公認会計士の藤沼です。
USCPA受験生・USCPA有資格者にとって、監査法人は目標とするキャリアの1つでしょう。
監査法人での職務経験はキャリアに箔が付くため、更なるハイキャリアに転身できる可能性を秘めているからです。
近年USCPAに対するニーズは増えており、BIG4だけでなく、中小監査法人からの需要もかなり大きくなってきました。
しかし、それでも一般企業に比べると、監査法人への入社難易度は高いです。
そこで今回は、USCPAとして監査法人に入社する方法を紹介します。
私は大手監査法人(EY)ではリクルーター・面接官を経験し、中小監査法人では採用アドバイザーをしていましたので、採用官目線でもお話しします。
この記事で分かること
- 未経験かつ30代後半になると、USCPA資格があっても監査法人に就職するのは難しい
- 監査法人で働くUSCPAの年収は、日本の公認会計士とほぼ同水準
- USCPA合格前でも、監査トレーニーなら監査法人で働ける
- USCPAが監査法人からの内定率を高める手法
2014年 EY新日本監査法人 入社
2018年 中堅コンサル事務所 入社
2019年 藤沼会計事務所 開業
2020年 アカウントエージェント株式会社 代表
USCPAを採用している監査法人
USCPAを採用している監査法人は、次のとおりです。
各監査法人の採用ページには、通常「定期採用」「通期採用(中途採用)」の2種類の採用ページがあります。
このうち「定期採用」は日本の公認会計士試験合格者用の採用ページですので、USCPAの方は「通期採用(中途採用)」のページを確認して下さい。
また、BIG4では「監査部門」「アドバイザリー部門」で採用が分かれているため、やりたい業務によって応募する部門が異なる点にも注意です。
一方、中小監査法人では「監査」「アドバイザリー」について部門を分けず、両方に関与できるケースが大半です。(そもそもアドバイザリー業務のない法人も多いですが)
またもう一点、USCPAに限っては法人HPではなく、転職サイト上で求人を公開している監査法人が多いです。
理由は定かではありませんが、おそらくUSCPAは(日本の公認会計士に比べると)人数が多いため、転職サイト・転職エージェントを使って応募者のスクリーニングしているのでしょう。
監査法人でのUSCPAの仕事内容
USCPAとして監査法人に就職した場合、仕事内容は大きく「監査」と「アドバイザリー」の2つに分けられます。
なお、大手監査法人(通称BIG4)に就職した場合は、「監査部門」「アドバイザリー部門」のいずれかの部門で採用され、監査業務 or アドバイザリー業務のいずれかにのみに従事することになります。
一方、中小監査法人に就職した場合は、大半が「監査」「アドバイザリー」を部門として分けておらず、両方の業務に従事できるケースが多いです。
ネームバリュー・クオリティの高さを取るのであればBIG4を選ぶべきですが、幅広な経験を撮るのであれば中小監査法人を選ぶべきです。
以下、監査・アドバイザリーのそれぞれについて、仕事内容を解説します。
監査業務|USCPAの花形業務!最も重宝されるキャリア
USCPAとしての花形業務が、監査業務(会計監査)です。
監査業務では、クライアント企業の試算表における勘定科目をチームで分担し、勘定科目ごとにアサーションの適切性を確認していきます。
例えば、借入金に関する重要なアサーションは「網羅性」ですから、クライアントの取引銀行に残高確認状を送付し、試算表に計上されていない借入・負債がないか確認することが求められます。
入社1年目は難易度の低いB/S項目を担当するケースが大半であり、2年目から徐々にP/L項目や営業項目も担当するようになります。
3年目に入ると現場を回すポジション(=主査・インチャージ)を任され、ここでクライアント企業の全体像が分かるようになります。
ただし、中小監査法人ではキャリアアップがもう少し早く、2年目から主査を任されるケースや、前職があれば1年目から主査を経験するケースもあります。
USCPAは日本での監査報告書にサインすることができないため、基本的には「パートナー」という役職まで上がることはできません。
そのため、監査法人をキャリアアップの踏み台として、ある程度の段階で他の職種(経理・コンサルが多い)へ転職する方が多いです。
アドバイザリー業務|主にM&Aに関するコンサルティングに従事
監査法人でのアドバイザリー業務は、M&Aに関する業務が多いです。
