公認会計士・税理士の藤沼です。
公認会計士受験と切っても切り離せないのが、金銭問題でしょう。
私自身も受験生時代は貯金を切り崩して生活しており、また初めのうちはアルバイトをしながら勉強をしていました。
そこで今回は、バイトをしながら公認会計士を目指す際のスケジュールや、受験生に向いているアルバイト、またバイト以外の選択肢を紹介します。
公認会計士受験は、人生の重要な意思決定に関連するはずですから、参考情報として見て頂ければ幸いです。
2014年 EY新日本監査法人 入社
2018年 中堅コンサル事務所 入社
2019年 藤沼会計事務所 開業
2020年 アカウントエージェント株式会社 代表
そもそも、バイトしながら公認会計士を目指せるのか?
結論から言えば、バイトしながら公認会計士試験に合格することは可能です。
極論ですが、社会人として働きながら公認会計士になるという方も一定数いるからです。(公認会計士試験合格者のうち、10%~15%が社会人合格者です。)
問題は、いつまでバイトができるのかという点でしょう。
いつまでバイトできるのか?
バイトをできる期間は、予備校のカリキュラムによって異なります。
あくまで私の感覚ですが、講座別のアルバイト可否・期間は次のとおりです。(あくまで目安です)
講座 | バイトできる? |
---|---|
1年合格コース | バイトは難しい |
2年合格コース | 初めの半年はバイトする余裕がある |
2年半合格コース | 初めの1年はバイトする余裕がある |
3年合格コース | 初めの1年半はバイトする余裕がある |
私の場合は、2年半合格コースを受講し、初めの1年弱はバイトをしていました。
2年半合格コース(3月開講)の場合、受講スタートの翌年3月頃までは、さほど授業のボリュームが多くないはずです。
しかし、4月に入ると12月短答向けに全科目の講義が始まり、怒涛のインプットラッシュに入ります。
この時期にアルバイトをすると、授業の復習が追い付かず、また知識の忘却もどんどん進みます。
もちろん、上記はあくまで私の目安です。
バイトではなく正社員として働きながら合格されている方もいますからね。
公認会計士試験合格に必要な勉強時間は?
合格に必要な総勉強時間が分かれば、逆算することで、バイトに費やすことのできる時間も算出できます。
公認会計士試験合格に必要な勉強時間は人によって異なりますが、概ね、5,000時間はかかると感じます。
参照した情報源は2つあり、1つは河野玄斗さんの記録、もう1つは私自身の記録です。
東大医学部出身で在学中に司法試験にも合格されている河野玄斗さんは、2021年より公認会計士試験への挑戦を公表し、2022年8月の論文式試験に合格されています。
河野玄斗さんは合格までの9ヶ月~10ヶ月の間に、毎日10時間勉強を公表しており、換算すると総勉強時間は約3,000時間になります。
しかし、これは河野玄斗さんほどの地頭・才能・集中力があるからこその話であり、平均的な水準とは言えないでしょう。
一方、凡人以下の私の総勉強時間は、約7,000時間でした。
つまり 普通に頭の良い方であれば、中間となる5,000時間で合格できると推察します。(ある程度の頭の良さも必要でしょう)
たとえば2年コース受講生の場合、初めの半年を週2でアルバイト&週5で1日5時間勉強、残りの1年半を1日7時間勉強時間に充てることで、合格できる計算です。
このように、ご自身のカリキュラム・能力をベースに、アルバイトに充てる日数・時間を逆算することで、凡そのバイト期間を推測することができるでしょう。
どんなバイトが公認会計士受験生に向いている?
