公認会計士が非常勤をずっと続けるコツとリスクを解説【独立6年目の会計士が解説】

公認会計士が非常勤をずっと続けるためのコツ・リスクを解説【独立5年目の会計士が解説】

公認会計士・税理士の藤沼です。

以前、公認会計士の非常勤、小さなデメリット vs 大きすぎるメリットの記事内で、非常勤がとても美味しい理由を解説しました。

そう。私たち会計士にとって非常勤はかなり稼げます。

正社員よりも稼げるし、正社員よりも残業・ストレスが少ない。 正直超オススメの働き方です。

しかし「非常勤をずっと続けることはできるのか?」という疑問があります。

結論を言えば、会計士として非常勤をずっと続けることは可能です。

ただし!ずっと続けるにはコツがあり、またリスクもあります。

公認会計士が非常勤を「ずっと続ける」ためのコツ

そこで今回は、会計士が非常勤をずっと続けるための重要ポイントを紹介します。

私自身も、独立直後からずっと非常勤職員として働いていましたので、きっと参考になるはずです。

この記事を書いた人

1986年生まれ(38歳)
公認会計士税理士

2014年 EY新日本監査法人 入社
2018年 中堅コンサル事務所 入社
2019年 藤沼会計事務所 開業
2020年 アカウントエージェント株式会社 代表


目次

公認会計士が非常勤を「ずっと続ける」ためのコツ

公認会計士が非常勤をずっと続けるためのコツは、次のとおりです。

公認会計士が非常勤を「ずっと続ける」ためのコツ

それぞれ解説します。

契約年数の定めがない監査法人を選ぶ

監査法人の中には、非常勤職員との継続契約年数に縛りを設けているケースがあります。

その背景には、金融庁レビューへの対応が考えられます。

例えば平成30年5月には監査法人アヴァンティアが、令和元年7月には清流監査法人がそれぞれ行政処分を受けており、品質管理・業務管理の不備として「非常勤職員の多さ」を指摘されています。

