ファクタリングにおける債権譲渡登記とは?必要性や費用を徹底解説!
ファクタリングにおける債権譲渡登記とは、ファクタリングで売却(譲渡)した売掛債権を登記簿に記録することです。
これにより、ファクタリング会社(譲受人)は、買い取った債権(売掛金)の権利を「売掛先以外の第三者」に対抗(主張)することができます。
以下は、債権譲渡登記の図です。
(参考:法務省「第1 債権譲渡登記制度とは? (2) 債権譲渡登記制度による対抗要件の特例」より)
ファクタリングにより譲渡する「売掛金」は目に見えないため、第三者から見ると、誰に所有権があるのか判別できません。
ここで、債権譲渡登記を行うことで、売掛金の所有権がファクタリング会社に渡ったことを、法的にも証明することができます。
このため、ファクタリング審査の結果によっては、ファクタリング会社から債権譲渡登記を求められることがあります。
債権譲渡登記制度は、法人がする金銭債権の譲渡について、債務者以外の第三者に対する対抗要件を備えるための制度です。
登記は民法等にも絡むため、やや難しい用語が多く概念もイメージしづらいでしょう。
そこで本記事では、債権譲渡登記とは何なのか?その仕組みを図解と共にわかりやすく解説します。
1986年生まれ(38歳)
公認会計士・税理士
2014年 EY新日本監査法人 入社
2018年 中堅会計事務所 入社
2019年 藤沼会計事務所 開業
2020年 アカウントエージェント株式会社 代表
経営・資金繰りの専門家です。
個人事業主・フリーランスの経営支援、および資金調達支援事業を行っています。
1988年生まれ
公認会計士・税理士
2014年 EY新日本監査法人 入社
2021年 ニューラルグループ株式会社 入社
2024年 太田昌明公認会計士事務所 開業
2024年 ARMS会計株式会社 代表取締役
上場会社で経理部長として決算財務全般・資金調達を行っていました。
現在は経理支援会社を運営しています。
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ファクタリングにおける債権譲渡登記とは?
ファクタリングにおける「債権譲渡登記(債権譲渡登記制度)」は、法務省が次のように定義しています。
債権譲渡登記制度は、法人がする金銭債権の譲渡について、債務者以外の第三者に対する対抗要件を備えるための制度です。
(参考:法務省「債権譲渡登記制度の概要」)
この債権譲渡登記は、2社間ファクタリングで求められることがあります。
下図は、法務省が作成した「債権譲渡登記制度の概要図」です。
(参考:法務省「第1 債権譲渡登記制度とは? (2) 債権譲渡登記制度による対抗要件の特例」より)
ファクタリングにおける債権譲渡登記とは、ファクタリングで売却(譲渡)した売掛債権を登記簿に記録することです。
これにより、ファクタリング会社(譲受人)は、買い取った債権(売掛金)の権利を「売掛先以外の第三者」に対抗(主張)することができます。
ファクタリングにより譲渡する「売掛金」は目に見えないため、第三者から見ると、誰に所有権があるのか判別できません。
ここで、債権譲渡登記を行うことで、売掛金の所有権がファクタリング会社に渡ったことを、法的にも証明することができます。
このため、ファクタリング審査の結果によっては、ファクタリング会社から債権譲渡登記を求められることがあります。
債権譲渡登記が必要となる理由|ファクタリング取引を法的に保全するため
先述のとおり、ファクタリング会社は債権譲渡登記をしなければ、買い取った売掛金の所有権を証明することができません。
なぜなら、ファクタリング会社が債権譲渡登記を行わない場合、具体的には、ファクタリング会社は次のようなリスクを負うからです。
リスク | ファクタリング会社側のリスクの内容 |
---|---|
二重譲渡 | 二重譲渡されたファクタリング会社のうち、どちらがファクタリング債権の代金について権利を持っているのか分からないので、回収不能リスクがある。 |
架空債権 | 実際には売掛先が存在しない債権なので、ファクタリング債権の代金が回収できない。 |
債務者が差押えされる | 国税や銀行など「他の債権者」が債務者の債権を差し押さえた場合、ファクタリング会社は差押えられた売掛金の回収ができなくなる。 |
上記のように、債権譲渡登記を行わない場合、ファクタリング会社側には大きなリスクが残ります。
というのも、売掛金は無形で目に見えないため、(債権譲渡登記をしなければ)外部の第三者からすると「債務者から支払を受ける権利」を誰が持っているかが分からないからです。
