税理士の転職に関する実態調査【2026年5月】公表

税理士の転職に関する実態調査【2026年5月】
  • 調査対象:税理士資格保有者
  • サンプル数:354名(男性293名、女性61名)
  • 調査期間:2026年5月2日〜10日
  • 調査方法:インターネット調査

税理士の転職市場が静かに、しかし確実に変わっている。かつては「一つの事務所に長く勤める」か「独立を目指す」かの二択に近かったキャリアの選択肢が、今では一般事業会社へのインハウス転職、M&A・事業承継・相続といった高付加価値領域への軸足移動、さらにはリモートワークを活かした柔軟な働き方まで、現実的な選択肢として広がっている。

背景には、インボイス制度や電子帳簿保存法への対応をきっかけに記帳代行業務のクラウド化・省力化が進む一方で、後継者不足に悩む中小企業のM&A・事業承継ニーズが急増していることがある。単純作業の価値が下がり、高度な判断・交渉・コンサルティングの価値が上がる——そうした業務環境の変化を、税理士自身も肌で感じているはずだ。

今回、私たちアカウントエージェントは税理士資格保有者354名を対象に転職に関する実態調査を実施した。属性・現在の年収・転職回数・転職意向・動機・希望転職先・活動実態・年収変化・将来の業務志向まで全14問の結果と考察をお届けする。

調査結果サマリー
  • 現在の年収は「500〜600万円未満」が最多(25.4%)
  • 転職経験者は71.2%、複数回経験者も28.2%
  • 転職を意識している層は約88%——公認会計士(84%)を上回り、業界全体の流動性が高い
  • 転職のきっかけ1位は「年収・待遇への不満」(46.9%)
  • 希望転職先は「中小税理士法人・会計事務所」(53.7%)が最多
  • 転職経験者(n=270)の約82%が年収アップ——50万円以上増加が63.0%に達する
  • 今後挑戦したい業務として「M&A・事業承継」が67.2%で断トツ
目次

回答者の属性:30〜40代が中心、中小事務所勤務が過半数を占める

まずアンケート回答者の属性を明確にするため、3つの属性に関する質問を用意した。

保有資格と回答者の概要(Q1)

税理士の転職に関する実態調査【2026年5月】Q1「あなたが保有する資格を教えてください」

今回の調査は税理士資格保有者のみを対象としており、全354名が税理士登録済みの実務経験者である。男性が293名(82.8%)、女性が61名(17.2%)と、サンプル数では男性比率が高い。

なお、第7回税理士実態調査報告書では男性比率84%であり、当該調査報告と整合性がとれている。

年代(Q2)

税理士の転職に関する実態調査【2026年5月】Q2「年代を教えてください」

年代別では「40代」が34.5%で最多、「30代」(30.5%)が続き、30〜40代の合計が65.0%と全体の3分の2を占める。「20代」は17.5%、「50代以上」も17.5%と均等な分布だ。

公認会計士の同調査では20〜30代が62.8%を占めるのに対し、税理士は30〜40代が中心層になっている。これは税理士試験の仕組みの違いによるところが大きい。公認会計士試験が一括合格型であるのに対し、税理士試験は科目合格制(5科目合格)のため、働きながら数年〜十年以上かけて資格を取得するケースが多い。30代後半から40代での資格取得・実務経験の蓄積を経て、転職を本格的に検討する層が多いことを示している。また、国税出身者が多数を占めていることも背景にある。

現在の勤務先(Q3)

税理士の転職に関する実態調査【2026年5月】Q3「現在の勤務先の種別を教えてください」

現在の勤務先は「中小税理士法人・会計事務所」が56.2%で過半数を占める。「一般事業会社(経理/財務・経営企画など)」(24.6%)が続き、「大手税理士法人(Top10規模)」(11.9%)、「独立・個人事務所(所長)」(3.4%)が並ぶ。コンサルティングファーム(2.3%)は少数だ。

税理士の主要な就労先が中小規模の税理士法人・会計事務所であることは業界の常識ではあるが、既に4人に1人が一般事業会社で活躍しているという結果であった。

現在の年収:「500〜600万円未満」が最多

税理士の転職に関する実態調査【2026年5月】Q4「現在の年収(額面)を教えてください」

現在の年収(額面)を尋ねたところ、「500〜600万円未満」(25.4%)が最多で、「400〜500万円未満」(23.7%)が続いた。500万円未満の層を合計すると約45.8%と全体の半数近くに達する。一方、600万円以上は28.8%にとどまり、800万円以上はわずか7.9%だ。

