ほとんどの人に「公認会計士はやめとけ」と言いたい理由【現役会計士が解説】

「公認会計士はやめとけ」と言われる理由と、何故それでも私が合格できたのか。

公認会計士・税理士の藤沼です。

公認会計士を目指そうとするとき、また受験情報を調べているとき、「公認会計士はやめとけ」という言葉を耳にする方も多いでしょう。

私自身もそうでしたが、公認会計士を受験しようと決めた時、反対する人がいました。

そこで今回は、なぜ「公認会計士はやめとけ」と言われるのか、その理由と「本当にそうなのか?」を考えます。

なお、私自身もほとんどの人に「やめとけ」と言っています。

理由は、中途半端な覚悟の人が多いからです。

この記事で分かること


  • 公認会計士を目指したことのない人に限って「やめとけ」と言う
  • 公認会計士を目指すことのリスクは実は小さい
  • 公認会計士になったことで得たリターンが大きすぎる
  • なぜ、地頭の悪い私が公認会計士試験に合格できたのか
  • 税理士と公認会計士、どちらが良いのか
  • 監査トレーニーになれれば、リスクを極限まで排除できる
この記事を書いた人

1986年生まれ(38歳)
公認会計士税理士

2014年 EY新日本監査法人 入社
2018年 中堅コンサル事務所 入社
2019年 藤沼会計事務所 開業
2020年 アカウントエージェント株式会社 代表


目次

「公認会計士はやめとけ」と言われる理由【4選】

「公認会計士はやめとけ」そう言われる理由は、主に次の4パターンです。

自分が公認会計士を目指したことがない人に限って、こうした当たり障りのない理由で「やめとけ」と言ってくるんですよね。

それぞれ解説します。

難易度が高い

令和6年の公認会計士試験最終合格率
(参考:令和6年公認会計士試験の合格者の概要|金融庁

公認会計士試験は、いわずと知れた三大難関国家資格の1つです。

公認会計士試験の最終合格率は毎年8%前後であり、有名大学出身者でも普通に落ちる可能性のある難易度の高い試験です。

このような難易度の高さから、「やめとけ」と言われるケースは多いです。

私もあまり良い学歴ではなく、過去に勉強で成功した経験がなかったため、周囲からはやや心配されることがありました。

しかし、公認会計士試験は努力の実りやすい資格試験であり、自分次第で合格を勝ち取ることのできる試験です。

最終的にはやる気が全てであり、私も自分を信じて挑戦して良かったと思っています。

勉強時間が膨大

公認会計士試験の合格に必要な勉強時間は5,000時間~7,000時間です。

逆算すると、1日平均7時間の勉強を2~3年間毎日継続する必要がある計算ですから、強い忍耐力が求められます。

私自身も、そのくらいは勉強していました。

そのため、過去に何かをやり遂げた経験のない方や、何をしても続かないという方は、「やめとけ」と言われてしまうのでしょう。

ただし、継続力は訓練・工夫で身に付く力ですから、才能やセンスは必要ありません。

合格しても、監査法人に就職できない可能性がある

現実的な問題として、公認会計士試験の合格=監査法人への就職が約束されるわけではありません。

例えば、2009年度における公認会計士試験合格者のうち、約半数が監査法人に入れない(就職難)となる状況がありました。(PR-TIMES:本日発表の公認会計士試験合格者2,229人の半数が就職難。(2009年11月26日)

公認会計士試験合格者の就職難は、2009年~2011年まで続き、2012年から徐々に改善されていきました。

せっかく頑張って試験に合格しても、就職が約束されるわけではないのです。

もちろん、監査法人以外にも就職先の選択肢はありますが、監査法人で働くことはいわゆる「花形」のキャリアであり、経理や会計事務所で働くのなら資格などそもそも必要ありません。

現時点では売り手市場(=就活生にとって有利な状況)ですが、これから勉強し試験に合格した時、必ずしもこの状況が続いている保証はどこにもありません。

こうしたリスクの大きさから、「公認会計士はやめとけ」と危惧する声もあるのでしょう。

まぁ、長年この業界に身を置く私の肌感覚からして、これから数年後に就職難となっているような状況はとても想像できませんが…。(人手が足りなさ過ぎてヤバい)

妬みの気持ちがある

何かに挑戦する時、反対する人がいます。

私も様々なことに挑戦してきましたが、決まって、反対する人・否定する人がいました。

しかし振り返ってみると、そうした人たちは何も成し遂げたことのない人が多く、おそらく相手を否定することで自分の人生を正当化したいのだろうと思います。

私が公認会計士の勉強をしている時も反対する人がいましたし、独立を決意した時も否定する人がいました。(めちゃムカつきました。)

