労働者派遣事業の監査証明とは?取得の流れから費用まで公認会計士が解説

労働者派遣事業の監査証明とは?取得の流れから費用まで公認会計士が解説

派遣監査証明とは、労働者派遣事業の許可・更新申請時に「資産要件」を満たしていることを証明するため、公認会計士から受ける保証業務をいいます。

労働者派遣事業の許可・更新をする事業者は、資産要件(財産的基礎要件)をクリアできていることを主張するために直近年度の決算書を提出する必要があります。

直近年度の決算で資産要件をクリアできていない場合、通常なら労働者派遣事業の許可・更新はできません。

しかし、年度中に資産要件をクリアした上で月次決算を行い、これを公認会計士に監査してもらうことで、当該月次決算で作成した決算書をもって免許の許可・更新を行うことができるのです。

本記事では、そんな「監査証明」に関して、依頼方法・費用・流れを全て解説します。

この記事で分かること


  • 監査証明ができるのは公認会計士のみ
  • 監査証明を顧問税理士に依頼することはできない
  • 資産要件をクリアし、月次決算を行ったらすぐに監査証明を依頼すべき
  • 監査証明の費用相場は30万円~
  • 藤沼会計事務所なら最短即日で監査証明を発行できる
この記事の執筆者

EY新日本有限責任監査法人にて法定監査・任意監査・IPO監査に従事したのち、2019年に独立開業。
労働者派遣事業の監査証明サービス・職業紹介事業の監査証明サービスを提供しています。


目次

派遣業の監査証明書を発行できるのは公認会計士または監査法人のみ

労働者派遣事業の監査証明を発行できるのは、公認会計士または監査法人に限定されます。

(公認会計士の業務)

第二条 公認会計士は、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明をすることを業とする。

(公認会計士又は監査法人でない者の業務の制限)

第四十七条の二 公認会計士又は監査法人でない者は、法律に定のある場合を除くほか、他人の求めに応じ報酬を得て第二条第一項に規定する業務を営んではならない。

(引用:公認会計士法

そのため、派遣監査証明を受けるなら「公認会計士」に依頼をしましょう。

なお、「監査法人」も監査証明の発行が可能ですが、監査法人は組織規模が大きくサービスにかかる費用が大きくなるためオススメしません。

【注意】顧問税理士に監査証明を依頼することはできない

契約している顧問税理士が公認会計士資格を有している場合であっても、当該公認会計士に監査証明を依頼することはできません。

これは、公認会計士が監査証明を行うためには、クライアントから独立した立場であることが求められるからです。(出典:独立性に関する指針|公認会計士協会

また、同様の観点から

  • 自社の役員である公認会計士
  • 自社の従業員である公認会計士
  • 自社に対してコンサルティングサービスを提供している公認会計士
  • その他、自社と取引関係のある公認会計士

についても、自社に対する監査証明を行うことができません。

監査証明を依頼する際は、自社と利害関係のない公認会計士に依頼しましょう。

労働者派遣事業の監査証明は「資産要件を満たさなかった場合」に必要

労働者派遣事業における監査証明が必要になるのは、認可を申請する直前年度の決算書において資産要件を満たさなかった場合です。

このような場合に、公認会計士または監査法人による監査証明が必要となります。

逆に、認可の申請を行う際に提出する直前年度の決算書において資産要件を満たしている場合は、監査証明は不要です。

なお、監査証明を受けても月次決算(又は中間決算)において資産要件を満たしていない場合は、派遣業の新規許可・更新ができないのでご注意ください。

監査証明を受けるまでの全体の流れ
  1. まず、期中において資産要件をクリアする
  2. 次に、月次決算または中間決算を行う
  3. その後、公認会計士から監査証明を受ける

上記のように、まず期中において資産要件をクリアすることが大前提です。

このため、公認会計士に監査証明を依頼する際は、まず資産要件をクリアしておきましょう。

派遣業の新規許可・更新申請における資産要件とは?

