公認会計士の藤沼です。
2014年ごろから本格的に始まった監査アシスタント制度ですが、現在では中小監査法人も含めてだいぶ定着してきました。
おそらく、webサイト上で監査アシスタントに関する具体的な記事を公開したのは私が最初だと思いますが、今に至るまで多くの方に記事を読んで頂きました。
そこで今回はもう少し踏み込んだ話として、「監査アシスタントとしてのキャリアパス」について解説します。
- 資格を取りながら監査アシスタントとしての評価を高める
- 公認会計士の秘書になる
- 監査法人の事務職に異動する
王道は一番目のパターンですが、サードドア的な道として「秘書」や「事務職」にスライドしていく方法があります。
ただし、これにもコツがあり、全員が実践可能というわけでもありません。
本記事では、そんな監査アシスタントとしてのキャリアパスについて、そして監査法人を辞めた後のキャリアアップについて解説します。
この記事で分かること
- そもそも監査アシスタントのキャリアに関するロールモデルは少ない
- 監査法人側がキャリアプランを明示しないため、自ら考えて行動する必要あり
- 監査法人内でのアシスタントのキャリアパスは3つある
- 監査アシスタント卒業後は、経理・会計事務所への転職が多い
2014年 EY新日本有限責任監査法人 入社
2018年 東京共同会計事務所 入社
2019年 藤沼会計事務所 開業
2020年 アカウントエージェント株式会社 代表取締役
監査アシスタントのキャリアパス3選
監査アシスタントのキャリアパスは、以下の3種類です。
1つ目は王道パターンですが、2つ目・3つ目はやや邪道というか、王道ではないケースです。
まず大前提として、監査アシスタント制度自体がスタートしてまだ10年程度しか経っていないため、長期的なキャリアとして参考になるロールモデルはありません。
つまり、リスク対応的な考え方としては、監査アシスタントから他社に転職をしたとしても、当該他社で使い物になるスキル(汎用性のあるスキル)を身に付けておくことが重要だったりします。
まぁ、入社して会計士と結婚して寿退社、なんて道もあるんですけどね。
こんな事書くとまた怒られそうなので、監査法人内での恋愛事情に関する本音は書かない事にします。(聞きたい方はお問い合わせからどうぞ。)
資格を取りながら監査アシスタントとしての評価を高める
一番よくあるのが、監査法人内で資格を取りながら監査アシスタントとして評価を高めていくキャリアです。
- 日商簿記2級
- 日商簿記1級
- TOEIC
- USCPA
簿記資格は当然のこと、会計士は意外と英語に弱かったりするので、TOEIC(高得点)があると結構高く評価され、色々なグローバルチームに呼ばれやすくなります。
また、USCPA資格の取得もおすすめ。
USCPAは米国の公認会計士資格ですが、日本の公認会計士試験の10倍簡単だそうです。(よく日商簿記1級と同程度の難易度と言われる)
USCPAを勉強すれば、合格までの勉強がそもそも実務に役立ちますし、合格できれば監査スタッフとしての待遇に変わる可能性があります。
もちろん、それまでの評価が低い場合は難しいですし、語学力があることが前提ですが。
いずれの資格も非常に汎用性が高く、仮に将来監査法人から転職することになっても、就職活動時の武器になるのでオススメです。
なお、監査アシスタントとしての評価を高めたとしても、業務の難易度が上がるだけで「監査業務」に直接関与することはできません。
法律上、監査業務に直接関与できるのは公認会計士だけですので、会計士の補佐というポジションはずっと変わりません。
昇給率は監査法人によって大きく異なるので、実際に応募して面接時に確認しましょう。
公認会計士の秘書に転向する|ただし向き不向きがあるので注意
監査アシスタントとしてのキャリアから外れますが、監査法人内で公認会計士の秘書に転向するというキャリアもあります。
- 日程調整などの間接業務を進んでこなす
- 監査法人内のパートナーから気に入られる
- コミュニケーション能力の高さを見せる
ご覧の通り、真似しようと思っても中々真似するのは難しく、向き不向きがあると思います。
特に重要なのは、パートナーから気に入られること。ぶっちゃけ偉い人たちに気に入られれば、結構融通が利きます。
また、秘書としての採用はあくまでイレギュラーですので、自己アピールの上手い人が秘書に転向している印象があります。
監査法人の事務職に異動する|人事・労務など専門職への転身も可能
こちらも監査アシスタントとしてのキャリアパスではありませんが、同監査法人内で事務職に異動するという選択肢もあります。
もちろん、希望すれば移動できるわけではありませんが、一部の優秀なアシスタントが事務に異動しているケースを見たことがあります。
- 人事部
