公認会計士の藤沼です。
大学在学中に公認会計士試験に合格すると、監査法人で「学生非常勤」として働くことができます。
実はこの「学生非常勤」、時給が高い以外にもメリットがいくつかあります。
そこで今回は、監査法人での学生非常勤についてお話します。
なお、公認会計士登録後の監査法人での非常勤については、次の記事をご参照ください。
この記事で分かること
- 学生非常勤の時給相場は、大体2,700~3,000円
- 学生非常勤の月収は、月15日働くと約30万円
- 学生時代に監査法人で働くと、業務の流れを知れる
- 逆に、学生時代の貴重な経験(遊び)ができなくなる
- 往査する場合はマナーに要注意
2014年 EY新日本監査法人 入社
2018年 中堅コンサル事務所 入社
2019年 藤沼会計事務所 開業
2020年 アカウントエージェント株式会社 代表
公認会計士の学生非常勤は、時給2,700円~3,000円
私はEY新日本有限責任監査法人の出身ですが、私の時代(2014年~2018年頃)の学生非常勤は、
時給 2,500円
でした。
どの監査法人もほぼ同様の水準です。
また2024年現在はもう少し水準が上がり、2,700円~3,000円が一般的です。
ふつうの学生のアルバイトに比べると、2倍以上も高い給料ですね。
ちなみに余談ですが、公認会計士として何年か経験を積んだ後に非常勤へ転身すると時給は6,000円以上になります。
夢がありますね。
監査法人での学生非常勤の月収は、月15日働いて30万くらい。
監査法人での学生非常勤、確かに時給単価は高いです。
しかし、毎日アサインがあるわけではなく、残業時間も正社員に比べて少ない傾向にあります。(チームの方針による部分が大きいですが、残業なしで帰らせるケースが多い)
そこで、一般的な学生非常勤の月収を計算してみました。
時給3,000円 × 7時間勤務 × 月間15日 = 315,000円/月
ということで、学生非常勤の月収は平均30万円前後です。
学生なのに30万円も稼げるバイトは、中々ないはずです。
年収は?
大学2年生・大学3年生で公認会計士試験に合格した場合、1年以上非常勤として働くことができます。
年間を通じてしっかりアサインされた場合、年収は360万円(30万円×12ヶ月)になります。
監査法人で学生非常勤として働くためのステップ
では、どのような流れで「学生非常勤」として働けるのでしょうか。
大まかな流れは、次のとおりです。
- 公認会計士論文式試験に合格する
- その後の就職活動で、監査法人から内定を貰う
- 内定後 ~ 大学卒業まで学生非常勤として働く
たとえば2023年8月の論文式試験を受験し、11月の合格発表で合格したとします。
この場合、12月に内定をもらい翌年2024年の2月に入社、となるケースが一般的です。
この時点で大学4年生だった場合は、2月~3月の2ヶ月間、学生非常勤として働くことになります。
また、この時点で3年生だった場合は、3年生の2月~4年生の3月までの14ヶ月間、学生非常勤として働くことができます。
大学生が監査法人で働くメリットは?
学生非常勤として監査法人で働くメリットは、次のとおりです。
- 普通のアルバイトよりも稼げる
- 学生のうちに社会経験を積める
- 公認会計士登録に必要な「実務経験」が積める
- 期末監査(4月~5月)までの間に、業務の流れを知ることができる
最も大きなメリットは、チームでの業務の流れを知ることができる点です。
4月からの期末監査(=繁忙期)になるとチームの会計士たちは大忙しです。
この頃に「会計ソフトの使い方を1から教えてください」と言っても、人によっては嫌な顔をする人もいるでしょう。
もちろん、教える事も先輩の役割です。
しかし、実際のところ「教える」という行為を苦手とする会計士は多いです。
そのため、在学中合格した人は学生非常勤として監査の流れを知っておくことをオススメします。
なお、大学生が在学中合格した場合のバイトの選択肢として、例えばCPAのチューターとして働くなどの選択肢もあります。(時給単価は、監査法人での学生非常勤より低いです)
しかし「監査」は経験こそが全てと言っても過言ではありません。
学生だからこそ聞けることもありますし、その後の会計士としての成長速度を速めるためにも、私は学生非常勤を強くオススメします。
大学生が監査法人で働くデメリットは?