公認会計士の同調査では600〜800万円未満が最多(30.8%)で800万円以上が44.2%に達するのと比べると、税理士の年収水準が全体として低い傾向にあることは明らかだ。これは主要な就労先である中小税理士法人・会計事務所の収益構造(顧問料ベースの安定収益が主体)を反映したものといえる。

この年収分布は、後述の転職動機・転職先選びの条件のデータと深く連動している。年収500万円未満が46%を占める現実の中で、転職先選びで「年収・給与水準」を最重視する割合が39.0%(公認会計士の26.9%を12ポイント以上上回る)に達するのは、単なる上昇志向というよりも、生活水準の改善への切実なニーズの表れだ。また「300万円未満」(6.8%)という低年収層も存在しており、同じ税理士資格保有者でも就労先・地域・年次によって年収格差が生まれていることがわかる。

転職回数:転職経験者は71%、複数回も28%と「転職の習慣化」が進む

税理士の転職に関する実態調査【2026年5月】Q5「これまでの転職回数を教えてください」

これまでの転職回数を尋ねると、「1回」が42.9%で最多。「2回」(20.3%)、「3回以上」(7.9%)を合わせた転職経験者は71.2%にのぼった。「0回(転職経験なし)」は28.8%にとどまる。

3人に2人以上が転職を経験しているという数字は、他の職種と比較しても高い水準にある。「最初に就職した事務所に長く勤める」という選択をしている層が減り、より良い環境・待遇・業務内容を求めて積極的に動く税理士が増えている。

特筆すべきは「2回以上」の経験者が28.2%に達していることだ。複数回の転職を繰り返しながらキャリアを形成していく傾向は、少人数で運営される会計事務所の職場環境(待遇の硬直性、代表の方針への依存度の高さ)が転職を繰り返しやすい構造を作っているとも読めるが、同時に「転職を通じてスキルアップ・年収アップを実現できる」という成功体験が広がっていることも理由の一つだろう。

公認会計士(転職経験者76.3%、複数回37.2%)と比べると、税理士の転職経験者率(71.2%)はやや低いが、転職を通じたキャリア形成という点では同様の傾向を示している。

転職意向:88%が転職を意識、公認会計士(84%)を上回る業界の流動性

税理士の転職に関する実態調査【2026年5月】Q6「現在、転職を検討していますか」

「現在転職を検討しているか」を問うたところ、「積極的に転職活動中」(18.1%)、「情報収集・検討中」(28.8%)、「機会があれば転職したい」(41.2%)を合わせると88.1%が転職を視野に入れているという結果になった。「現在は考えていない」はわずか11.9%だ。

この88.1%という数字は、同時期に実施した公認会計士対象の調査(84.0%)を4ポイント以上上回る。給与水準が相対的に低く、少人数・属人的な職場環境で働く税理士の間で転職への意識が高いのは、ある意味で自然な帰結ともいえる。「より良い環境への移動が現実的な選択肢である」という感覚が、この資格保有者の間に広く浸透しているのだ。

「積極的に活動中」「情報収集・検討中」を合わせた層が46.9%——全体のほぼ半数がすでに転職に向けて動いている、または真剣に検討している段階にある。「機会があれば」の41.2%も含めると、良い求人に出会えれば即座に動き出す可能性のある潜在的候補者が市場に溢れている状況だ。採用側にとっては、税理士の転職市場が常に豊富な候補者プールを持つ一方、優秀な人材は他社との競争の中で確保しなければならないという意味でも、この数字は重要な示唆を持つ。

転職のきっかけ:「年収・待遇への不満」が最多、「代表の代替わり」が税理士特有のトリガーに

税理士の転職に関する実態調査【2026年5月】Q7「転職を考えたきっかけを教えてください」

転職を考えたきっかけ(上位3つまでの複数選択)では、「年収・待遇への不満」(46.9%)が最多となり、「仕事内容・やりがいへの不満」(39.0%)、「残業・働き方への不満」(33.9%)が続いた。上位3項目がいずれも「〜への不満」という現状不満型の動機で占められる結果となった。

注目したいのは「代表・所長の代替わり」が27.1%(6位)でランクインしていることだ。多くの会計事務所・税理士法人は代表税理士・所長の個性と方針によって組織文化が形成されており、代替わりが起きると給与水準・業務の方向性・職場の雰囲気が一変することがある。業界内では「先代のときは良かった」という声は珍しくなく、代替わりのタイミングで転職に踏み切る人は相当数いる。個人経営に近い組織構造を持つ業界ならではのリスクが、数字として浮き彫りになった結果だ。