私自身の経験も踏まえると、次のようなバイトが公認会計士受験生に適しているのではと思います。
- 日中のバイト
- 極端に頭を使わないバイト
- 3月までに辞められるバイト
受験生活で大切なのは、「生活リズムを一定にすること」です。
公認会計士試験の受験は長丁場ですから、毎日を一定のリズムで過ごすことで、勉強の習慣を作ることが大切です。
例えば、居酒屋・深夜コンビニのアルバイトなどの場合、せっかく身に付いた生活リズムを崩してしまう可能性があります。
また、バイトから帰宅した後にも勉強できるだけのキャパシティを残しておくため、極端に脳を使うバイトは避けましょう。
逆に、体力を使うようなバイトはむしろリフレッシュになるため、(疲れ果てなければ)向いていると感じます。
そして最後に大切なのが、3月までに辞められることです。
2年合格コースの場合、第1回短答式試験(12月)のある年の4月頃から、予備校のカリキュラムが急ピッチで進みます。
そのため、3月にはバイトを辞めておくのが望ましいでしょう。
バイトより良い?「働きながら公認会計士を目指す」という選択肢
一般的なアルバイトをしながら公認会計士を目指すという選択肢のほかに、会計税務に関連した仕事をしながら公認会計士を目指すという選択肢もあります。
特に、公認会計士試験と親和性の高い仕事は、次の4パターンです。
※ 各選択肢をタップすると、該当項目にジャンプします。
それぞれ解説します。
監査トレーニー
監査トレーニーとは、監査法人で働きながら公認会計士受験をサポートしてもらえる制度・ポジションをいいます。
監査トレーニー制度は広く監査法人業界で普及していますが、公募(公に募集)している監査法人は少ないようです。
監査トレーニーになるメリットは、次のとおりです。
- 給与が出る(年収もそこそこ高い)
- (法人によっては)予備校代も全額負担してもらえる
- 監査実務に関与できるため、監査論の学習効率が上がる
- 公認会計士試験合格後も、そのまま監査法人で働ける
- バイト(非常勤)として雇用されるケースがある
監査トレーニーは人気のため倍率が高いですが、公認会計士受験生にとってメリットが大きいため、応募してみるのも良いかもしれません。
ただし、デメリットもありますので注意は必要です。
詳しくは監査トレーニーの求人の探し方と、内定率を高める方法の記事内で、具体的に解説しています。
短答合格者採用
短答合格者採用とは、その名のとおり、短答式試験に合格した公認会計士受験生を監査法人が採用する制度をいいます。
従来、監査法人では原則「論文式試験合格者」しか採用していませんでした。
しかし、人手不足が深刻化している昨今では、短答合格者の採用も一定数あります。
応募できるのは短答合格者のみです。
短答合格者採用に応募するメリットは、次のとおりです。
- 給与が出る
- 監査実務に関与しながら、公認会計士論文合格を目指せる
- 論文合格後、就職活動をする必要が無い(そのまま監査法人で働ける)
特に、論文式試験は(短答式試験に比べると)難易度が下がるため、「早めに監査実務に従事したい」「将来の就活が不安である」という方に人気です。
「監査トレーニー」とほぼ同様の意味合いで用いられますが、監査トレーニーは短答合格者以外にも無資格者が応募できるため、監査トレーニーよりもやや応募できる方の範囲が狭い概念です。
短答合格者採用について、詳しくは短答合格者の採用ページまとめ+就活攻略法を公開します。【公認会計士監修】の記事で徹底解説しています。
経理
経理で働きながら公認会計士を目指すメリットは、次のとおりです。
- 会計学(計算科目)の学習に繋がる
- 簿記一巡の流れが分かる
- 監査法人入所前に、決算書の作り手側を経験できる
監査法人では、クライアント企業の経理部に協力をしてもらいながら仕事を進めるため、いわば経理は(監査法人にとっての)クライアントです。
クライアント側の気持ちが分かるため、監査法人入所後、クライアントとの良好な関係を築きやすくなるでしょう。
また、仕事内容も公認会計士試験との親和性が高く、特に財務会計論(計算)などの計算科目の学習に役立つでしょう。
なお、上場企業では四半期決算があるため、非上場企業に比べて忙しくなります。
経理の仕事内容について、詳しくは経理の仕事内容をわかりやすく解説します。の記事内で具体的に解説しています。
会計事務所
会計事務所で働きながら公認会計士を目指すメリットは、次のとおりです。
- 租税法(計算科目)の学習に繋がる
- 簿記一巡の流れが分かる
- 監査法人ではあまり触れることのできない、税法実務を経験できる
会計事務所では、主に一般企業・個人事業主の経理(記帳代行)及び税務申告を行います。
会計事務所での仕事は税法に基づいて実施されるため、租税法(法人税法・所得税法・消費税法など)の計算科目の学習効率UPに繋がります。