このようなリスクへの対応として非常勤職員の比率を下げるべく、非常勤職員の契約年数に縛りを設けるケースがあります。

しかし、監査法人での非常勤をできる限り長く・ずっと続けるためには、契約年数に縛りのない監査法人を選ぶべきです。

契約年数に定めのない監査法人であれば、余程の理由がない限り、1年で契約を終了させられることはありません。

掛け持ち可能な監査法人を選ぶ

監査法人の中には、非常勤の掛け持ちを認めている法人があります。

非常勤としてずっと働きたいのであれば、このような掛け持ちOKの監査法人を選びましょう。

というのも、監査法人1社だけでは十分な勤務日数(アサイン日数)を確保できない可能性があるからです。

私たち会計士の非常勤の時給・日給はかなり高いですが、これを主たる収入源とするためには、ある程度の勤務日数が必要です。

例えば日給8万円でも、年間60日しか勤務できなければ年間500万円弱の収入にしかなりません。

理想的なのは、年間100日程度の契約の監査法人を2社掛け持ちすることでしょう。

また、1社だけに依存していると契約が終了した場合に収入が途絶えるため、その対応策にもなります。

監査法人非常勤の掛け持ちについて、詳しくは次の記事内で解説しています。

なお、アサイン日数は面接時に擦り合わせることが多いので、契約前に勤務日数の目安を把握することができます。

公認会計士が非常勤をずっと続けることのリスク

フリーランスとして独立する公認会計士は、近年かなり増えました。

しかし、会計士が非常勤をずっと続けることにはリスクが1つだけあります。

それは、業界全体として人手不足が解消されるリスクです。

非常勤契約は基本的に1年更新のため、人手不足が解消された際は1年以内に契約が終了する可能性があります。

こればかりは市場全体の話ですから、管理不能です。

なお、事前に人手余りを予測することはできます。

例えば、2006年6月には日本国内での内部統制報告制度が規定され、2008年4月からのJ-SOX適用に伴い公認会計士の数を一時的に増やした過去があります。

これにより、2006年~2008年の公認会計士試験合格者数が従来の2~3倍にまで増えたため、2009年~2011年にかけて公認会計士の就職難が深刻化しました。

もし今後、また公認会計士を増やすような事象が起これば、その後2~3年以内に就職難が再来する可能性があります。

いずれにせよリスクをゼロにはできないため、実は「非常勤をずっと続けない」という戦略の方が効果的だったりします。

公認会計士が非常勤を「ずっと続けない」ためのコツ

先述のとおり、非常勤のリスクはゼロにできないため、実は「ずっと続けない」という戦略も効果的です。

でも、非常勤はオススメします。

どういう事かと言うと、非常勤で一気に稼ぎ切って早期リタイアも可能という話です。

この戦略は私の趣向も入るので、全員にオススメするわけではありません。

興味のある方は、続きを読んでください。

公認会計士が非常勤を「ずっと続けない」ためのコツ

それぞれ解説します。

時給単価を重視して監査法人を選ぶ

非常勤をずっと続けることは可能ですが、先述したリスクがあるため、その対応策として「早期に稼ぎ切る」という戦略が効果的です。

具体的には、時給単価の高い監査法人を選ぶことが重要になります。

中小監査法人の中には、時給10,000円で会計士を採用する法人もあります。

仮に1日8時間・年間200日働いた場合、時給10,000円なら年収1,600万ですが、時給6,000円だと年収960万にしかなりません。

高時給な監査法人を選ぶことで、目標となる生涯年収を早期に稼ぐことが可能になり、将来職を失うリスクを軽減策できます。

仮に生涯年収「3億円」を目標にする方の場合、年収1,000万なら30年働き続けなければなりません。

しかし、非常勤で年収1,500万円が達成できれば、20年で引退することができます。

もし年収2,000万が達成できるのであれば、15年で引退できます。

もちろん、実際に早期リタイアするかどうかは別ですが、一生分の所得を稼ぎ切ってしまえば仕事からは解放されます。

ちなみに、BIG4の非常勤は時給4,000円前後とかなり安いので、私は中小監査法人をオススメします。

NISA等の副業がしやすい監査法人を選ぶ

非常勤によって年収が上がると、投資に回せる金額も増えます。

例えば、NISAを利用したインデックス投資のような低リスクな金融資産への投資も、個人的にはアリだと思います。

2024年1月より、NISAは積立投資限度枠が年間360万円(月30万円)に増えたため、所得の多い人ほど投資(NISA)に回せる資金が更に増え、リターンの期待値も上昇します。

下記のシミュレーションを試してください。

リスクの低いインデックス投資「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の利回りは約9%です。(直近20年間の平均値)

利回り9%の安全資産に月30万を積立投資した場合、20年後には約6700万の含み益です。(しかも非課税)

その後も複利計算により含み益は増加し続け、30年後には含み益が約1億8400万円になります。

もちろん投資を推奨するわけではなく、あくまでこのような考え方もあるという話です。

ちなみに、私自身はこのオールカントリーに限度額いっぱいまで積立投資するつもりです。

中小監査法人であれば、投資時の面倒な申請も求められないケースが多いため、非常勤会計士にマッチする副業です。

※ 投資にはリスクがあるため、必ず自己責任で行ってください。

公認会計士が非常勤をずっと続けるメリット

公認会計士が非常勤をずっと続けるメリットは、次のとおりです。

公認会計士が非常勤をずっと続けるメリット

それぞれ解説します。

仕事での精神的ストレスが減る

私は独立直後から中小監査法人で非常勤をしていましたが、大手監査法人で正社員をしていた頃よりも、圧倒的にストレスが減りました。

監査にネガティブなイメージを持っていましたが、面白いとさえ思ったほどです。

これは非常勤だからというよりも「中小監査法人だから」なのかもしれませんが、大手よりも本質的な作業に集中できたため、やりがえさえ感じました。

また、非常勤職員は正社員に比べて責任が軽いため、その意味でもストレスは減ります。

作業はスタッフ業務が中心であり、監査計画の策定・経営者ディスカッションなどインチャージに求められる業務は原則発生しません。

早期リタイアが可能になる

特に、中小監査法人では非常勤の時給単価がかなり高いです。

そのため、早期リタイアという選択が可能になります。

仮に時給10,000円の監査法人で1日8時間・年間200日働いた場合、それだけで年収1,600万です。

また、新NISAなど手間のかからない積立投資をしていれば、早期リタイアは更に近づくでしょう。(投資を推奨するわけではありません)

もちろん仕事を辞める必要はありませんが、いつでも仕事を辞められるという状況は精神的にもだいぶ楽ですよ。

公認会計士として独立開業した場合の収入源

非常勤だけでも十分な収入ですが、独立して会計事務所を並行して経営したい人もいるでしょう。

(あくまで私個人的には、独立して稼ぐよりも非常勤(+NISAへの投資)に振り切ったほうが楽だと思っていますが)

