簿記1級を使って未経験で転職できた事例と応募前の重要ポイント
アカウントエージェント株式会社が実施した「日商簿記1級取得者の転職に関するアンケート」によれば、会計税務未経験者が簿記1級を取得した後の転職先として、最も多かったのは「経理・財務」でした。
簿記1級 × 未経験 での転職先アンケート(n=27)
| 回答者数 | 割合 | |
|---|---|---|
| 企業の経理・財務 | 10 | 37.0% |
| 会計事務所・税理士法人の職員 | 9 | 33.3% |
| 経理以外の管理部門 | 5 | 18.5% |
| 会計・税務とは関係のない職種 | 3 | 11.1% |
| (合計) | 27 | 100.0% |
会計・税務の転職相談室からご相談いただく方の中でも、「経理」への転職を志望する方はとても多いです。
しかし、年齢によって転職のハードルは上がり、また実務経験なしでは選べる選択肢も変わってきます。
そこで本記事では、当該アンケート調査から得た「簿記1級 × 未経験での転職事例」を年代別に紹介し、特に未経験者の方におすすめの職種を理由と共に解説いたします。
簿記1級 × 未経験で転職できた事例【20代】
簿記1級 × 未経験 で転職した27名のうち、20代の方は12名でした。
このうち会計・税務系職種に転職できた方は9名と、全年代の中で最多となりました。
ここでは、その中から3名の転職事例を紹介いたします。
派遣会社の事務から経理に転職した事例|簿記1級取得後に5社応募して2社内定

取得後に転職
- 転職時の年齢20代後半
- 年収350万円 → 400万円
- 会計・税務の実務経験実務経験なし
- 1級の学習期間9か月
派遣事務で契約書や勤怠の取りまとめをしていましたが、一般事務の仕事の未来に不安を感じたため、働きやすそうな経理を志望しました。転職したいと思った時点で簿記2級を持ってましたが、1級を取った方が就活でも有利だと思い、9ヶ月かけて1級に合格しました。選択肢には一応会計事務所も入れてましたが、経理の方が残業も少なく働きやすそうだったため、応募先はほぼ経理だけでした。思ってたほど就活は大変ではなく、5社応募して2社内定を貰いました。今も経理で働いていますが、とても働きやすく転職してかなり良かったと感じてます。
専門商社の営業から経理に転職した事例|第二新卒枠で3社同時に内定

取得後に転職
- 転職時の年齢20代前半
- 年収350万円 → 400万円
- 会計・税務の実務経験実務経験なし
- 1級の学習期間1年半
自分への適性を考えて営業職から管理部門系職種に転職したいと思い、簿記資格を取りました。学生時代から勉強は得意だったので、無資格から働きながら日商簿記1級まで取得できました。前職は会計とは全く関係のない仕事でしたが、第二新卒枠だったのと面接時の対応力を評価され、経理に転職できました。15社ほど応募して同時に3社内定をもらい、一番年収の良い企業に決めました。
塾講師から税理士法人に転職した事例|税理士試験の手前として簿記1級を取得

取得後に転職
- 転職時の年齢20代後半
- 年収350万円 → 350万円
- 会計・税務の実務経験実務経験なし
- 1級の学習期間1年〜1年半
教える仕事が好きでしたが、夜型の生活と、この先の給料がほぼ上がらないことが見えていたので転職を考えました。資格を取って転職したいと思い、汎用性の高そうな簿記を勉強しました。ゆくゆくは税理士試験まで行くつもりだったので、その手前として1級を取っています。所長との面接では「1級を持っていても実務は一からだよ」とはっきり言われました。そのうえで採ってもらえたので、見られていたのは知識より、続けられるかどうかだったと思います。
簿記1級 × 未経験で転職できた事例【30代】
簿記1級 × 未経験 で転職した27名のうち、30代の方は11名でした。
このうち、会計・税務系職種に転職できた方は7名でした。
ここでは、その中から3名の転職事例を紹介いたします。
SEから税理士法人に転職した事例|評価されたのは簿記よりクラウド会計の知識

取得後に転職
- 転職時の年齢30代前半
- 年収450万円 → 400万円
- 会計・税務の実務経験実務経験なし
- 1級の学習期間2年
受託開発を8年やって、常駐先が変わるたびに一から関係を作り直す働き方に疲れてジョブチェンジしました。数字と仕組みを扱う点は前職と近いだろうと考えて、会計の道に決めました。1級の勉強には2年近くかかりました。面接ではExcelやクラウド会計の話ができたことのほうが、簿記の知識よりも効いた気がします。事務所側もちょうどシステムの入れ替えで人手が要る時期だったようです。
旅行代理店の営業から会計事務所に転職した事例|書類選考に落ち続けた末に採用