「キャリアアップ・スキルアップをしたい」(29.9%)も上位5位以内に入っており、前向きな成長志向を動機とした転職も一定数存在している。「不満から逃げるだけの転職」ではなく「より高い目標に向かう転職」が、税理士の間でも確実に増えていることが見て取れる。

注目

「独立・開業の準備」(14.7%)を転職の動機に挙げる層も7位に入っている。現在の事務所から転職し、別の事務所で経験・人脈・ノウハウを蓄積したうえで独立に備えるという計画的なキャリア戦略が、税理士の間で実践されていることがわかる。

希望転職先:「中小事務所内横移動」「事業会社」「独立」が三極化

税理士の転職に関する実態調査【2026年5月】Q8「転職先として希望する勤務先を教えてください」

希望転職先(複数選択)の1位は「中小税理士法人・会計事務所」(53.7%)。数字だけ見ると「現状と同じフィールドへの横移動が主流」に映る。しかしこれは、現在の事務所の待遇・環境・業務内容に不満を持ちながらも、「税理士として働くフィールド」自体は同業界に求めているということだ。年収を上げるために、業務内容を広げるために、より良い組織環境を求めて——同業界内での移動ニーズが根強く存在していることがわかる。

一方、「一般事業会社」(31.6%)を希望する層が3人に1人近くいることも見逃せない。現在事業会社に勤める税理士は24.6%だが、希望先としては31.6%と上昇しており、事業会社インハウスへの転職ニーズが実際の在籍者数より高いことがわかる。経理・財務・管理部門で「外から顧問として関わる」のではなく「組織の内側から経営を支える」ポジションを求める税理士が着実に増えている。

「独立・個人事務所(所長)」を希望する層も21.5%と2割超。税理士資格は独立開業が現実的にできる数少ない国家資格の一つであり、「いつかは自分の事務所を」という独立志向は、この資格保有者の根底にあるキャリアゴールとして依然として強く存在している。転職をそのための踏み台・経験蓄積の機会として活用している層も相当数いると考えられる。「大手税理士法人(Top10規模)」(24.9%)も一定の支持を集めており、より大きな組織・規模の大きな案件を経験したいという志向も存在する。

公認会計士との比較

公認会計士の希望転職先は「一般事業会社」(55.1%)が断トツ1位で、いわゆる「監査法人からの脱出」が主テーマになっている。一方、税理士は中小事務所内横移動が主流を保ちつつ、事業会社・独立が並立する「三極構造」を形成している。

転職先の重視条件:「年収」が39%で断トツ1位、公認会計士より12ポイント高い背景

税理士の転職に関する実態調査【2026年5月】Q9「転職先を選ぶ際に最も重視する条件を教えてください」

転職先を選ぶ際に最も重視する条件(単数選択)は「年収・給与水準」(39.0%)が1位。「ワークライフバランス・残業時間の少なさ」(32.8%)が2位で約6ポイントの差がついた。

この「年収」が39.0%という数字は、公認会計士の同調査(26.9%)と比較して12ポイント以上高い。この差は、Q4(現在の年収)の結果——年収500万円未満が全体の約46%を占める——と照らし合わせることで、より深く理解できる。現在の年収水準が比較的低い税理士にとって、転職は「やりがいの探求」以前に「収入の実質的な改善」が最優先課題なのだ。「上を目指したい」という欲求以上に、「今の水準に不満がある」という切実さがこの数字を押し上げていると考えられる。

上位2項目(年収+ワークライフバランス)で合計71.8%を占め、この二軸が転職先選びの実質的な決定要因となっている。3位の「仕事内容・業務の幅広さ」(11.9%)も一定の支持を集めており、業務領域の拡張を重視する層も存在するが、相対的に少数派だ。「事務所・会社のブランド・規模」(1.7%)は最下位水準で、ブランドよりも実態(待遇・働き方)で転職先を選ぶ傾向は税理士においても明確に表れている。

前職・現職への不満:「年収」「残業」「仕事内容」が4割超で三つ巴

税理士の転職に関する実態調査【2026年5月】Q10「前職(または現職)への不満として当てはまるものを教えてください」

前職(または現職)への不満(複数選択)では、「年収・給与水準」(42.9%)、「ワークライフバランス・残業時間」(41.8%)、「仕事内容・業務の幅」(40.1%)がいずれも4割前後で拮抗し、上位3位を形成した。3つの不満が僅差で並ぶこの構造は、公認会計士(「仕事内容」「年収」「WLB」の三つ巴)と類似した傾向だが、税理士では「年収」がわずかに首位に立っており、収入への不満がより顕著に前面に出ている。