学生非常勤として監査法人で働く場合のデメリットは、次のとおりです。
- 遊ぶ時間が減る
- 学生としてのレアな経験ができない
社会人になると、(基本的には)遊べる時間がほとんどなくなります。
遊びから学べることも多いですが、何より「学生としてのレアな経験ができない」ということが大きなデメリットです。
学生時代にどのような遊びをしたか、どんな仲間を作ったか等の経験は、意外と仕事でのコミュニケーションにも役立ちます。
大学生の受験生の方は、貴重な学生生活の大半を受験勉強に充てたはずです。
「遊ぶ」という経験も1つの大きな経験です。
短期的な視点で見ると早く経験を積んだほうが良いとも思えますが、実は長期的には遊んでおいたほうが良いのかもしれません。
一つの指針として、ハメを外して遊べる人は遊んだほうが良いと思いますし、そうでない人は非常勤で経験を積むと良いと感じます。(私の個人的な感想です)
大学生が監査法人非常勤として働く場合の留意点
大学生が監査法人で学生非常勤として働く場合、次の点に留意が必要です。
- 毎日アサインされるわけではない
- マナーには要注意
内定後、非常勤としてのアサイン可能な日程を監査法人に提出することになりますが、すべての日にアサインされるわけではありません。
チームによって予算がありますから、必要以上に人を配属することができないからです。
また、特に注意すべきなのがマナーです。
会社員としての経験がないことから、知らず知らずのうちにクライアントに迷惑をかけているケースがあります。
最もよくあるのが、「自分は公認会計士だ!偉いんだぞ!」という傲慢な態度で周囲に接しているケースです。
学生で公認会計士試験に合格した自信から、クライアントに対して横柄な態度をとる学生をたまに見かけます。
優秀であることに間違いはないですが、クライアントあっての監査法人です。
後々自分の首を絞めることになりますので、マナーには十分注意しましょう。
監査法人での学生非常勤に関するよくある質問
その他、監査法人での学生非常勤に関するよくある疑問をまとめました。
公認会計士試験の学生非常勤とは?
公認会計士の学生非常勤とは、在学中合格した方が監査法人で非常勤職員として働くことをいいます。
公認会計士試験に合格すると監査法人の就職活動があり、ここで内定を得た監査法人内において、大学在籍中は非常勤職員として働くことができます。
公認会計士として学生非常勤として働く場合、いつからいつまで?
公認会計士試験合格後、学生非常勤として働く場合は入社日(2月1日が一般的)から大学卒業まで(通常3月末まで)働くことになります。
ただし、監査法人によっては内定日(通常12月初旬)直後から勤務できるケースもあります。
公認会計士の非常勤の時給はいくらですか?
公認会計士の非常勤の時給は、公認会計士登録者が平均7,000円/時、学生非常勤は平均3,000円です。
監査法人での学生非常勤は、公認会計士登録の「実務経験」に含まれる?
はい。実務経験に含まれます。
ただし、正社員よりも勤務時間数・勤務日数が少ないため、適当と認められる期間に修正して実務経験年数が計算されます。
監査法人では学生非常勤を掛け持ちできますか?
いいえ、できません。
監査法人で学生非常勤をするには、原則としてその監査法人の内定を獲得し、大学卒業後にその監査法人に入社することが契約に含まれます。
【必見】極限までリスクを抑えながら、会計士を目指す手法
会計士を目指すことには、以下のリスクがあります。
- 試験に受かっても監査法人に就職できない可能性がある
- 予備校代が高く、落ちたらまた1年分課金しなければならない
- 無職専念になると、職歴に空白期間ができてしまう
- 実務が分からずに勉強をするため、特に「監査論」の学習がなかなか進まない
しかし、このリスクを全て払拭し、最小限のリスクで会計士を目指せる手法があります。
それが「監査トレーニー」という制度を利用することです。
監査トレーニー制度とは、監査法人が会計士受験生を採用し、予備校代などの補助を出しながら、監査法人で実務経験を積みながら会計士を目指せる制度をいいます。
合格後はその監査法人でそのまま働くことができますから、将来の就職不安も全て払しょくされ、安心して会計士受験ができます。
もちろん、予備校代の補助とは別に、かなり良い額の給料も支給されます。
監査トレーニーは「短答合格者」を採用する監査法人もあれば、「短答合格前」からでも採用している監査法人もあります。
雇用形態は「フルタイム」のケースもあれば、「アルバイト雇用」として日数を減らせるケースもあります。
非常にお得な制度ですが、意外と知られていない制度なので、「この記事を見て初めて知った」という方もいるかもしれませんね。
監査トレーニーについて、詳しくは次の記事内で全て詳細に解説しています。
まとめ:学生非常勤としてのメリット・デメリットを見据えよう。
まとめです。
- 時給は2,500円くらい
- 毎日アサインされるわけではない
- 社会人としてのマナーに注意
- デメリットも意外と大きい
個人的には、学生時代は遊んだほうが良いと思う派です。
もちろん、今すぐバリバリ働きたい!という意欲の高い方は、働いても良いでしょう。
重要なのは、先ずメリット・デメリットを見据えておき、今できる最善の選択をすることです。