取得後に転職
- 転職時の年齢30代前半
- 年収300万円 → 350万円
- 会計・税務の実務経験実務経験なし
- 1級の学習期間1年半〜2年
コロナで業界が止まったときに、危機感を感じて簿記の勉強を始めました。商業高校出身で2級までは持っていましたが、知識はだいぶ忘れていました。仕事にスキマ時間がかなり多かったので、大半の時間を1級の勉強に費やしました。元々税金計算に興味があったため、勉強しながら会計事務所の転職活動もしていましたが、未経験という部分がネックで書類に落ちることも多かったです。今の事務所では簿記1級を高く評価してもらうことができ、採用してもらえました。
営業事務から同業界の経理に転職した事例|実務3年以上の壁を業界知識で越える

取得後に転職
- 転職時の年齢30代後半
- 年収350万円 → 350万円
- 会計・税務の実務経験実務経験なし
- 1級の学習期間1年〜1年半
元々営業事務として日報集計や経費精算・出納はやってましたが、経理事務には関わらず、簿記1級の勉強だけで知識をつけました。転職活動では経理をずっと希望してましたが、求人の多くが「実務3年以上」で、応募できる求人が少ないことに苦労しました。かなりの数応募しましたが、最後は不動産での経験を評価してもらい、同業界の経理に転職できました。面接時に現場での話が通じたのは大きかったと思います。
簿記1級 × 未経験で転職できた事例【40代】
簿記1級 × 未経験 で転職した27名のうち、40代の方は4名でした。
また、このうち会計・税務系職種に転職できたのは3名です。
40代になると未経験での転職ハードルは非常に高くなることが分かります。
なお、弊社アンケートにおいて「50代 × 簿記1級 × 未経験」で転職できた事例は1件もありませんでした。
印刷会社の営業から税理士法人に転職した事例|50社以上落ちた末に採用

取得後に転職
- 転職時の年齢40代前半
- 年収500万円 → 450万円
- 会計・税務の実務経験実務経験なし
- 1級の学習期間2年〜3年
同業者や取引先の廃業を何件も見てきて、自分の会社もいつまで続くか分からず不安を感じていました。40代からでも手に職が要ると思ったのがきっかけで、簿記1級を取りました。現実は厳しく、50社以上落ちたと思います。最終的に決まったのは、営業経験のほうを評価してくれた事務所でした。所長から「顧問先と話せる人が欲しい」と言われたときに、簿記以外にアピールできる材料があることに気付きました。コミュ力は意外と強みになるのかもしれません。
不動産会社の事務から会計事務所に転職した事例|給与計算までできる人材として採用

取得後に転職
- 転職時の年齢40代前半
- 年収400万円 → 350万円
- 会計・税務の実務経験実務経験なし
- 1級の学習期間3年
子どもの手が離れたタイミングで勉強を始めて、簿記1級の合格まで3年ほどかかりました。就職活動では年齢のことを何度も言われましたが、給与計算までできる人を探していた事務所に採用してもらえました。年収は前職より50万円ほど下がりました。それでも40代で新しい仕事に入れたので、納得しています。
IT系企業の事務から経理に転職した事例|活動開始から1年半かけて内定