4位に入った「キャリアパスの見えにくさ」(30.5%)は、少人数で運営される会計事務所・税理士法人の構造的な問題を反映している。代表・所長の方針次第で人事が左右されやすく、昇格ルートが明文化されていないことが多い環境では、「10年後の自分のポジションが見えない」という閉塞感が積み重なる。「評価制度・昇給の仕組みへの不満」(27.7%)も約3割にのぼっており、成果が公正に報酬に反映される環境への強いニーズが示されている。

「特に不満はない」と回答した層はわずか11.9%。大多数の税理士が現職に何らかの改善を求めており、それが88%という高い転職意識率の根底にあることは明らかだ。転職意向と現職への不満のデータが一貫して同じ方向を向いている。

転職活動の手段と最大の壁:最も苦労するのは「書類作成」

税理士の転職に関する実態調査【2026年5月】Q11「転職活動で利用している(または利用予定の)手段を教えてください」

転職活動で利用している手段(複数選択)では「転職エージェント(人材紹介会社)」(61.0%)が最多で、「転職サイト・求人サイト」(50.3%)との組み合わせが定番スタイルとして定着している。「直接応募」(22.0%)と「転職相談サービス」(19.2%)も一定数が活用しており、複数チャネルを組み合わせた活動が主流となっていることがわかる。

特筆すべきは「知人・OBOGからの紹介」(48.6%)が約半数に達していることだ。公認会計士の同調査(39.7%)より約9ポイント高く、業界内のネットワークが転職においても有力なチャンネルとして機能している。税理士業界は同業者の横のつながりが強く、「あそこの事務所が人を探している」「あの先生がいる事務所は雰囲気が良い」といった口コミ情報が転職活動に実質的な役割を果たしていると考えられる。

税理士の転職に関する実態調査【2026年5月】Q12「転職活動で最も苦労したこと(または苦労しそうなこと)を教えてください」

最も苦労する(または苦労しそうな)こと(単数選択)では「職務経歴書・応募書類の作成」(28.8%)が1位。「自分に合う応募先の選び方」(27.7%)が僅差で2位に続いた。

公認会計士では「応募先の選び方」(35.9%)が最大の壁だったが、税理士では「書類作成」がトップになっている。この差は両者の転職市場の性質の違いを反映していると考えられる。多様な業種・職種への転職が想定される公認会計士は「どこに行くか」の判断が難しく、比較的同業内の移動が多い税理士は「自分をどう言語化するか」という表現の部分に壁を感じやすい。高い専門知識を持ちながらも、自身の強みを職務経歴書に落とし込む作業に苦手意識を持つ税理士が多いという実態が、ここに表れている。

転職後の年収変化:転職経験者の82%が年収アップ、50万円以上増加が6割超

税理士の転職に関する実態調査【2026年5月】Q13「【転職経験者のみ】直近の転職で年収はどう変化しましたか」

転職経験者(n=270)に直近の転職での年収変化を尋ねたところ、「増加した」と回答した割合は合計82.2%という結果になった。内訳では「50〜100万円未満増加」(37.8%)が最多で、「100万円以上増加」(25.2%)と合わせると50万円以上の年収増を実現した転職経験者は63.0%にのぼる。

公認会計士の同調査では100万円以上増加が45.4%に達するのに対し、税理士では25.2%と低い。これは年収水準が異なるため、改善の「幅」として比較することが適切ではないという面もある。しかし50万円以上増加が63.0%という数字は、月あたり約4万円以上の手取り増に相当しており、生活水準の実質的な向上を転職で実現した税理士が6割超にのぼるということだ。「転職すれば年収が上がる可能性が高い」という実績は、データとして明確に示されている。

「減少した」はわずか6.7%。税理士資格は転職市場において安定した評価を得ており、転職に伴う年収リスクは非常に限定的だ。「ほぼ変わらない」(11.1%)という層も一定数いるが、これは年収以外の条件改善(働き方・業務内容・職場環境)を優先した転職として解釈するのが自然だろう。転職の目的が「年収増加の一点」に限らず、多様な動機から行われていることが、この数字にも表れている。

今後の業務志向:M&A・事業承継が67%で断トツ、「顧問税理士」を超えた役割への意欲が鮮明

税理士の転職に関する実態調査【2026年5月】Q14「今後やってみたい・広げたい業務領域を教えてください」

今後やってみたい・広げたい業務領域(複数選択)を尋ねたところ、「M&A・事業承継・企業再編」(67.2%)が2位以下を20ポイント以上引き離して首位となった。「相続申告・相続対策」(50.3%)が2位、「経営コンサルティング」(35.0%)が3位と続く。