このため、ファクタリング会社は上記のリスク(資金が回収できないリスク)を回避するため、ファクタリング利用者に債権譲渡登記を求めることがあります。
ただし、ファクタリング会社が債権譲渡登記を求めることは稀です。
なぜなら、登記にはファクタリング会社としても手間がかかり、通常は債権譲渡登記を留保する(登記しない)からです。
通常、審査の結果「危険」だと判断された売掛債権のみ、債権譲渡登記がされます。
債権の二重譲渡とは|すでに売却した債権を再び売却する不法行為
債権の二重譲渡とは、「既に売却したある債権を、違う会社にも売却すること」です。
二重譲渡は「本来は存在せずに譲渡できない債権」をファクタリング会社に売却して代金を騙し取る犯罪であり、詐欺罪(詐欺未遂)・横領罪に問われることがあります。
ファクタリング会社は、二重譲渡のリスクに対応するため、債権譲渡登記を利用者に求めることがあります。
架空債権とは|本来存在しない・偽装した債権を売却すること
架空債権とは、「ファクタリング申込時の請求書・契約書などを偽装した、架空の債権を売却すること」です。
下図は、架空債権によるファクタリングを行った場合の取引図です。
架空債権は、「利用者が証憑を偽造」したり、「利用者が売掛先と共謀して取引や証憑をでっち上げる」ケースがあります。
このように、架空債権は「本来は存在せずに譲渡できない債権」をファクタリング会社に売却して代金を騙し取る犯罪であり、詐欺罪・私文書偽造罪・公文書偽造罪に問われることがあります。
ファクタリング会社は、架空債権のリスクに対応するため、債権譲渡登記を利用者に求めることがあります。
債権譲渡登記が求められるのは「利用者が法人」かつ「2社間ファクタリング」の場合のみ
下図のとおり、債権譲渡登記は「利用者が法人」かつ「2社間ファクタリング」の場合しかできません。
2社間ファクタリング | 3社間ファクタリング | |
---|---|---|
利用者が個人 | 債権譲渡登記 不可 | 債権譲渡登記 不可 |
利用者が法人 | 可能性あり 債権譲渡登記の | 債権譲渡登記 不要 |
なぜならば、個人事業主の債権譲渡登記は不可であり、3社間ファクタリングは売掛先を含めてファクタリング契約を締結するため「二重譲渡・架空債権」などのリスクがないからです。
なお、個人が債権譲渡登記できない旨は動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律第4条1項に規定されており、東京法務局もQ&Aにおいて改めて周知しています。
以上の理由により、債権譲渡登記は「利用者が法人の2社間ファクタリング」でしかできません。
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ファクタリングの債権譲渡登記に記載される内容
参考:債権譲渡の登記事項証明書(見本)
ファクタリングの債権譲渡登記に記載される主な内容は、次のとおりです。
主な記載項目 | 記載内容の概要 |
---|---|
登記の目的 | 債権譲渡登記 |
譲渡人の情報 | ファクタリング利用者の情報(会社名や住所など) |
譲受人の情報 | ファクタリング会社の情報(会社名や住所など) |
登記原因日付 | 債権譲渡契約が成立した日付 |
登記の原因 | ファクタリングの場合「売買」 |
債権の総額 | ファクタリングした売掛債権の総額 |
原債権者 | 債権発生当時の債権者の情報 (会社名や住所など。通常はファクタリング利用者の情報) |
債務者 | 売掛先の情報(会社名や住所など) |
債権の種類 | 基本的に「売掛債権」 ※その他の種類は、法務省資料「債権譲渡登記制度のご案内(P11~P14)」を参照 |
発生時債権額 | 取引によって生じた債権額 |
譲渡時債権額 | ファクタリングした債権額 |
(参考:法務省「登記事項証明書と申請データとの相関図」)
債権譲渡登記がされると、申請さえすれば誰でも登記簿を閲覧できます。
このため、債権譲渡登記をするとファクタリングによる資金調達が売掛先や第三者に知られるリスクがあります。
ただし、よほどのことがない限り、他者に登記簿を見られることはありません。
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ファクタリングの債権譲渡登記にかかる費用
ファクタリングの債権譲渡登記にかかる費用は、次のとおりです。
以下、それぞれ解説します。
(参考:法務省「ご存じですか?債権譲渡登記制度」)
債権譲渡登記にかかる登録免許税(7500円)
債権譲渡登記をするために、国に登録免許税7,500円を納めます。
1回に登記する債権の個数 | 1回の登記でかかる費用 |
---|---|
