税理士試験【2022年(令和4年)】合格率は19.5%!【合格発表から分かった傾向】

税理士試験【2022年(令和4年)】合格率は19.5%!【合格発表から分かった傾向】

国税庁は2022年11月30日、2022年度(令和4年度)税理士試験の試験結果を発表した。
合格者は5,626人、受験者数は28,853人、合格率は19.5%だった。
うち5科目合格者(官報合格者)は620人、女性の合格者は合格者全体の3割にあたる1,691人だった。

第72回税理士試験は、2022年8月2日~4日に実施された。
税理士試験は、「会計学に属する科目」(簿記論、財務諸表論)と、「税法に属する科目」(所得税法、法人税法、相続税法、消費税法または酒税法、国税徴収法、住民税または事業税、固定資産税)のうち受験者の選択する3科目について行われる。
ただし、所得税法または法人税法のうち1科目は必ず選択しなければならない。
なお、税理士試験は科目合格制をとっており、受験者は一度に5科目を受験する必要はなく、1科目ずつ合格を目指すことができる。

目次

2022年(令和4年)|税理士試験の「合格率」「合格者数」

科目受験者数合格者数合格率
簿記論12,888人2,965人23.0%
財務諸表論10,118人1,502人14.8%
所得税法1,294人182人14.1%
法人税法3,454人425人12.3%
相続税法2,370人336人14.2%
消費税法6,488人740人11.4%
酒税法454人60人13.2%
国税徴収法1,709人235人13.8%
住民税476人82人17.2%
事業税269人38人14.1%
固定資産税910人167人18.4%
合計
(延人員)
40,430人6,732人16.7%
合計
(正味)
28,853人5,626人19.5%
国税庁:令和4年度(第72回)税理士試験結果
  • 合格率上位3科目:青色マーカー
    合格率下位3科目:黄色マーカー

2022年度は簿記論の受験者数が最も多く、合格者数・合格率ともに全科目中トップであった。
次いで受験者数・合格者数が多かったのは財務諸表論
簿記論・財務諸表論は税理士試験の登竜門であり、毎年受験者数が多い傾向にある。
また、2023年度試験からは会計学に属する科目(簿記論・財務諸表論)のみ受験資格が撤廃されるため、今後さらに受験者数・合格者数が増加する見込みである。

2番目に合格率が高かったのは固定資産税
固定資産税は毎年そこまで合格率は高くないが、2022年度試験においては合格率が大きく上がった。

3番目に合格率が高かったのは住民税
住民税は年度によって合格率が大きく異なる傾向にあるが、2022年度試験では上振れた結果となった。

逆に、合格率が最も低かったのは消費税法
消費税法は実務においても必要とされるケースが多いため、受験生に人気の科目である。
しかし、消費税計算の特性として、大きく失点しやすい科目でもあることから毎年合格率は低い。
特に今年は(相対的に)難易度が高く、合格率は11.4%と全科目中最下位であった。

なお、全体の合格率は19.5%であったが、延人員数(1人で複数科目を受験している人を複数名としてカウント)では16.7%となった。

まとめ
  1. 2022年は「簿記論」「固定資産税」「住民税」の合格率が高かった
  2. 一方、「消費税法」「法人税法」は合格率が低かった

【科目別】税理士試験の合格率推移【~2022年】

税理士試験の「科目別」合格率推移【2018年~2022年】
科目名2019年2020年2021年2022年2023年
簿記論17.4%22.6%16.5%23.0%17.4%
財務諸表論18.9%19.0%23.9%14.8%28.1%
法人税法14.7%12.0%12.6%14.1%13.8%
所得税法12.8%16.1%12.8%12.3%14.0%
相続税法11.7%10.6%12.8%14.2%11.6%
消費税法11.9%12.5%11.9%11.4%11.9%
酒税法12.4%13.9%12.6%13.2%12.7%
国税徴収法12.7%12.2%13.7%13.8%13.9%
住民税19.0%18.1%12.7%17.2%14.7%
事業税14.8%13.1%12.6%14.1%16.4%
固定資産税13.7%13.5%13.8%18.4%18.4%
合計
(延人員)
15.5%17.3%16.5%16.7%16.7%
合計
(正味)
18.1%20.3%18.8%19.5%21.7%
  • 各年の合格率上位3科目:青色マーカー
    各年の合格率下位3科目:黄色マーカー

直近5年間の合格率の傾向としては、「簿記論」「財務諸表論」「住民税」「固定資産税」が高い合格率をキープしている。
この傾向は直近の税理士試験(2022年)もほぼ同様であった。

一方、合格率の低い科目は分散しており、合格率の高い科目・そうでない科目がはっきりと分かれる傾向にある。
直近の合格率の傾向を参考に、次回受験する試験科目を選ぶのも良いかもしれない。

所感
  1. 簿記論・財務諸表論・住民税の合格率は、引き続き高水準
  2. 固定資産税の合格率は例年よりも大きく増加
  3. その他の科目は合格率10%~15%を維持