- 経理部
- 総務部
- 法務部 等
小さな監査法人では管理部門を公認会計士が兼務していたりしますが、中堅以上の監査法人であれば、上記部門を設置しているケースがあります。
しかし、監査アシスタントとしての実務経験は活かせませんので、本当に優秀な人が配属される傾向にあります。(BIG4は特に。)
監査アシスタントを辞めた後のキャリアアップ方法
監査アシスタントを辞めた後のキャリアアップ方法は、以下の2つがあります。
経理と会計事務所は、いずれも会計・税務系の転職先としてメジャーな職種です。
他にも会計系職種はありますが、監査アシスタントとしての仕事からだいぶ離れるため、転職時に評価対象とならないでしょう。
今の時点では監査アシスタントの先のキャリアを考えていない方も、将来何があるか分かりませんので、頭の片隅に入れておくことをオススメします。
以下、それぞれのキャリアアップ方法について解説します。
監査アシスタントから経理に転職する|ワークライフバランスがとりやすい
監査アシスタントとして仕訳を見たり試算表作成までの流れを理解した経験を活かし、経理に転職するというキャリアアップがあります。
しかし、難易度は意外と高いことを知っておきましょう。
- そもそも経理は就職難易度が高め
- 監査アシスタントとしての経験を採用担当者が理解しづらいため、実務経験として正しく評価されにくい
そもそも経理という仕事は専門職であり、就職難易度の高い職種です。
監査アシスタントとして企業会計に携わったことがあっても、仕訳をどう起票しているかはあまりイメージできないはずです。だって、会計士ですらそうなのですから。
また、「監査アシスタント」という仕事自体がレアですので、転職時に採用担当が経験を正しく評価しづらい点も理由の一つ。
それでも一定の経験値として評価はされるはずですので、簿記資格とセットでアピールすれば、経理への転職・キャリアアップは可能です。実際いますしね。
経理はワークライフバランスが取れたり、福利厚生が充実していたりと、比較的メリットの多い職種です。
この経理への転職を前提に、監査アシスタントとしてスキルアップをしていくと良いでしょう。
監査アシスタントから税理士事務所に転職する|税理士も目指せる職種
監査アシスタントから税理士事務所(=会計事務所)に転職する、というキャリアプランもあります。
税理士事務所は経理よりもさらに専門性が高く、「税金のプロ」になりたい人向けの仕事です。
- 会計ソフトの使用に抵抗がない
- PCを使った事務処理に慣れている
- ある程度仕訳を見たことがある
税理士事務所は慢性的な人材不足ですので、監査アシスタント経験はある程度の評価を受け、採用されやすい傾向にあります。
税理士事務所で働くメリットは多くありますが、一番大きいのが「税理士を目指せる」というメリットです。
つまり、監査法人でのアシスタント→税理士事務所→税理士資格取得→独立開業、というキャリアを描くことができます。
もちろん税理士を目指さずとも、会計事務所で働くことは可能。
まぁこんな感じで、会計・税務の世界に足を踏み入れると、結構キャリアが広がります。
監査アシスタントから公認会計士へのキャリアチェンジは可能?
たまに、監査アシスタントとして働きながら公認会計士になりたいという人がいますが…かなり無理があると思います。
- 監査業務に従事できないため公認会計士試験の学習に役立つケースが少ない
- 監査トレーニーのように試験合格をサポートしてもらう制度ではない
監査法人で働いていれば、少なからず監査調書には目を通すことになりますし、クライアントの仕訳も見たりします。
しかし、会計の妥当性を考えたり、監査要点・アサーションから監査のアプローチを考える、なんて仕事もありません。
監査トレーニーのように監査法人内で監査調書をガンガン作れる立場なら別ですが、監査アシスタントはそもそも「会計士の補助」という役割です。
そのため、監査アシスタントとしての業務が公認会計士試験に役立つケースは非常に限定的です。
また、監査トレーニーのように公認会計士試験合格をサポートしてもらえる立場でもありませんので、試験休暇や学習相談なども制度としてはありません。
もし働きながら公認会計士を目指したいなら、監査トレーニーに応募するか、公認会計士試験と親和性の高い職場で働いた方が良いです。
監査アシスタントに強い!おすすめの転職エージェント
監査アシスタントになりたいなら、次の転職エージェントを使ってください。
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自力で求人を探しても良いですが、超非効率なのと、そもそも求人自体が非公開だったりするのでエージェントを使った方が良いです。
以上、監査アシスタントのキャリアパスについてでした。