譲渡する債権の個数が5,000個以下 | 7,500円 |
譲渡する債権の個数5,000個を超える | 15,000円 |
厳密には、譲渡する債権の個数が5,000個を超えると15,000円かかりますが、5,000個を超えることはまず無いはずです。
そのため、ファクタリングで債権譲渡した場合は、通常7,500円の登録免許税を支払います。
抹消登記にかかる登録免許税(1件につき1000円)
債権譲渡登記は、ファクタリングが終了した際に抹消登記を行う必要があり、登録免許税が1,000円かかります。
債権譲渡登記を消さずに放置すると、将来違うファクタリング会社と契約するときに、同じ債権を二重譲渡していると判断され、ファクタリング契約ができない恐れが生じます。
このため、ファクタリングで譲渡した債権が決済されたら、速やかに抹消登記をしましょう。
(参考:総務省 e-Gov法令検索「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律(平成十年法律第百四号)」)
債権譲渡登記にかかる司法書士への報酬(4万円~8万円)
債権譲渡登記の申請を司法書士に代行してもらう場合は、司法書士への報酬の支払いが発生します。
司法書士報酬の相場感は「40,000円~80,000円」です。
登記自体は司法書士を使わなくても自分自身で行うことが可能ですが、自力では難しく時間もかかるため司法書士へ依頼するのが一般的です。
- 登記申請に不備がある場合、債権譲渡登記が遅れることでファクタリング会社からの入金も先に延びてしまうが、司法書士に依頼すればリスクがない。
- 原則として、登記時に譲渡人(利用者)と譲受人(ファクタリング会社)が揃って法務局へ出頭する必要があるが、司法書士に依頼すれば双方出頭する必要がなくなる。
通常、ファクタリング会社が提携している司法書士を紹介され、その司法書士が登記代行をしますので、利用者が特段手続きすることはありません。
抹消登記にかかる司法書士への報酬(千円~1万円)
権譲渡登記の抹消登記申請において司法書士を利用する場合は、司法書士への報酬の支払いが発生します。
司法書士報酬の相場感は「1,000円~10,000円」です。
債権譲渡登記と同様に、ファクタリング会社が提携している司法書士へ依頼するのが一般的です。
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ファクタリングの債権譲渡登記での必要書類
ファクタリングで債権譲渡登記をする場合に必要となる書類は、次のとおりです。
必要書類一式 | 司法書士なし | 司法書士あり |
---|---|---|
申請書 | ||
1.登記申請書 | 〇 | – |
添付書類 | ||
2.取下書(任意提出) | 〇 | – |
3.譲渡人の代表者の資格証明書 | 〇 | 〇 |
4.譲渡人の代表者の印鑑証明書 | 〇 | 〇 |
5.譲受人の代表者の資格証明書・譲受人の住所を証する書面 | 〇 | – |
6.その存続期間を定めるべき特別の事由があることを証する書面 | △ | – |
委任状 | ||
7.債権譲渡登記に関する委任状(代理権限証書) | – | 〇 |
8.登記事項証明書の取得に関する委任状 | – | 〇 |
(参考:法務省「(債権譲渡登記等)書面による登記申請の手続」「債権譲渡登記申請の添付書面(書面申請の場合)」)
上記のとおり、ファクタリングで債権譲渡登記をするには、必要書類が全8種あります。(「6.その存続期間を定めるべき特別の事由があることを証する書面」については、通常不要。)
なお、債権譲渡登記はファクタリング会社が提携する司法書士に依頼するケースが多く、その場合に必要となるのは「3・4・7・8」のみです。
以下、それぞれの作成方法・入手方法を解説します。
登記申請書
登記申請書は、債権譲渡登記のベースになる書類です。
書類については下表のとおり、「本人申請」と「代理人(司法書士)申請」で様式が異なるので注意しましょう。
書類の場所 | 内容・注意点など | |
---|---|---|
本人申請 | 記載例 様式 | 記載例PDFを確認しながら、Wordファイルのひな形を作成します。 印鑑は、譲渡人は会社の実印を押印します。 譲渡人・譲受人の住所は、登記事項証明書(住所証明書)と同じ情報を記載します。 会社法人番号は、国税庁法人番号公表サイトで検索可能です。 収入印紙(登録免許税)を貼る台紙がセットになっていますので、申請書と契印を押します。 |
代理人申請 | 記載例 様式 | 司法書士に依頼する場合、司法書士が登記申請書を作成してくれるため、ファクタリング利用者は「完成書類の確認・実印の押印」以外にやることはありません。 |