なぜM&A・事業承継がこれほど関心を集めるのか

M&A・事業承継は今、税理士にとって最も「旬」な業務領域の一つだ。国内の中小企業では経営者の高齢化が深刻で、後継者不在による廃業・事業縮小が社会課題になっている。このM&A・事業承継ニーズの急増が、関連専門家への需要を押し上げており、顧問先企業の内情と財務状況を熟知している税理士はその最前線に立てる立場にある。記帳代行や税務申告の単純作業に比べて報酬単価が高く、経営者との深い信頼関係の中で仕事ができるという点も、税理士にとって魅力的に映るのだろう。

「相続申告・相続対策」が50.3%で2位に入っているのも、社会の高齢化・資産移転の増加という時代背景と一致している。今後も相続案件の件数は増加が見込まれており、専門性を高めることで差別化できる分野だ。「経営コンサルティング」(35.0%)が3位に入ることも、財務・税務の専門家として培ったスキルをより広い経営課題の解決に活かしたいというニーズの高まりを示している。

一方、「税務顧問(現状維持)」(23.2%)にとどめたい層は4人に1人以下。「今の仕事を変えずに続ける」という選択に満足している税理士は少数派であり、大多数が業務範囲の拡張・高度化を志向していることが示された。「国際税務・海外対応」(24.9%)への関心も4人に1人に達しており、グローバルな案件への参入を視野に入れる税理士の存在も無視できない規模になっている。

「記帳代行・クラウド会計」(13.0%)を広げたい領域として挙げた層は最下位水準にとどまった。デジタル化・省力化が進む中で、記帳代行という業務の付加価値が相対的に低下していくことを税理士自身も感じ取っており、より高い専門性・判断力を必要とする業務へとキャリアをシフトさせようとしている意欲が、このデータには色濃く滲んでいる。

まとめとしての考察

Q14のデータが語るのは、「数字を管理する専門家」から「経営の意思決定を支える伴走者」への変化を、税理士自身が強く望んでいるということだ。記帳・申告という確実な仕事をこなす「守りの税理士」から、M&A・コンサル・相続といった高度な判断が求められる「攻めの税理士」へ——そのシフトは、転職を通じて実現されることが多い。転職動機・希望転職先・業務志向のデータが一貫してこの方向を指し示している。

まとめ:データが語る「税理士転職の現在地と行き先」

今回の調査を通じて見えてきたのは、税理士のキャリアをめぐる静かな、しかし確実な変化だ。88%が転職を意識し、転職経験者の82%が年収アップを実現し、67%がM&A・事業承継に挑戦意欲を見せている——これらのデータは一貫して、「今の場所に留まるのではなく、より良いフィールドへ自らの力で動く」という意志を持つ税理士が多数派になっていることを示している。

同時に、転職の動機として「年収・待遇への不満」が最多であることや、現在の年収水準が低い層が多いという現実は、この転職意欲が必ずしも楽観的な状況から生まれているわけではないことも示唆している。現職への不満と将来への不安が重なり合い、それが転職という行動に結びついているケースが多い。

しかし、転職経験者の実績データは明確だ。82%が年収アップ、6.7%しか年収が下がらない。税理士資格は転職市場において確かな価値を持ち、適切な準備と専門的なサポートのもとで転職に臨めば、収入改善と環境改善を同時に実現できる可能性は十分にある。

M&A・事業承継・相続・コンサルティングへの業務拡張志向は、単なる「より稼ぎたい」という欲求を超えて、「税理士という仕事の可能性をもっと広げたい」という専門家としての誇りと向上心の表れだと受け取りたい。転職はその目標を達成する一つの有力な手段になり得る。この調査が、現状を見つめ直すきっかけになれば幸いだ。

調査概要

税理士の転職に関する実態調査【2026年5月】の調査概要
調査名称税理士の転職に関する実態調査【2026年5月】
調査対象者税理士
調査地域日本全国
調査方法インターネット調査
調査期間2026年5月2日~5月10日
サンプル数354名(男性293名、女性 61名)
調査主アカウントエージェント株式会社

調査対象サンプルとなっている税理士有資格者は、主としてアカウントエージェント株式会社代表取締役である藤沼寛夫のコネクションでアンケートを依頼させていただいており、必ず「税理士資格を有している事実」を確認しております。

また、インターネット上での調査サンプルにおいては必ずアンケート回答時に実名記入及び資格証明書をご提出頂いております。

繁忙期前後の状況でアンケートにご回答頂いた皆さまへ、改めて心より御礼申し上げます。

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