具体的には、次のような業務に従事します。
M&A(企業買収)では、クライアント企業は買収対象企業を適正価格で買収したいため、適正な価値評価を監査法人に求めます。この価値評価の方法をバリュエーションと呼びます。
バリュエーションでは決算書を読み解くスキルの他、読み取った財務数値を用いて、企業価値を計算するスキルが求められます。
また、そもそも財務数値が間違っていたのでは誤った企業価値を算定してしまうため、その前段階で財務数値の適正性を確認・修正する必要があります。この作業を財務DDと呼びます。
いずれも買収前の手続きとして密接に関連することから、両者を同時に実施するケースが多いです。
一方、買収した後はそれぞれの異なる企業を内部的に統合する作業が必要になります。この統合作業をPMIと呼びます。
PMIは、仕事内容が会計・税務・監査から遠ざかることから、年次が上がってから関与するケースが一般的です。
監査法人で働くUSCPAの年収
監査法人で働くUSCPAの年収は、概ね次のとおりです。
職階 | 年収 |
---|---|
スタッフ | 400万~700万 |
シニア | 600万~900万 |
マネージャー | 800万~1,200万 |
シニアマネージャー | 1,200万~1,400万 |
パートナー | 1,200万~4,000万 |
上記は、BIG4で働くUSCPAの年収テーブルです。
USCPAは日本の公認会計士有資格者と年収テーブルが同一のケースが多く、かなり高水準と言えます。
各職階は4年に1度昇格のタイミングがありますが、マネージャー以上への昇格では難易度が上がります。(逆にシニアへの昇格は容易で、ほとんどの人がシニアに上がれます。)
また、USCPAの場合はパートナーに昇格するケースはほぼありません。(例外的なケースはある)
なお、中小監査法人の年収も上記と似た水準ですが、法人によってはむしろBIG4よりも年収が高いケースもあります。
「中小監査法人=年収が低い」というイメージのある方もいると思いますが、その認識は間違っています。
USCPAは完全未経験でも転職できる?
年齢によって異なりますが、30代までであればUSCPAは未経験職種に転職できます。
ただし、30代後半(36歳以上)になると一気に就職難易度は上がります。
一方、30代前半までに監査経験があると、その後の転職難易度がかなり下がります。
これからUSCPAライセンスの取得を目指すのであれば、(合格前・合格後に限らず)まず30代前半までに監査法人に入社しておくことを強くオススメします。
30代後半に入ってしまうと、監査法人への入社難易度が高く、かつその他の未経験職種への転職難易度も非常に高くなるからです。
【年齢別】USCPAの監査法人への就職難易度
年齢によって、監査法人への就職難易度は大きく変わります。
それぞれ解説します。
20代のUSCPA|監査法人への入社可能性は高い!コミュ力は必須
20代でUSCPAに合格していれば、(選ばなければ)監査法人への就職可能性は高いです。
ただし、コミュニケーション能力の低い方・面接が苦手な方は、面接での失敗により落とされるケースが多いです。
つまり、20代でUSCPAに合格しても監査法人に入社できないケースは普通にあります。
そこでオススメなのが、USCPA合格前に監査法人に入社する方法です。
この方法を使えば、将来の就活に対する不安をクリアにしたうえでUSCPAを目指すことができます。
30代のUSCPA|前職での経験を必ず見られる!合理的な回答が必須
30代に入ると、必ず前職での経験を見られます。
一般に、監査法人で有利になる前職は「経理」「会計事務所」の2種のみです。
ただし、メガバンク・大手総合商社・大手金融系に限っては、(実績・ポテンシャルがあれば)高く評価されることがあります。
上記職種の前職がない方は、面接でのアピールが必須です。
アピールすべき要素は、「英語力」「コミュニケーション能力」の2つです。
英語力はTOEICの学習により高得点を取ればクリアできますが、コミュニケーション能力を短期間で身に付けることは困難でしょう。
そこで重要なのが、面接対策です。
ぶっちゃけ面接の場だけでも取り繕ってしまえば、内定は出ますから。
40代のUSCPA|監査法人への入所は非常に難しい
40代になると、監査法人への入社難易度は非常に高く、前職での経歴が余程良いものでない限り入社は難しいです。