会計事務所での仕事内容について、詳しくは会計事務所での仕事内容を詳細解説します。の記事で解説してます。
なお、会計事務所の中にはブラックな会計事務所も存在するため、事務所選びには注意が必要です。
大学に通いながら公認会計士を目指す場合のポイント
大学生が公認会計士を目指すということは、ある程度、大学生活を犠牲にすることを意味します。
予備校に通い始めてから多少の間は遊ぶこともできますが、それ以降、論文式試験に合格するまではほぼ遊べません。
公認会計士試験は非常に難易度の高い試験ですから、腹を括る必要があります。
サークル活動は、気分転換程度に。
友達や先輩との付き合いで、サークルに入る方もいるでしょう。
学生生活の中心は「公認会計士試験の受験勉強」になりますから、当然、サークル活動に毎日参加することはできません。
しかし、毎日勉強だけでは疲れてしまいますし、受験生活において多少の気分転換も大切です。
そのため、目安としては月2~3回程度のサークル活動なら良いのかな、と思います。
ただし、本試験前の半年間はサークルへの参加は無理でしょう。
なぜなら、短答式試験・論文式試験前の半年間は、本番に向けてスパートをかけるべき大切な時期だからです。
そのため、公認会計士試験のスケジュール的に考えると、論文式試験(8月)の1年前からはサークル活動への参加はあまりできないと考えておきましょう。
「どうしてもサークルと公認会計士試験の受験を両立させたい」という方は止めませんが、(周りの受験生に比べて)勉強時間が減るため、合格が遠のく恐れがあります。
どうしても参加したいのであれば、早期に公認会計士試験に合格した後に参加すれば良いでしょう。
また、”部活”との両立は更に難易度が上がります。
バイトは極力しないほうが良い。
大学とダブルスクールで公認会計士を目指すということは、無職専念の受験生と比べると、(学校の授業を受けなければならないため)ややハンデがあるとも言えます。
これに加えてバイトまで始めてしまうと、合格が遠のいてしまい、結果的に金銭的な負担が大きくなるおそれが出てきます。
そのため、最短合格を目指すのであれば、バイトは極力しない方が良いです。
とはいえ、予備校のカリキュラム的に初めの半年~1年程度ならバイトをする余裕があるケースもあります。
金銭的に家族等からの援助を受けることができない方は、カリキュラムに余裕があれば、初めのうちに限ってバイトをするのもアリです。
私自身も、2年半コースを受講していましたが、初めの1年弱は授業が少なく(週2~3コマ程度)その期間だけはアルバイトをしていました。
ただし、初めから期限をしっかり決めておき、遅くとも最初の短答式試験の半年前までにはバイトを辞めておきましょう。
繰り返しですが、本試験前の半年間は、受験勉強に専念できる環境を作ることが大切です。
大学の授業との両立について
大学での必須単位は当然取る必要がありますが、その他の単位については、最小限の労力で単位を取得すべきです。
友達・先輩から情報を収集し、単位取得の難易度が低い授業を受講する必要があります。
公認会計士受験においては、学校の授業はあまり役立たないものと捉えたほうが良いと思います。(もちろん例外もあるとは思いますが)
(ちなみに、当時受験仲間だった大学生たちは、代理出席してもらったりしている人が多かった。)
スケジュール感
大学生が公認会計士を目指すときのスケジュール感は、次のとおりです。(2年後の合格を前提)
受験スタート時期 | 合格時期 |
---|---|
大学1年から目指す場合 | 大学3年8月に論文合格 |
大学2年から目指す場合 | 大学4年8月に論文合格 |
大学3年から目指す場合 | 卒業直後の8月に論文合格 |
大学4年から目指す場合 | 卒業約1年後の8月に論文合格 |
大学2年生から目指す場合、周りの受験生ではない友達が大学4年の4月から就職活動を本格スタートしている中、受験勉強をしなければならず、精神的にやや負い目を感じる方もいるでしょう。
また、大学3年以降で公認会計士を目指す場合、合格は卒業後になることがほぼ確実です。
受かることができない場合のリスクヘッジとして、留年という選択をする方もいるようです。
大学4年から学習スタートする場合にも、卒業後の合格を目指すことになりますが、この場合は「会計専門職大学院」を目指すという選択も同時に考えるべきでしょう。
なぜなら、会計専門職大学院で所定の科目を修得して修了することで、公認会計士試験「短答式」の3科目免除が受けられる(「企業法」のみ受験でOK)ため、鬼門となる短答式を楽に突破できる可能性が高いからです。
バイトしながら公認会計士を目指す際によくある疑問
その他、バイトしながら公認会計士を目指す際によくある疑問をまとめました。
公認会計士受験は、社会人と無職専念どちらが良い?