労働者派遣事業の許可・更新の際に求められる「資産要件」は、以下の通りです。

①〜③全て該当すること

  1. 資産(繰延資産及び営業権を除く。)の総額から負債の総額を控除した額(以下「基準資産額」という。)が、2,000万円に当該事業主が労働者派遣事業を行う事業所の数を乗じた額以上であること。
  2. 基準資産額が、負債の総額の7分の1以上であること。
  3. 自己名義の現金・預金の額が、1,500万円に当該事業主が労働者派遣事業を行う事業所の数を乗じた額以上であること。
(引用:労働者派遣事業許可及び更新申請に必要な資産要件|厚生労働省
上記の要約

直近の事業年度の決算書で以下をすべて満たすこと

  • 基準資産額(※) ≧ 2,000万円 × 事業所数
  • 基準資産額(※) ≧ 負債金額 × 1/7
  • 現預金の金額 ≧ 1,500万円 × 事業所数
  • 基準資産額 = 純資産 – 繰延資産 – 営業権
専門用語の解説
純資産資産総額から負債総額を差し引いた金額
繰延資産創立費、開業費、開発費、株式交付費、社債発行費等の5種類(※)
営業権M&Aにより買収した際の評価額と買収金額との差額であり、所謂「のれん」を指す
※ 注釈

繰延資産には、「会社法上の繰延資産」と「税法上の繰延資産」の2種類があります。

この点、厚労省が公開する「労働者派遣事業を適正に実施するために -許可・更新等手続マニュアル-」では、繰延資産を「会社計算規則(平成18年法務省令第13号)第74条第3項第5号に規定する繰延資産」と定義しており、会社法上の繰延資産のみに限定しています。

このため、基準資産額の算出において純資産から差し引く繰延資産は会社法上の繰延資産に限定され、つまり税法上の繰延資産は基準資産額に含まれることになります。

簡単に言えば、事業所が1つのみの場合「純資産が2,000万円以上、かつ負債の1/7以上、かつ現預金が1,500万円以上」が派遣業の資産要件となります。

なお、各要件をクリアするための具体的な取引については、例示と共に以下の記事で詳細解説しています。

旧特定労働者派遣事業の事業者が更新を行う際は資産要件が緩和される

旧特定労働者派遣事業者が更新を行う際には、資産要件が緩和されます。

緩和条件以下を全て満たすこと

旧特定労働者派遣事業者が更新を行う場合

派遣労働者の人数が10人以下

事業所数が1事業所のみ
資産要件直近年度の決算書で以下を全て満たすこと

基準資産額(※) ≧ 1,000万円

基準資産額(※) ≧ 負債金額 × 1/7

現預金の金額 ≧ 800万円

※ 基準資産額 = 純資産 – 繰延資産 – 営業権
(出典:小規模派遣元事業主への暫定的な配慮|厚労省

更新時は監査証明よりも「合意された手続(AUP)」を選んだ方がお得

労働者派遣事業の更新申請に際しては、監査証明に代えて合意された手続(AUP)を利用することができます。

1 許可有効期間の更新

労働者派遣事業の新規許可の有効期間は3年です。(当該更新後の許可の有効期間は5年となり、以後同様となります。)有効期間満了後も引き続き労働者派遣事業を行おうとする場合は、許可の有効期間の更新申請を行う必要があります。
更新申請に当たっては、以下の点に留意してください。

(中略)

基準資産額又は自己名義の現金・預金の額が増加する旨を申し立てるときは、公認会計士又は監査法人による監査証明を受けた中間決算又は月次決算に加え、公認会計士又は監査法人による「合意された手続業務」を実施した中間決算又は月次決算でも可能となります。

(引用:派遣事業開始以後の手続等は・・・|厚生労働省

一般的に、監査証明よりも合意された手続の方が公認会計士の作業工数が少なく、支払報酬も安く抑えられる傾向にあります。

「監査証明」と「合意された手続」はどちらも(更新時においては)同様の効力をもちますので、更新に際しては合意された手続を選択されることをオススメします。

なお、労働者派遣事業における合意された手続について、詳しくは以下の記事内で解説しています。

労働者派遣事業の監査証明業務の実施内容(例)

労働者派遣事業の新規・更新時に行われる監査証明業務は、あくまで資産要件を満たしていることを確認する目的で実施されます。

そのため、主に貸借対照表項目(B/S項目)に対して手続きを実施します。

労働者派遣事業の監査手続の具体的な実施内容は、以下の通りです。

  • B/Sにおける現金残高と現金出納帳残高との照合
  • B/Sにおける預金残高と残高証明書との証票突合
  • B/Sにおける固定資産残高と固定資産台帳との照合
  • B/Sにおける貸付金残高の貸倒引当金計上可否の検討
  • B/Sにおける借入金残高と契約書・残高証明書との突合
  • B/Sにおける未払法人税等の金額の計算チェック
  • B/Sにおける資本金等の金額と登記簿謄本の証憑突合
  • B/S・P/Lと総勘定元帳の照合
  • 金額的重要性の高い資産残高に対する外部証憑との突合等
  • その他、全般的なヒアリング