一般的な会計事務所を開業する際は、次のようなサービスで収益を上げることになります。

公認会計士として独立開業した場合の収入源

それぞれ解説します。

税務

税理士登録をし、税務で稼ぐ方法です。

税務分野での独立は、比較的難易度が低いです。

税務経験のない公認会計士であっても、独立後に勉強すれば何とかなります。(私もそうでした)

ただし、1年目は利益率が低いです。

税務で稼ぐ場合、税理士ドットコムやfreee税理士検索などのプラットフォームを利用し、顧客を獲得するのが一般的です。

このプラットフォームの手数料が非常に高く、年間顧問料の70%も取られるケースがあります。(某有名プラットフォーム)

顧問契約が継続できれば2年目以降で手数料はかかりませんが、1年目の収益性はかなり低いです。

また、税倍(税理士賠償責任)リスクがありますから、税倍保険に加入する必要もあります。

税務顧問は元々収益性が(コンサル・監査に比べると)低いため、記帳を自計化したり記帳を業者に代行させることで契約数を増やすなどの工夫が必要になります。

コンサル

公認会計士としてのスキル・経験・人脈を活かし、会計・財務コンサルで稼ぐ方法です。

具体的な分野は、次のとおりです。

会計士が独立した後のコンサル(例)
  • IPOコンサル
  • M&Aコンサル
  • 財務コンサル(資金調達)
  • 事業再生・企業再生コンサル
  • 経営コンサル
  • 原価計算・管理会計導入支援
  • 内部統制構築支援
  • 会計システム導入支援 など

正直、税務に比べて難易度は各段に高いです。

これらは原則スポットでの受注であり、またtoBサービスであることからパイが少ないため、安定的な収入源とすることができません。

もちろん人気のコンサルタントになる・または組織化できれば別ですが、人脈がある人・営業ができる人でなければスタートからつまずく可能性があります。

その他、公認会計士の非常勤に関するよくある疑問

その他、公認会計士の非常勤に関するよくある疑問をまとめました。


公認会計士の非常勤の時給はいくらですか?

公認会計士の非常勤の時給は、4,000円~10,000円です。

監査法人によって時給単価は異なりますが、大手監査法人ほど時給が低く、中小監査法人ほど時給が高い傾向にあります。

大学生の公認会計士の非常勤は時給いくらですか?

学生非常勤の時給相場は、2,000円~2,500円ほどです。

公認会計士登録者よりも時給単価はかなり下がります。

関連記事:公認会計士の学生非常勤は高時給ってホント?

会計士は何年目で独立しますか?

会計士が独立する目安は、4年目~8年目です。

特に、監査法人での昇格前後となる「4年目」「8年目」の前後が最も多いです。

開業税理士として登録していても、非常勤の業務委託はできる?

はい、できます。

正社員だと税理士登録を認めない監査法人が多いですが、非常勤職員であればほとんどの監査法人では税理士登録を認めています。

公認会計士ができるバイトには、他に何がある?

監査法人の非常勤以外に、現実的なものとしては「会計事務所」「簿記講師」のアルバイトがあります。

いずれも非常勤に比べて時給単価がかなり低いですが、気分転換程度にはなると思います。

関連記事:公認会計士におすすめのバイト

独立する公認会計士の割合はどのくらい?

体感では、会計士全体の5~10%程度だと感じます。

公認会計士として独立するのは難しいですか?

正直、人によります。

営業が得意な方や、人脈形成が得意な方にとってはさほど難しくありません。

また、初めから税務の知識を有している必要もありません。

公認会計士として独立に失敗したらどうするの?

あまり”失敗”というケースを見かけませんが、それこそずっと非常勤を続ければ良いと思います。

とはいえ定年まで非常勤を続けるわけではなく、短期間で稼ぎ切ることで早期リタイアを目指すのがオススメです。

公認会計士の非常勤求人はどこで手に入りますか?

転職エージェントに登録すると、非常勤の求人をまとめて入手できます。

なお、公認会計士の非常勤求人を最も多く扱っているのはマイナビ会計士です。


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なぜなら、公認会計士専門の大手エージェントであり、非常勤の求人数がNo.1だからです。

先述のとおり、会計士が非常勤をずっと続けるには、監査法人選びにコツがあります。

条件に合った非常勤求人を探すためには、多くの求人の中から選び抜く必要があります。

ぜひ、上記のエージェント比較表を参考に、ご自身に合った転職エージェントを利用してください。

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