しかし、フタを開けてみれば無事公認会計士試験にも合格でき、独立も軌道に乗って早5年以上経ちます。

挑戦を成功させるかどうかは自分次第であり、自分のことを100%理解している人は(自分以外に)いませんから、あまり他者の意見に耳を傾けすぎるのも良くありません。

ただし、なぜ自分が公認会計士になりたいのか、なぜ自分ならなれると思っているのか、は客観的に説明できるようにしておくことをオススメします。

なぜなら、これが言語化できるようになると「学習意欲の向上」「モチベーションの向上」につながり、より合格可能性が高まるからです。

反対する人・否定する人は、大半がただ自分の足を引っ張るだけの存在です。
ただし、自分を客観的に見ることは必要ですから、自己分析をしたうえで戦略を立てましょう。

私がほとんどの人に「公認会計士はやめとけ」と言いたい理由

まず大前提として、公認会計士試験は最終合格率が8%前後の超難関試験です。

つまり、受験生のほとんど(90%)は落ちます。

ほとんどの受験生が落ちるから「受験はやめとけ」と言いたいわけではありません。

私は、ほとんどの受験生が中途半端な覚悟で試験に臨んでおり、その結果落ちていると実感しています。

つまり本気度・熱意のない人が大半です。

そういう生半可な覚悟の人は落ちるので、それなら受験はやめとけと言いたいです。

私はTACに通っていましたが、当初は多くの受験仲間に囲まれて皆で公認会計士を目指して勉強していました。
しかし、時間が経つにつれて「あれ?この人本気で目指してなくない?」「勉強サボりすぎじゃない?」という人がちらほら現れます。

で、そんな人は漏れなく全員不合格になっていました。

いつしか自習室に現れなくなるんですよね。傍から見ていれば、まぁそうだよなと思います。

運で合格できる試験ではありませんし、文字通り、人生を受験生活に捧げなければ合格しません。

有名大学に通っている人でも、普通に落ちます。

あなたには公認会計士を目指す覚悟、ありますか?

それでもなぜ、私が公認会計士試験に合格できたのか

私は大学時代あまり勉強をしておらず、選考も会計・法律とは全く異なる分野でした。

頭も決して良くありません。

それでも私が公認会計士試験に合格できたことには、3つの要因があります。

私が公認会計士試験に合格できた要因
  1. 1日平均7時間の勉強時間を確保し、3年間継続した
  2. 常に分析を行い、自分なりの勉強法を確立した
  3. モチベーション維持のため、メリットを積極的に意識した

シンプルですが、本当にこれが全てだと感じています。

私は予備校講師ではないので、細かな勉強法などはお伝えできません。

でも1つ言えるのは、日々の分析&継続を行っていれば、誰でも絶対に合格できるということです。

一度(論文式試験に)落ちてしまったものの、二度目の試験では大分余裕をもって合格できました。

いかに前向きに、軌道修正をしながら突進できるかが重要であり、それさえできれば誰でも合格できる試験です。

ただし、継続するためにはやる気・モチベーションの維持が必須ですから、私は常に「なぜ自分が公認会計士になりたいのか」というメリットを意識していました。

では次に、公認会計士になるメリットを解説します。

公認会計士になるメリット

公認会計士になることで得られるメリットは人によって様々ですが、代表的なものは次のとおりです。

それぞれ解説します。

年収が高い

最も分かりやすいのが、年収の高さです。

厚労省の賃金構造基本統計調査によれば、公認会計士の平均年収は約1,000万円です。

年収1,000万円という水準が高水準であることは明らかですが、この水準を勤務10年ほどで達成できるのも魅力の1つです。

というのも、私たち公認会計士が主に所属する監査法人では、たとえば次のような年収テーブルが標準的であるからです。

職階年収帯
スタッフ400万~700万
シニア600万~900万
マネージャー800万~1,200万
シニアマネージャー1,200万~1,400万
パートナー1,200万~4,000万

上記は筆者の経験、及び周囲のBIG4所属会計士からの情報であり、精度は高いです。

(監査法人によって異なる部分もありますが)職階は概ね4年程度で1段階上がるため、マネージャー2年目(入社10年目)で年収1,000万のラインに到達します。

また、監査法人内でのキャリアアップ以外に、「転職」という選択を取ることで、更に早い段階で年収1,000万のラインに淘汰することは可能です。(むしろこちらの方が早く年収を上げられます)