【学歴別】税理士試験の合格率推移【~2022年】

【学歴別】税理士試験合格率推移
受験者数5科目
到達者数
一部科目
合格者数
合格者数
合計
合格率
大学卒22,393人563人3,300人3,863人17.3%
大学在学中1,019人4人331人335人32.9%
短大・旧専卒841人23人77人100人11.9%
専門学校卒2,824人95人355人450人15.9%
高校・旧中卒2,282人51人429人480人21.0%
その他420人13人147人160人38.1%
(合計)28,853人620人5,006人5,626人19.5%
国税庁:令和4年度(第72回)税理士試験結果
2018年2019年2020年2021年2022年
大学卒14.7%17.3%19.3%17.7%17.3%
大学在学中21.4%32.9%32.6%31.1%32.9%
短大・旧専卒9.6%11.9%17.3%14.3%11.9%
専門学校卒15.1%15.9%16.8%16.1%15.9%
高校・旧中卒17.9%21.0%23.8%22.5%21.0%
その他32.4%38.1%42.2%43.5%38.1%
(合計)15.3%18.1%20.3%18.8%19.5%
  • 各年で最も高かった合格率:青色マーカー
    各年で最も低かった合格率:黄色マーカー

例年に引き続き、大学在学中の合格率が最も高く3割をキープした。
また、最も合格率が低かったのは短大・旧専卒でありこれも例年通りの傾向である。

【年齢別】税理士試験の合格率推移【~2022年】

【年齢別】税理士試験合格率推移
受験者数5科目
到達者数
一部科目
合格者数
合格者数
合計
合格率
41歳以上10,805人274人965人1,239人11.5%
36~40歳4,407人112人743人855人19.4%
31~35歳4,581人114人901人1,015人22.2%
26~30歳4,131人82人911人993人24.0%
25歳以下4,929人38人1,486人1,524人30.9%
(合計)28,853人620人5,006人5,626人19.5%
国税庁:令和4年度(第72回)税理士試験結果
2018年2019年2020年2021年2022年
41歳以上10.0%11.5%13.2%11.8%11.5%
36~40歳14.3%16.2%19.2%18.3%19.4%
31~35歳16.8%19.7%21.7%21.3%22.2%
26~30歳18.1%23.0%25.1%23.0%24.0%
25歳以下27.0%32.7%33.8%29.7%30.9%
(合計)15.3%18.1%20.3%18.8%19.5%
  • 各年で最も高かった合格率:青色マーカー
    各年で最も低かった合格率:黄色マーカー

例年通り、25歳以下の受験生の合格率が最も高い結果となった。
頭が柔らかく飲み込みの早い時期であるほか、大学生が多いため、社会人よりも比較的勉強時間を多く取れることが要因であると考えられる。

また、年齢が上がるにつれて合格率が下がる傾向も例年通りであり、41歳以上の合格率が最も低い結果となった。

過去10年間|「受験者数」「合格者数」「合格率」推移

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2013年2014年2015年2016年2017年2018年2019年2020年2021年2022年
受験者数
(延人員)
65,51858,46553,66349,24545,46242,06341,15836,84537,67340,430
受験者数
(実人員)
45,33741,03138,17535,58932,97430,85029,77026,67327,29928,853
合格者数
(実人員)
8,3486,9096,9025,6386,6344,7165,3885,4025,1395,626
合格率
(実人員)
18.4%16.8%18.1%15.8%20.1%15.3%18.1%20.3%18.8%19.5%

受験者数は2020年にかけて右肩下がりであったが、2021年より増加傾向に転じ、2022年も引き続き受験者数は増加した。
また、合格者数についても2022年は微増している。

結果、合格率は19.5%と比較的高い水準をキープ。
合格率の直近10年間の傾向としては、2018年頃までは下落傾向であったが、2019年より増加傾向に転じている。

所感
  • 受験者数は2020年までは減少傾向だったが、2021年から増加傾向にトレンド転換
  • 合格者数はやや増加
  • 合格率は直近4年間で上昇傾向にある

2023年(令和5年)|税理士試験の日程

2023年(令和5年)の税理士試験の日程は、次のとおりです。

税理士試験実施スケジュール

項目日程
試験実施官報公告令和5年4月7日
受験申込受付開始令和5年5月9日
受験申込受付締切令和5年5月19日
試験実施令和5年8月8日~令和5年8月10日
合格発表令和5年11月30日
国税庁:令和5年度(第73回)税理士試験実施スケジュールについて

試験日程

月日時間科目
令和5年
8月8日(火)
9:00~11:00簿記論
12:30~14:30財務諸表論
15:30~17:30消費税法 または 酒税法
令和5年
8月9日(水)
9:00~11:00法人税法
12:00~14:00相続税法
15:00~17:00所得税法
令和5年
8月10日(木)
9:00~11:00国税徴収法
12:00~14:00固定資産税
15:00~17:00住民税 または 事業税
国税庁:試験日程:試験科目について

