作をよく見られ、コミュニケーション能力が低いと判断されると落とされるケーsが多いです。
私の会計事務所にも毎年多くの方が求人にご応募されてきますが、面接時に受け答えに難があると「きちんと指示通りに仕事をしてもらえるだろうか…。」と不安を感じます。
お金を扱う仕事である以上、コミュニケーションの齟齬にはかなりのリスクを感じてしまいます。
逆に、コミュニケーション能力の高い方は重宝されます。
実務経験がない|会計・税務業界では「経験値」が最優先される
元も子もない話ですが、会計税務業界では実務経験が最も重視されるため、簿記1級を取得しても書類選考で落とされる可能性があります。
もちろん、簿記1級の資格は転職活動で有利に働きますが、「簿記1級・実務経験なし」の方と「簿記3級・実務経験3年」の方を単純比較すると、後者のほうが採用されやすいのが現実です。
特に、実務経験の有無による内定率の差は、年齢が上がるにつれて大きくなります。
40代以上になると、簿記1級を取得したとしても実務経験なしでは採用で落とされる可能性が高いです。
ただし、英語力・ITスキル等、会計以外の専門的なスキルが活かせる業界であれば、話は別です。
高いビジネス英語力や会計ソフトに関するプログラミングスキルがある場合、それらを活かせる職種で採用される可能性があります。
なお、「実務経験の有無」は職種によって重要度が異なります。
職種 | 求められる実務経験の度合い |
---|---|
経理 | 30代以上になると実務経験がほぼ必須 |
会計事務所 | 30代までは実務経験なしでも就職しやすい |
監査法人 | 実務経験は不要だが、年齢による制限がある |
会計事務所は特に人材不足が深刻であることから、未経験者であっても30代までなら就職は比較的容易です。
簿記1級を活かせる仕事内容について、詳しくは次の記事内で全て解説しています。
簿記1級を活用して内定率を高める手法3選
簿記1級を活用し、内定率を高めるには3つのポイントがあります。
それぞれ解説します。
会計税務に特化した転職エージェントを使う|必須!内定率が上がる
会計税務に特化した転職エージェントを使うことで、次のメリットが得られます。
- 多くの求人から選ぶことができる
- 会計税務の市場について、網羅的に情報収集できる
- 特定の求人に特化した面接対策・書類対策ができる
第一に、会計税務特化型の転職エージェントは求人数が豊富であり、多くのカードの中から求人を選ぶことができます。
第二に、会計税務特化型の転職エージェントは「業界に関する知識」が非常に豊富であり、初めて会計税務業界で転職をする際には情報収集ツールとして利用できます。
第三に、会計税務特化型の転職エージェントは「クライアント密着型」が多く、面接前に各企業が何を質問するかを事前に教えてもらえるという利点があります。
これらのサービスは全て無料ですから、絶対に利用すべきです。
面接対策を万全にする|コミュ力が低くても取り繕うことが可能
上記に関連しますが、特に転職エージェントを使った「面接対策」は非常に重要です。
良い転職エージェントでは、企業への応募前に質問事項のQ&Aリストを共有してもらえます。
何を質問されるか予め想定できるため、事前にある程度の予習・練習ができるのです。
これにより、コミュニケーションや面接が苦手な方でも、面接時だけは完璧な対応ができるため、内定獲得の可能性を高めることができます。
また面接官としても、しっかり面接対策をしてくれた方が「やる気」「熱意」が見えるため、高評価を付けたくなります。
先に実務経験を積む|まずは会計事務所で働いてから踏み台にする
いきなりハードルの高い企業に挑むのではなく、踏み台となる中堅企業で一度実務経験を積み、3年間の実務経験を経た後に大手企業に挑戦するという選択肢もあります。
会計税務の業界では、2~3回の転職回数であればさほど悪い評価には繋がらず、実務経験はプラスに働きます。
また、簿記1級は働きながらでも十分合格を目指せる資格です。
まずは中小企業の経理や会計事務所に転職し、働きながら簿記1級(または税理士科目)の取得をし、3年後に転職することでキャリアアップを目指す、という戦略もアリです。
採用官としての私の率直な感想
私は「就職できるかどうか不安を感じるくらいなら、先に就職してしまったほうが良い」と感じます。
正直、簿記1級の価値はその程度のものだからです。
大学生が新卒の就活で簿記1級を使うなら話は別ですが、社会人が転職で使うなら、経験値の裏付けとして使うのがベストです。
実務経験ありきで簿記1級を評価する企業が大半ですから、実務経験なしで簿記1級を使うのは合理的ではありません。
まして簿記1級は難関資格ですから、苦労して取得しても、時間に見合ったパフォーマンスは得られないのではと。
(と言いながら私は簿記1級を取っているのですが、私の場合は公認会計士試験への適正を判断するために勉強しました。)
今の仕事が会計・税務と関連のある業務で、働きながら合格を目指すならアリですが、全く関係のない仕事をしながら簿記1級の合格を目指すのは微妙かも…と思ってしまいます。
「絶対に上場経理に転職したい!」という強い意志をお持ちであれば良いのですが、それ以外の方は早めに転職し経験値を積み、実務経験を経た状態で改めて転職をすることをオススメします。
会計事務所から経理に転職することも可能ですから、まずは会計事務所で実務経験を積むのもアリです。
簿記1級を活用した就職に関するよくある疑問
その他、簿記1級を活用した就職に関するよくある疑問をまとめました。
簿記1級の平均年収は?
簿記1級の平均年収は次のとおりです。
- 経理 :614万円
- 会計事務所:485万円
- その他 :675万円
職種によって大きく異なり、会計事務所は比較的年収が低いです。
その他の内訳は、主に「監査法人」「コンサルティング会社」「経営企画」などです。
簿記一級 どこで使う?