例えば私の場合は、5年で新日本監査法人を退職し、転職先1年目で年収900万ほどのラインに到達しました。

一般的な職業では、このような高水準の年収を達成することは難しいでしょう。

また、独立開業を行えば年収は青天井です。(私の感覚的に、一人で会計事務所を経営する場合にはMAX3,000万がキャップであると感じます)

社会的信用力が高い

三大国家資格の1つである公認会計士は、知名度が高く、社会的信用力が高いです。

医師・弁護士と並ぶほどの難易度の高い資格であることから、国内・グローバルにおいても社会的地位は非常に高いです。

また、公認会計士試験合格後は多くの方がBIG4と呼ばれる大手監査法人に入社しますが、BIG4は世界的なネームバリューが高く、住宅ローンの借入限度額も非常に高いため、文字通り金融機関等からの信用力も高いです。

キャリアの幅が広い

公認会計士資格を取得すると、キャリアの幅がとんでもなく広がります。

ざっとこんな感じです。

公認会計士のキャリアの幅
  1. 監査法人
  2. 経理
  3. CFO
  4. 内部監査
  5. 経営企画
  6. 会計事務所・税理士法人
  7. 会計コンサルタント
  8. 財務コンサルタント
  9. 戦略コンサルタント
  10. 投資銀行
  11. PEファンド
  12. 独立開業
  13. 非常勤職員

疑いたくなるほどに選択肢が多いですが、事実です。(参照:公認会計士の転職先を全て見せます。【監査法人から、その先へ】

たとえば私は、大手監査法人→会計コンサルタント→独立開業+非常勤職員というキャリアを歩みました。

組織人として評価を高めたい方は、経理・経営企画・CFOなどのキャリアを選びますし、金融系のキャリアを希望する人は投資銀行・PEファンドなどのキャリアを選びます。

公認会計士資格は市場価値が非常に高いため、需要が大きく、希望した職種への転身が容易です。

仕事が飽きたり限界を感じてもキャリアチェンジできるため、資格取得のメリットは非常に大きいです。

私の話ですが、私は監査法人での業務に自分の限界を感じコンサルに転職したものの、そもそも「組織人」に向いていないと感じて独立しました。

「会社員を辞められる」という選択は、普通できません。
この選択ができたことで、私は公認会計士になってよかったと強く感じました。

税理士にもなれる

公認会計士資格を取得すると、税理士にもなることが可能です。(逆に、税理士は公認会計士になることができません)

もし税理士と公認会計士で迷っているのであれば、公認会計士の方がお得なのです。

私も税理士登録していますが、当初は税理士登録することは想像していませんでした。
しかし独立を機に税理士登録したことで、会計だけでなく税務分野にも事業のフィールドを広げることができました。

スケールの大きな仕事ができる

仕事のスケールの大きさも、公認会計士の大きな魅力の1つです。

公認会計士の主たる業務に「会計監査」があります。

会計監査では、主に上場企業の監査を行いますが、チームメンバーは6人~8人程度であるケースが多いです。意外と少ないですよね。

扱う数字は億単位であるケースが多く、大企業を俯瞰して見る・大企業にアドバイスをする・役員とミーティングをするなど、仕事のダイナミックさには面白味があります。

海外案件も多く、英語が使えると仕事の幅は無限大に広がります。

このようなスケールの大きな業務に関われるのは、公認会計士の大きな魅力です。

学歴が関係ない

公認会計士になると、就活では学歴をほぼ見られません。

私は学生時代あまり勉強をしてこなかった為、大した学歴もなく、普通に就活をしたところで自分の望む企業には入れないだろうなぁと感じていました。

しかし、公認会計士試験(論文式)に合格すると、それまでの学歴はほとんど見られず全員が一律に「試験合格者」として扱われるため、今までの経験がチャラになります。

これは私にとっては大きなメリットでした。

文字通り、一発逆転が可能な資格です。

また、公認会計士試験には受験資格がなく、誰でも受験することができるという意味でも学歴は関係ありません。

モテる(?)

私はあまり実感しませんが、人によっては、「モテるようになった」と感じる方もいるようです。

確かに、公認会計士になれば経済力・社会的信用力が得られるほか、様々な大企業の役員たちと激論を交わすことにより自信も身に付き、間接的にモテ要素に繋がるとも考えられます。

センシティブなので触れづらい部分でもありますが、「ステータス」という意味では格が上がると思います。

【違いを比較】公認会計士と税理士、どっちが良い?