日程は例年ほぼ同時期に行われており、2024年度についても変わらず同時期に実施されることが予想されています。

税理士試験の受験資格をおさらい

ご存じのとおり、2023年試験から税理士試験は受験資格が緩和されました。
そこで、最新の税理士試験の受験資格をおさらいします。

税理士になるまでの流れは、上記画像のとおりです。

税理士試験は、「会計学に属する科目」(簿記論、財務諸表論)と、「税法に属する科目」(所得税法、法人税法、相続税法、消費税法または酒税法、国税徴収法、住民税または事業税、固定資産税)に分けられます。

このうち、「税法に属する科目」については受験資格が必要となり、受験資格をクリアした受験生のみ受験することができます。
一方、「会計学に属する科目」については受験資格が撤廃され、誰でも自由に受験することができます。

なお、受験資格は次のとおりです。

学識要件
1.大学、短大又は高等専門学校を卒業した者で、社会科学に属する科目(※)を1科目以上履修した者
2.大学3年次以上で、社会科学に属する科目(※)を1科目以上含む62単位以上を取得した者
3.一定の専修学校の専門課程を修了した者で、社会科学に属する科目(※)を1科目以上履修した者
4.司法試験合格者
5.公認会計士試験の短答式合格者
資格要件
6.日商簿記検定1級合格者
7.全経簿記検定上級合格者
職歴要件
8.法人又は事業行う個人の会計に関する事務に2年以上従事した者
9.銀行、信託会社、保険会社等において、資金の貸付け・運用に関する事務に2年以上従事した者
10.税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助事務に2年以上従事した者
国税庁:税理士試験受験資格の概要

大学生・大卒の方は非常にクリアしやすい条件になりました。
また、そうでない方も会計事務所で2年以上働くことで受験資格を得ることができます。

受験資格の緩和によって受験生が大幅に増えることが予想されますが、先述のとおり税理士試験は相対評価の試験であることから、合格率が大きく下がるようなことはないと予想されます。

税理士試験に関するよくある疑問

その他、税理士試験に関するよくある疑問をまとめました。


税理士試験の合格発表通知はいつ届く?

例年、合格発表日当日に普通郵便にて試験結果通知が郵送されます。

そのため、手元に合否通知が届くのは合格発表日の2~3日後になります。

税理士試験の合格点は何点ですか?

税理士試験の合格基準点は、各科目とも満点の60パ-セントです。

ただし、税理士試験は「傾斜配点」と呼ばれる仕組みがあるものと考えられており、受験生の合格率を概ね10%~50%に収められるものと考えられています。

そのため、税理士試験は絶対評価(予め配点が決まっている試験)ではなく相対評価(毎年の受験生の中で配点が決まる)の試験であると言われます。

そのため、合格点を意識することも大切ですが、何より受験生の中で上位10%~15%の中に入ることを意識することが大切です。

税理士試験合格者の官報はどこで見れますか?

無料で見たい方は、インターネット版 官報をご覧ください。

また、紙媒体で購入したい方は全国官報販売協同組合のHPを参照すると、お近くの購入場所を調べることができます。

なお、免除申請で官報合格した方は、毎年6月中旬頃に官報へ掲載されます。

税理士試験の申し込み期間はいつですか?

毎年、5月初旬~中旬の約10日間のみ申し込みを受け付けています。

また、願書は4月中旬から配布しています。

詳しくは国税庁HP「受験の申込みについて」を参照して下さい。

税理士試験の勉強時間の目安はどのくらいですか?

税理士試験の科目ごとの勉強時間は、次のとおりです。

科目名勉強時間
簿記論825時間
財務諸表論825時間
所得税法1,200時間
法人税法1,200時間
相続税法900時間
消費税法625時間
酒税法300時間
国税徴収法300時間
住民税450時間
事業税450時間
固定資産税500時間

各予備校が公開している平均勉強時間は、かなり過少に見積もられていると考えられます。

上記の平均勉強時間を参考に、学習計画を立てることをオススメします。

公認会計士と税理士はどっちが難しいの?

私は公認会計士資格・税理士資格の両方を持っていますが、正直どちらが難しいとは一概に言えません。

合格者数は公認会計士試験の方が少なく、合格率も公認会計士試験の方が低いため、合格者数・合格率だけで見れば公認会計士試験のほうが難しいと言えます。

しかし、合格に必要な(平均的な)年数は税理士試験の方が長く、税理士試験のほうが継続的な努力が求められます。


税理士試験は、働きながら合格できる試験です。

先述のとおり、税理士試験合格者のうち約3割は大学生ですが、約7割は社会人・既卒の受験生です。

そのため、特に会計事務所では働きながら税理士を目指す受験生がとても多いです。

しかし、会計事務所の中にはブラックな会計事務所もあり、事務所選びを失敗するといつまでも合格できない恐れがあります。

働きながら税理士を目指すには、より学習に適した環境を選ぶ必要があります。

働きながら税理士を目指せる職場探しのコツは、無理なく働きながら税理士に合格できる「職場」の選び方の記事内で詳しく解説しています。

ぜひ自分に合った会計事務所を見つけ、最短距離で税理士資格の取得を目指しましょう!

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