取得後に転職
- 転職時の年齢40代前半
- 年収400万円 → 400万円
- 会計・税務の実務経験実務経験なし
- 1級の学習期間1年半〜2年
以前はIT業界の事務職で働いており、管理部門の中でも専門性の高い経理に興味がわき、簿記2級を取得しました。その後転職活動をしていましたが中々決まらず、1年以上が経った頃に簿記1級も取得しました。結局転職したのは最初に活動を始めてから1年半ほど経過した頃でした。IT業界の知識があることを評価され、今の会社に経理として拾ってもらいました。
簿記1級 × 未経験者におすすめの転職先【厳選3種】
簿記1級取得者(未経験者)の方におすすめの転職先は、以下の3種です。
未経験者の方には、上記3つの職種への転職がオススメです。
共通するオススメ理由は、「汎用性の高さ」です。これらのキャリアで培う経験は、他の会計系職種においても活用しやすく、転職市場においても評価されやすい経験です。
以下、それぞれ詳しく解説します。
簿記1級 × 未経験 × 上場企業・大会社の経理|転職難易度は高い
| おすすめ度 | ( 5.0/5.0 ) |
|---|---|
| キャリアの汎用性 | 高い |
| 就職難易度 | 高い |
| 特徴 | 「企業会計」の知識をフル活用できるキャリア。安定した働き方ができる傾向にあるが、一部ブラック企業もあるので注意が必要。 |
上場企業・大会社の経理は、簿記1級取得者の方に一番おすすめのキャリアです。
年収が高いなど条件の良い求人が多く、会計系キャリアの中では最も人気の高い転職先です。ある種、会計系職種のゴールとも言えるポジションです。
特に「上場会社」では、その他の会社では得られない貴重な経験が得られるため、オススメです。
- 有価証券報告書の作成
- 決算・四半期短信の作成
- 内部監査(J-SOX)対応
- 監査法人対応
これらの経験は、他の上場経理においても必要とされる経験であることから、常に一定数の需要があります。
ただし、その分競争が非常に激しく、未経験者の就職難易度は非常に高いです。
20代であれば未経験でもいきなり転職できる可能性がありますが、30代以上になると未経験で転職することは極めて困難です。
そのため、まずは中小企業の経理などで実務経験を積み、その後ステップアップとして上場経理を目指す方が多いです。
簿記1級 × 未経験 × 中小企業の経理|転職難易度は中
| おすすめ度 | ( 4.5/5.0 ) |
|---|---|
| キャリアの汎用性 | 高い |
| 就職難易度 | 中 |
| 特徴 | 上場企業・大会社の経理とは異なり、基本的には税法ベースでの仕訳・決算作成になるため、税法の知識も必要とされる。 |
同じ経理の中では、中小企業の経理もオススメです。
上場企業・大会社の経理よりも転職難易度が低く、未経験者への採用の間口も広いのが特徴です。
- 日々の仕訳起票の基本が分かる
- 幅広い勘定科目に触れることができる
- 税法基準での会計処理を知ることができる
- 比較的ワークライフバランスが整いやすい傾向にある
中小企業の経理は、基本的に税務基準で仕訳を起票しているため、商業簿記以外に税法の知識が身に付くというメリットがあります。
また、上場経理とは違い多くの勘定科目に触れる機会があるため、未経験からのキャリアとしても非常におすすめです。
ただし、40代以上になると未経験での転職が非常に難しくなるため、種々の戦略が必要になります。
簿記1級 × 未経験 × 会計事務所の税務スタッフ|転職難易度は低い
| おすすめ度 | ( 4.0/5.0 ) |
|---|---|
| キャリアの汎用性 | 高い |
| 就職難易度 | 低い |
| 特徴 | 多くのクライアントに向けた仕訳起票・税務申告書作成が仕事になるため、経理とは似て非なる職種。 |
会計事務所は、会計・税務系職種の中で最も転職のハードルが低く、かつ初年度から大きくスキルアップできるおすすめの職種です。
経理が「自社の仕訳・決算」のみに関与するのに対して、会計事務所では「数多くの会社の仕訳・決算」に関与するため、仕訳・決算への習熟スピードが早いです。
また、会計事務所での目的は「確定申告書の作成」であることから、業務において種々の税法の知識が身に付きます。
- 所得税法
- 法人税法
- 消費税法
- 相続税法
このため、税理士を目指すために会計事務所で働く方も多いです。
一方、難点はそもそも簿記1級ほどの知識を活用するシチュエーションが少ないことです。
簿記2級よりも評価されるのは事実ですが、オーバースペックであり、面接時に簿記1級の取得理由を聞かれることが多いです。
会計税務系のファーストキャリアとしておすすめの会計事務所(税理士事務所)ですが、入所直後から多くの業務を任されるため、「未経験だときつい」と言われることもあります。
成長をとるか安定をとるか、ご自身の目的や軸を鑑みて、じっくりとキャリア設計しましょう。
簿記1級を使って未経験職種に転職する際の重要ポイント
簿記1級を使って未経験職種に転職する場合は、特に次の3点が重要になります。