無理とは言いませんし、実際40代で(監査未経験で)入社してきた方を知っていますが、かなり優秀な方でした。
USCPAを取って人生逆転するには、40代では遅いと感じます。
【おすすめ】USCPA合格前に監査法人に入社する方法
知らない方も多いと思いますが、監査法人業界には監査トレーニーという制度があります。
監査トレーニー制度とは、監査法人で働きながら公認会計士やUSCPAの合格を目指せる制度をいいます。
監査トレーニーを採用している監査法人では、監査業務にかかる給料だけでなく、公認会計士試験・USCPA受験のための学費(予備校代)補助も出るケースがあります。
また、座学だけでは中々イメージの湧きづらいAUDについて実務を通じて深く理解することができるため、受験勉強との親和性も非常に高く、学習効率が確実に上がります。
以前は日本の公認会計士資格受験生のみが対象になっていましたが、最近では、USCPA受験生も監査トレーニーの対象とする監査法人が増えています。
もちろん、USCPA合格後はその監査法人で継続的に働き続けることができますから、合格後の就職問題に不安を抱える必要もなくなります。
監査トレーニー制度はまだまだ知名度が低いため、今がチャンスだと思います。
なお、監査トレーニー制度にはデメリットもありますので、詳しくは次の記事内で詳細解説しています。
USCPAが監査法人の内定率を高める方法
USCPAとして監査法人からの内定率を高めるには、大きく3つの方法があります。
- 英語力を磨く
- コミュニケーション能力を磨く
- 面接対策を完璧にする(おすすめ)
それぞれ解説します。
英語力を磨く|日本の会計士が苦手とする領域
監査法人では、USCPAに対してはUSGAAPの知識だけでなく、英語力が求められます。
英文でのメールだけでなく、英語での電話会議・ミーティングへの参加も求められるでしょう。
監査法人で働く会計士はその大半が英語力に自信がないため、英語力を高めることが差別化戦略として有利になります。
TOEICで言えば、900点以上あればかなり有利に働きます。
また、英文の契約書等も読むことになりますから、もし前職で英語を活用した会計税務系の経験があるのであれば、その経験も必ずアピールすべきです。
コミュニケーション能力を磨く|USCPAはコミュ力が特に重視される
監査法人では、コミュニケーション能力が非常に重視されます。
コミュニケーション能力が高ければクライアントとの良好な関係を築けるほか、チームを上手くまとめ上げることができるからです。
たまに他の会計系資格を取ったりする方がおられますが、評価にほとんど影響しないのでオススメしません。
ただし、そうは言っても「コミュニケーション能力」は一朝一夕で身に付くものではありません。
そこでオススメなのが、次に紹介する面接対策を完璧にする方法です。
極論ですが、面接での受け答えが完璧なら内定は出ます。
面接対策を完璧にする(オススメ)|事前の準備でほぼ全てが決まる
監査法人ではコミュニケーション能力が非常に重視されるため、面接時には様々な角度から質問をされます。
つまり、面接で聞かれた質問に対して合理的な回答ができ、かつ即答できれば、あるコミュニケーション能力ありと評価されるケースが多いのです。
実際、私も監査法人で面接官を経験したことがありますが、30分という短い面接時間で「人間性」「性格」まで見極めるのは難しいため、質問に対する回答が的を得ているか・結論から話せているかといった点を評価をします。
そこで、面接対策が必須になるのです。
アドリブで回答できる地頭の良さがあれば話は別ですが、ほとんどの方は、事前準備が勝敗を分けると言っても過言ではありません。
具体的には、まず転職エージェントから(応募する監査法人ごとの)面接時QAリストを入手してください。
USCPAが多く登録している転職エージェントであれば、監査法人の面接経験者からのフィードバックが多く集まっているため、QAリストも多く集まっています。
あとは質問に対する回答を全て暗記し、面接に臨むだけです。
面倒な作業ですが、ここまでやってくる応募者は少ないので、これだけでかなりのアドバンテージが取れます。
USCPAとして監査法人に入社したいのであれば、ぜひ実践してください。
USCPAと監査法人に関するよくある疑問
その他、USCPA・監査法人に関するよくある疑問をまとめました。
USCPAは監査できないのですか?