公認会計士と似たイメージのある資格に、「税理士」があります。

私も公認会計士と税理士どちらを受験するか、少し悩みました。

そこで、公認会計士資格と税理士資格を比較してみました。

公認会計士税理士
管轄金融庁
日本公認会計士協会
国税庁
日本税理士会連合会
専門分野企業会計
会計監査
税法
主な職場監査法人会計事務所
試験短答式:年2回
論文式:年1回
年1回
合格率短答式①:15~20%
短答式②:10~15%
論文式 :35%
15%~20%
科目合格制度原則なしあり
受験資格不要必要
合格者の年齢25歳前後40歳前後
(5科目合格者)
勉強時間の目安5,000~7,000時間4,000~5,000時間
登録に必要な経験3年(監査経験)2年(税務経験)
登録できる資格税理士
行政書士
なし
キャリアの幅
平均年収約1,000万円約740万円
特徴年収が高い独立志向の人向き

上記のとおり、合格難易度は公認会計士試験>税理士試験であると言えます。

税理士合格者の年齢層が高いのは、科目合格制度が採用されており、働きながら目指せるのが税理士資格だからです。

一方、難易度が高い代わりに年収が高くキャリアの幅も広いのが公認会計士の魅力です。

私は人生を変えるために資格を取得したかったので、難易度の高い公認会計士のほうを選びました。

決して「どっちが上」とかはありませんが、高い年収を望むのであれば公認会計士、独立志向のある人には税理士が向いています。

公認会計士に関するよくある疑問

その他、公認会計士に関するよくある疑問をまとめました。


公認会計士試験は独学でも合格できますか?

正直、ほぼ無理だと思います。

予備校での効率的なインプット・アウトプットがなければ、合格は遠のきます。

合格を目指すなら、絶対に予備校を使ってください。

公認会計士になって後悔したことはありますか?

一度もありません。

私の場合はどん底からのスタートでしたので、公認会計士なって良かったと心から思っています。

公認会計士を目指したことは、私の人生で最善の選択だったと思っています。

公認会計士になっても食えないというのは本当ですか?

誰が言ったのかは分かりませんが、それは有り得ません。

会計業界は今、深刻な人手不足にあります。

公認会計士への需要は、年々増しているように感じます。

また、裏ワザとして「非常勤職員」という選択肢もあります。

非常勤では時給平均7,000円以上がもらえるため、これだけで十分食っていけます。

公認会計士試験を諦めた場合、どんな選択肢がある?

公認会計士の受験から撤退した後の選択肢は、次のとおりです。

公認会計士の受験から撤退した後の選択肢
  1. 経理に就職
  2. 会計事務所に就職
  3. 監査法人に就職
  4. 税理士受験に移行

短答合格レベルであれば、簿記1級や税理士試験科目(簿記論・財務諸表論)の合格レベルにあるでしょう。

撤退時にそれらの資格を取って就職をする、または「税理士」にシフトチェンジする方が多いです。

公認会計士になるには、何をすべきですか?

公認会計士になるプロセスは、至ってシンプルです。

公認会計士になるプロセス
  1. 短答式試験に合格する
  2. 論文式試験に合格する
  3. 監査法人に就職する
  4. 修了考査に合格する

税理士試験と違って、複雑な受験資格などが一切課されていないため、試験に合格さえすれば基本的に公認会計士に慣れます。

ただし、論文合格後に監査法人に入社し実務経験を積む必要はあります。

また、修了考査の難易度は短答・論文式試験ほど高くなく、真面目に勉強をしていれば合格できる試験です。


【必見】極限までリスクを排除して公認会計士を目指す方法

公認会計士を目指すことの大きなリスクは、次のとおりです。

公認会計士を目指すことの大きなリスク
  • 合格できなかった場合、履歴書に空白期間が残ってしまう
  • 合格したとしても、監査法人に入社できない可能性
  • 貯金が底をつき、受験を諦めざるを得なくなる可能性

これらのリスクを排除する選択肢が、「働きながら公認会計士を目指す」という選択肢です。

あまり知られていませんが、近年の公認会計士試験では社会人合格者の割合が多く、合格者の6~7人に1人が働きながら合格しています。

直近5年間の社会人合格率推移

試験年度社会人合格者合格者数全体社会人の割合
2020年196人1,335人15.0%
2021年178人1,360人13.6%
2022年187人1,456人14.3%
2023年217人1,544人14.1%
2024年207人1,603人12.9%
(金融庁|令和6年公認会計士試験合格者調及び過去同データを基に作成)

近年では、監査トレーニーと呼ばれる支援制度を採用する監査法人が増えており、監査法人で働きながら公認会計士を目指すケースをよく目にするようになりました。

もちろん、働きながら公認会計士を目指すことにも一定のリスクがありますが、この制度を利用することで極限までリスクを抑えて会計士を目指すことができます。

詳しくは、働きながら公認会計士に合格するための「職場」の選択肢の記事をご参考ください。

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