簿記一級は、主に一般企業の経理部で知識を使います。
簿記一級には「連結会計」が範囲に含まれるため、特に上場企業の経理部門で活かせるシチュエーションが多いです。(上場企業では連結決算が義務化されているため)
もちろん、簿記全般の知識は会計事務所でも頻繁に使いますが、会計事務所は「企業会計」ではなく「税法」ベースで仕訳が切られることもあり、簿記1級ほどの高度な企業会計を学ぶ必要はありません。
日商簿記1級はどれくらいすごい資格ですか?
日商簿記1級は、合格までにおよそ600時間~800時間必要と言われる難関資格です。
1日3~4時間の勉強を半年続けて合格するかどうか、という難関資格です。
私自身も10年以上前に簿記1級を取得しましたが、非常に難しく大変だったことを今でも覚えています。
簿記2級までは過去問等を対策すれば合格できるのですが、簿記1級になると明確な戦略が必要になります。
もちろん独学で挑むのは非常にハードルが高く、私も半年独学で挑戦しましたが結果はボロボロでした。(50点で不合格)
簿記1級を取ったら何ができるようになりますか?
簿記1級を取っても、新たに何かができるようにはなりません。
ただし、簿記1級を取得した過程で学んだ知識を活用できるケースはあります。
簿記1級では、簿記2級までの知識に加えて主に「連結会計」「意思決定会計」を学習します。
そのため、これらの知識を活用する会社・ポジションでは、新しく仕事ができるようになるでしょう。
例えば、上場企業では連結決算が義務化されているため、上場経理の連結チームで働けるようになります。
また、経営企画では事業計画の策定・投資プロジェクトの立案といった業務で簿記1級の知識を活用できます。
簿記一級って意味ないのでは?
いいえ、そんなことはありません。
例えば、簿記一級は次の点で役立ちます。
- (会計・税務職種限定で)年収が上がる
- 未経験で会計・税務系に就職する場合、多少のアピールになる
- 税理士試験の税法科目の受験資格が得られる
- 公認会計士試験への適正が判断できる
逆に、上記以外において簿記一級が意味を成すシチュエーションは少ないです。
簿記1級って天才しか受からないのでは?
いいえ、そんなことはありません。
簿記1級は努力だけで合格できる資格試験です。
ただし、努力の方向性を間違えると、いつまで経っても合格できません。
私自身も簿記1級試験を2度受験していますが、試験特有の「攻略法」というものがあります。
簿記1級に合格したら頭いいですか?
簿記1級に合格すると、一般的には頭が良いと言われます。
ただし、合格までに要した勉強期間にもよります。
例えば半年・1年で合格できればある程度の地頭の良さが証明されますが、2年・3年かけて合格したのであれば普通でしょう。
簿記1級で人生は変わる?
いいえ、簿記1級を取得しただけでは人生は変わりません。
ただし! その後のキャリアの選び方によって、人生は変わり得ると思います。
私も簿記1級に合格した後、公認会計士試験のための勉強をスタートし、3年後に合格しました。
公認会計士になり、初めて「人生が変わった」と実感しました。
公認会計士試験合格後BIG4で経験を積み、現在は会計事務所と会社を経営していますから、文字通り人生は変わりました。
簿記1級の勉強をやめた後の選択肢は?
簿記1級の勉強をやめた(撤退した)場合、次のような選択肢があります。
- USCPA、税理士科目(簿記論・財務諸表論)の受験にシフトする
- 会計・税務系の職種に転職しキャリアを積み上げる
USCPA・税理士試験、いずれも働きながら合格を目指せる試験です。
ただし、働きながら勉強できる環境選びは重要です。
簿記1級を取ってよかったと思うことは?
私が簿記1級を取ってよかったと思ったのは、合格時に周りの人たちから「すごい」と言われたことです。
簿記を学習したことのある方であれば、この資格の難しさを理解してもらえるため、努力を認めてもらえます。
しかし、いざ就活で使えるかというと微妙なところです。
社会人になると学歴・資格よりも実務経験のほうが重要視されますので、あくまで学生時代の勲章のようなものと捉えています。
【比較】会計・税務に特化した転職エージェント
会計・税務に特化した転職エージェント上位3社を比較してみました。
MS-Japan | ヒュープロ (Hupro) | 人材ドラフト | |
---|---|---|---|
総合評価 | (9/10) | (10/10) | (6/10) |
求人数 (簿記1級) | 約 1,200 件 | 約 800 件 | 約 400 件 |
求人数 (経理) | 約 2,500 件 | 約 2,000 件 | 約 200 件 |
求人数 (会計事務所) | 約 1,300 件 | 約 5,500 件 | 約 1,000 件 |
特徴 | 経理に強い | 会計事務所に強い | ややマイナー |
口コミ・評判 | 評判・口コミ | 評判・口コミ | 評判・口コミ |
公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
簿記1級の求人数で言えば、MS-Japanが最も多くの求人数を保有していることが分かりました。
また職種ごとに求人数を抽出したところ、経理ならMS-Japan、会計事務所ならヒュープロが強いことが分かりました。
また、上位2社に比べると求人数はやや減りますが、人材ドラフトも評判は良です。
ぜひ上記を参考に、ご自身に合った転職エージェントを使って下さい。
1988年生まれ(36歳)
公認会計士・税理士
2012年 日商簿記1級 合格
2013年 公認会計士試験(論文式) 合格
2014年 EY新日本監査法人 入社
2021年 ニューラルグループ株式会社 入社
2024年 ARMS会計株式会社 代表取締役
前職では上場会社の経理部長として勤務し、現在は経理・財務支援サービス会社を経営しています。
外部サイト:優秀な経理担当者の5つの特徴