記載項目は少なく、A4用紙1枚のボリュームなので、1つ1つ確認しながら記入すれば、そこまで時間と手間はかかりません。
参考:「登記申請書」「登録免許税納付用台紙」サンプル
取下書(任意提出)
取下書は、登記申請に不備があった場合、申請を取り下げするために用いる文書です。
取下書は任意提出ですが、取下書を提出することにより、登記申請が却下されたときに登記申請書・収入印紙が返却されます。
一方、取下書を提出せずに登記申請が却下された場合、登記申請書・収入印紙は返却されません。
取下書についての注意点は、下表にまとめています。
書類の場所 | 内容・注意点など | |
---|---|---|
本人申請 | 記載例 様式 | 取下書の提出は任意です。 登記申請書と同じ「日付・住所等の情報を記入」して、実印を押印します。 |
代理人(司法書士)申請 | 記載例 様式 | 司法書士に依頼する場合、司法書士が登記申請書を作成してくれるため、ファクタリング利用者は「完成書類の確認・実印の押印」以外にやることはありません。 なお、取下書の添付は任意です。 |
取下書の添付は任意ですが、誤った場合に収入印紙が返却されるため、基本的には取下書を添付することをオススメします。
参考:「取下書」サンプル
譲渡人の代表者の資格証明書
「譲渡人の代表者の資格証明書」は、登記簿(履歴事項全部証明書)のことを指します。
登記簿は、会社の公的な証明書であり、「商号(会社名)」「本店所在地」「設立年月日」「資本金」「役員情報」などの情報が記載されています。
この登記簿は、3ヶ月以内に取得したものが必要です。
なお、令和3年(2021年)6月1日より、代表者の資格証明書が原則不要になりました。
譲渡人の代表者の印鑑証明書
印鑑証明書とは、実印の所有者を公的に証明するための書類です。
印鑑は、市役所や区役所で印鑑登録されると「公的に認められた印鑑(実印)」となります。
この実印は「司法書士の委任状」に押印されますが、「本物の実印である」ことを証明するのに「法人代表者の印鑑証明書」が必要になります。
なお、法務局(=登記所)で行う印鑑証明書の取得手続きは、「窓口申請」「オンライン申請」のどちらでも可能です。
以下、「窓口で申請する場合」と「オンライン申請する場合」の手続きを、それぞれ解説します。
(印鑑証明書)を窓口で申請する場合
法人代表者の印鑑証明書は、法務局の窓口で「印鑑証明交付申請書(Excel版)」と「印鑑カード」を提示することで取得できます。
印鑑証明交付申請書の「申請書様式」は、法務局ホームページからダウンロードできます。
なお、印鑑証明書の発行手続きをする法務局(登記所=法務局)の場所ですが、印鑑証明書の発行は全国どこの法務局でも取得可能です(法務局の窓口対応時間は、平日の午前9時~午後5時まで)。
申請の際、法務局窓口で提出する「印鑑証明書交付申請書」の記入例は、次のとおりです。
印鑑証明書交付申請書は、上記記載例の赤字に倣って記入し、法務局窓口に提出します。
申請の際には、必ず「印鑑カード」を添えて申請します。
仮に印鑑カードが未発行の場合、法務局で印鑑カード交付申請書(Excel版・記載例)を提出して発行しましょう。
ただし、「印鑑登録の手続き」や「印鑑カードの発行」は、本店を管轄する登記所のみの対応なので、注意してください。
上記の手続が遅れる分、ファクタリングの現金化が遅れるため、時間の余裕をもって資料準備しましょう。
(印鑑証明書を)オンラインで申請する場合
「司法書士の委任状」に押印する「法人代表者の印鑑証明書」をオンライン交付による印鑑証明の取得方法で取得したい場合は、次の手続きが必要になります。
- 登記・供託オンライン申請システムにジャンプし、申請者情報登録を行う。
- 申請用総合ソフトを申請用総合ソフトのダウンロードからインストールする。
- 印鑑証明書の請求に必要な電子証明書を取得する。
- オンライン申請のための申請書(申請データ)を作成し、電子署名を付与して送信する。
- 手数料の納付・電子公文書の取得し、手数料を納付する。
- 「郵送」又は「窓口受取(要印鑑カード)」にて、印鑑証明書を受け取る。
なお、オンラインの利用時間は、平日の8時30分から21時までとなります。
(参考:法務省「印鑑証明書のオンライン請求について」)
また、申請データの記載情報は、下図のとおりです。
上図のとおり、記載内容は「窓口で申請する場合」と変わりありません。
初期設定手続は煩雑ですが、継続利用を見込む場合には、オンライン申請の方がおすすめです。
譲受人の代表者の資格証明書・譲受人の住所を証する書面