人によるでしょう。
おそらく大学4年生が抱く疑問だと思いますが、私なら無職専念を推します。
というのも、私は就活を理由に会計士を諦めた方に複数名会ったことがありますが、全員が後悔していたからです。
新卒カードを切るというリスクもありますから、全てを総合的に勘案する必要があるでしょう。
働きながら公認会計士を目指す場合、何年かかる?
知識ゼロの状態から働きながら公認会計士を目指す場合、3年~4年かかるでしょう。
ただし、経理・会計事務所などの公認会計士試験と親和性の高い職種で働いている場合、もう少し短い期間で合格できる可能性があります。
生活保護を受けながら公認会計士を目指すことはできる?
生活保護の申請要件を満たす必要があります。
具体的には、”世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提”です。(引用:厚生労働省HP)
詳しくは、厚生労働省HPをご参照ください。
公認会計士に受かるまで何年かかる?
2年または3年で合格するケースが最も多いです。
これは公表されているわけではありませんが、私の周りにいた受験生仲間を見ていても、ほぼ同期間で合格していました。
公認会計士試験の合格率は?
毎年、受験生全体の約8%が合格します。
年2回ある短答式試験では毎回約10%が合格し、その後、年に1度ある論文式試験では毎回約35%が合格します。
公認会計士試験の受験者数推移は?
直近10年間における公認会計士試験の受験者数推移は、次のとおりです。
年度 | 願書提出者数 |
---|---|
2015年 | 10,180 人 |
2016年 | 10,256 人 |
2017年 | 11,032 人 |
2018年 | 11,742 人 |
2019年 | 12,532 人 |
2020年 | 13,231 人 |
2021年 | 14,192 人 |
2022年 | 18,789 人 |
2023年 | 21,573 人 |
2024年 | 20,317 人 |
2021年頃までは緩やかに増加していましたが、2022年に入り一気に受験者数が増加しています。
会計士と税理士はどちらが稼げる?
人によります。
公認会計士は試験合格後、大半がBIG4に就職するため、平均年収が高いです
税理士が就職する会計事務所は、大手から中小まで様々ですから、(公認会計士と比較すると)平均年収は下がります。
一方、税理士は公認会計士よりも独立開業がしやすく、独立をすると年収の上限が上がります。
税理士の中には、独立後に年商億単位を稼ぐ税理士もいます。
ご自身がどのような未来を思い描くかによって、目指す資格は変わるでしょう。
【必見】極限までリスクを抑え、公認会計士試験に合格する方法
会計士を目指すことには、以下のリスクがあります。
- 試験に受かっても監査法人に就職できない可能性がある
- 予備校代が高く、落ちたらまた1年分課金しなければならない
- 無職専念になると、職歴に空白期間ができてしまう
- 実務が分からずに勉強をするため、特に「監査論」の学習がなかなか進まない
しかし、このリスクを全て払拭し、最小限のリスクで会計士を目指せる手法があります。
それが「監査トレーニー」という制度を利用することです。
監査トレーニー制度とは、監査法人が会計士受験生を採用し、予備校代などの補助を出しながら、監査法人で実務経験を積みながら会計士を目指せる制度をいいます。
合格後はその監査法人でそのまま働くことができますから、将来の就職不安も全て払しょくされ、安心して会計士受験ができます。
もちろん、予備校代の補助とは別に、かなり良い額の給料も支給されます。
監査トレーニーは「短答合格者」を採用する監査法人もあれば、「短答合格前」からでも採用している監査法人もあります。
雇用形態は「フルタイム」のケースもあれば、「アルバイト雇用」として日数を減らせるケースもあります。
非常にお得な制度ですが、意外と知られていない制度なので、「この記事を見て初めて知った」という方もいるかもしれませんね。
監査トレーニーについて、詳しくは次の記事内で全て詳細に解説しています。