いいえ、USCPAでも監査に関与できます。
ただし、日本国内では監査責任者としてサインできないため、監査法人での「パートナー」になることはできません。
マネージャー(管理職)までは昇格できます。
米国公認会計士と公認会計士はどちらが難しいですか?
日本の公認会計士の方が難しいです。
単純比較はできませんが、一般的に、日本の公認会計士は米国公認会計士の10倍近く難しいと言われています。
USCPAと簿記一級はどちらが難しいですか?
基礎的な英語力がない方にとっては、USCPAの方が難しいです。
一方で、高い英語力のある方にとっては簿記1級の方が難しいです。
日本で働くだけでもUSCPA登録の実務経験として認められますか?
はい。USCPAのライセンス取得のための実務経験は、働く国などの制限がありません。
また、米国基準での企業会計・会計監査に携わる必要もありません。
実務経験なしでもUSCPAライセンスを取得できますか?
一部の州では、実務経験なしでもUSCPAライセンスが取得できます。
具体的にはグアムにおける「Inactiveライセンス」が該当し、名刺に資格名を記載することができます。
ただし、名刺にはU.S.CPA(Inactive)と記載する必要があり、Activeライセンス(通常のライセンス)を名刺に記載したい場合には、通常通り実務経験が必要になります。
新卒USCPA合格者の就職先は?
監査法人が最もオススメです。
BIG4への入社は難易度が高いですが、若さは武器になるので監査法人への入社を考えるべきです。
USCPA・監査法人の求人が揃っている転職サイトはどこ?
MS-Japanがおすすめです。
MS-Japanは会計系に特化した大手エージェントであり、USCPA・監査法人の求人数が膨大です。
USCPAが監査法人内で苦労することは?
英語力で苦労するケースがあります。
USCPAには英語力が期待されており、英語力が日本の公認会計士との差別化につながります。
メールでのコミュニケーションだけでなく、英語でのミーティング・電話会議にも積極的に参加し、苦手意識を克服する努力が必要です。
未経験20代でもUSCPAを取れば監査法人に就職できる?
20代であれば、未経験でもUSCPAを使って監査法人に就職できる可能性はあります。
ただし、面接対策は必須です。
未経験30代でもUSCPAを取れば監査法人に就職できる?
30代後半になると未経験では難易度がかなり上がりますが、可能です。
ただし、面接対策は必須です。
監査法人ではUSCPA資格は使えないんですか?
いいえ、そんなことはありません。
USCPAを採用している監査法人はありますし、私自身、USCPAの方と一緒に監査法人で仕事をしていました。
むしろ、USCPA資格はJICPA資格よりも難易度が低いため、効率よく監査法人に就職できる資格だと言えます。
【比較表】USCPAに強い転職エージェント
USCPAとして、またUSCPA受験生として監査法人に転職するなら、MS-Japanが最もオススメです。
なぜなら会計業界に特化した大手エージェントであり、USCPA・監査法人の求人数が非常に多いからです。
USCPA・監査法人の業界は専門性が高いため、知識の豊富なエージェントを利用しなければなりません。
ぜひ上記比較表を参考に、ご自身に合った転職エージェントをご利用ください。
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