「譲受人の代表者の資格証明書(登記簿)」は、債権譲渡登記を行う際に、譲受人(ファクタリング会社)の代表者を公的に証明するための書類です。
一方、「譲受人の住所を証する書面(住民票)」は、ファクタリング会社が個人事業主の場合に、代表者を公的に証明するための書類です。
それぞれの書類の解説は、下表のとおりです。
譲受人の代表者の資格証明書 | 登記簿(履歴事項全部証明書)のこと。 「商号(会社名)」「本店所在地」「設立年月日」「資本金」「役員の情報」などの情報が記載。 ファクタリング業者が会社(法人)の場合に必要。 ファクタリング会社の情報を公的に証明するために必要。 |
---|---|
譲受人の住所を証する書面 | 住民票のこと。 「氏名」「生年月日」「住所」などの情報が記載。 ファクタリング業者が個人事業の場合に必要。 ファクタリング業者(代表者)の存在を公的に証明するために必要。 |
債権譲渡登記の際、上表の書類についてはファクタリング会社に準備してもらいましょう。
その存続期間を定めるべき特別の事由があることを証する書面
存続期間が登記の日から50年(債務者不特定の債権を含む場合には10年)を超えるときは、「その存続期間を定めるべき特別の事由があることを証する書面」が必要になります。
ただし、ファクタリングで登記期間が50年を超えることはありません。
そのため、ファクタリングの債権譲渡登記において、「その存続期間を定めるべき特別の事由があることを証する書面」不要です。
債権譲渡登記に関する委任状(代理権限証書)
司法書士に依頼する場合、「債権譲渡登記に関する委任状(代理権限証書)(作成後3ヶ月以内)」が必要です。
なお、実務上は自力で準備することはせず、司法書士が準備したものについて「確認・実印押印」をします。
参考として、委任状のサンプルは次のとおりです。
(参考:法務局「委任状記載例」)
印鑑登録の届出をした印鑑で押印し、司法書士へ返送をすれば完了です。
登記事項証明書の取得に関する委任状
債権譲渡登記完了後と同時に「債権譲渡登記にかかる登記事項証明書」を取得する場合、司法書士が準備した委任状に届出印の押印をする必要があります。
参考として、委任状のサンプルは次のとおりです。
(参考:法務局「登記事項証明書(債権譲渡登記)等の交付申請書の様式」「記載例等」)
印鑑登録の届出をした印鑑で押印し、司法書士へ返送をすれば完了です。
債権譲渡登記と登記事項証明書の発行を同時に司法書士へ依頼する場合、「代表者の印鑑証明書(作成後3ヶ月以内)」と「代表者の資格証明書(作成後3ヶ月以内)」の2点は、あらかじめ2通ずつ準備しましょう。
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ファクタリングで債権譲渡登記するメリット
ファクタリングで債権譲渡登記をするメリットは、次のとおりです。
以下、それぞれ解説します。
2社間ファクタリングの審査が通りやすくなる
債権譲渡登記をすると、2社間ファクタリングの審査が通りやすくなり、ファクタリングの利用が第三者にバレなくなります。
2社間ファクタリングの審査が通りやすくなる理由は、次のとおりです。
- ファクタリング会社側が、「二重譲渡」「架空債権」といったリスクを負わなくなる。
- ファクタリング会社側が、買取った債権の所有権を第三者に主張できるようになる。
このため、債権譲渡登記をすることで2社間ファクタリングでも審査を通せる可能性が高くなります。
3社間ファクタリングで契約をすると、ファクタリングの利用が取引先に100%バレますが、2社間ファクタリングで契約することで、誰にもばれずにファクタリングを利用できます。
ファクタリング手数料を安くできる
債権譲渡登記をすると、ファクタリング手数料は安くなります。
なぜなら、ファクタリング会社側が売掛債権を法的に保全でき、第三者に証明できることで貸倒れリスクが軽減されるからです。
特に、ファクタリングする債権の金額が多額の場合には、手数料削減の効果も大きいため、積極的に債権譲渡登記を利用するのも戦略の1つです。
ただし、登録免許税・司法書士報酬などのコスト(4万円~9万円)も発生するので、ファクタリングする金額が小さい場合には、かえって損をする可能性があるので注意が必要です。
悪徳業者・詐欺的なファクタリング会社を回避できる
債権譲渡登記は債権の譲受人も登記を行うため、悪徳業者・詐欺的なファクタリング会社を回避できます。
なぜなら、譲受人側でも「代表者の資格証明書」「債権譲渡登記に関する委任状」などの身元確認の書類を準備する必要があり、ちゃんとした会社でなければ、資格証明を取得したり真っ当な司法書士へ依頼するのは難しいためです。