企業により財政状態は異なるため、上記はあくまで例示です。

必要に応じて手続きが追加されたり、逆に少ない手続きで完了するケースもあります。

なお、監査証明の業務内容について事前に取り決める(合意する)ことはできず、公認会計士が必要と判断した手続きを実施します。

【注意】監査報告書は確実に発行してもらえるわけではない

労働者派遣事業にかかる監査証明(=監査報告書)は、決算書が適切に作成されている場合に発行されます。

逆に言えば、決算書に重大な誤りがあった場合、監査証明を受けることができません。

厳密には「不適正意見」という形で監査報告書が発行されるケースがありますが、これを労働局に提出しても資産要件を満たしたことの証明にはなりませんので、入手しても派遣業の許可・更新の効力を持ちません。

監査証明を依頼した時点では資産要件を満たしていたとしても、監査の過程で誤りが見つかり、当該誤りを修正したことにより資産要件を満たさなくなってしまった場合、監査証明を入手することはできません。

そのため、月次決算を正しく作成した上で監査証明を依頼しましょう。

労働者派遣事業の監査証明を依頼する際の必要書類

派遣監査証明を行う際は、一般に以下の書類が必要になります。

派遣監査証明での必要書類(例示)
  • 決算関係書類
    • 直近の年度決算書(貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書)
    • 直近年度決算の総勘定元帳・試算表・補助元帳(現預金、売掛金、買掛金ほか)
    • 月次決算を行った月の決算書(貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書)
    • 月次決算を行った月の総勘定元帳・試算表・補助元帳(現預金、売掛金、買掛金ほか)
    • 直近年度の税務申告書
  • 資産・負債の裏付け資料
    • 現金出納帳
    • 銀行残高証明書・通帳コピー
    • 売掛金/買掛金年齢表
    • 固定資産台帳・リース契約書
    • 借入金契約書・返済予定表
  • 会社・許可関連書類
    • 定款
    • 履歴事項全部証明書(月次決算後に取得したもの)
    • 労働者派遣事業許可通知書
  • その他
    • 会社概要
    • 組織図
    • 主要取引先一覧

上記はあくまで一般的に求められる書類の例示です。

実際に必要となる書類については、事業者の規模や取引内容によって大きく異なります。

労働者派遣事業の監査証明にかかる費用相場・期間

労働者派遣事業の監査証明にかかる費用相場・期間は、以下の通りです。

費用相場30万円~
期間3~7日

上記はあくまで一般的な相場であり、会社の規模・状況によって異なります。

なお、藤沼会計事務所では最短即日最安10万円から監査証明書が発行されます。

労働者派遣事業の監査証明を依頼してから実施・完了するまでの流れ

労働者派遣事業の監査証明を依頼してから実施・完了するまでの流れは、以下の通りです。


STEP

公認会計士に相談・見積り依頼

監査証明を受けたい旨を公認会計士に伝えましょう。
この時点で、事業内容を伝えた上で「本決算を行った決算書」「月次決算を行った決算書」「月次決算までの総勘定元帳」を送付しておくと、見積もりがスムーズです。
なお、公認会計士であっても「労働者派遣事業」に精通していなければ手続きを円滑に進めることはできません。
そのため、労働者派遣事業に詳しい公認会計士に業務を依頼することが大切です。

STEP

監査報酬の決定・監査契約の締結

監査証明にかかる監査報酬を決定します。
公認会計士・会計事務所によって監査報酬は異なりますが、藤沼会計事務所が業界では最安水準です。

監査報酬のすり合わせが完了したら、監査契約書を締結します。

STEP

公認会計士による会計監査の実施

公認会計士により、会計監査手続が実施されます。
監査手続きの実施の過程で、追加で書類提出を求められることがありますので、すぐに提出できるように準備しておきましょう。

STEP

手続完了・監査報告書の発行

監査手続きが完了すると、監査報告書が発行されます。
この報告書の入手をもって「監査証明が行われたことの証拠」になりますので、大切に保管してください。

藤沼会計事務所なら最短即日・最安で監査証明を発行できる

アカウントエージェント株式会社写真

藤沼会計事務所では、労働者派遣事業の許可・更新申請に特化した会計監査サービスを提供しております。

藤沼会計事務所の特徴
  • レスポンスが速い
  • 監査歴10年超のベテラン公認会計士が直接対応
  • 最短即日で監査証明を発行可能
  • 業界最安10万円~対応可能

藤沼会計事務所では、全国の「労働者派遣事業の許可・更新申請に特化した公認会計士」と数多く提携しております。

そのため、お問い合わせには原則即日で対応し、最短当日中に監査証明を発行することが可能です。

派遣業の許可・更新をお急ぎの方は、今すぐご連絡ください。

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