以下、それぞれ解説します。
簿記1級を取得した理由・背景を明確にして志望動機に盛り込む
簿記1級があっても就職できない人の特徴でも触れていますが、未経験者が内定率を高めるためには「志望動機」を作りこむ必要があります。
会計・税務の転職相談室にご相談いただく方の大半が、この志望動機を上手く作りこめていません。
簿記1級を取得した方なら、必ず、その取得に理由や背景があったはずです。
これを思い出し、過去・現在・そして応募先企業に転職した後の未来まで繋げて、志望動機を作成する必要があります。
志望動機を上手く作りこめていない応募者が多いからこそ、ここで一番差が付きます。面倒でも、一番手間をかけるべき部分です。
志望動機の書き方については、以下の記事で例文付きで解説しています。
転職前にキャリアを2歩先まで考えておく
簿記1級を取得すると、キャリアの選択肢が大きく広がります。
選択肢が広がるということは、転職後もさらに転職・キャリアアップする未来があるということです。
しかし、この選択できる未来は「それまで歩んできたキャリア」によって、ある程度方向が決まってしまいます。
例えば、経理へ転職した後に会計事務所に転職すると、一見様々な経験値が身に付いて武器になるようにも見えますが、実は浅く広いスキルを得ただけに過ぎず、転職市場での高い評価を得られません。
一方、例えば不動産業の経理→不動産業の財務のように、一貫性をもって転職を行うことで「不動産業界の経理に詳しい人材」として市場での評価が高まります。
そのため、まず自分が目標とするゴールを考え、そのゴールを達成するために必要なキャリアを考える、という逆算的な設計が理想です。
簿記1級を活かせる仕事については、以下の記事内で網羅的に紹介していますので、この中から好きなキャリアを探してみることをオススメします。
「会計・税務」に強い転職エージェントを利用する
最も大切なのは、「会計・税務」に強い転職エージェントを利用することです。
転職エージェントの利用は大前提として、dodaやリクルート等のいわゆる「総合型エージェント」を使っている方がいます。
しかし、こうした総合型エージェントは会計・税務業界に関する知見が十分でないケースが多く、とにかく今ある求人に転職させようとしてきます。
一方、会計税務に特化した、いわゆる「特化型エージェント」であれば、幅広い会計税務業界のキャリアに精通しているため、より自分にマッチした職場を選びやすくなります。
筆者も転職活動の際に総合型エージェントを3社使いましたが、いずれも担当者の業界に対する知識が浅く、「これは未経験者だと騙されるだろうな…」と感じました。
会計・税務業界での転職にオススメの転職エージェントは、以下で紹介しています。
【比較表】簿記保有者に強い!おすすめの転職エージェント
簿記保有者に強い転職エージェント5社は、以下のとおりです。いずれも会計税務業界に特化したエージェントです。
| レックスアドバイザーズ | ヒュープロ | MS-Japan | 人材ドラフト | ジャスネットキャリア | |
|---|---|---|---|---|---|
![]() | ![]() | ||||
| 総合評価 ※1 | 4.50 / 5.00 | 4.39 / 5.00 | 4.21 / 5.00 | 3.62 / 5.00 | 3.92 / 5.00 |
| 求人数 ※2 | 4,000 件~ | 6,400 件~ | 4,000 件~ | 2,100 件~ | 2,000 件~ |
| 得意領域 | 会計事務所/税理士 | 会計事務所/経理 | 管理部門 | 会計系 | 士業系全般 |
| 強み | 利用者満足度が高い | 求人数No.1 | 業界の老舗 | – | – |
| サービス開始 | 2004年 | 2016年 | 1995年 | 2001年 | 1998年 |
| 利用対象者 | 20~50代 | 20~50代 | 30~40代 | 20~50代 | 20~50代 |
| 対象エリア | 全国 | 全国 | 関東/関西/東海 | 全国 | 全国 |
| 料金 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 |
| 評判/口コミ | 評判を見る | 評判を見る | 評判を見る | 評判を見る | 評判を見る |
| 公式HP | 公式HP | 公式HP | 公式HP | 公式HP | 公式HP |
- 総合評価の算出方法:コンテンツ制作ポリシー「転職エージェントの評価基準」に基づき算出しています。
- 求人数の集計対象:各社の経理・会計事務所・監査法人・コンサルの求人数を集計しています。 (2026年10月1日時点)
会計・税務の領域で転職する場合、求人数の多いヒュープロ・利用者満足度の高いレックスアドバイザーズの2社がおすすめです。
いずれも筆者自身が利用し、オススメできると感じた2社です。
ぜひ上記比較表をご参考に、ご自身に合った転職エージェントを使ってください。