このため、絶対ではないですが、悪徳業者は債権譲渡登記を嫌がります。
したがって、債権譲渡登記を利用することで知らずに詐欺的な事件に巻き込まれるリスクを回避でき、自分の身を守ることにつながるメリットがあります。
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ファクタリングで債権譲渡登記するデメリット
ファクタリングで債権譲渡登記をするデメリットは、次のとおりです。
以下、それぞれ解説します。
ファクタリングの利用が売掛先や第三者にバレるリスクがある
債権譲渡登記をすると、僅かながらファクタリングの利用が売掛先や第三者にバレるリスクがあります。
具体的な理由は、次のとおりです。
バレる対象 | バレる理由 |
---|---|
金融機関 売掛先 第三者 | 帝国データバンク(TDB)などの調査機関が「債権譲渡登記情報を定期取得し、信用情報としてサービスに反映」され、金融機関・売掛先・第三者が当該情報を閲覧した場合。 |
金融機関 売掛先 第三者 | 登記簿は申請さえすれば誰でも閲覧可能。 |
金融機関 | 金融機関に融資を申し込んだ際、債権譲渡登記を確認される。 |
上表のとおり、債権譲渡登記により「売掛先にファクタリングの利用がバレる」可能性は少なからずあります。
しかし、通常は取引先が売掛債権の譲渡を登記所に確認に行ったり、コストと時間をかけてTDBのサービスを利用して登記情報を確認しにいくことは稀だと考えられるため、バレるリスクは極めて低いです。
なお、金融機関に融資を申込する際には登記情報を確認されるため、ほぼ確実にバレます。
したがって、取引先や金融機関などの第三者に絶対にバレたくない場合、債権譲渡登記をすべきではありません。
ちなみに、2社間ファクタリングで債権譲渡登記が求められることは稀です。
というのも、ファクタリング会社としても手間がかかり、通常、債権譲渡登記を留保するからです。
司法書士への報酬・登録免許税のコストが発生する
債権譲渡登記を行う場合、登記するための費用として登録免許税が7,500円、司法書士に登記を依頼する報酬が4~9万円かかります。
なお、登録免許税は登記の際に国に納めなければならない不可避の費用です。
一方、司法書士報酬については、司法書士を利用せず自力で登記申請することも不可能ではありません。
しかし、自力は非常に難しく、真っ当なファクタリング会社であれば司法書士の利用を前提とした契約を提案します。
仮に司法書士を利用しない場合、次のようなデメリット・リスクがあります。
- 登記申請に不備がある場合、債権譲渡登記が遅れることでファクタリング会社からの入金も先に延びてしまう。
- 登記時に譲渡人(利用者)と譲受人(ファクタリング会社)が揃って法務局へ出頭する手間がかかる。
このため、債権譲渡登記については、司法書士の利用をおすすめします。
現金化までの時間が掛かる
債権譲渡登記をすると、「債権譲渡登記なしの2社間ファクタリング」より現金化までの時間がかかります。
なぜなら、登記申請のための書類を準備するために法務局で手続きをしたり、登記申請が受理されて登記が完了するまでの時間がかかるためです。
「司法書士やファクタリング会社とのやり取り」や「書類準備のスピード」にも左右されますが、債権譲渡登記には通常2日~4日かかります。
即日で審査・入金を終わらせたい方は、債権譲渡登記をすべきではありません。
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ファクタリング終了後は必ず債権譲渡登記の抹消を行う
ファクタリング終了後は債権譲渡登記の抹消登記を行います。
債権譲渡登記を消さずに放置すると、将来違うファクタリング会社と契約するときに、同じ債権を二重譲渡していると判断されてしまい、ファクタリング契約ができないリスクが生じます。
このため、ファクタリングで譲渡した債権が決済されたら、速やかに抹消登記をしましょう。
抹消登記に必要な書類は「抹消登記申請書・委任状」「印鑑証明書」です。
また、抹消登記には「登録免許税(1,000円)」、「司法書士への報酬(1,000円~10,000円)」がかかります。
なお、抹消登記ができるのは次の場合です。
- 債権の譲渡が効力を生じないこと。
- 債権の譲渡が取消し、解除その他の原因により効力を失ったこと。
- 譲渡に係る債権が消滅したこと。
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ファクタリングで債権譲渡登記する手続きの流れ
ファクタリングで債権譲渡登記する手続きについて、司法書士を利用する場合の流れをまとめました。
書面申請の場合、書類の提出は「郵送」「窓口持参」にて可能ですが、同申請は東京法務局中野出張所の債権登録課のみでしか受け付けていないため、遠方の場合は郵送がおすすめです。
また、司法書士に渡す「必要書類の準備・作成」については、前述「ファクタリングの債権譲渡登記での必要書類」をご参照ください。
なお、自力で登記する場合の流れは、下記の法務省HPをご参考ください。
通常、ファクタリング会社が提携している司法書士を紹介されますので、その司法書士に依頼します。
ファクタリング会社が提携している司法書士は「ファクタリングにおける債権譲渡登記」に慣れているので、手続を円滑に進めてくれます。
通常、次の書類の準備を司法書士から依頼されます。
- 履歴事項全部証明書(登記簿謄本)
- 印鑑証明書
- 債権譲渡契約書(司法書士が諸々書類を作るため)
- 売掛債権の内容が分かる資料
上記の資料以外にも、司法書士から要請があった場合、資料の準備および提出をします。
依頼の多くは社内で保管している資料を出すものが多いため、手間はかからないです。
その他、司法書士から質問があった場合、速やかに回答します。
司法書士が準備した書類について、司法書士に指示された確認箇所をチェックします。
チェック後、実印の押印をします。
押印する主な書類は次のとおりです。
- 登記申請書
- 債権譲渡登記に関する委任状(代理権限証書)
- 取下書
- 登記事項証明書の取得に関する委任状
司法書士は、作成された登記申請書・その他添付書類を法務局に提出します。
法務局では、提出された書類を基に債権譲渡の登記手続きを行います。
法務局での手続きが完了すると、債権譲渡の登記が正式に行われます。
この登記により、ファクタリング会社は買取債権について「債務者以外への第三者対抗要件」を満たします。
登記が完了すると、法務局から登記完了通知が送付されます。
なお、債権譲渡登記完了後と同時に「債権譲渡登記にかかる登記事項証明書」を取得する場合、「登記事項証明書の取得に関する委任状」をstep3で司法書士に提出しておく必要があります。
以上で債権譲渡登記の手続きは完了です。
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ファクタリングでの債権譲渡登記に関するよくある疑問・回答
ファクタリングでの債権譲渡登記に関するよくある疑問・回答をまとめました。
債権譲渡登記は個人でもできますか?
個人事業主は債権譲渡登記できません。
なぜなら、「個人事業主の債権譲渡登記はできない」と法律で定められているためです。
債権譲渡登記の問題点は?
債権譲渡登記の問題点は、次のとおりです。
上記のうち、特にファクタリングの利用が売掛先や第三者にバレるリスクが特徴的です。
なせなら、売掛先にバレると、信用不安から「今後の取引が縮小・取引が無くなる」ことにつながる可能性があるためです。
ただし、バレるには売掛先がコストや時間を費やして登記情報などを調べる必要があります。
したがって、債権譲渡登記を理由として売掛先にバレることは極めて稀であり、通常はそこまで気にする必要はないと考えます。
登記不要のファクタリング会社はある?
はい。審査結果次第ですが、債権譲渡登記が不要のファクタリング会社はあります。
また、債権譲渡登記が不要なほど「信用力の高い売掛金」であったり、「過去から継続して取引がある売掛金」をファクタリングしたりすることで、登記を回避できる可能性があります。
ファクタリングとは債権譲渡のことですか?
ファクタリングとは「金融サービスの名称」です。
一方、債権譲渡は権利を移転させる「法律行為」であり、やや異なる概念です。
なお、ファクタリングと債権譲渡の定義は次のとおりです。
定義 | |
---|---|
ファクタリング | 一般に「ファクタリング」とは、事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)であり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約です(金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」)。 |
債権譲渡 | 債権譲渡とは、債権をその同一性を失わせないで旧債権者から新債権者へ移転させることをいいます(基通別表第一第15号文書の1)(国税庁「債権譲渡の意義」)。 |
ファクタリングは二重譲渡できますか?
ファクタリングは二重譲渡できません。
二重譲渡は犯罪であり、詐欺罪・横領罪などに問われる可能性があるので、絶対に止めましょう。
ファクタリングの譲渡には消費税はかかりますか?
ファクタリングの譲渡に消費税はかかりません。
なぜなら、売掛債権は法律上「金商法上の有価証券等」に該当し、その譲渡に関する取引は全て非課税となるためです。
(参考:「国税庁タックスアンサー「No.2601 非課税となる取引」)
なお、ファクタリングに関連する仕訳・税金について、詳しくは次の記事で解説しています。
債権譲渡の抹消にはどのような書類が必要でしょうか?
債権譲渡の抹消登記には、次のような書類が必要です。
- 抹消登記申請書・委任状
- 印鑑証明書
なお、司法書士に依頼しない場合、自力で以下の書類を準備する必要があります。
- 抹消登記申請書
- 取下書
- 譲受人(質権者)の代表者の資格証明書(登記事項証明書)
- 譲受人(質権者)の代表者の印鑑証明書
- 譲渡人(質権設定者)の代表者の資格証明書(登記事項証明書)
- 譲渡人(質権設定者)又は譲受人(質権者)の表示が登記された表示と異なるときは、その変更を証する書面
(法務省「登記申請の手続 抹消登記」より)
(作成時参考:法務省「抹消登記申請書・取下書の記載例」)
債権譲渡登記はどこで閲覧できますか?
譲渡人の本店を管轄する法務局で、概要記録事項証明書を取得すれば閲覧可能です。
詳しくは、法務省「債権譲渡登記に係る概要記録事項証明書の交付申請」をご参照下さい。
債権譲渡登記をすると信用不安につながりますか?
債権譲渡登記をすると、信用不安につながる可能性があります。
何故なら、債権譲渡登記されると、窓口へ行って手数料を支払い手続をすれば誰でも登記簿をみることができるからです。
ただし、バレるためには売掛先がコストや時間を費やして登記情報などを調べる必要があります。
したがって、通常、売掛先がコストや時間を費やして債権譲渡登記をわざわざ調べることは無いため、債権譲渡登記だけで信用不安につながる可能性は極めて低いです。
ファクタリング契約における債権譲渡通知とは何ですか?
ファクタリングにおける債権譲渡通知とは、「売掛金がファクタリング利用者からファクタリング会社へ譲渡された」ことを売掛先に通知することです。
債権譲渡通知は主に「3社間ファクタリングの契約時」や「2社間ファクタリングで返金されない場合」に行われます。
売掛先に債権譲渡通知がされると、ファクタリング利用者に対する信用不安が広がり、最悪の場合は売掛先との「取引縮小・取引廃止」等につながるリスクがあります。
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【比較表】手数料が安い!おすすめのファクタリング会社【厳選5選】
手数料が安いファクタリング会社の中でも、特におすすめのサービスを5社厳選しました。
QuQuMo (ククモ) | 日本中小企業金融サポート機構 | ビートレーディング | アクセルファクター | ベストファクター | |
---|---|---|---|---|---|
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
総合評価 | ( 9.6点 ) | ( 9.3点 ) | ( 8.8点 ) | ( 8.5点 ) | ( 7.8点 ) |
審査通過率 | 98% | 非公開 | 非公開 | 93%以上 | 92.25% |
利用枠 | 1円~ | 1円~ | 1円~ | 30万円~ | 30万円~ |
初回利用制限 | なし | 8万円~ | なし | なし | なし |
最短入金時間 | 2時間 | 2時間 | 2時間 | 2時間 | 即日 |
支払手数料 | ~ 1% | 1.5%~ | 2~12% | 1~10% | 2~20% |
必要書類 | 2つ | 2つ | 2つ以上 | 3つ以上 | 3つ |
売掛先が個人 | 利用不可 | 利用可 | 利用可 | 利用不可 | 利用不可 |
2社間契約 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
3社間契約 | 利用不可 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
スポット取引 | 利用可 | 利用不可 | 利用可 | 利用可 | 〇 |
設立年月 | 2017年年9月 | 2017年5月 | 2012年4月 | 2018年10月 | 2017年1月 |
ネット完結 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
口コミ評価 | ( 10/10 ) | ( 9/10 ) | ( 9/10 ) | ( 7/10 ) | ( 8/10 ) |
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実際の手数料金額は、審査に回さなければ分かりません。
ファクタいリング会社は、複数社で見積もりを取ることが可能ですので、上記2~3社に登録してまず審査に回してみることをおすすめします。
審査を通過したファクタリング会社のうち、最も安い手数料金額のファクタリング会社を選ぶのが賢い使い方です。
参考文献: